SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第八話

「む? ……これはまさか」

 

 それは、超が明日菜とあう数時間前の事だった。彼女は、ある男に対してメッセージとともにある物を送り込んだのである。

 

「不思議な物だ。この空間に物を送ることができる者がいるとは……フッ」

 

 いや、もしかしたらそう言った存在もまた自分は求めていたのかもしれない。くしくも、そのメッセージの前半には自分が考えているのと同じようなことが書いてあって、男は思わず笑ってしまった。

 

『拝啓 茅場晶彦殿。本当はそっちに直接出向きたかったけど、場所が場所だけに私たちは直接いけないからこうして手紙と共にある物を送ることにしたネ。私の名前は超鈴音、遠い未来から来た、いわば未来人アル』

「未来人……か」

 

 今のこの世界だ。あり得ない話ではないし、実際に少し前にははるか遠い未来から、果ては地球という星が消滅したその後の時代からこの世界に来た者たちがいる過去を知っているがゆえ、あまりそのことに付いては驚くことはなかった。

 男、茅場明彦は読み続ける。

 

『今回、手紙を送ったのは他でもない。私たちも、ゲームに参加させてもらいたいからアル。同封した物は、私が未来で作ったナーヴギアとSAOのソフト、その試作品アル。中身を確認して問題がないと判断してもらいたいアル』

「ほぅ……」

 

 己の作ったナーヴギア、そしてソフトを作ったと。流石未来の技術、と言えるだろう。ナーヴギア自体は設計図さえあれば作り直すことはできるだろう。だが、ソフトの方はいかな天才であろうともたった一人では作ることができない。

 自画自賛をしている様な気もしないでもないが、事実なのでこれでもまだ誇張していない方なのである。おそらく、この超鈴音と言う人物もまた、自分と同じ天才か、あるいはそんな仲間と一緒にいるのだろう。何にしても、並大抵の苦労でできる代物ではない。ソフトを調査するのは後として、だ。手紙にはさらに続きがあった。

 

『茅場は知っているアルか? 現在地球上で、SAO詐欺という特殊犯罪が流行っていると言う事を』

「SAO詐欺……」

 

 確かに、おぼろげながら聞いたことがある。できもしないSAOのハッキングや、親戚子供を救い出すと言う名目で多くの人間からお金をだまし取ろうと考えている輩がいると言う事を。まったくもって滑稽な話だが、ある意味で人間らしいと言えるだろう。

 

『このSAO詐欺を抑止するために、私はとある方法を考えたネ、それは……』

「ふむぅ……」

 

 なるほど、確かにこの方法を取ればその詐欺はできなくなる可能性があるだろう。しかし、分かっているのだろうか。この手紙の主は、その方法が自分と同じ、あるいはもっと多くの人間の人生を変える可能性を孕んでいる最悪の手段であると言う事を。抑止力を用いるために、抑止力以上の兵法を考えていると言う事に、この人物は気がついているのだろうか。

 

『既にナーヴギアとSAOは大量に送り込んだネ。ソレをどうするかは、その人次第ダガ、ソレを使用させる権限を持つのは茅場晶彦のみアル。もし、私の考えに同調するのなら、それ相応のサインを送ってもらいたいアル』

 

 それにしてもこの語尾、まるで日本人が思い描いている中国人のステレオタイプのソレだと、茅場は笑いながら最後の一文を声に出して呼んだ。

 

『「この、絶望の世界に少しの祝福を願って。超鈴音」』

 

 なるほど、この人物も知っているのか。この世界がどうなるのか。この世界に何が待ち受けているのかを。それでもなお、自分と同じ方法を取ろうとしているのだと、暗に示すその一文に、茅場晶彦惹かれたのかもしれない。

 面白い、乗ってやろうではないか、と。

 

 それから、一時間後の事であった。

 

「おい! どうなってんだこれ!?」

「テレビが映らなくなったぞ!?」

「あれ、スマホが反応しない……!?」

 

 世界中の電子機器に異常が発生した。それはまさしく、とある病院で桐ケ谷和人が見ていたそれと同じ、ほぼすべてのテレビがジャックされ、携帯電話やパソコンと言ったネットにつながっている物全部にハッキングが仕掛けられ、都市の大型テレビジョンもまた全てハッキングがされたのだった。

 今の時代、ネットを使う事ができなくなると言うのは大問題、世界各国においてこの状況は多大なる経済的な損失をもたらし、堅強なウイルスバスタープログラムを保有していた会社のソレすらもハッキングされたと言う事に、多くのプログラマーが後に発狂する程だった。

 そして、ハッキングが始まって数秒後の事。

 

『諸君、お初にお目にかかる。私は茅場晶彦』

「ッ!?」

「茅場晶彦だって!?」

 

 その名前を聞いて驚かない人間は、少なくとも日本人にはいなかった。

 なぜなら、その人間は今回のこの一連のテロを引き起こした張本人であり、そしてなおかつ今現在も警察から逃げおおせている大罪人であるのだから。

 警察はソレを見た瞬間に大急ぎでその居場所を特定するようにとネット犯罪対策課の人間に連絡を入れようとしたが、当然携帯も、そのネット犯罪対策課の人間たちが使用している高性能パソコンもジャックされているので、何もすることができない。

 しかし何故、今このタイミングで茅場晶彦が現れたのか。そう思った人間たちの真理をついたかのように彼は話し始める。

 

『諸君は今、何故、と思っているだろう。何故SAO事件の首謀者である人間が、今更のこのこ現れたのかと、疑問に思う事だろう。それは……チャンスを与えに来たからだ』

「チャンス?」

 

 桐ケ谷和人は病院でソレを聞いていた。

 

『私が君たちに与えるチャンス、それは……SAOをプレイするチャンスだ』

「え……?」

 

「SAOをプレイするチャンス?」

「どういう事だ?」

 

 病院に向かう途中の車の中で、薫と皆本は聞いていた。

 

『現在、SAOのプレイヤー数は、死亡した1,237名並びにログインしてこなかったプレイヤーを除けば8,657名となる』

「……」

 

 その中に、初美花ちゃんがいる。そう思いながら、陽川は聞いていた。

 

『無論、このプレイヤーの数であれば、いつかは、ゲームがクリアされることだろう』

「いつか……」

 

 みゆきの母である育代は、リビングのテレビで聞いていた。上にいるれいかやみゆきに聞こえないようにボリュームを下げて。

 

『だが、プレイすることができなかった人間たちの中には当然いるはずだろう。そのいつかが来るまで、自分の親兄弟、親友が生きているかどうか、疑問に思う者たちが』

「弦太朗くん……」

「……」

 

 映司と翔太郎もまた、バイクから降りると自分が使っている携帯端末の向こう側にいる茅場晶彦を見ながらゲーム世界で戦っている戦友たちの顔を思い浮かべていた。

 

『そこで、私はSAOをプレイするチャンスを、多くの者たちに与えることとした』

「え?」

「……」

 

 喫茶店にて、風鈴アスミとしゃべっているプロデューサーは、繰り返されるその言葉に疑問符をつけるしかなかった。

 

『プレイするチャンス、βテスターでありながら正式サービス開始に間に合わなかったプレイヤー。ゲームをゲットしておきながら、プレイすることを選択しなかった幸運なプレイヤー。そして、そもそもゲットすることができなかったプレイヤー諸君に……そう、いうなればディレイログインのチャンスを与えることとする』

「ディレイ、ログインだとッ!?」

 

 和人はその言葉に苦虫を食い潰したような顔を浮かべる。つまり、遅れてのログイン、という事だ。何がディレイログインだ。つまりは、SAOに閉じ込められる被害者。つまり、自分の作りこんだ世界に送り込む人間をさらに増やそうとしているだけじゃないか。

 そんな怒りとともに、どこか和人の中にふわっとした考えが思い浮かんだ。そうだ、ログインできるのだ。あの世界に、会いに行けるのだ、助けに行けるのだ。自分の義妹を。そう考えた時、彼から怒りは過ぎ去ってしまった。

 

『ディレイログインのボーナスに関しては後にネット上で発表する。また、警察関係各所にはその配布先を送ることとした。私は既に千のナーヴギアとSAOを無作為に日本中のあらゆる場所に送り込んだ。これ以降、SAOに関わる全ての事柄に関しての、現実世界からの干渉はない物と思って構わない。そう、今話題のSAO詐欺も、もう無駄の産物となる。そのため、無駄にお金を消費することないよう願う。自分たちの人生を捨ててまで大切な存在を守りたいと願うか、それとも自分たちの人生を優先させたいのか、その判断は自由だが……』

 

 というと、茅場晶彦の姿はノイズの中に消え、そしてその白と黒の砂のような映像の向こう側からざらついた声が聴こえて来た。

 

『英雄になりたい者たちの活躍を、願っている。以上で、私からの特別情報は終了とする。SAOを手に入れた者たちの見当を祈る』

 

 と、その言葉が終わると同時にテレビは元のニュース番組に切り替わった。元の番組のセットに戻った瞬間、キャスターたちもまたその放送を聞いていたのであろう、一瞬唖然とした表情を浮かべるとともに、裏方であるスタッフが慌てる声が聴こえて来て、おさげ髪をした少し幼い新人アナウンサーが先ほど茅場晶彦が出した声明文を必死で思い出しながらも繰り返す様子が見て取れる。

 

「スグ……ッ!」

 

 果たして、茅場晶彦の本当の意図は何だったのか。そんなものどうだってよかった。彼は走り出した。病院を飛び出し、自分のSAOと、ナーヴギアを取り戻すためにあの街に、あの病院へと、向かったのだった。

 英雄になりたいから。

 否。

 たった一人の、義妹を救いたいから。

 ただ、それだけが彼の心を占めていた。




≪追記≫
 今回からまたタイトルの変更をします。
 『SAO/UNLIMITED 〜いろんな著作物のキャラを闇鍋的にアインクラッドに詰め込んだらとんでもない劇薬が産まれた件〜(旧:ソードアート・オンライン ヴァルキリーズfeatボーイ)』
 改めて
 『SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO』
 です。アンケートに参加したいただいた読者の方々、ありがとうございます。これからも本小説をよろしくお願いします。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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