SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第五十三話

 果たして、その日正確な時間に起きることができたのは何人であろうか、そう思いながら寝床から出たイインチョウは、一つあくびをしてから装備を整え始める。

 その手探りはかなり洗練された物に見える。しかし、やや震えているその手からは彼女の緊張の色も見て取れる。無理もない。今日はこのSAOに閉じ込められた全員が待ち望んだ第一層ボス攻略戦なのだ。

 高揚感で手が震えるのも、寝不足になるのも当然の事。むろん、それが肌の天敵であることは重々承知だが、しかし現実世界では命のやり取りをしてこなかった人間にとって、このボス攻略戦がいかに危険で、そして緊張感をもたらす物であるのかはもはや饒舌に語る必要もないだろう。

 装備を整えたイインチョウは、一度深呼吸をしてから、言う。

 

「リップオッケー、髪型オッケー、服装オッケー! 今日もパーフェクトですわ!」

 

 それは戦闘には何も関係ないのではないか、と誰もが思う項目ばかり。しかし、これはある意味での彼女のルーティーンのような物。現実世界にいた時からずっと口走っていた口癖。めっちゃイケてるモテ子であるとするために頑張る自分を鼓舞して、己の自己意識を高めるための儀式のような物。

 誰かに見せるためのルーティーンじゃない。自分で自分を勇気づけるためのルーティーン。それを終えた直後、彼女は扉を開けていつものように言う。

 

「おはようございます!」

 

 と。

 どうやら、既に他の仲間たちは集まっていたらしく、朝ごはんを食べ始めている。これを見る限り一番の寝坊助は自分だったらしい。全然パーフェクトじゃありませんわ。と思いながらイインチョウもいつもの席に着いた直後だった。

 

「昨日は眠れたのか?」

「はい、勿論ですわ!」

「イインチョウ、辛い事とか悩み事あったら言ってくださいね」

「ありがとうございます、リーファさん。でも、私に悩み何てありません」

「とか言って、一番遅れて起きて来たくせに」

「ギクッ」

 

 とマリンから手痛い一撃を貰ったイインチョウ。実際彼女には悩み、というよりもある重石が乗っかっていた。今回のボス攻略戦に一枚かんでいる。戦略に口を出したと言う事、だ。

 これは、今回のボス攻略戦に挑もうとしているほぼすべての元βテスターにいえる事であるが、彼、彼女たちは互いに情報を出し合って、今回のボス戦で死人を出さないようねんみつに作戦を立てて、情報を共有してきた。

 しかし、それは長い目で見ればボス攻略という大事な作戦の中に自分の言葉が、自分の考えが、自分の考えた攻略方法が紛れ込んでいると言う事。そして、その情報をもとに、ボス攻略を行って果たしてうまくいくであろうか。身もふたもない考えがえが彼女の中にあった。

 彼女とて記憶力がパーフェクトというわけじゃない。βの時の記憶は確かにあったけれど、その中にはいくつか抜け落ちている部分があったり、もしかしたら勘違いを起こしている場面があるかもしれないのだ。

 それをあのメンバーの中で言ってしまって、ボス攻略の戦略の一部になってしまって、本当に良かったのか。本当に自分は正しいことを言ったのか。それが、彼女の中に大きな悩みを産んでしまう。

 

「でも、私はイインチョウさんの事信じてるから!」

「うん、イインチョウさんの凄さ、この二日間でよく分かってる」

「アスナが笑顔を取り戻したように、今度は私たちがイインチョウの笑顔を守るから!」

 

 と、口々にリーファ、シリカ、ユウキの三人が言った。

 

「みなさん……ありがとうございます」

 

 その言葉がどれだけ頼もしい事か、どれだけ勇気づけられることか、イインチョウは身に染みて分かっていた。身に染みて、改めて感謝した。彼女たち三人に。そして、自分たちの仲間たちに。

 朝ごはんも終わり、ボス攻略メンバーとの合流時間が迫ってきた頃、イインチョウはひときわ大きな声を出すと言った。

 

「では、まいりましょう!」

「はい!!!」

 

 ついに、出陣の時だ。イインチョウは誓う。絶対に、一人もかけることなくこのギルドに戻ってくると言う事を。一人たりとも死なすことなく、この場所に、この変えるべき場所に帰って来ることを。

 

「行ってらっしゃい、井上さん、江角さん。気を付けて」

「うん……」

「あぁ、帰って来たら見上げ話たくさん話すから!」

 

 今回諸事情によって留守番となったあまみんに対して、なるみんとポリアンナの二人が返答した。

 それと同時に、また一組の男女もその場にいる三人に対して言う。

 

「松川さん。てぃあらん。エリカちゃん。気を付けて……」

「大丈夫よまゆりん! まゆりんを残して死ねないから!!」

「博嗣さんも、まゆりお姉さまの事、よろしくお願いします」

「あぁ、分かった」

 

 今回こちらもお留守番、というか当然のようにボス戦への介入を拒絶された博嗣とまゆりんのペアである。本当だったら二人もまたボス戦に挑みたかったらしい、しかし松川がそれをかたくなに拒んだ。

 当然だ、まゆりんはレベルが低いままにここまで来てしまったし、ヒログツにいたっては、もしも彼が死んでしまったらまゆりんもまた死のうと思いかねない。そんな懸念があったから。

 ということで、あまみん、ひろつぐ、まゆりんの三人はお留守番。彼女たちが帰ってくる場所を守っていると言う体裁でいさせることにしたのだ。

 

「では、行ってきます!」

 

 こうして、ボス攻略戦に挑もうとする勇者たちはその足をギルドの外に出したのであった。もう一度戻って来れるかどうか分からないギルドを、何人かのプレイヤーは恋しそうに後ろを振り返ってみていたと言う。その中には、アスナもいた。

 

「絶対帰って来るから……」

 

 誰に行ったでもなしに、アスナはそう呟くと前を向いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、始まりの街で異変が起き始めていた。ソレに最初に気がついたのは、ミストラル、そしてめぐねぇと呼称された二名のプレイヤーだった。

 ミストラルに関しては、最初はカイトと一緒にプレイしていたのではないかと思うかもしれない。しかし、デスゲームになって早々に、彼から言われたのだ。

 

『ミストラルはこの始まりの街に残ってもらいたいんだ』

『え……』

『もしもミストラルが死んだら、娘さんや旦那さんか、悲しむから……』

『カイト君……』

『ミストラル。ワシは残された者の気持ちは痛いほど分かる。その痛みを、ぬしの娘や旦那に味合わせとうない』

『……』

 

 と、フミコからも助言を受け、結果ミストラルは攻略組から外れることとなった。だが、それでも彼女は自分にできることはやろうと努力した。その結果が、今隣にいるめぐねぇという人物と一緒にこの始まりの街にいる子供たちの教育、そして保護、なのである。

 聞くところによるとめぐねぇは、現実では小学校の先生をしていたそうで、今回何気なしにプレイした結果デスゲームに巻き込まれたという可哀そうな女性。

 そんな女性とともに子供たちの保護と教育をしようという結論に至るまでそう遅くはなかった。

 幸いにもミストラルはカイトのおかげで戦う術を持っていたので近くにいるモンスター程度なら楽に倒すことができ、そのレベルを地味に上げていた。そのおかげでマリンたちのようないわゆる後衛サポート系のスキルを上げることができて、それで収入を得ていた。

 それで得たコルで子供たちに不自由のない暮らしをさせることもできるし、勉学もできるようになる。自分には自分なりの戦い方があるのだと、そうミストラルは思っていたそうだ。

 そしてこの日、ミストラルはめぐねぇ、それからハル、という女の子と一緒に何気なく黒鉄球に足を向けていた。

 知っていたから。今日がボス攻略戦の日であるのだと。知っていたから、そのボス攻略戦にカイトたち、自分の知り合いが参加しているのだと。だから、彼女は願っていたのだ。どうか、カイトたちの文字に、二つの並行の線、つまり、死を意味する線がひかれないように、と。

 しかし、生命の碑に辿り着いた彼女たちが見た物はそんな不安を大きく消し飛ばすほどに衝撃的な物だった。

 そう、そこには新たな名前が続々と、書き記されて行っていたのであった。次々と、まるで、何かに導かれたかのように次から次へと。黙々と追加される名前達。

 一体、何が起こっているのだろうか。ミストラルは、その中でも最初に印字された名前をじっと見ていた。




プレイヤーNo.210 ???(めぐねぇ【Megunee】)≪原作:???≫
プレイヤーNo.211 ???(ハル【Haru】)≪原作:???≫

 ちなみにハルについてはあるアニメのキャラです。深い夜に廻る方の女の子でないです(出したい思いはあるけども……)。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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