SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第四十八話

 その文言の意味を、すぐに理解することができたプレイヤーはごくわずかだった。いや、正確に言えばほとんどのプレイヤーが理解することを拒んでいたと言ってもいいのかもしれない。

 何故ならば、そこに描かれた〈ソウルジェム〉の説明欄は、あまりにも残酷な最後を彼女たちに提示していたから。

 

「こ、これって一体どういう意味ですか?」

 

 ブロッサムはそう聞きながらもしかし、その胸中では一つの答えに辿り着いていた。でも、それでも聞いてしまったのはきっと、自分のその考えを否定してもらいたかったから。だが、残念なことにソレを否定する人間はいなかった。

 代表してテンザイが言う。

 

「つまり、彼女のHPは街中であってもフィールドであっても、常に一時間ごとに減っている、というわけだ」

「そんな……」

 

 その場にいた全員が、その事実を改めて受け止めて、そして絶望した。

 この世界の状態異常の一つに、毒と言う物がある。その名前の通り、毒を付与する攻撃を受けてしまったら徐々に徐々にHPが減らされて行く状態異常だ。しかし、それは≪アンチクリミナルコードエリア有効圏内≫に入れば、完全に回復し、HPもまた全快する。

 しかし、このスキルは違う。≪アンチクリミナルコードエリア有効圏内≫、通称≪圏内≫に置いてもなおHPはずっと減り続け、それどころか最後の一ドットが消失してしまえば醜いモンスターに変わってしまうなんて、〈魔法少女〉。確かにその力は強大だ。だが、その強大な力に見合ったデメリットと考えてしまえばつり合いは取れてしまうのかもしれない。

 皮肉なことに。

 

「そっか、だからエイミーさんはずっと……ポーションを……」

 

 ベーゼラは頭の中で何かが繋がった気がした。確かにエイミーはあの〈魔法少女〉のスキルを手に入れて以降頻繁にポーションを圏内圏外を問わずして飲んでいる節があった。その時は、ポーションのあの何とも言えない味が好きになったからなのだとばかり思っていたが、本当は命の補給をしていると言っても過言ではない状況だったのだ。

 

「六%、絶妙な数字だけど単純計算で十七時間でHPが全消失……か」

 

 と、サンシャインがすぐさま計算した。確かに絶妙な数字だ。一日二十四時間ある中での十七時間。どうしてこんなに絶妙な数字にしたのかと疑問に思ったサンシャインだが、しかしそんな事さして重要ではないことにすぐに気がついた。

 

「待って、パーセンテージであらわされているってことは……」

「うん、これから私がどれだけHPを増やしても、命の期限が変わることはない……」

「ゲームがクリアされるまで、十七時間の命の制限が付きまわるってことですの?」

 

 そう、これが%表示になっているという文言の醜悪なところ。もしもこれが明確な数字で表されている物であったのならば、これからゲーム攻略が進んでいくうちにHPが増えていって、恐れと言う物が低くなる。

 だが、%表示になっていると言う事はこれからもその分だけHPが減らされて行くと言う事、つまり彼女がこれからどれだけ成長していくにしても、命の危険は常に付きまとっているのだ。

 いや、それだけじゃない。

 

「回復手段は確かポーションと回復結晶だけ、だったよね」

「あッ!?」

「ま、まさか!!?」

 

 アンフィニの言葉に、マシェリ、そしてバンの顔が再び驚愕の色を増した。そう、彼は既に気がついていたのだ。このデメリットに潜むもう一つの醜悪で、かつ意地悪な仕様について。

 

「え、どういうこと?」

 

 と、それに気がついていないマリンがアンフィニに聞くと、彼は言う。

 

「まず大前提として、この世界での回復手段は三つ。街中、つまり≪アンチクリミナルコードエリア有効圏内≫に入る事。二つ目にその街中で買ったポーションをフィールドで飲むこと。三つ目がモンスターがドロップすることがある回復結晶を使う事」

「ふむふむ……」

「でも、彼女の能力は≪アンチクリミナルコードエリア有効圏内≫での回復を許していない。という事は、必然的に彼女……いや、彼女たち〈魔法少女〉の回復手段はポーションと回復結晶だけになる」

 

 と、エイミーだけでなくガレットもまた〈魔法少女〉スキル持ちというのを考慮した発言に、ガレットは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。その裏に隠された考察をまた、彼女もしていたのに、それでも気丈に振舞う姿はどこか悲しげでもある。

 

「それが何なの?」

「分からないんですかマリン。ポーションを手に入れるにはコルが、回復結晶を手に入れるにはモンスターからドロップするしかない。そして、コルを手に入れる基本的な方法は……」

「クエストか、モンスターを倒……あッ!!??」

 

 こと、ここにきてようやくマリンは気がついた。この〈魔法少女〉の最大のデメリットを。その言葉を受け継ぐかのようにガレットが呆れるように言った。

 

「その通り。私と……それからエイミーは絶対にポーションを切らしちゃならない。だから常に危険なフィールドに出てモンスターを狩って、コルを手に入れて回復アイテムをストックしておかなくちゃならない。下手をすれば、街中から離れた場所に行くことも困難になる」

 

 そう、つまりこのスキルは莫大なる力を与えるのと同時に、ずっと危険と隣り合わせのフィールドでの戦いを強制させられる。まさに呪いのスキルと言っても過言ではないのだ。彼女たちはその呪いとゲームがクリアされるまで付き合わなければならない。あるいは、自分自身が醜い化物になるまで。

 

「どうして、そんな大事なことを隠してたの、エイミー!!」

「クレール……」

 

 と、クレールが激昂した。無理もない。彼女にとってエイミーは現実世界の≪ライバル≫にそっくりだった。そんな彼女が、まさしく呪いと言って過言ではないソレを、現実世界では≪キラメキ≫に当たるソレを常に消費していると言っても過言ではない状態になっていたのだから。

 それも、ずっと前から。それを隠していたこと。どうして教えてくれなかったのか、ソレを聞いたクレールに対して、エイミーは言う。

 

「……もしも、私が怪物になった時……このデメリットの事を知ってたら二人は私を攻撃できない、から。でも、知らなかったら私が、そのモンスターに倒されたって思って、躊躇なく戦ってくれると、そう思ったから……」

「ッ!?」

 

 つまり、背負おうとしていたのか。自分一人で。全ての責任。仲間殺しの重荷を受け止めようとしていたのか。そんな、それこそ、自分のライバル、と同じ。

 いや違う。自分だ。

 自分と同じ考え。ライバルたちのキラメキを守るために自分一人が犠牲になったあの時と同じ。だから、彼女は、クレールは何も言う事ができなかった。

 言える権利は、なかった。

 

「ぬしもまた、魂を喰らう妖刀に取り込まれた存在、っちゅうわけか。いや、剣ではないがな」

「まるであの三人みたいね……戦い続けなければ自分自身がその武器に殺される。そんな三人」

 

 と、フミコとブラックローズがそれぞれにかつての戦いで知り合った者たちの顔を思い浮かべる。ブラックローズの思い浮かべているその人物たちは、正確には引退と言う物があり、完全に得物に取り込まれるわけではないのだが、しかし活動限界と言う物を迎えると怪物となってしまう。それは〈魔法少女〉のソレと全く同じだ。

 

「……」

「シズク……」

 

 一方で、シズクの様子がおかしいことに気がついたのは彼女と長年一緒にいるローウェルだった。

 きっと、彼女も現実の世界では魔法少女と言える存在だったから。この〈魔法少女〉と違って、戦い続けなければならないと言うデメリットのない魔法少女。でも、大けがもして、死にかけて、友達に心配をかける魔法少女。

 だからシズクは理解できてしまったのだろう。エイミーの背負おうとしていた、大きな重圧、そのプレッシャー、その、責任を。

 とても、重苦しい空気がその場に蔓延した。もはや誰も何も言う事ができない。彼女が戦う事による他のプレイヤーへのメリットと、彼女自身が負うことになるデメリット。果たして、それはこのゲームを攻略していく中でつりあっていく物なのだろうか。

 分からない。何も分からない。

 でも、分かることがあるとしたら。

 

「皆、お願いがあるの」

「え?」

 

 エイミーが、徐に笑顔を振りまくと、言った。

 

「皆はもし〈魔法少女〉になるチャンスがあっても、ならないでね」

 

 と。

 

「エイミー……」

 

 レイアースは、そんな彼女の身体をそっと抱き寄せるしかなかった。悲し気に笑う。そんな女の子をこれから守っていかなければならない。そんな使命感にも似た何かが、あったのかもしれない。

 もう二度と、命は失わせはしない。

 失いたくない。そう、思っていたから。

 

「馬鹿……」

 

 そして、クレールは一人物陰で唇をかみしめているのであった。誰にも見られないように、その悔しさを胸の内に隠すようにして。




 すみません、ベッキー&ガレットの正体に関して次回に回します。一緒にいた二人の仲間であり行動中の一人である少女が次回に登場するのでそこで明かします。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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