SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
人の出会いは一期一会。
最初は、ただの偶然だった私たちの出会いは、いつしかとても大きな友情へと変化して、大切な物へと変化した。
《同じアニメが好き》という共通点だけを持って出会ってからさほど時は経っていないというのに、その数ヶ月で私たちの環境は大きく変化した。
実習先で上手くいかずに、未来に不安があった女性は、一つの未来を思い描いた。
仕事先で理不尽な目に遭い、今に不安を持っていた女性は、自分のしたい今を見つけた。
そして、過去に縛り付けられ、前に進めなかった私は、過去から離れて自分の道を歩き出す。
これは、そんな私たちに突然起こった別れと、そして新しい出会いの話。
夏休みのある日、一人の女の子が里帰りを果たした。ここに帰ってくるのも久しぶりだ。前に来た時には、友達と一緒に来たっけと、わずか一年余前のことだというのに遠い思い出のようにすらも感じ取れてしまう。そんな懐かしい匂いが辺りには漂っていた。
少女は、駅に着いた早々に深く息を吐き、そして吸う。まるで、この懐古感の様なものを味わっているかのようだ。
「シプレ、大丈夫です。周りには人はいませんよ」
少女は周囲に誰もいないということを確認すると、腕の中に抱いていたぬいぐるみに向けて躊躇することなく話しかけた。正直言って少し怖い。一見すれば、生きているはずのないぬいぐるみを、普通の生き物であるかのように扱っている不思議ちゃんのような光景である。一般人が見れば、距離を置いてもおかしくないかもしれない。
しかし、この少女は違う、不思議ちゃんというわけではないのだ。それをしめすかのように、ぬいぐるみは笑顔で言った。
「はいです! つぼみ!」
これは、つぼみという少女が腹話術でぬいぐるみを動かしているわけではない。まぎれもなくぬいぐるみ自身が彼女に向けて話しているのだ。そう、そのぬいぐるみは生きているのである。そして、その正体はぬいぐるみではない。妖精なのだ。
《シプレ》は、遥か天高くに浮遊する大陸に生えている《こころの大樹》と呼ばれる大木から生まれた妖精なのだ。
そして、妖精のシプレと一緒にいる少女《花咲つぼみ》もただの少女ではない。彼女の正体はーーー。
「つぼみ、久しぶりに彼に会えるからって慌てすぎよ」
「あ、御免なさいおばあちゃん」
と、つぼみが電車の中に起き忘れていた紐を襷掛けするタイプのかばんを持って電車から降りたのは、彼女の祖母である《花咲薫子》だ。彼女は、シプレの正体や、つぼみの秘密について知っている人物である。いや、ソレどころか彼女もまたつぼみと同じ秘密を抱えていたりする。
その辺りのことに関してはまた改めてするとして、彼女たちは現在、生まれ故郷であるこの《鎌倉》からとおくはなれた場所に位置する《希望ヶ花市》に移り住み花屋を経営するつぼみの両親と共に暮らしている。なのに、何故この街に帰ってきたのか。それには、あるひとりの男性が関係してくるのだ。
「つぼみ、誰なんですか? 今日会いにきた人って」
「私の親戚なんです。えっと、確かおばあちゃんのお父さんの……」
「弟の孫、つまりつぼみのおじさんってことになるわ」
今回2人が鎌倉に来た理由。それは、2人の親戚筋にあたる男性と会うためだった。
その男性は、薫子の説明の通り、つぼみからみれば叔父の関係となる人間だ。最も、叔父は世界中を股に掛ける冒険家であるらしく、ほとんど日本にいることはない。そのため、彼と最後に会ったのはつぼみがまだ幼かった頃のことで記憶にもうっすらとしか残っていない。しかし、ただ優しい笑顔を振り撒いていたということだけは覚えていた。
そんな彼が、この度久々に帰国してきたらしく、薫子自身久々に甥っ子と会ってみたかったし、覚えていなかったかもしれないが、つぼみにも彼と会わしてあげたいという思いから生まれ故郷である鎌倉でおち合うこととなったのだ。
だが、ただ会うだけであったのならば、現在彼女たちが住んでいる希望ヶ花市でもよかったはず。何故、鎌倉を再会場所に指定したのか。
それには、ある個人的な理由が関係していた、
今からおよそ2年前のこと。この街に、一つのお店が誕生した。
そもそもこの街は、とある少女アニメの聖地としても有名であった。ソレ自体は、つぼみがまだ生まれる前のアニメであるために彼女は放送当時に見たことはない。だが、今の時代は過去のアニメーションが様々な動画サイトで気軽にみられる時代である。ある時、ふとそのアニメがつぼみの目にとまり、絵柄を気に入った彼女はすぐに全話を視聴したのだ。そして、彼女はそのアニメが好きになった。
絵柄が好みだったというか、親近感があったのも彼女がその作品を好きになった理由の一つ。けど、それ以上のメインのキャラクターからクラスメイトやその家族、そして別の世界に住む人々、多くの人たちが悩み、苦しんで、多くの挫折を得て、それでも立ち上がる、多くの人たちの助けを受けて未来への一歩を踏み出していく、そんな登場人物たちに感銘を受けた。それが理由だった。
そんなアニメの聖地が、まさか自分がかつて住んでいた鎌倉だったなんて、つい最近知ったことだった。さらに、そのアニメに登場したお店が実際に鎌倉の同じ場所に存在すると言うではないか。
正確に言えば、自分と同じようにそのアニメのファンの人がモデルとなった洋館をアニメとそっくりにリフォームして、お店の名前をアニメと同じにした喫茶店であるそうだ。
それを知ってから、行こう行こうとは思った物の受験生となった自分ではなかなか時間を作ることができず、結局行けずじまいだった。そんな時に、叔父と会うという話になり、かつて一時期を過ごしていた鎌倉で会おうということとなった。
そして今に至るのである。
叔父に会うのも楽しみだ。でも、お店に行くのも楽しみだ。二つも楽しみがあるなんて、こんなワクワクするようなことがあるだろうか。いや、ない。
とにかく、今は叔父と合流しなければならない。と、いう事で駅の改札を出た二人―シプレは再びぬいぐるみのふりをしている―は叔父の姿を探すのだが、どこにも見当たらない。
「おじさん、見当たらないですね」
「そうね。もしかしたら遅れてるのかも。あの人、青空が大好きだったから」
「青空、ですか?」
「そうよ」
薫子は空を見上げる。そこには透き通るという言葉が似あうほどに雲一つない真っ青な空が一面に映えていた。
「この綺麗な青空に見惚れて、カバンを枕にして寝ているのかも」
「……」
その優しげな笑みをみてつぼみは思った。自分の記憶の中にうっすらとしか存在しない叔父は、きっと心が優しい人間なんだと。祖母にこんな顔をさせるのだから、きっと青空のように心が透き通った人間なんだろうと。
ふと、つぼみもまた祖母と同じように空を見上げる。何故だろう。何度も、いやいつも見ているはずの空が、こんなに綺麗に見えるなんて。
なんだか、その空を見ていると悩みなんてものが全部ちっぽけな物に思えて、自然と笑顔になってしまう。だからなのだろう。叔父が、この空を好きだという理由は。
自分も好きだ。この青空が。夜になっても、暗くなったとしても、曇り空になったとしても、必ずその向こうに光り輝いているその空が。
そして、それを見て笑顔になる人たちが、自分も好きだった。
「え?」
その時だ。つぼみの足下に何かが転がって当たった。下を見るとどうやら青い、ビー玉のような、でもビー玉よりは明らかに小さい物のようだ。
つぼみは、ソレを拾挙げてみる。どうやらプラスチック製の玉のようだ。けど、どこかで見覚えがあるような気がしてならない。というか、これってもしかして……。
「魔法、玉?」
そう、自分が最近ハマったあのアニメに登場する魔法玉というアイテムにそっくりなのだ。
いやありえない。いくらこの町がそのアニメの聖地であったとしても偶然そのアニメに出てきたアイテムが転がってくるなんてこと、奇跡でも起こりえない限り。
「あ、あの!」
「え?」
そんなつぼみに声をかける人物。つぼみが右を見ると、ショートヘアーの、髪を後ろで結んだ女性がいた。かばんから 少しだけ見える筆等を見ると、どうやら画家のようだが。
「その魔法玉……」
「え?」
魔法玉、それはもしかしなくても自分が持っている玉の事なのだろうか。という事は、彼女がこの玉の落とし主なのだろう。
というか、やっぱり自分が想像したとおりにこの玉は魔法玉だったのか、当然本物ではないおもちゃではある。しかし、たとえおもちゃであったとしてもこれは彼女にとって大事な物なのだろう。そう、魔法玉が言っているような気がした。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
つぼみが魔法玉を彼女に手渡すと、女性は笑顔でお礼を言う。そこまでしなくてもいいのにと思うが、恐らく礼儀正しい女の子であるのだろう。
ここで、つぼみは女性に聞いた。
「貴方も見てたんですか? ≪おジャ魔女≫」
「え?」
「だって、魔法玉って≪おジャ魔女どれみ≫に出てきたアイテムじゃないですか」
≪おジャ魔女どれみ≫。今から20年近く前に放送された少女向けの魔法少女アニメの名前だ。
その人気はすさまじく、見る物を感動させ、時に考えさせられるストーリーは、放送が終わってもなおファンを離すことのない魅力を放っている。
「てことは、もしかしてあなたも?」
「はい。と言っても、私が生まれる前に放送が終わってたから、動画サイトで最近ですけど。でも、面白かったです!」
「私も! 最後のシーズンだけリアタイして、後は動画サイトでコンプリートだったよ」
「そうだったんですか」
まさかとは思ったが、やはり彼女もまた自分と同じくおジャ魔女のファンだったらしい。それに、アニメのほとんどを動画サイトで履修した自分ともよく似たところを持っているようだ。なんだか、気が合いそうである。
「私、花咲つぼみって言います」
「私は≪川谷レイカ≫。なんだか、私たち仲良くなれそう」
「私もそう思います!」
と、おジャ魔女ファン同士で話に花が咲く二人。
聞くと、レイカはこう見えても22歳の女子大生で、現在は横浜にある美術大学に通っているのだとか。つぼみの見たところ、まだ高校生だと言われても信じられるくらいに若く見えたためにこれは驚きに値することだ。
横浜にある大学に通っているという事もあり、現在言葉遣いは普通になりつつあるが、元々は広島の尾道で産まれて20になるまでそこで暮らしていたらしく、そのため時折尾道弁というものが出たりするらしい。
今日は夏休みに入ったことを理由として、現在鎌倉で店を構えている友人に会いに来たそうだ。
「それじゃその画材は……」
「大学に入ってけんは、長期の休みの時には鎌倉に泊まって、その人ん所でお客さんの絵を描かせてもろとるんよ」
「そうなんですか。私、この後親戚の人と会う約束をしてるんですけれど、そのお店行ってもいいですか?」
こんな優しそうな女性の描く絵、一度見てみたい。そう思ったつぼみは、女性にそう問いかけた。本当はおジャ魔女に出てきたお店に行きたいが、しかし営業時間が合えばそちらに行った後でも十分行く時間はあるだろう。
「もちろんええよ。それに、おジャ魔女ファンのつぼみちゃんじゃったら喜ぶと思うけん」
「え?」
おジャ魔女ファンが喜ぶ。ソレってもしかして。
「あの、そのお店って……」
その時だ。
「うェ〜〜ん!」
子供の鳴き声が聞こえてきた。すぐ近い。つぼみとレイカは話を止めて周囲を見わたす。すると、ふたりは見た。人混みの中で泣いている1人の女の子を。2人、そして2人が話し始めてからベンチでひとやすみしていた祖母が少女の近くに寄る。多分幼稚園児なのだろうか。
「どうしたんですか?」
「ママが、いなくなっちゃったの……グスン」
「あぁ、逸れちゃったんか」
「そう、心細かったわね……つぼみ、レイカちゃん。駅員に伝えてくるから、この子のことお願い」
「はい!」
「任せてください!」
薫子は、2人に女の子ことを任せると駅員を呼びに行った。その場には心細い女の子と、つぼみとレイカ、そしてぬいぐるみのフリをしているシプレが残る。
「ママぁ……」
女の子は今にも再び泣き出しそうだ。1人ぼっちじゃなくなったとはいえ、そばにいるのはつい先ほど声をかけたばかりの見知らぬ女性たち。きっと母親以外の大人の女性と会う機会なんてさほどないであろう少女の心細さは母親が迎えにくるまで治らないことだろう。
「大丈夫! お母さんすぐ来るけん!」
「そうですよ、えっと……」
とりあえず、今はこの女の子を元気付けなければならない。でも、一体自分達に何ができるのだろうか。
「あ、そうだ」
ここでつぼみは思い出した。そうだ。自分には子供受けにちょうどいい仲間がいたではないか。そうと決まれば話は早い。つぼみは、腕の中の《ぬいぐるみ》を彼女の前に差し出すと。
「ほ、ほらこの子シプレです! シプレ、挨拶してください!」
「し、シプレです! よろしくです!」
「つぼみちゃん腹話術できたん?」
「は、はい……」
本当に精霊のシプレが喋っていることのだが、今は本当のことを明かせないので、腹話術ということにしておこう。とにかく、シプレの可愛さに関しては自分がよく知っているし、子供にも好かれているということを自分は知っている。現に自分が今住んでいる街にいる友達の妹やそのお友達の幼稚園児たちともシプレは友達なのだから。
しかし、こと今回においてはあまりにも分が悪すぎた。
「ママァ……」
母親と逸れた少女の心細さは彼女たちの想像の遥か先を行っていたのだ。
薄氷のように繊細な子供の心、それが今まさに壊れそうというその時に助けてくれる存在は母親の心だけ。特に幼稚園児はソレが顕著なのだ。
「あぁ泣かないでください! えっと、えっと、レイカさん何かありませんか!?」
「え? 私!?」
このままではまた女の子が泣き出してしまう。しかし、つぼみにはこれ以上彼女の気をひくようなものを持っていない。シプレという最終兵器を使っても彼女をげんきづけることはできなかったのだ。これ以上何があるというのか。
一体どうすればいい。そう2人と一体が途方に暮れた時であった。
「「え?」」
しゃがんでいる2人の顔の横。2人の間から一つの大きなてが伸びてきた。
それは、なんでも包み込むことができるような、どんなものでも掴むことができるような、そして優しさが溢れ出てくる手。握り拳であるというのに何も怖いものはない。あんしんかんを与えてくれるとても暖かい手であった。
その手は少女の顔の前にくると手を開く。親指が握り拳からでてきた。そこには、少し面白い格好をした指人形が付いていた。そして、その指人形がしゃべっているかのように親指を動かしながらこう言った。
「こんにちは、キミはどうして泣いてるの?」
と。
振り向くと、そこには男の人がいた。それも、優しい人間だ。
つぼみは不思議に思う。どうして、優しそうなではなく優しい人間だと断定してしまったのだろう。
それに、もう一つ不思議なことがある。自分達がどれだけ優しく語り掛けても泣きそうだった女の子が、その男性に話しかけらると、泣き止んだのか。いや、泣きそうだったのに泣き止んだというのはおかしかった。正しくは、涙が引っ込んだ、か。
とにかく、もう少女の目には涙はなかった。何故、自分達があれほど苦労して成し得なかったことを彼は達成できたのだろうか。
男性の質問に少女は涙を出さないようにと頑張りながら答えた。
「ママと、逸れちゃったの……」
「そっか、それは心細いね……」
すると、男性は背負っていたバックパックを下ろすと、中からお手玉を5つほどとりだした。そして、それでジャグリングを始める。
「うわぁ……」
「上手……」
「です……」
2人はいつしか、促されたわけでもないのに後ろに下がっていた。男性の邪魔をしないように。
男性は、お手玉を次々と交互に投げてつかみ、投げて、つかみを繰り返す。時折トリッキーな技も取り入れつつ、見ている者を飽きさせることのないように連続して技を繰り出していた。
こんな技見たことがない。2人は感銘を受けていた。なにより、ジャグリンを見ている自分達や少女だけじゃなく、男性もまた笑顔で、楽しそうにジャグリンをしている。それが、見ていて清々しい気持ちになっていた。
そうか、笑顔か。男性からはっせられている安心感は、この笑顔の賜物だったのか。
考えれば、じぶんたちが少女に話しかけた時には、どうすればそのこを元気づけられるかと考えて考えて、笑顔だったけど、その中に少し不安が混じっていたのかもしれない。だから、その不安が女の子にも伝わって、女の子が笑顔になれきれなかったのかも。
けど、今は違う。今は、男性の純粋な笑顔のおかげで女の子には笑顔が戻り、そして自分達もまた笑顔になっている。これが、笑顔の本当の力なのか。つぼみの心は晴れやかだった。あの、自分の上にある青空のように。
そういえば、この笑顔まえにどこかで見たことがある気がする。自分が多分、幼い時に。
「昔、アマゾンの探検隊についていったことがあったんだ。でも、俺のせいで道に迷って、おまけに探検隊のみんなの分の水を転んで全部流しちゃって、あの時は本当にどうしようもなくてもう死ぬほど怒られるって思った。でもさ、隊長や探検隊のみんなは、そんなの小さなミスだって言ってちょっとだけ注意を受けただけで、みんなで川をさがすために歩いたんだ。あの時は驚いたな、だって水も無くて道も分からないなんて小さなミスなんかじゃないもの。でもさ、その後いってくれたんだ。こんな時に大切なのは誰かを責めることなんかじゃない。みんなで助け合うことなんだって」
「みんなで……か」
「……」
つぼみもレイカも、その言葉をまるで自分に向けられている言葉であるかのように聞いていた。
2人とも、かつて1人ではどうしようもない危機に陥ったことがあった。自分1人じゃどうすることもできないようなことばかりで、もしかしたら、自分はこのまま何も変わることができないんじゃないか、過去に縛り付けられたままなんじゃないかと、そんな風に思うときもあった。
けど、そんな自分達を救ってくれたのが仲間だった、同じ好きが理由で出会えた友人たちだった。
皆で助け合ったから、みんながいたから、1人じゃなかったから。2人は、誰かが一緒にいるということの心強さを身にしみて感じていたから。
男性はさらに話を続ける。
「その後なんとか川を見つけて、その下流にあった村にたどり着けたんだ。結局そこで怒られたんだけれど、どれだけのピンチでも、誰かのせいなんかにせずに皆で一緒に頑張ることが大切なんだ。俺は、そう教えてもらった。だからきっと、大丈夫」
「……」
ジャグリングをやめた男性は、やはり笑顔で親指を上げてサムズアップという動作をとる。
あぁ、そうか。今思い出した。自分はこの男性のことを知っている。たった一度だけ、でもその一度の出会いがとても印象の残っている。そんな彼のことを。そう、彼こそが自分のーーー。
それからは、薫子が駅員と、それから女の子のことを探していた母親を連れてきて、女の子は男性がプレゼントした指人形とお手玉一つを持ち、男性に見せながら母親に手を引かれて去っていった。その時の彼女はやはり、とても素晴らしい笑顔であった。
「相変わらずね、雄介」
「え?」
やはりこちらも笑顔で手を振っている男性に対して、薫子が言った。
「それじゃ、やっぱりこの人が私の叔父さんですか?」
「えぇそうよ。2010の技を持つ男、《五代雄介》」
やはりそうだったのか。だが、2010の技を持つとはどういうことなのだろうか。
「2010の技ってなんです?」
「彼の使える技で、折り鶴とか、前転なんてものもあるのよ」
「それじゃさっきのジャグリングや指人形も……」
「そう、俺の技の一つ。あ、それと今は2022の技を持つ男、五代雄介です」
というと、男性改め雄介は3人に自分の名刺を配った。そこには、たしかに2022の技を持つ男の異名が書かれていた。自作の名刺なのだろう。なんだかとても真心がこもっていそうだ。
「ソレにしても、つぼみちゃん久しぶり。前にあった時はすごい小さかったのに」
「え? あ、はい!」
「ふふッ、つぼみがあなたとあったのは3歳の頃よ」
「あ、そっか。それじゃ俺のこと覚えてないか……」
3歳の頃ということは、今から12年前、まだ普通の人間であったら物心がついているかびみょうな時期だ。当然、つぼみもまた物心がついていない時期ではあった。だが、彼女はちゃんと覚えていた。彼の笑顔を。
「いいえ、覚えてますよ。あなたの笑顔」
「そっか。笑顔は、俺の1番目の技なんだ。ありがとう」
「はい!」
つぼみは、そんな雄介に満面の笑みで答える。
彼の笑顔にはなにか惹きつけられるものがある。きっと、彼はその笑顔でたくさんの人たちを笑顔にしてきたのだろう。先ほどの女の子のように。
「それじゃ行きましょうか。レイカさんのお友達のお店に」
「え?」
レイカは、突然自分に話を振られて驚いた。
同時につぼみはレイカに言った。
「きっと、私が行きたかったお店が、そのお店だから」
「あ、そんじゃ……」
「はい、私が生きたかったお店、それは……」
こうして偶然に偶然を重ねて出会った2人の女の子と1人の男性。
この時にはまだ知る由もなかったこの3人におとずれる冒険なんて。
自分達の力が全く通用しない、全く未知な世界へと足を踏み入れることになる。
そして、彼女にとっては2人と違ったまた別の恐怖が舞い降りることになる。
果たして、3人に待ち受ける運命とは、その先に笑顔はあるのか。
だが、これだけはわかる。例え、どれだけ理不尽な目に遭っても。
どれだけ苦しくても。
どれだけ悩んでも。
どれだけ寂しく、悲しい思いをしたとしても。
「《MAHO堂》です!」
あの子たちが心の中にいるのならば、きっと頑張れる。そう信じて。
ハートキャッチプリキュア!
仮面ライダークウガ
参戦
雄介とつぼみが親戚関係なのは、薫子さんの旧姓が五代だし、この世界観だったら1人や2人親戚筋がいるかもしれないと思ったからこんな設定になりました。
もしかしたら、既に既出の面々の中にも親戚関係になっている人間がいるのかも……。
あと、途中の雄介のジャグリング中のセリフは、本来ならSAOの中で出会った《仲間たちを巻き込んでしまった蝶々がモチーフのバンドのボーカルの女の子》を助ける時に使用していたセリフです。
この小説、本編と外伝を……(希望する方を選んでください)
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一つの小説でやってもらいたい
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本編と外伝を分けて投稿してもらいたい