SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
どうして、どうしてなの。神楽坂明日菜は、目の前で眠っているクラスメイトで、ルームメイトで、親友の近衛木乃香の姿を見ながら思っていた。いや、彼女だけじゃない。その親友の刹那を、クラスメイトの円を鳴滝姉妹を千鶴を、そして千雨を見ながら泣き続けていた。
どうして、もう会えないの、と。
「……」
「明日菜さん……」
「ネギ……」
と、そこに現れたのは小学生、いや違う。もうちゃんとした年齢算出何てできないか。だって自分たち、とりわけ彼はあの世界で長い長い時間修行をしていたから、そのちゃんとした年齢が分からないし、今後も意味を持つことはないだろう。今は、小学生で、自分のクラスの担任で、戦友で、ただそれだけの関係。
ネギは、その傍らに花束を持っている。彼女たちへのお見舞いの品として。そして、明日菜を心配して、病院に来てくれたのだろう。明日菜は気丈に振舞うために笑った。
「ホント、おかしいわよね。本当だったら、私が眠っているはずなのに、皆が眠っちゃってるなんて……」
「……」
しかし、その痛々しさは目に見えてわかっている。だからこそ、ネギは何も答えることができなかった。その胸の内に、傷を抱えている彼女を、慰めることなんてできるわけない。
せめて、見送られて眠りにつきたかった。そう思う彼女の心境は察して余るところがあるほどに辛く、苦しい事。でも、それ以上に辛いことは。
「クギミーたちは、何も知らないでゲームを続けるんだよね……私が、眠りについた後も……」
「……」
木乃香と刹那は知っている。でも、他の人間たちは知らない。千雨は知っている。でも、最期の秘密は隠している。それ以外の人間は誰も知らない。
死の恐怖、孤独の恐怖、傷つくことの恐怖、そして、異世界を冒険するという恐怖を。
「ねぇ、ネギ……」
「なんですか?」
「私たちって、馬鹿、だったのかな?」
「え?」
「だって、クラスメイト同士で秘密を作り合って、教えることもせず、どんな危険な目にあったのか共有してなくて、それでクギミーたちは断片的にしか『魔法』の事を知らなくて……」
そう、ネギは魔法を使う事ができる人間だ。いや、彼だけじゃない。彼のクラスの人間には魔法以外の力を行使することができる人間もいるし、ほとんどの人間は彼からの、いわゆる魔力の提供のような物を受けて魔法に近い力を行使することができる人間となった。でも、その本質、そして彼らがこの一年間やって来たその真実を真に知っているのはクラスの中の約八割、と言ったところ。
そう、自分たちは仲間外れを作ってしまったのだ。その数少ない仲間外れの中にいたのが、釘宮や鳴滝姉妹、そして、千鶴だった。
「明日菜さん、でも僕たちがしてきたことは!」
「分かってる! 私たちのしてきたことは全部、誰にも知られちゃいけないことなんだって分かってる!! でも……」
だからって、こんなことを秘密にしたままで、終わっていいわけがない。その結果がこれである。もう二度SAOをプレイするみんなとは会うことができない。本当のお別れをせずに、自分は彼女達と別れなければならないのだ。
何も知らない彼女達と、親友たちとお別れするなんて、悲しいじゃないか。
「もっともっと、皆と話すべきだった。私たちの冒険の事話して、私の事知ってもらって、それで……皆を傷つけたくない。そんな願いで私はたくさんの人に秘密を作って……そのまま私は百年の眠りにつくなんて……そんなの」
「どういうことですか?」
「ッ!」
瞬間、明日菜の背筋が凍った。今の声、ネギじゃない。でも、知らない声じゃない。いやむしろよく聞いていた。よく一緒に喧嘩をした仲の親友の声がしたのだ。
振り返った明日菜。その姿を見た瞬間、明日菜の目の前に勢いよくその少女が駆け寄ると言った。
「百年の眠りにつくとは、どういうことなのですか!?」
「いいんちょう……」
彼女がいいんちょうと呼ぶ女性。それは、雪広あやかという彼女のクラスの、文字通り委員長を務めている女性であった。明日菜とは犬猿の仲にあった女の子。でも、初等部の頃から気心の知れた間柄と言う存在で、いわゆる竹馬の友、喧嘩するほど仲がいい。そんな関係にあった少女が、いいんちょう、雪広あやかであった。
そんな人間に、聞かれてしまった。もう、後戻りはできないだろう。明日菜はあきらめたように言う。
「私ね、眠りにつかないといけないの……魔法世界の崩壊を防ぐために、その引き換えに……百年間、眠らないといけないんだって」
それは、ネギが消滅するはずの火星に存在しいてる魔法世界の消滅を防ぐための『Blue Mars計画』の一環。テラフォーミングによって依り代としている火星を地球と同じ緑あふれる星に変えて、魔力の源である命を育める環境にすることによって魔力の枯渇を防ぐ計画の事。それ自体、委員長は知らされていた。
でも、その計画のためには一人の犠牲、すなわち、神楽坂明日菜の犠牲が必要だった。魔法世界の礎となるべく、百年の眠りにつく必要が。いや、それどころかーーー。
「百年後、私の人格は残ってないだろうって……言われて、だからもし百年後に目覚めても私……」
「そ……」
「ごめんね、本当は誰にも内緒のつもりだッ」
バチン。そんな音が、響いた。乾いた、でも、悲しみにまみれたその手で、あやかは明日菜の肩を揺さぶると言った。
「どうして、どうしてそんな大切なことを言わなかったんですか!?」
「……」
「いくら大勢の人を助けるためとはいえ何故……あなたがッ!!」
「ッ……」
「もう二度と会えないのですよ。釘宮さんとも、長谷川さんとも、風香さん史伽とも、桜咲さんとも! 木乃香さんとも!! 千鶴さんとも……最後の、別れも……できないんですよ……」
「ッ……!」
刹那と、木乃香は知っていた。大切なルームメイト、大切な親友だったから。いや、知ってしまった。教えることはないと思っていた。教えないつもりだった。悲しいから、あまりにも切ないから。だから、クラスメイト全員にも秘密で、内緒で、眠りに付こうと、そう思っていた。
決心が鈍るから。一度決めたことから、逃げ出したくなりそうだったから。
「あなた方はどうしていつもいつもそうやって誰かに秘密を作るのです!! どうして、相談してくれないのです。教えてくれないのです!! 私たちは、私たちはずっと、親友だと、思っていたと言うのに……なのに、どうして……」
釘宮と、鳴滝姉妹と、千鶴、そして長谷川にはもう、別れの挨拶すらも言えない、最後に言葉をかける事しかできない。自分の事情を知っている二人もまた、自分に対して最後のお別れの言葉をかけてもらう事もできない。
一人寂しく、というわけじゃない。二人の先生。自分が敬愛する二人の先生がお見送りに来てくれるから。それで十分だから。悲しむ人がこれ以上増えるのは、ダメだから。そう、考えていた自分が愚かだったのかもしれない。
もうこの時点ですでにこんなにも悲しんでくれている人がいる。悲しむ人間がいる。失念していたわけじゃない。けど、忘れようと思っていたこと。忘れたかったこと。
でも。
「私だって、辛いわよ。でも、私がしなくちゃならないことだから……私だけが、できることだから……私だけが、魔法世界の人たちを、そしてこの世界の人たちを救えるから……だから」
だから、なんだ。なんだ!
「怖く、ない……わけないよ……」
「明日菜さん……」
「委員長ともっと話がしたい! 大人になっても大親友でいたい! ずっとずっと馬鹿な小競り合いして、傍にいたい!! でも……私じゃなくちゃダメなの……私じゃなきゃ……」
「……ッ」
親友との別れを怖くないと言える人間などいるはずがない。友との別れを辛くないと思える人間などいるわけない。それが、より近く、そしてより遠い存在になってしまった人間であればあるほど、その悲しみは深くなり、そして強まっていく。
「こんなことなら、皆にも話しておくべきだったって思ってる! 隠し事を何もしないで、クギミーにも、ふーちゃんやふみちゃんにも、全部。全部最初っから私の事も、魔法の事も、向こうの世界の事も全部話しておくべきだった!! 私、私……」
怖いよ。
声にならない叫びが、病院に木霊した。あったのは後悔だけ。もう二度と取り戻すことのできない時間。もう二度と繰り返すことのできない時間。もう二度と、会う事の出来ない人たち、話すことのできない共たち、同じ期間を共有することも、冒険を共有することもできなかった友たち。でも、そんな後悔してももう遅い。
彼女はもしかしたら、初めて知ったのかもしれない。仲間外れにされる悲しさ、虚しさを、友達が危険な目にあっているのにソレを助けに行くこともできないもどかしさを、初めて知ったのかもしれない。
そして、それを知ることもできずに呑気に学校生活を謳歌していた数少ない友達に謝っていた。心の中でいつまでもいつまでも、ゴメンなさい、ゴメンなさいと。
いまさらそんなことしても、後の祭りなのに。
「まだ、残っているネ」
「え?」
「だから、まだ眠っていないクラスメイトがたくさんいるから、皆には教えてもいいはずじゃないカ? その気持ち」
「あ、貴方は……」
その時だった。三人の前に驚くべき人物が現れたのである。
「超……さん……」
超鈴音。明日菜たちのクラスメイトの一人にして、未来人にして、その固定された未来に帰ったはずの少女が、今現れ、そして言うのだった。
「一週間後、私は地獄の釜の蓋を開けることにしているアル。それまで、時間があるからよく話すネ」
「ど、どうして超さんがここに!?」
超は、にこやかな顔を消し、真剣な表情を持って言った。
「決まっているネ……SAOをできるだけ正常な状態に持っていく。そのために私たちは未来からやって来たアル」
「正常な、状態……それってもしかして!」
「否、デスゲームをどうこうする力は、残念ながらないアル。でも、英雄を送り込むことは、できるアル」
「英雄?」
「SAOのクリアの立役者……キリト……アル」
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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