SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第四十話

 トールバーナの近くの草原。アスナは、そこで一体のモンスターを相手にしていた。緑色をしたコボルド族という族種のモンスター、≪スワンプ・コボルド・ラットハンター≫と言うらしい。

 でも、その顔は≪ラット≫と言うよりはどちらかというと、犬、に似ているような気がする。とアスナは思っていた。

 おかしなものだ、前まではそんな事考えている余裕も暇もなかったのに、ことこの状況に置いて自分は冷静にそしてやや微笑んでその状況を見ることができている。

 

「フッ! ハァァァ!!!」

「アスナさん!」

「えぇ! ヤァァァ!!」

 

 グレースの合図でソードスキル≪リニアー≫を放ったアスナは、変わるように現れたグレース、そしてユウキの二人によってスワンプコボルド・ラットハンターの射程から回避する。

 これが、スイッチ、か。ソロでプレイしていた時には考えられなかった。なるほど、戦いやすい。これなら自分はこれからもこの世界で≪生きる≫ことができるかもしれない。

 

「グレース! 一気に行くよ!」

「うん!」

 

 その言葉に、ユウキはソードスキル≪バーチカル・アーク≫を、そしてアスナと同じ細剣使いのグレースは突進系のソードスキル≪シューティングスター≫を放つ。

 

「「ハァァァァァァァァァ!!!」」

 

 それぞれの剣閃が、コボルドの身体を捉えた。右から斜め下に振り下ろし、さらにもう一度同じ箇所をなぞるように連撃を加える≪バーチカル・アーク≫、すさまじい速さだとアスナは背後から見ても思っていた。そして、それはグレースも同じ。ユウキがソードスキルを放ったその直後、まるでその背後から彼女を狙っていたのではないかと誤解するほどの俊敏さでコボルドの前に現れると、まさしくその名前にふさわしい、星の流れをイメージした技≪シューティングスター≫を発動させる。

 この、合計三連、いやアスナの攻撃も含めて四連撃にコボルドの身体は耐えきることができず、その場にゆっくりと倒れ伏していき、そして最後にはその身体はガラス片となって、消滅するのであった。

 今までにも幾度と見て来たこの光景だ。でも、今日のそれは全然違う。

 今までだったら、自分もいつかはこうなってしまうのだと自嘲したかのような見方をしていた。でも、今は、他の仲間をこんな姿にしないようにと、それだけを考えて行動している。

 そう、今一緒に戦っている、この仲間たちだけは。

 

「やったね、アスナ!」

「ううん、最後の攻撃は二人だから……」

「確かにそうだけど、でもアスナさんが削ってくれたから倒せたんです」

「そうそう! アスナ、はい!」

「え?」

 

 と言いながら、ユウキは手を挙げた。意味が分からなかったアスナは一瞬躊躇するが。

 

「ハイタッチだよ! ほら!」

「え、えぇ」

「ふふ」

 

 と言って、アスナ、それからグレースもまた三人同時にハイタッチをする。その瞬間、≪キュン≫という言葉がどこかしらから聞こえてきた気がするのだが、幻聴なのだろうか。

 それはともかく。

 

「この辺も、大体狩りつくしたね」

「そうね、まぁ三パーティーで一緒にやってればそりゃこうなるでしょ」

 

 と言ったのはこなこなとカガミである。

 そう、今自分たちはパーティーごとに別れて戦闘を行っている。その理由は至極簡単に言えば、明日の戦いに完璧に備えるための準備、と言ったところか。

 コルやアイテムを集めて回復アイテムを沢山購入して、万全の態勢でボス戦に挑む。それがあの会議で最後に決まった事だった。作戦に関しては、ディアベルや、現実世界では戦車道の家元の娘―本人曰く既に勘当済みらしいが―であるみぽりんや同じく戦車道で弱い戦車と言うしかない戦車隊を率いて全国大会でみぽりんたちと死闘を繰り広げたアンチョビ、他幾人ものβテスターで戦略を立て、ボス戦直前に伝えてくれるのだそう。

 今回のボス、≪イルファング・ザ・コボルド・ロード≫。その名前にロード、つまり領主や支配者の意味―道とはスペルが違う―を持つことからも分かる通りこの第一層の支配者たる敵。コボルド達を統治するモンスター。それが、第一層のボスであるのだとか。

 大型の敵であり、今自分たちが倒したコボルドの何倍もの大きさを持つモンスターで、武器は斧とバックラー。HPが少なくなると曲刀の≪タルワール≫という武器に持ち換えて攻撃パターンも変わると言う敵であるそうだ。

 曲刀。その名前の通りに曲がっている刀。果たしてそれが強いのかどうかはさておきだ。巨大な物体が刀を使ってくると言う時点で、何か恐ろしさのようなものを感じる。

 だからこそ、自分たちはこうしてコボルド族が大量に出現する場所で闘い、コボルド族と対峙するための準備をしているわけだが。

 

「それにしても、リーファさん凄いですね。あれだけのパーティーがいる中で≪LAボーナス≫を受け取る権利獲得とっちゃうんだもん」

「た、偶々運が良かったから」

 

 と、こばゆーに言われたリーファは謙遜する。そう、結局≪LAボーナス≫の扱いについてどうするのかとなったところ、最初は決闘をして一番最後まで残ったプレイヤーが、等と言った実力主義の方向で話が流れようとした。あれは一体どの馬鹿が言って、何人が賛成した事なのだろう。

 

「ハックシュン!」

「クシュン!」

「キッド、マリン、風邪ですか?」

「いやいや、ゲーム世界で風邪とかないっしょ」

 

 とかなんとかやってる者たちが、いたりするがそれはさておき。

 最終的にジャンケンで勝ったプレイヤーが≪LAボーナス≫のアイテムをゲットする形でいいじゃないかとなった。それじゃ完全に運だ。というか、その戦闘での武功の大小も関わらずに運だけで決めていいのかと、いくらかは反発はあった物の、しかしこの程度の事でいつまでも時間を取ってはならないという事は今までの過ちからわかる通りで、結局ジャンケン大会が行われ、最終的にはリーファとシズの一騎打ち。

 結果、リーファが≪LAボーナス≫を受け取る権利を貰ったのだ。

 

「考えてみれば、一万個しかないSAOをゲットできた時点で、運を使い果たしているよね私たち」

 

 と皮肉を言ったのは誰だっただろう。いや、それ自体結果的に見れば不運だったのだが、しかし最終的にこの一番重要ともいえる≪LAボーナス≫を獲得できる権利を取得できたのはリーファ、もしもリーファに何かあった時にはシズが手に入れることとなった。

 この、何かあった時、というのは当然リーファがその戦いで死亡するという可能性も含めての事。故に、リーファ、並びにシズには念に念を入れて今この状況に置いて二つのパーティーが護衛をする、という形をとった。

 と言っても、もとから三パーティーの面々は一緒に動いてチーム戦のスキル、というより勘を身に付けようと思っていたので最初っからそのつもりだったのだが。

 現在リーファを含めたアスナ、ユウキ、グレース、ちう、シリカのパーティーは。

 コナコナ、カガミ、こばゆー、ミー、ぴの、ぼぼろんのパーティー。

 チハヤ、フルムーン、オーシャン、ムーンライト、フォーゼ、そしてコペルのパーティー。それとスターもついでで同行。

 この三つで行動をしていた。

 ふと、ぽぽろんが言う。

 

「まぁ、地下アイドルの私、ぽぽろんちゃんにとってはトップアイドルのチハヤと出会えて行動できるのはラッキーだけど」

「あら、そうなの? よろしくね」

「えぇ、よろしく」

 

 まぁ、厳密に言えば≪ただの地下アイドル≫ではない、というか生活を安定させるために地下アイドルをしているにすぎないし、出会えてよかったと言うのも、アイドル活動の一つとして使えるなと言う思惑があったりして、果たしてその腹に何を抱えているのか。

 それと、現実的な面ではリーファ達も知らない秘密が隠されていたりするのだが、それはまだ彼女には言えない。というよりもここで話すようなことではないのでまぁいいとしよう。

 

「とにかく、こうやって知り合ったのも縁、皆俺のダチだ! 皆でゲーム攻略に向けて、一緒に戦おうぜ!」

「はい!」

 

 ドンドン、キュピーン!

 という音が聞こえてきそうなほどに胸を叩き、彼女たちの方に指を指したフォーゼの言葉に、元気よく返事をしたユウキ。

 

「いい先生みたいですね、チハヤさん」

「えぇ、本当に……」

 

 因みに、フォーゼはチハヤが通っている高校の先生であり、実は苗字は同じ≪如月≫であるそうだ。そのためか、もしかしたら親戚のおじさんと姪っ子、感覚で互いの事を見ていたらしく、チハヤにとっては少し熱血漢があって暑苦しいけれど、でも頼りになる先性。

 フォーゼにとっては、大事な高校生活をアイドル生活と言う物に注いで青春を謳歌していないから、少しくらい学校に来た時には、青春を感じさせてあげたいと願って色々と催し物をするくらいの関係。

 当然フォーゼの受け持っている生徒はチハヤだけじゃない。でも、他の生徒たちもまたフォーゼに感化されたのか、チハヤが少ない学校生活でも青春を謳歌できるようにと張り切って彼女をサポートするようになってからは、フォーゼの学校は毎日お祭り騒ぎ。チハヤが来ていない時にもお祭り気分で、校長は毎日のように胃を痛めているのだとかなんとか。

 そんなメンバーで、ゲームをプレイしていたわけだが、ふとここで一人その姿を消しているプレイヤーがいることにユウキは気がついた。

 

「あれ、フルムーンさんは?」




≪裏話≫
 千早と弦太朗の関係、親戚にしても良かったけどどこかで見たネタだから無しにしました。
 あと天ノ川学園を麻帆良学園都市の中に入れ込もうとも考えましたが、それもそれで没となりました。
 そして次回は、フルムーン回の短編……第一層ボス戦にまだたどり着かねぇ!?

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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