SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第四十一話

 このゲームに閉じ込められた。ソレを私が認識した時に、私の中に飛来してきたあのほんわかとした思いは何だったのだろう。

 歩むはずだった道を、未来を閉ざされた絶望か。

 それとも、日に日に衰え、声を出すことができなくなると言う絶望を味わうことが無くなったと言う希望か。

 あまりにも相反する二つに、私は混乱すると同時に、しかし笑みを浮かべたのは確かな事。

 良かった、私、声を失うことなく≪死ぬことができる≫んだ。

 それが、ただ一つの希望となっていた。

 フルムーンはある病気を持っていた。簡単に言えば、喉に悪性の腫瘍ができており、声帯を取らなければ絶対に完治することはないと、主治医から断言されてしまった病気。

 余命は、もう幾何も残っていない。でも、彼女にとって歌を歌えなくなるのは、とても恐ろしい事。自分のすべてを奪われてしまうくらいに、生きていく意味がなくなるくらいに、だから、彼女はずっと手術を拒否し続けて来た。

 でも、ことこの状況になって。彼女は、その残り少ない人生をゲームの世界で過ごすことになって、ちょっと怖いけど、安心することができた。前述の通りに、声を失うことなく生きることができるから。

 確か、現実の自分がかぶっているナーヴギアの構造的に、その頭から機械が離れることなくベルトがしっかりと固定していて、顎の所、そしてそのすぐ下にある首のところまでベルトが伸びている。つまり、自分の意識がない状態で声帯の手術なんて、できるわけがないのだ。

 だから、私は声帯を失うことなくあのヒトのところに行ける。歌手になると言う約束は叶わなかったけれど、でも、私は声を持ったままの私で死ぬことができる。それが、何よりもうれしかった。

 希望、だった。

 

「英治くん。待っててね……」

「ダメだよ、そんなの……」

「え?」

 

 その時だった。突然茂みの中から一人の女の子、ユウキが現れた。

 

「死ぬのに、希望を持ったらダメだよ。フルムーンさん!」

「ユウキ、ちゃん?」

「諦めないで、最後まで……私みたいに、諦めたら、ダメ……」

 

 というと、ユウキはフルムーンの身体をがっしりと掴み、呟くのだった。それはまるで、自分がどこかに行くのを防ぐかのようにしっかりとした手つきで、そして、手を離したら本当にどこかに行きそうな彼女を、守るかのようで。

 優しい手をしていた。

 それから数分後、落ち着いたユウキは、フルムーンの隣に座ると言う。

 

「ごめんなさい。いきなり」

「ううん、良いの……」

 

 というと、ユウキはゆっくりとフルムーンに身体を寄せて言った。

 

「聞こえてたよ。フルムーンの心の声」

「え?」

「というより、声に出てたよ……その、声帯の病気の件、とか……」

「あぁ……」

 

 どうやら、自分は頭の中で独白をしているつもりだったけれどそうではなかったようだ。というか、それを改めて聞かされると少し恥ずかしい気持ちになって来る。と、同時にでも自分の現実でのことを、一人でもいいから知ってもらいたい、そう言う欲求に駆られてしまってもいいんじゃないかと、思えてしまう。

 

「私ね、現実だと十二歳なんだ」

「え? それって、SAOの……」

 

 確か、SAOの対象年齢というか、SAOをプレイすることができる年齢の下限は十三歳のはず。

 

「うん、ちょっと年齢の所でズルして、プレイしたの。この世界だと……喉が痛くならないはず、だから」

「喉?」

「うん……」

 

 確かに、このゲームの世界だと例え現実の己の身体にどれほどのハンディを抱えていても関係ない。脳自体に損傷がなかったら、その脳から伝えられる情報がこのアバターとなっている己の身体の方に流れていくため、アンフィニのように身体が満足に動かせなくなる怪我をしても足が動かせたように、現実の身体のハンディを抑える事ができる。

 もちろん、そのためには失った体の機能を補うための少しばかりのリハビリが必要だ。でも、彼女の場合、問題になっているのは喉、だった。だからこの世界に来た直後に彼女は歌ったのだ。

 

「楽しかった。現実じゃ、すぐに喉が痛くなるけど。でもこの世界だとそんなことなくて、とても気持ちよく歌えて……私ね、歌手になるオーディション受けようと思ってたの。勿論、そっちも年齢を詐称して」

「そ、そうなんだ……」

 

 聞いていると、何とも行動力のある女の子、というか度胸のある小学生だと思う。でも。

 

「どうして、そこまで歌にこだわるの?」

「……英知くんとの、約束だから」

「え? エッチ……くん?」

「ち、違う違う! よく間違われるけど、エ・イ・チ君!!」

「ご、ゴメン……」

 

 とユウキは謝りながらもしかし心の中では安心していた。ずっと、本当にエッチくんエッチくんと彼女が言っているような気がして、一体どんな変態なのだろうかと、もしかしたらその変態に固執しているのではないかと思っていたから。

 

「英知くんは、天文学者に、私は、歌手に、それが私と英知くんと交わした約束だから……」

「交わした、約束……」

 

 聞くに、彼女は自分に負けず劣らずの不幸な人生を送って来たらしいとユウキは思う。

 幼いころに両親を交通事故によって失って、それからは祖母が現れ、引き取ってくれるまで施設に預けられていた。そして、そこで出会ったのが、自分より四歳年上、彼女の憧れの人たる桜井英知という男の子。

 とても優しくて、温和な男の子で、まるで天使のようなイメージを持つ男の子だったそうだ。そんな男の子とフルムーンはとても仲が良く、まるで兄妹のように過ごしていたという。

 フルムーンが十歳の時、彼がアメリカに行くまで、ずっとずっと仲が良くて、お世話をしてくれた男の子。そんな彼と、別れる時に約束したのだ。

 

『いやだ……いかないで英知くん……』

『アメリカなんてそう遠くないよ。ねっ、約束して』

『約束?』

『今度会うまでに今より夢に近づいてるって。僕は天文学者に、満月は歌手に!』

「あ、満月って、私の現実の名前ね」

「あ、だから……フルムーン」

「うん。そう言う事。でも、病気は日に日に悪化していくばかりで……そんな時、オーディションのビラを見つけて……最後の、チャンスだった。私が、夢に近づく、英知くんに近づける最後のチャンスだって……思ったのに……」

 

 なのに、こんな事件に巻き込まれたのか。それは、さぞかしショックだろうなと、ユウキは思っていた。

 

「でも」

 

 その、言葉を聞くまでは。

 

「私、嬉しいんだ」

「え?」

「確かに、ゲームの世界に閉じ込められちゃったけど、どんどん痛くなったり、気持ち悪くなったりせず、ゆっくりと、穏やかに死ぬことができるんだって思ったら、全然怖くなくなっちゃった」

 

 いずれ、完全に声を出すことができなくなって、徐々にその身体が、今でなお細いその身体がどんどんと細く、干からびていって、できる事も何一つなくなって外を歩くこともできなくなって。そして、最後は寂しくベッドの上でその時を待つ。

 そうなる前に、この世界に来ることができたことを、フルムーンは感謝していた。

 

「私ね、良かったと思ってる。この世界に来れて。歌を歌えて、身体も自由に動かせて……この世界で死ぬのがね、私……楽しみになってるのかもしれない……そう考えると、全然怖くなくなったんだ」

「そんな、そんなの! もう、英知さんに会えなくていいんですか!?」

「……」

「英知さんに約束したんですよね、歌手になるって! ソレを、そんな簡単にあきらめて、アメリカにいる英知さんは……」

「……いないよ、もう」

「え?」

「うん、いないの、もう……英知くんはこの世に……だから、天国に逝ってもいいかなって、そう思ってるの」

 

 その時の彼女の顔は、まるで≪あの時≫の姉とは全然違っていた。そう、ユウキは語っている。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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