SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
その日も、彼はテレビ局へと足を運んでいた。自分たちの事務所のアイドルを売り込むためだ。
765プロのプロデューサーである彼、その本当の名前を知っている者は数少ない。なぜなら、彼自身が自分の名前を出すことを強く拒んでいたからだ。彼は言う。自分の名前を覚えるくらいだったら、自分の所属事務所のアイドルの名前を覚えてもらった方がよっぽどいいのだと。
自分のことなど二の次三の次だった。それは、彼自身が自分の仲間たちの事をとてもよく思っていて、とても大切な存在で、そして、全員を全員一番のアイドルにしたかったと言う願いもあったから。
結果、765プロは日本一のアイドル事務所と、自画自賛と言えない程に成長した。最初は仕事を貰うのにも苦労して、地方のお祭りの司会や、バラエティ番組へのゲスト出演など多くの下積みを経験した。それから、たった一年、彼がプロデューサーとなってからたった一年のうちに、彼女たちの実力が評価されて行って、そして今ではドーム公演は満員御礼が当たり前、そんなアイドル事務所になっていた。
勿論、そんなアイドル人生が全て順風万端だったわけではない。アイドル達の中で、アイドルとしての認識の違いで仲たがいをしそうになったこともあったり、また他の事務所からの妨害もあったりして苦しい時があった。でもそれでも今はまた仲良くなって、そして他の事務所の人間とのいざこざもかいけつして、アイドル活動を続けていた。みんなに夢を、希望を、光を、与え続けるために。
そう、これからも第一線を走り続けていくアイドル達、であるはずだった。それなのに。
「お願いします!」
「って、言われてもねぇ……」
と彼が頭を下げて頼みこんでいるのは、ある歌番組のディレクターである。プロデューサーは、よくこのディレクターと仕事をしている仲であり、何度も顔を合わせて、自分のアイドル達を売り込んで、番組に出させてもらっていた。
いや、逆か。765プロのアイドル達が売れてからは、次第に番組の方から出演依頼が大量に来ていて、最初は予定が全くなく真っ白なホワイトボードだった物が、皆の予定で埋まっていったのだ。自分一人が勝ち取った物ではなく、みんなの実力が評価された結果だ。なのに、それなのに今は。
「悪いんですが、やはりおたくのアイドルさんたちは……」
「ッ……ダメ、ですか……」
「ダメ、とは言えないんだが、ほら……今はこんな時期だろ?」
「……」
今、765プロは危機的な状況にあると言っても過言ではないだろう。所属しているアイドルの仕事はほぼ零、開店閉業状態であると言っても嘘とは言えないくらいに閑散としていた。おまけに、である。
「最近は、前に歌ってくれた映像をつかうのも視聴者からクレームが来てねぇ、『あの事件を思い出すから映像をつかうな!』なんて脅迫状まで届く始末さ」
「ッ……すみません」
プロデューサーは、ただその一言を付け加えると鞄を持ち、その場から立ち去った。
どうして、こんなことになったのだろう。いや、きっかけは思い出すことなんて簡単すぎる。そう、容易く思い出せてしまうのだ。
プロジェクトSAO。765プロのアイドル達に任せられた巨大なプロジェクトでありそして、彼女たちのアイドル人生に影を落としたプロジェクト。世界初のVRMMORPGの宣伝のためにと事務所のアイドルの総力をかけて宣伝をして、様々な人物にその名前を浸透させていって、そして『あの事件』が起こって。
765プロのアイドル以外のプロジェクトSAO参加アイドルだって大きな打撃を受けた。でも、その中でも一番深刻だったのが、事務所総出でSAOを広めていた彼女たちだったのは間違いないだろう。あの事件のおかげで入っていた仕事はほとんどが見送り、もしくはバラシになり、撮影予定だったドラマからの降板も相次いだ。
そして、何より765プロは、所属しているアイドルの半分以上をSAOに連れていかれた。天海春香、如月千早、萩原雪歩、水瀬伊織、菊池真、そして双子の双海姉妹。
今残っているアイドルの中で自分がプロデューサーをしているのは、高槻やよい、星井美希、我那覇響、四条貴音の四人。もう一人の先輩プロデューサーが担当しているのは三浦あずさ。この、現実世界に残った五人のアイドルが、今の765プロの戦力と言ってもいいだろう。
でも、そんな彼女たちも、仲間たちが連れていかれたと言う事に憔悴しきっているのに加えて、マスコミによるバッシング、ネットの口コミであることない事色々と書かれて、正直今765プロは崩壊の危機に瀕していた。
その中でも、プロデューサーである彼は頑張って仕事を貰おうとしていた。足を使って、時には携帯を使って、仕事を貰おうと必死になって、彼女たちの輝きを途絶えさせないためにと、奔走して。
でも、結局全部無駄だった。
あの事件を思い出すから、出したら視聴率が下がるから、逆にこっちがバッシングを受けるから。色々な理由を付けて、765プロのアイドル達は、悪い言い方をすれば、干されてしまった。
プロデューサーは後悔していた。何故自分はプロジェクトSAOの仕事を引き受けてしまったのだ。どうして彼女たちにその仕事を任せたのだ。どうして、何故。こんな無力な自分じゃなくて、宝石のように光り輝いている彼女たちだったのだと。
勿論、その当時は知りもしなかった。そのゲームが、後の世に世界初のゲームを用いたテロに使用される。デスゲームとなって多くの人間の人生を狂わせるようなゲームになるなんて、思いもよらなかった。でも、そんな事、言い訳にしかならない。視聴者にとっては、マスコミにとっては結果がすべてなのだ。
自分たちは、大きな過ちを起こしてしまった。その咎を受けてしまっている。それが、全て。
どうして、どうして。
プロデューサーもまた、疲弊していた。こうして仕事を取るために歩き回ったりするのと、多大なる謝罪行脚とを同時並行して行っているのだから、今倒れてしまっても彼の事を悪く言う人間などいはしない。けど、それでも彼は歩き続けなければばならないのだ。
その疲弊もまた彼は飲み込んで前に進むしかない。多くの女の子たちの人生を任されてしまっているから、多くの人々の人生を狂わせてしまっているのだから。その分、彼は歩き続けなければならないのだ。
悲しい事である。
「ワンッ!」
「え?」
そんな時だった。人気のない通り道、どうしてそんなところに辿り着いたのかは彼も分かっていなかったが、しかし、そこで一匹の犬の鳴き声が、聞こえてきた。
彼は、まるで誘われるようにその鳴き声が聞こえてきた通りに足を向けた。すると、そこにいたのは。
「はぁ、はぁ、はぁ」
一人の女の子。季節外れの熱中症か。それとも脱水症状。壁に背をもたれかけとてもしんどそうにしている。いや、病状なんてもの今は関係ない。目の前の少女を介抱しなければ。
「キミ! 大丈夫か!?」
「は、はい。すみません、少し疲れて……」
「ッ!」
其の時だった。プロデューサーは息を呑んだ。
間違いない。彼の目に狂いがなければ、彼女もまた、原石の一つだ。磨けば輝く、原石の一つ。
どうして今まで思いつかなかったのだ。765プロの、今のアイドルが世間にとっての霞になってしまっているのなら、その霞を取ってくれ、そしてその先にいる輝きを見せてもらえる、新しい輝きを取り入れればいい。
しかし、それで本当にいいのかと、彼の中で燻る思いがあった。彼の中で、765プロの今のアイドル達を放っておいて、他の人間に構っている、そんな時間を作っていいのだろうかと、そんな気持ちもあった。当然だ。なぜなら、彼は、彼も、765プロのアイドル達と同じ、あの事務所を愛していたから。彼女たちの事を愛していたから。
そして、彼女たちが帰ってくる場所を守らなければならなかったから。
彼はもう、なりふり構っていられなかったのだろう。
「君……名前は?」
「私……ですか?」
というと、金髪で、長身。大学生くらいだろうか。紫色のワンピースに身を包んだ女性は、パッパッと身体に付いた土を取ると言った。
「私は風鈴アスミと申します」
と。
この作者、本当にプリキュアと(以下略)
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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