SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 これ書いた後、賛否あるだろうなとちょっとだけ思いました。でも、彼らにできる事、それを考えたら、その現実がコレだった。


メインシナリオ 第三章 第四十四話

「これが私とお姉ちゃんのお話……希望をもって死んでくれた、お姉ちゃんの話だよ」

 

 結構重い話だったな、等と他人事のように思うフルムーン。いや、それもそのはず。だって、他人だもの。

 他人の事をどれだけ言われても、あまり現実感が沸かない。確かに、死の恐怖、と言う物は理解できる。でも、だからと言って、自分はどう説得されても自分を変えることはしない。だって、自分は、自分だから。

 

「フルムーンさん。私ね、別にフルムーンさんに自分を変えてもらいたいってわけじゃないの」

「え?」

 

 逆に、意外だった。それじゃ今までの話は一体、何だったのだろう。そんな至極当然の疑問がわいてしまうから。

 

「私だって、昔は絶望していた。もしかしたら、フルムーンと同じ立場になっていたかもしれない。私もまた、死の恐怖と、家族と一緒に会えるっていう矛盾した中で戦うことになっていたかもしれない。だから、私に、フルムーンさんを止める資格なんてないよ」

「……」

「私が言いたいのはただ一つだけ…死に希望を求めるのはダメだってことだよ」

 

 というと、ユウキはフルムーンの手を取った。その時の感触は、ただただ触られているな、程度の感触だった。でも、もしこれが現実だった、彼女の手は汗ばんでいるのだろうか。それとも、ただただ暖かいだけなのか、どちらにしてもこころが温かくなるのだろうと、そう、フルムーンは思っていた。

 

「お願い、せめて死にあらがって。自殺なんかもしないで、もし死ぬのが分かっているのなら、その日まで一緒に、たくさんの思い出作ろう……天国で、英知さんって人に話せるくらいのたくさんの思い出を」

「死に、あらがう」

 

 アスナは、なんだか不思議な気持ちになった。死にあらがうと言うのはあまりにも人間としては普遍的であり、なおかつどこか自分が少し前まで考えていたこの世界に負けたくない、最後は前のめりになって死にたいというあの絶望に似て非なる物を感じ取ったから。

 もしも、自分がちうやリーファたちと出会わなかったら、イインチョウに無理やりあのギルドに連れていかれなかったら、もし最初に出会ったのがユウキだったら、色々なもしもが頭の中に浮かんでは消える。

 でも、自分は彼女とは、彼女たちとは違う。現実の死と言う物とは全く違う場所にいて、一日一日を将来のためにと勉強のためだけに利用して、未来を見ている気分になっていただけ。

 そんな自分と、彼女たち、本当に死を身近な存在として見ている彼女たちは全然違う。

 

「自殺は……うん、そう。確かに、考えたよ。もう歌手になれないんだって、思ったから……」

 

 もう、歌手になることはできない。大人になることもできない。現実の自分がどうなるか分からないままに死んで行く。このゲームがクリアされる頃には、もう自分はここにいないかもしれない。

 なら、この世界で生きていく価値があるのか。そう考えて、一時は自殺することも考えた。でも。

 

「周りにムーンライトさんやチハヤさんがいてくれたから、自殺せずに済んだんだ……」

「……」

 

 その言葉に、ムーンライトは眉を細めた。

 なんとなく感じていた。彼女から死の気配、と言う物を。ムーンライトは、プリキュアの中でも数少ない、というかただ一人だけの、パートナーの妖精と、肉親を敵の攻撃によって殺されるという悲劇を味わったプリキュアだ。そして、それと同時に、あれから時間が経って考えてみれば、人造的に作られたとはいえ自分の≪義理の妹≫とも言っていい存在と殺し合った。極めて稀なプリキュア。

 そんな彼女だからこそ、感じていたのかもしれない。フルムーンの危うさを。だから、ずっと彼女の傍にいた。ずっと彼女を見守って、彼女の命を見失う事がないようにと気をもんできた。その結果、フルムーンは自殺する機会を逃して、いつの間にか最前線まで来てしまったのだ。

 

「でも、なんだか初めて」

「え?」

「私の病気の事聞いて、生きるのを諦めるなじゃなくて……死を希望にするなって言う人……勿論、英知くんの事を話したのはユウキちゃんや、それに……みんなが初めてだよ」

「あ」

「ばれてたのですね」

「うん、もろばれだったよ」

「あ、あはは……」

 

 特にグレースが自分の身の上話を涙ながらに話すところとか。と、ユウキは続ける。まぁ、この世界は涙なんて物はないのだが。

 とかく、その話を聞くプレイヤーが増えたところで、ユウキは言う。

 

「フルルムーンさん! この世界で、おもいでいっぱい作ろう! いっぱい作って、英知さんに笑顔で話せるように最後まで生きよう! 一緒に、たくさんの思い出を、自分がここにいたって、ここで生きたよって印を残そうよ」

「ユウキさん……」

「それが、本当にこの世界に、死にあらがうって意味だと、私は思う……」

「……」

 

 この世界にいる意味、死にあらがう意味、ここで生きたと言う意味、か。

 

「考えたこともなかった……」

 

 フルムーンは悲し気に呟いた。ただ、苦しまないで英知くんに会えるって、そう思うばかりで、そう考えるばかりで、そこにばかり希望を見出してこの世界で生きてはいなかったんだなと、彼女は思ったそうだ。

 

「フルムーン……」

「グレース、さん……」

「ここから、思い出をいっぱい作ろう。みんなで、一緒に」

「だな、イインチョウに話してみたらどうだ? あと、ヤスミもか、あの二人に言えば色々な祭り事考えてくれるだろ。なんなら、アタシだけでも歌手っぽい衣装作ってやるよ」

「そうね、この世界だけでも歌手として生きてみたらどうかしら? 私たち765プロが、全面的にプロデュースするわよ」

 

 グレースが、ちうが、そしてチハヤがそう言った。どうして、なんで。

 

「誰も、生きるのを諦めるなとか……言わないんですね」

「言って欲しいの?」

「それは……」

 

 というと、フォーゼが彼女の肩に触れて言った。

 

「ここで何をしようと、現実のフルムーンの身体をどうこうすることもできねぇ。それは分かってるし、俺たちは医者じゃねぇから勝手な事なんて言えない」

「でもフルムーンの思い出をつくることはできる」

「フルムーンさんが、最後までここにいたって記録を、私たちが作ることができる」

「私たちは無力だから。医者ですらどうすることもできないって判断したソレを、この世界で言うのは、貴方の死生観にとやかく言う資格なんてないわ」

「だったら、最後の最後まで生き切って、フルムーンがここで必死に生きたって、俺たちが証明する。俺たちが、フルムーンの生きざまをしっかり見とくからな!」

「生き、ざま……」

「あぁ! なんてったって俺たちは、フルムーン、お前のダチだ!」

 

 というと、フォーゼは、彼女の手を取って上から握手をした。その後、下からの握手。その後正面から上から、下から彼女の拳を拳で叩く。これは、彼なりの友情の証、と言う物であり。当然ながらフルムーンもソレを困惑しながら受け取ったわけだが、何故だろう。さっきまでは灰色に見えていた世界が、ちょっとだけ、色を増した気がするのは。

 

「名前……」

「え?」

「ユウキさんのお姉さんの、名前、聞いてないなって……」

「……紺野藍子だよ」

「紺野藍子……藍子……」

「もう死んでるとはいっても個人情報の流出はどうかと思うけど」

「シッ、こなたは黙ってて」

 

 と、突如としてユウキの姉の名前を聞いたフルムーンもソレを軽々しく公開するユウキもそうであるが、こなこなの意見が一番もっともと言っていいだろう。

 何故、ソレを聞いたのか。それを理解できたのはこの中でも半分くらいだけだったから。

 

「うん、覚えた……ユウキさん。私、この世界で生き切って見せる」

 

 と言ったフルムーンは立ち上がると彼女の手を取っていった。

 

「たくさんの思い出をもって、英知くんと、藍子さんのところに逝く。それで、ユウキさんやみんなの事、この世界の思い出を伝える。伝えられるように、私。最後まで生き抜く」

「フルムーン……」

 

 死は、幸福であると言ったのは誰だったか。救いであると言ったのは誰だったのか。だからこそ、死を与えるべきではないと言ったのは誰だったか。

 しかし、実際にここに死を幸福だと思った人間が二人もいる。死を、一時は希望だと思った人間が二人もいる。

 死を見届けた物がいる。何なら自分自身が一度死んだ経験を持った人間がいる。

 そして、死した人間を送り届ける者もいる。

 果たして、そんな人間たちが見守る中で、フルムーンがこれからどう生きていくのか。それはまだ分からない。

 でも、一つだけ分かっていることがある。

 そう、彼女の余命が後≪一年≫であるという事だ。

 いつ来るか分からない死を前にして、それでも笑顔で思い出をつくることができるのかはフルムーン自身にも分からない。でも、そこまでたくさんの思い出をつくろう。それが、彼女たちの共通認識となったのであった。

 

「私、やりきってみせるね」

「……うん!」

 

 それは、幸せな事であると断言できた。




 果たして、この先この現実がどう変わるのか、皆様考えながら待ってください。私も、楽しみに書いていきます。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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