SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
メインシナリオ第三章 外伝 プロローグ
俺の目の前には今、巨大な一つの窓が置かれている。
その窓の向こうに、大切な人がいる。自分の中で一番大切で、一番守りたくて、一番傍にいたかった。そんな人間が、たった一枚の薄っぺらいガラスの向こう側で眠りの中に入っている。
腹立たしかった。本当だったら、あの場所にいるのは俺のはずだったのに、どうしてこうなってしまったんだ。どうして、俺の方が、ゲーマーの俺の方がこっちの世界にいて、ゲーマーじゃない妹の方が、向こうの世界に行っちまったんだ。
あの日から、全ての歯車が狂ってしまった。そう、公園にいる時に男の人に話しかけられて、その後すぐ体調が悪くなって。
季節外れの熱中症だと思った。病院に通報して、そしたら数年前に流行したゲーム病に罹患していると言われて、すぐに手術が始まって、ウイルスが自分の身体から消えたのを確認するためにと、自分の家のある埼玉から少し遠い東京の病院に一日だけ入院して。
そして、本当だったらゲームを開始しているはずの時間にも、俺はその病院の個室で今か今かとその時を待ち続けていた。
あの世界に恋焦がれていたから。あの、剣一本でどこまでもどこまでも行くことができる。そんな、自由で、そしてなんにでもなれる世界にあこがれていたから。だから、またあの土を踏みたいと、そう願った。なのに。
俺にもたらされたのは、二つの報告だった。
一つ目が、俺の恋焦がれたゲームが、醜い悪魔となってしまい、多くの人間を飲み込んでしまったと言う事。
そして、もう一つが、妹の直葉がその世界に閉じ込められてしまったと言う事。
最初に聞いたときは驚きを通り越して、どこか魂が抜かれた感じがした。妹は、基本的にゲームと言う物には無頓着、というよりも普通の人間のソレよりも無関心というほどに愛着のない人間だった、と思う。
ゲーマーである自分と話が合う事もなく、祖父から教え込まれた剣道に打ち込んでいたはずのそんな少女がどうしてあのゲームをプレイしているのか。今となっては分かるはずもない。
身体はそこにあるのに、心は遠い場所にある。それが、こんなにもつらい事だったなんて、初めて知った。俺が、ゲームの世界に身を投じている時、ずっと直葉はこんな気持ちだったのだろうか。ずっと、ずっとこんな孤独感を感じて。
だからゲームの世界に行こうと思ったのか。だからそんな自分を虜にした世界を感じてみたいと、そう思ったのか。分からない。分からないのが、こんなに辛かったなんて、知らなかった。
桐ケ谷和人は、ただただガラスの向こうで一人眠る直葉を見ているだけしかできなかった。そんな自分を疎ましく思ってしまった。
罰、なのだろうか。これは。自分が、あの家に来てしまった。あの家で普通の家族の一員として一緒に暮らしていたその罰が下ってしまったのだろうか。
そう、俺はあの家の人間でななかった。
俺と、直葉は実の姉妹じゃない。いわば、従妹同士の間柄に当たる。
俺の本当の両親は俺が物心つく前に事故で死亡し、本当の母親の妹夫婦である直葉の両親の家に、養子として俺はもらわれたのだ。住基ネットの情報を見てソレを知ったのは十歳の時の事。その時からだった。俺と直葉、それから今の家族ともやや距離を置くようになってしまったのは。
それからだったら、ネットゲームと言う、現実世界から切り離されて、違う自分になれる世界に没頭することになったのは。
それからだった。俺が、直葉の事を≪スグ≫とあだ名で呼ばなくなったのは。
俺は直葉から色々な物を奪って来た。直葉は祖父から剣道を教え込まされてきたと先にも言ったが、これは正確に言うと違う。
本当は、祖父からしてみたら俺に剣道を教えようとしていたそうなのだ。でも、俺はソレを拒否してしまった。理由は、もう思い出すこともできないけど、その代わりにお鉢が回ってきたのは、直葉だった。
結果、直葉は天性の素質もあったのかめきめきと剣道の腕が上達していって、今では部活のエースと言われるほどになった。でも、その結果直葉は何を失ったのだろう。
剣道に打ち込んでいた時間。もしも俺が剣道をそのまま続けていたら、彼女は何を手に入れることができていたのだろう。俺のほんの少しのだらけが、ほんの少しの嫌がりが、彼女の人生を変えてしまった。
本当だったら女の子らしい趣味を持てていたかもしれない。俺が剣道を習っていたらもっと別の道があったのかもしれない。ネットゲームなんてものにハマっている間にも義妹はただひたすらに現実の世界で剣を振って、汗を流して、女の子らしいことも忘れて。
なのに、そんな彼女にもたらされたものがこんな仕打ちなんて、あんまりだろ、神様。
どうして俺じゃなかったんだ。どうして俺があそこにいない。この一か月近く、俺はずっと、ずっと窓の向こうの直葉に向けて心の中で叫び声をあげて来た。
迎えに行きたい。今すぐに、自分の持っていたナーヴギアとSAOで、彼女のところに行きたい。彼女を守ってあげたい。でも、その二つは、自分が入院していた病院のドクターに取り上げられてしまって、今手元にない。
そう、この世界に残っている大多数の人間と同じだ。自分は、無力だ。
「……す……直葉……」
俺は、あの頃の呼び名を使おうとした。でも、ソレが喉の中から出ることはなく、まるで大きなおにぎりが喉の中で詰まってしまっているかのようにせき止められて外に出ることはなかった。
そんな資格、自分にはないと、知っていたから。
俺は、いつも通り妹の名前を呼ぶと、誰もいない廊下を歩く。惨めな気持ちで、また明日も来ると、彼女に伝えて。
あの日、SAO正式サービス開始から三週間が経っていた。
世界は、最初の喧騒も忘れて、いつもの、平穏ともいえる日常を取り戻しつつあった。まるで、SAO事件なんて物、最初から存在していなかったかのように、
でも―――。
「あれ? テレビがおかしくなったぞ?」
「え?」
その日、人々は思い出した。自分たちが、何を失ったのかを。
待合室のテレビ。そこではいつものようにニュースキャスターが地方のニュースや特産物を取り上げている。いつも通りの風景が流れているはずだった。しかし、その声を聴いて振り返った俺の前に現れた物。
それは、ノイズだった。そう、まるで三週間前、自分の心を蝕んだあれと同じような、不規則で、不安定なノイズ。それが流れた直後、一人の男が映った瞬間に俺の心臓は大きく跳ね上がり、同時にマグマのような怒りの沸点が最高潮にまで達した。
『諸君、お初にお目にかかる。私は茅場晶彦』
「茅場ッ!」
その人物こそ、このSAO事件の首謀者であり、そして現在も全国の警察から逃げ続けている人間。茅場晶彦であったのだから。
俺は、思わず空中から吊り下げられているテレビを破壊しそうな衝動に駆られるが、しかしいったん冷静になって考えた。
なぜ今、茅場晶彦が出て来た。おそらく、先ほどのノイズからして、テレビ局にハッキングを仕掛けた、という可能性はあるだろう。しかし何のためだ。いや、違う。いまさら何をしに来た。犯行声明。いや、それだったらとうの昔に≪直筆のメッセージ≫として世間に出ていると言う事を知らされていた。ならば、なんだ。この男は今何をしようとしている。
和人は何か恐ろしいものを感じた。そして、そんな彼の心を代弁するかのように彼は離し始めた。
『諸君は今、何故、と思っているだろう。何故SAO事件の首謀者である人間が、今更のこのこ現れたかと、疑問に思う事だろう。それは……チャンスを与えに来たからだ』
「チャンス?」
『私が君たちに与えるチャンス、それは……』
え?
その言葉を聞いたとき、思うに俺こと桐ケ谷和人は一体、何を思ったのだろう。
今はもう、思い出すことができない。
ここから、最重要ポイント。残酷な二択をキャラクター達に強いていきます。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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