SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
二人の王。何故この言葉が出てきたときにその存在をぱっと思い出すことができなかったのか、フミコは後悔の念に駆られていた。
そう、あの時と同じではないか。あの、自分と、零児、そして多くの世界の人間たちとともに解決したあの事件の時に経験したあの時と。
かつて、閉鎖都市渋谷に異世界の大地が融合すると言う大事件が発生した。その事件の最中、自分や多くのフミコや多くの仲間たちはあらゆる世界に行った。
自分たちの現実の身体が今もなおある物質界。
様々な亜人が生活しているファンタジーの世界である幻想界。
戦国時代の日本と似た、過去の世界とも幻視できる世界、魍魎界。
神々の住む世界、神界。
そして、魔物や妖怪が跋扈する世界、魔界。
その魔界のある場所に、魔界村、と呼ばれる場所があった。村とは書いたが、実際には海や断崖絶壁があったりなどもはやそれだけで一つの世界と言ってもいい様な村。そこの王としてある男が君臨していた。
その名も大魔王アスタロト。かつて魔界村を支配していた魔王であり、強大な魔力を持った怪物だった。しかし、それ以前の戦いによって≪白銀の騎士≫と呼称される騎士によって倒され、消滅したはずの怪物は、その事件に置いて復活した。その、格を下げられて。
「超魔王ネビロス……まんまあの時の再現じゃ……」
あの時も、アスタロトは確か二体出て来た。一度魔界村を落とされた責任を取るためとかなんとか言って、魂を二つに引き裂かれ、偽りの魔王として自分たちの前に出してきたのだ。
そして、目の前の新たに出て来た≪イルファング・ザ・コボルドロード≫も同じように、それまで戦っていたのとは別格の力、そしてHPバーが増えていることもあって強敵であることは間違いなかった。
おまけに、だ。
「う、動けない……」
スタン、つまり麻痺のようなものだが、そのモンスターが出現した瞬間、そこにいたプレイヤーたちは皆が一様にしびれて、動けない状態となってしまっていた。
「スタンの効果時間は一分! その間に攻撃されたら……」
と、カイトが言った瞬間だった。
「え?」
「うそ……」
壁の上からさらに、彼らを絶望に叩き落す存在が現れたのである。≪ルイン・コボルド・センチネル≫だ。それも、一体や二体じゃない、十、いや二十、否先に現れたソレを含めると三十か。それほどまでに多くのコボルドがその場に現れたのだ。
「まるで、モンスターハウスに囚われてしまったかのようじゃ……」
「敵の罠に……まんまと、はまったというわけか……」
キョンは苦々しく言った。
さて、どうする。と言っても自分たちにできることは何もない。スタン状態になっている自分たちは、その名の通り行動することを一切禁じられている。麻痺の時のような回復手段は一切ない。となれば、自分たちにできることは二つのみ。
一つは、このまま何もせずに敵に蹂躙されてゲームオーバーとなる事。
そして、もう一つは―――。
「ハァァァァ!!」
「エイミー!?」
幸か不幸か、後方に下がっていたエイミーはすぐに〈救済の剣〉を取り出すと群がって来たセンチネルに向っていく。いや、それだけじゃない。
「皆! 行くよ!!」
「うん!!」
後方に控えていた第二レイドが雄たけびを持って向かってきたのである。そして、さらに。
「皆、左右に避けて!!」
「ッ!」
ここで最終兵器投入、ガレットの登場である。
彼女やエイミーが持っているスキル、できるのならばこんな大勢の前で魅せれるような物じゃなかった。ゲーマーはレアな装備品や武器、そしてスキルと言う物にとても敏感だから。だが、そんなこと言っている場合じゃない。
ガレットは素早く〈魔法少女〉のスキルを発生させると、掌を新しく現れた≪イルファング・ザ・コボルドロード≫に向ける。そして―――。
「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」
昨日、トラップにハマってしまったマリンたちを助けるために放った魔法を解き放ったのである。その攻撃は、青い濁流となって一直線に三体目の≪イルファング・ザ・コボルドロード≫に向かうと、その頭を直撃、更にその周辺にいたセンチネルも巻き添えにしていった。
「す、すげぇ!?」
「なんだ今の!?」
と、多くの一般プレイヤーがソレをなしたガレットの方を向いた。しかし、当然ながらガレットはポーションを飲んでいるために何も答えることができなかった。それに、だ。
「話は後! それより!!」
早く、第一レイドを救わなければ。ブラックを含めた多くのプレイヤーが一直線にその場に向う。仲間たちを救うために、間に合え、間に合えと願いながら。
ガレットもまた、その戦線に加わるためにポーションをそれこそ一心不乱に飲み干しながら焦っていた。本当なら今すぐにでも助けに行きたい。でも、自分のHPが雀の涙というのは死活問題。文字通りの意味で、だ。だから。
「私もはやく……え?」
と、その時だった。彼女の横を、一陣の風が過ぎ去ったのは。
やはり、戦場が大きいと言うのは考え物だ。どれだけ俊敏性が高くても、扉から一直線に彼女たちがいる場所に向っても恐らく三十秒はかかるはず。
その間、仲間たちはなすすべもなく攻撃され続けるのだ。ガレットが倒せた取り巻きのセンチネルは新しく出て来たソレがほとんど、事前に出てきていた九体のセンチネルと、二体のコボルド王はそのままだったのだ。
「ぐるるるるるる!」
「ッ!!」
「クッ! この!!」
エイミーも、頑張ってはいるもののしかしやはりたった一人では無茶が過ぎる。どれだけの敵を捌いても仲間たちへの攻撃が止まることはない。
〈魔法少女〉のスキルを使うか。いや、こんな回復何て容易にできない場所で使っても使っても自分自身の命を削るだけ。いや、下手をすれば説明欄に書いてある怪物とやらになる可能性だって十分にある。
けどこのままじゃ。どうする、どうすればいい。そうこう考えている間にも仲間たちのHPが減っていく。
「い、いや……」
アスナは見た。自分に向けて棍棒を振り上げるセンチネルを、そしてその身で受ける。なすすべもなく、痛みもほとんどない攻撃を。
一撃一撃が、自分のHPを減らしていく。
一ドットずつ一ドットずつ、自分の命の灯が消えていく。
いや、いや、いや。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。
つい三日前まではこの世界に抗って抗って抗って、そして死ぬ。そう決めていたのに、そう決めていたはずだったのに、彼女は今は死にたくないと願っている。
当然だ、人間なのだから。
当然だ、彼女は今この世界で生きている一つの命なのだから。
人間は、例え死にたいと思っても生きたがりの動物だ。
例え死ぬと分かっている命であってもソレを使って何かをなしたいと心の底では願う存在だ。
そして、それは仲間たちもまた同じ。
「クッ!」
「ガッ!!」
「あぁ……」
アスナは見た。左上に見えるパーティーメンバーのHPがどんどんと減っていくのを。
だめだ。ダメだダメだ。自分が死ぬのもダメだ。でも、友が、仲間が死ぬのなんてもっと嫌だ。
アスナは思い返す。この三日間を。苛立つこと、腹が立つこと、たくさんあった。
どうしてアクセサリー作りなんてしているのかと、どうして攻略組から外されてそんな涼しく、笑っていられるのかと激怒したこともあった。
でも、笑顔を自分に思い出さてくれた。そんな仲間たちが、自分が何もできないままに、死に向かっていく。
嫌だ、厭だ、いやだ。
「クッ、う、動いて、動いて私の手!!」
アスナは必死で動こうとした。しかし、少しずつではあるが手を動かすことができる物の、剣を握ることができない。
仲間を、守ることができない。
せっかく、この世界でできた、本当に心の底から信じあえる友達を、助けることができない。
アスナは無力感に苛まれていた。
「あ、スナ……さん……」
と、その時だ。声が、聞こえた。リーファ、である。
「リーファ、ちゃん……」
アスナはリーファの方を見た。すると、彼女は意外な顔をしていた。
笑っていたのである。
この状況に、気でも触れてしまったのかと不安に思ったアスナ、センチネルの打撃を受け、死にゆく運命にあることを知って心を病んでしまったのかと、心配してしまったアスナ。
でも、違っていた。リーファは言う。
「アスナさん。私も……アスナさんと一緒に、ゲームクリアしたかった……」
「リーファ、ちゃん……」
見る見るうちに減っていくHPの中、リーファは思い出していたのだ。昨晩の、自分の言葉を、皆と一緒に生きて、一緒にゲームをクリアしたいという、言葉を。思い出して、笑っていてくれたのだ。
きっと、自分を勇気づけるために。それか、≪死≫に恐れを抱いてしまわないように。
と、その時だった。
「グルォォォォォォ!!!!」
自分たちが敵対していた≪イルファング・ザ・コボルドロード≫が、その巨大な曲刀を振り上げた。自分と、そして近くにいるリーファにとどめを刺すためだろう。
「……」
アスナは何もできない無力感と同時に、どこか諦めのようなものを感じていた。だって、どう見繕っても絶望的な状況だから。どれだけ、自分が動こうとも、どれだけ、自分がリーファのことを救いたいと願っても、システムという上位存在に介入する事なんて絶対にできないのだから。
そう、もう、自分たちにはできることは何もなかった。
あるとすれば。
「……」
アスナは、その瞬間が来るをの目を瞑って待っていた。きっと次に目を開いたその時に―――。
天国で、リーファと会えますようにと。
そう、願って。
笑顔で。
目を、閉じたのだった。
プレイヤーNo.???
「スグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
「え……」
「ッ!?」
その、金属音が鳴り響く。瞬間まで。
桐ヶ谷和人(キリト【Kirito】)≪原作:ソードアート・オンライン≫ログイン
一旦ここでメインシナリオは休止、次回からは現実世界で何が起こっていたのか、その外伝を投稿していきます。
ですが、まだ投稿できる段階に至ってないため、もう少し時間をください(理由:いつものように作者の謎のこだわりが発動したため)。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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