SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 今回の話は、自分の行いを否定された経験がある人間だからこそできる話がある。そういう話です。


メインシナリオ 第三章 第五十話

「なんでや、なんでこんなことになったんや。なんで、ワイが来ないな目にあわなあかんねん!」

 

 自分の頭の中のシナリオが完全に瓦解し、キバオウは混乱状態にあった。ここはトールバーナの街の中でもかなり閑散とした場所で、すぐ近くには池があるだけで、昼間の今でも薄暗いというとても殺風景な場所。そこで、キバオウはただただ独白するのだ。

 どうしてワイが来ないな目に合うんや。ワイはただ正論を言っただけや。

 βのもんどもが根こそぎコルやアイテムやウマイ狩場を奪ったのも、事実を言ったまでや。

 なのに、なんで、なんでこないにワイが非難されなあかんねん。

 あの糞β共のせいで、ワイは肩身が狭い思いをせんとあかんくなった。むしろ逆のはずやろ。コルやアイテムを根こそぎとっていったあのβの連中のほうが、肩身狭い重いせんとあかんのやろ。その方が正しいはずや。

 なのになんでや、何であないにβの連中を擁護するもんばっかりが集まったんや。ディアベルはんもディアベルはんや。βってことかくして、第一層攻略会議なんて物開いて、しかもそれを受け入れられたうえでリーダーを任されとって。

 

「ワイはまちごうてない。間違ってないはずや!!」

 

 ワイは地面を叩いた。けど、出てくるのは当然紫色のバリアみたいなもん、破壊不能オブジェクトであることを示す文字しかでてこん。もうこのゲームをし始めてからずっと見て来たもんや。

 一体ワイが何をやらかしたっちゅうねん。ワイが何を責められることをしたっちゅうねん。ワイは、ワイは。

 

「キバオウ。間違っているのはお前自身じゃない。お前の、そのβテスターに対する憎しみだ」

「な……」

 

 其の時やった、気がつかへんかった。ワイの後ろから声をかけられたんわ。

 その提案をしたのは、彼によってβテスターとして迫害されるはずだったプレイヤーのメガRだった。彼は、リョウマやノルゲイを連れ、キバオウを探した。本当なら攻略会議の詰を行わなければならないこの大事な時に、それ以上にキバオウの事が気になったのだ。なぜなら、彼には―――。

 

「キバオウ、俺は今のお前の気持ちが分かる」

「なんやと!?」

 

 怒りに身を任せて来たキバオウが迫って来るが、メガRは何も動じることもなくその場に鎮座していた。ここが圏内であるからダメージは受けないと知っていたからか、それとも、彼にそれほどの胆力があったからか、恐らくどちらもだろう。

 

「糞βにワイの何が分かるん言うんや!!」

 

 自分のこの、孤独に落とされた痛みや苦しみの何が、分かると言うのか。そう言うキバオウに対して、メガRは言った。

 

「俺だって昔迫害されたことがある」

「なっ……」

「俺の名前は伊達健太。どこかで聞いたことないか?」

「な、なんや頭の中にある様な……」

「メガR、現実世界での名前は伊達健太。そして電磁戦隊メガレンジャーのメガレッドだった漢だ」

「なッ!?」

 

 そのノルゲイの言葉を聞いてようやく彼は思い出した。そうだ、確か二十何年か前にニュースに取り上げられたことがあった。ネジレジアという強大な敵に対して戦っていた五人、いや後に一人増えたから六人の戦士の事。その顔と素性は全く分からなかったがしかし、その最後の戦いを前にして明かされたその素顔。その一人が、伊達健太だったはず。

 だからこそいえる言葉だ。彼は語る。

 

「あんときは辛かったなぁ、俺がメガレンジャーだって知られて、学校の友達が襲われたり、俺たちの家が壊されて、俺たちがいるから学校が襲われるんだって言われて……嫌われ者になっちまってさ……」

 

 伊達健太は思い出す。あの時の辛かった日々を。家を破壊され、家族が死んでしまったんじゃないかという絶望や、先生や仲の良かった友達から出ていけ、お前たちがいるから俺たちは襲われるんだって、今まで守り続けて来た市民たちから罵詈雑言を浴びて、理不尽に責め立てられて。

 

「帰る家も、学校も無くしちまった俺たちは絶望した。何のために今まで戦って来たんだって。大切な命を守って来たのに、一生懸命に戦ったのに、メガレンジャーだったからって理由で追い出されちまってな……」

 

 結果的に、最期には≪学校の人間とは≫和解した。でも、市民の多くとは結局和解することができず、結果メガレンジャーの初期メンバー五人の内三人は海外に渡ってしまった。まるで、逃げるかのように市民の目からは映ってしまったかもしれない。

 それに―――。

 

「俺たちが戦って来たネジレジアの、司令官も元地球人だった」

「な、何やて?」

「……」

 

 そう、ドクターヒネラー。その正体は自分たちをメガレンジャーにしたといってもいい久保田博士の友人である鮫島博士だった。彼は、かつて宇宙開発用スーツの研究で注目を浴びており、不完全な人間の肉体を強化し、宇宙環境にも耐える肉体へと進化させる実験を進めていた。

 だが、その実験のために自分の娘を殺してしまい、世間やマスコミからは悪魔の研究等と呼ばれて、学会を追放されてすべてを失った。そう、かつての自分たちのように。

 

「人間を憎んで、友達を憎んで、そして最後に辿り着いたのが地球の征服だった。もしかしたら、俺たちだってそうなってたかもしんねぇ!! だから、分かるんだよ。お前みたいに、誰からも理解されずに孤独になっちまった奴の事を、俺は、俺たちメガレンジャーは誰よりも。正しいことだってやってきたはずなのにソレを理解できずに罵詈雑言浴びて来た俺たちは、分かるんだよ!!」

 

 メガRはキバオウの肩を揺さぶって叫んだ。魂の、本当に心の底からの叫びだった。そこには、もしかしたらキバオウにドクターヒネラーと同じ道を歩んでもらいたくない。追放された憎しみで、理解されなかった苦しみで、彼のように悪の道に入ってもらいたくない。だからこそ彼は訴えるのだ。

 何をだ。キバオウはそれでも言う。

 

「せやかて! β共がコルや経験値を根こそぎもってったんは事実やないか!!」

「だが、メガRのように初心者を助けに回っていたβもいたことも確かだ」

「ッ!」

 

 そうだ。昨日言われた言葉だ。βを助けるためにガイドブックを必死で作ったプレイヤーたちがいたと言う事実を、でも、それでも、それでも、それでも。

 それでも、なんだ。キバオウは混乱していたのだろう。きっと、憎しみで受け入れることができないのだろう。彼の本心が、βへの憎しみで染まっている限り答えは決して出ることはない。いや、違う。リョウマは感じていた。

 

「キバオウ。俺はゲームの事はよく分からない。メガRと一緒にいた俺に、お前に何か言う権利はないと思っている。けど……キバオウが持っているその思いや憎しみは、本物だと俺は思う」

「なっ……」

「リョウマ……」

「けど、大事なのはその憎しみじゃない。このゲームを終わらせるためにどうするかだ。このゲームを少しでも早くクリアして、現実の世界に戻るにはどうするのか、それを考えれば、おのずと答えは出るんじゃないか?」

「答え……」

「……冒険と言うのは、危険がつきものだ。時には人間が足を踏み入れたこともない場所に足を踏み入れて、命と隣り合わせで進まなければならない。特に、素人が冒険に挑むのは、死にに行くようなものだ。だからこそ、熟練の冒険者の手助けが必要になって来る。キバオウ、今だってそうじゃないのか?」

 

 ノルゲイがフッ、と笑う。

 そう、冒険とはいつも死と一緒にいるような物。たとえどれだけ賢く、経験のある人間であったとしても、山を歩くときは誰かが開拓した道を歩くことになる。それは、その道が一番安全でかつ、そしてその道を開拓してくれたかつての冒険者たちに敬意を表しての事だ。

 勿論未知の冒険に旅立つのに関してはその限りではない。舗装も何もされていない世界に入り込むと言う厳しさは、好奇心と天秤にかけてはならない程に危険な物で、そしてなにより自分を殺める可能性がある。

 だが、だからこそかつての冒険者たちの立ち振る舞いや、また別の冒険先での探検の経験が必要になる。文献や、時には実際に話を聞きに行ったりして、そうして冒険者は強く、そして逞しく育っていくのだから。

 ノルゲイにとってキバオウは、未知なる冒険に対して何の装備もなく、何の準備も無しに赴くような人間に見えてしまった。βの手を借りない。借りたくない。そんなプライドを持ってしまったが故に、本来の自分たちの目的と言う物を失ってしまった。そんな、哀れで、しかし新人の冒険者であればだれもが陥るような存在。

 だからこそ、彼は、彼らは見捨てることはしなかったのだ。キバオウという、一人の未熟な冒険者を。

 

「戦い方に不安があるのなら俺たちが教える。βたちとの連携の仕方もだ。一歩ずつでいい。一歩ずつでいいからβテスターに歩みを寄せればいいんだキバオウ」

「あぁ、β、β以前に、俺たちは一緒にボス攻略を目指している大事な仲間だからな!!」

「……ハッ! アホらし」

 

 メガRが差し出した手をはたいたキバオウは立ち上がり、そのままその場から去ろうとしていた。だが、その直前だった。

 

「ワイは、まだβ共を信用しきったわけやないからな」

 

 という捨て台詞だけを残して言ったのだった。

 

「信用≪しきったわけじゃない≫……か」

「つまり、少しは信頼してくれてるんだな」

「あぁ、少しずつでいい。例えどれだけ鈍足でも、少しずつ彼だって、βの事を受け入れてくれるはずだ……」

 

 俺たちが、その道行きを間違えさせたりなんてしなければ、な。ノルゲイがそう締めくくり、キバオウとの話は終わったのであった。

 そろそろ、今日最後の第一層ボス攻略会議の時間が来る。果たして、どんな作戦を用いることになったのか、三人、そして前方を歩くキバオウは昼間にも赴いたあのコロッセオへと向かうのであった。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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