SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第五十二話

「ふぅ……」

 

 このギルドにお世話になり始めてから二日目の夜。私は、お風呂から上がると一息入れてから、メニューウインドウを開いて部屋着のオブジェクトを出現、装着した。

 会議は、滞りなく終了した。とりあえず私が所属している一番隊の役目は、主にボスと戦う先遣隊のような物ということになった。

 理由は単純に私ことアスナを含めて、リーファやユウキ、グレース、シリカ、そしてパーティーのリーダーを買って出たちうのレベルがかなり高かったため。むろんそれだけだったら他にも平均レベルで高いパーティーが多くある。でも、それでも自分たちが一番先頭を任されているのは、やはりLAボーナスの件もあるのだろう。

 自分は、別にLAボーナスなる物に興味も何もない。でも、本来だったらもっと上層部で手に入るはずの武器や防具が、この早い段階で手に入れることができると言うのは、ゲーマーにとってはよほど欲する物なのだろう。ゲーマーじゃないからよく分からないし、LAボーナスを受け取ることになっているのはリーファなので自分には関係ないが。

 とにかく、明日。全てが始まる。今まで、この第一層で攻略を続けてきたのが全て前哨戦であるとするのならば、明日のボス攻略戦は決戦と言ってもいいのかもしれない。でも、ふと思った。もしも、この先も自分が生き残ることができるのなら、明日のボス攻略戦も決戦とは言えない、前哨戦の一つなのではないかと。

 アスナは思わず自嘲してしまった。気づかされてしまったからだ。自分が、この二日間で体験したことのすべてが、それまでの一か月、いやひいては現実世界で過ごしてきた十数年間よりも密度が高く、そしてとても賑やかしい物だったと気がついたから。

 

「アスナさん、お風呂あがったんですか?」

「えぇ、良い湯加減だったわね」

「はい!」

 

 アスナは、風呂場から出た直後、一緒の部屋で過ごしているシリカから声をかけられた。シリカは、アスナよりも前に風呂を使ったプレイヤーであったため、彼女の湯加減の感想に一番に反応することができ、笑顔で大きく返答をしてくれる当たり、しっかりものとはいえやっぱり彼女は小学生なのだなというのをアスナに感じさせてくれる。

 今この部屋の中には一番隊と呼称された六名が詰め込まれていた。元々このギルドメンバーの一人であったちうや自分と同じようにお世話になっていたリーファはともかくとして、他の三人もどうして同じ部屋にいるのか。

 当然、明日のボス攻略戦に置ける戦法や、役割を決めるため。とアスナは思っているが、ちうを除いた他の四名は親睦を深めるためだと考えていたらしい。

 現に、お風呂に入るまでに交わした会話は大体が女子会のようなノリのトークだけで、攻略に関する話はほとんどなかった。

 でも、それでいいのかもしれない。なぜなら、彼女たちは共に生き死にをかけた戦場を駆ける仲間であるのだから。互いの事を良く知っておかなければ、どのような戦法、戦術も役には立たないのだから。

 因みに同じようなことを考えているのは彼女たちだけではなく、他のパーティーもまたそれぞれの宿で一緒に過ごしているらしい。その中には当然このギルドの一室にいるパーティーも複数個あるわけだが。

 

「で、もし取り巻きのモンスターが背後に回ったら……」

「すぐさま援護、そうじゃなくても声を掛けて、すぐスイッチ! 相手がポーションを使う時間を作る! だよね」

「あぁ」

 

 と、自分が風呂に浸かっている間に作戦会議は進んでいるようだ。ガールズトークに花を咲かせているだけじゃないらしい。パーティーのリーダーを任されているちうと彼女から作戦を聞かされているユウキの会話を聞いていると、ユウキがいかに自分よりも仲間との戦いになれているのかというのがよく分かると言う物だ。

 

「あと十二時間、か……なんだか少しずつ実感がわいてきたかも」

 

 といったのはグレースだ。時計を見ると、確かにボス攻略戦の開始時刻まで十二時間を切っていることが分かる。そこまで来てようやく実感がわいてきたと言うあたり、彼女が鈍感なのか、それとも何も考えていなかったのか、推し量ることはできない。

 なぜなら、自分もまたそうだったから。

 

「そうね、半日後にはこのゲームの世界で初めてのボス戦が始まる……私はまだ、実感がわかないわ」

「アスナさん……」

 

 だって、自分はともすればそのボス戦の前に死んでいたかもしれなかったから。ちうや、リーファやナデシコ、そしてレイアースがいなかったら、昨日、いや日付が変わったから一昨日、その日に迷宮区で死んでいたはずだから。

 そんな自分が生き残って、かつボス攻略戦の最前線に立たされることになっている。たった二日で、自分を取り巻く環境が大きく変わったのを感じるのすら、心の整理が追いついていないのに、ボス攻略戦の実感何て湧くわけがない。

 アスナは、ふと呟いた。

 

「昨日と一昨日は……私にとって人生最高の二日間だったわ。ありがとう、ちうさん。それにリーファちゃん」

「なんだよいきなり」

「だって……もしかしたら……」

 

 もしかしたら、彼女たちにその言葉を伝える機会は二度と訪れないかもしれないから。彼女たちが、もしくは、自分が死ぬことによってその機会が永遠に失われるかもしれないから。後者ならいい。でも、もし前者だった時、自分は絶対に後悔する。彼女たちに、自分を変えてくれたことを、自分が変わった喜びを伝えることができなかったことを後悔しながら、これからもゲームをプレイすることになる。そんなの、嫌だったから。

 そう、伝えようとした時だった。

 

「そこまでだ、アスナ」

「ちうさん」

「ちうでいいよ……さんづけはちょっとこしょばゆいからな」

 

 と言いながら綺麗な桃色の髪をかき分けたちうや言う。

 

「これからもこのパーティーで攻略ができるかどうかは分からねぇけど、あたしたちはこれからもこの世界を生きていく。一人もかけることなく、ゲームをクリアする……それでいいだろ?」

「はい!」

「うん!」

「そうだね! みんな欠けることなく!」

「この世界で生きて、元の世界に帰ろ、アスナさん!」

 

 これは、能天気と言うのだろうか。でも、その能天気さがとても頼もしく思えた。それと同時に、アスナは、心の底にあった思いの丈を述べる機会を得たとも思えた

 

「それでも、これだけは言わせて。みんなは……私に希望を与えてくれた」

「え?」

「ちうさ……いえ、ちうとリーファは私に明日をくれた」

「……」

「ユウキとグレースは、命の重さを教えてくれた……」

「アスナ……」

「そして……シリカちゃんは、私よりも幼いのに頑張って戦っている人もいるってことを教えてくれた」

「それ、苦し紛れに出た言葉じゃないですよね?」

「ふふ、どう思う?」

 

 シリカからの言葉に自然な笑みで答えたアスナ。そう、この自然な笑みだって同じだ。もしもこの世界に来なかったら、イインチョウに出会えていなかったら、彼女たちに出会えてなかったら一生取り戻すことができなかった笑顔。彼女たちがいてくれたから思い出すことができた物。

 この世界に来れて良かったと、初めて思う事ができた、大切な宝物。自分は、これからもその宝物を沢山増やしたい。この世界で、ここにいる仲間たち、これから出会う仲間たち共に、ずっと、一緒に。

 そして、現実の世界に帰った時には、その仲間たちと一緒にいろんなところに行きたい。旅行をしたい。一緒に、もっともっとおしゃべりがしたい。そんな気持ちがわいてきた。

 だから。

 

「だから、私は皆と一緒に生きて、一緒に、ゲームをクリアしたい……」

「私もだよ、アスナさん」

「うん、ちうさんも言ってたけど。一人もかけることなく、ゲームをクリアしよう!」

「それで、ナデシコさんたちも誘ってみんなでキャンプしよっか」

「キャンプか、楽しそうだなぁ」

「未来の事を見すぎるのも考え物だけどな」

 

 こうして、彼女たちのボス戦前最後の夜は更けていく。

 アスナの皆と一緒に生きて、一緒にゲームをクリアしたい。その言葉に嘘偽りなんてなかった。

 しかし、この時はまだ彼女たちは知らなかった。

 その願いが、果たしてどれほど重く、そして途方もなく遠い存在であると言う事を。

 まだ、誰も知らない。

 この時、現実の世界ではとんでもない事件が起こっていると言う事を。

 露とも知らないのであった。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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