SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「ちょっと待ってよ! マナ!!」
相田マナがSAOをプレイすると宣言した直後から、異議を申し立てたのは、当然のように彼女の幼馴染である菱川六花であった。六花は炎が燃え上がるかの様に叫ぶ。
「どうしてマナが行かなくちゃならないの! マナは別にこのゲームに何の関係もないじゃない!」
確かにそう。自分達の友達のようにβテスターでもなければ、SAOの支援者というわけでもない。ただの、プリキュアということ以外には何の接点もない普通の女の子。それが、相田マナだ。でも。
「でも、SAOにはまこぴーが閉じ込められているんだよ!」
まこぴー、剣崎真琴。彼女は、ドキドキプリキュアの、相田マナの所属しているプリキュアのチームの一員だった。プロジェクトSAOに参加したアイドルの一人として、βテスターとして、あの世界を今もなお彷徨い続けている人間の一人だ。多分、そんな彼女の事を放っておくことなんて、マナにはできなかったのだろう。
いや、違う。それはきっと建前だ。マナ自身もそれは分かりきっていた。
「ううん、それだけじゃない。今でもSAOの中ではたくさんの人たちが戦っている。苦しんでいる。ソレを知っているのに、放って何て、置けるわけないよ!!」
「マナ!」
六花の叫びに、マナはしかしその目を彼女から逸らすことはなかった。
相田マナにとって大切な事。それは、苦しんでいる人間がいるのに、それを見放すなんてことできないと言う彼女の深層心理に深く刻まれた決意。彼女が常日頃から考えている思い。世界中に対する、愛。
例え、それが自己満足と言われても、たとえその結果自分の身が破滅する事を知っていてもなお羽ばたき続ける。それが、相田マナだった。
「マナはいつもいつもそうやって、幸せの王子をやって……」
「幸せの王子……」
大福は、その物語を聞いたことがあった。オスカー・ワイルドという名前の文人が子供向けにこの世に送り出した短編小説の題名、その和訳の一つだったはずだ。
町の不幸な人々を救うために、自分の身を飾っていた高価な宝石類や、金箔をツバメに削いでもらって分け与え続けた、王子の銅像の話。でも、その結果ボロボロになった王子は町の住民から蔑まれるようになり、捨てられ、そしてそれを手伝ったツバメもまた越冬することができずに死に至ると言う、悲しいお話。
自己犠牲とその結果の末路を簡単に描いた小説だ。
六花は、手に力を込めながら言った。
「もう少し自分の人生の事も考えてよ。分かってるでしょ? こんなところで立ち止まったら、マナの人生にどれだけ影響が出るのか。マナの夢も叶えられなくなるかもしれない。マナが大好きな人たちが不幸になるかもしれないって、そう言う事考えたことあるの!?」
「マナちゃんの夢って?」
「総理大臣、だそうです」
「あぁ……」
と大福はお隣に座っていたほのかにきいて、なんとなくだが納得してしまう自分がいたのに驚いた。確かに、彼女のあのカリスマ性。あのキングジコチューという敵と戦った時のその勇敢な姿、リーダーシップがあれば総理大臣にも慣れる資質は十分にあるかもしれない。それもこれも、全部彼女が順調な道のりを歩めれば、の話だが。
「立ち止まるんじゃないよ」
「マナ……」
果たして、六花の言葉をオウム返ししたかのように、マナは笑顔で、彼女の手を取って言った。
「前に進み続ける。みんなと、私が大好きな六花やありす、マコピーに亜久里ちゃん。レジーナ、アイちゃん。たくさんの友達。私もみんなと一緒に前に歩き続けたい。でも、そのために目の前にある大勢の人を助けられる手段を見逃すなんて、私にはできない。だから、私は……立ち止まらない。私の道を、ただまっすぐ行く。それが、私だから」
「マナ……」
彼女だったら、そう言うと思っていた。彼女だったら、博愛主義が皮をかぶっているような人間であるマナであったのなら、そして自分の知っている彼女の性格だったらそう言うと思っていた。
確かに彼女だって辛いのは重々承知だ。自分の人生の少しの時間を、デスゲームと言う物に削がれるその痛みを分かっているつもりだ。
けど、それでも彼女はその痛みとともに歩き続けると誓ったのだ。相田マナだから。その言葉だけで十分だったから。その名前の名のもとに、彼女の歩みを、彼女の愛を、彼女による助けを求めている人間がいる限りそこに突っ走って行く、それが彼女だから。
六花はあきらめたようにため息をつくと言う。
「……さっきの、言葉」
「え?」
「分かってた。マナがもしナーヴギアとSAOを手に入れたら、絶対に何が何でもゲームの世界に飛び込むんだって、知ってた。だから、昨日の夜からずっと考えてた。マナを止める方法、マナを説得する方法を、ずっと、ずっと……でも」
瞬間、六花はマナに抱き着いた。愛おしそうにそして、彼女を止められなかった自分を責めるように言うのだ。
「私にはもう、マナを止めることができない。マナが助けが必要だって思った人の所に向かうのを、止めるのなんて、できない。だから……だから……」
だから、自分も覚悟した。
「だから、私もマナと一緒に行く」
「え」
「SAOの世界に、デスゲームの世界に私も行く!」
「えぇッ!」
「六花さん!」
この言葉には、流石に周りの半分くらいの少女たちもまた驚いたのであろう。驚愕の声を上げつつ椅子から立ち上がった彼女たちに向け、六花は高らかに宣言した。
「私は、マナのツバメだから。マナがこれ以上無茶をしないように、その場で助けてあげたいからだから! 私だって、マナのためだったら……自分の人生がどうなったって構いはしない!!」
「六花……」
そう、覚悟していた。マナがそう言う物ならば、自分だって彼女と一緒にデスゲームの世界に行くのだと、そう決意していたのだ。決意して、この場所に来ていた。そんな、どこかプロポーズ的な側面のある言葉を受けてなのか、ありすが言った。
「では、六花ちゃんもSAOをプレイすると言う事で、よろしいですね」
「……えぇ」
六花は後悔していない。そう指し示すかのようなまっすぐな目でありすを見つめた。ありすは、やや微笑んでいった。
「分かりました。では、≪六つ≫のSAOの内三つの行く先が決定したところで」
「え? 六つ?」
六つって、さっき映っていたプロジェクターには、SAOとナーヴギアは三つしかなかったのでは。と疑問を呈した少女たちに対し、ありすは言う。
「えぇ、最初からマナちゃんがSAOをプレイすると言い出すのは分かっていましたから。それに追随するように六花ちゃんもプレイすると言う事も。そして、私がプレイすることも決定事項でした。だから、これからはそれ以外の、三つのナーヴギアとSAOに付いて会議を始めるんです」
「あぁ、だからですか」
と、唖然となっている少女たちを尻目に、大福は鞄からある紙を取り出した。それは、この場所の住所と、そこに何個のSAOとナーヴギアが送られたかを示す紙。
「おかしいと思っていたんですよね。この住所には、最初からSAOとナーヴギアが六つ送られていたはずなのに、プロジェクターには三つしか映ってなかったから」
紙には、四葉ありすの家に六つのSAOとナーヴギアが送られたという旨が書いてあった。それなのに、プロジェクターに移されたソレらは三セット。それがおかしいと思っていたのである。
「最初から、三つは誰が受け取るか、分かっていたからなんですね」
「はい」
ありすはやはりとてもいい笑顔で言った。
「ちょっと待ってください!」
と抗議の言葉を唱えた人間がやはりいた。そう。次はドキドキプリキュアの最後に残った一名のプリキュア、円亜久里のターンである。
「それではこの世界に私一人取り残されることになりますわ! そうなるくらいなら、私も!」
デスゲームの世界に一緒に行く。そう言おうとした彼女に対して、マナは彼女の身体を抱きしめて言った。
「亜久里ちゃんはダメだよ」
「どうして!」
「亜久里ちゃんは一人じゃないでしょ? おばあちゃんや隠居している王様のお父さん。それに、レジーナだって。亜久里ちゃんには、この世界でやるべきことがまだまだたっくさんあるよ」
元トランプ王国王様であり、トランプ共和国となったために隠居した元王様、元国王と彼女たちとの関係についてはかなり複雑になるのだが、しかし元国王にとっては、亜久里とレジーナ、そしてアイちゃんはまさしく娘であると言っても過言ではないのである。
しかし。
「そんなの、マナや六花だって同じことですわ!」
そう、マナや六花にだって、ありすにだって家族がいる。待っていてくれる、心配してくれる人間たちがいる。それなのに、ソレを理由にして亜久里にはSAOに行ってもらいたくないと言うのは、明らかに矛盾している。マナもソレを理解していたのだろう。
「確かに、でもでもね、亜久里ちゃんにはもう一つ、大切なものがあるじゃん」
「え……?」
大切な物、それは一体何なのか。周りの仲間たちもまた興味があった。もはや、傍観者的な立ち位置になってしまっているプリキュアの仲間たち。でも、きっとそれはマナから与えられた自分達への考える時間、自分たちもSAOに赴く決断をするのかどうかを決める大事な時間を与えられたのかもしれない。
「大切な小学生としての時間、そして……私たちが歩んだ中学生としての時間を失ってもらいたくないの」
「え……?」
そう、円亜久里はまだ小学六年生。もう数か月で卒業して、中学校に進学する予定の女の子。マナはさらに言った。
「小学生としての今は、今しか体験できないことだから。中学生の未来は、今しか体験することができない未来だから。その先も、ずっと先も……だから、亜久里ちゃんは」
「勝手すぎます! マナだってもう高校進学が決まっていると言ってたではないですか! 来年高校生としての第一歩を踏み出すのだと、言ってたじゃないですか、六花も、ありすも!」
と、亜久里は泣きながらに言う。そう、この時点でマナも六花も推薦での高校進学が決まっていた。ありすもまた同じく、今度はマナ達と同じ高校への進学が決まっていたのだ。けど、もしもSAOの世界に行ってしまったらその推薦入学の話も無しになってしまうじゃないか。彼女たちの学校生活が、高校生活がなくなってしまう。
それなのに、自分には小学生としての義務を、中学生としての生活を楽しんでもらいたいなんて、勝手が過ぎる。そう、亜久里は言うのだ。
が、マナはそれに対して自信満々に言った。
「高校生は、何歳だってできる! 例え、二十歳になっても、三十歳になってもね!」
「マナ……」
「ふふ……」
「あの子らしいわね」
この言葉に、周りの女子勢が全員その説得方法があったか、とでも言いたげな目でマナの事を見る。
確かに彼女の言う通り高校生というのは中学校卒業程度の学力があって、更には≪十五歳≫以上であればだれでも入学することができる。勿論、部活動には入れないかもしれないが、とにかく世の中には三十五歳で高校生になったと言う女性もいたりすると聞いたがあるので、彼女の言い分も分かると言えば分かるかもしれない。
だが、小学生、中学生というのは日本では義務教育課程。エスカレーター式、というのはすこし語弊があるかもしれないが、例え熱を出して学校を欠席していたとしても、例え今回のようにSAOに囚われてしまったとしても勝手に年齢とともに進学してしまう。つまり、過ぎ去った小学生としての、そして中学生としての時間は二度と帰ってこないのだ。
「私たちは、もう十分中学生を満喫した。だから、亜久里ちゃんには、私たちが経験した中学校生活を体験してもらいたいの! お願い」
「マナ……」
亜久里は自嘲するように笑った。
「分かっていました。私だって、六花と同じ。例えマナになんて言っても、絶対に折れてくれないと言う事を……マナ、六花、ありす。プリキュア五つの誓い、忘れないでください」
「勿論!」
プリキュア五つの誓い。それは、円亜久里が提唱したいわゆる、≪アイノカタチ≫と言ってもよい物。
「一つ、プリキュアたる者、いつも前を向いて歩き続ける事」
「一つ、愛することは守り合う事」
「一つ、プリキュアたる者、自分を信じ、決して後悔しない」
「一つ、プリキュアたる者、一流のレディたるべし」
「「「「一つ、愛は与えるもの」」」」
そして―――。
『一つ! みんなで力を合わせれば不可能はない!』
「だったわね、マナ」
「ほのかさん、皆……うん!」
最後の一つ、というかプリキュア五つの誓いであるはずなのに六つあることに関しては、マナが勝手に付け加えた物であり、そしてなおかつ、いうなればドキドキプリキュアの五人全員に当てはまる誓いたるもの。いや、プリキュアとして全員が胸に刻み込んでいること、マナたちが伝えていた言葉であった。
だから、その場にいた大福を除いた全員がその最後の言葉を大声で声を合わせて、そして笑いあった。こんなにも、デスゲームに向おうとしている子たちを、笑って見送ることができるなんて、大福はある意味関心と、彼女たちの中に芽生えている信頼感にちょっとした嫉妬感、と同時にその信頼が自分から大岩に対してのソレと既視感のようなものを覚えていた。
本当は、彼女たちを説得しようと思って来た。彼女たちの人生がこれ以上滅茶苦茶にならないように、交渉に来たはずだった。でも、無駄な事、必要のない事だったのかもしれない。
彼女たちは覚悟ができている。勇気を持っている。今の彼女たちを止めることは、例え天変地異が起こったとしてもできないこと。大福はソレを再確認すると、セバスチャンに大福のお代わりを申し出るのだった。
「さて、それじゃあと三つは誰が持っていく?」
「まず、亜久里と同じ小学生のアコは除くとして……」
「……」
と最速で候補から消えたのはスイートプリキュアの小学生プリキュアである調辺アコである。で、あるためにこちらも、亜久里とほとんど同じ理由で除外。
「それじゃ私!」
「ひめはだめ」
「なんで!? 私だってめぐみやゆうこを助けに行きたいのに!」
あともう一人、ひっそりとSAOをプレイしていた人間も、と心の中で呟いたひめにたいして六花が言う。
「あのね、貴方自分の立場分かってる?」
「へ?」
「海外の、それも一つの王国の姫がデスゲームの中で何かあったら日本がどんな非難浴びるか分かった物じゃないでしょ」
「あぁぁぁぁ……」
と、そういえば自分ってその名前の通りひめだったなぁ、となんとなく思い出したひめ。本名『ヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイ』。確かに六花の言う通り一国のお姫様に何かあったとしたら、国際的な大問題陥る可能性がある。そうじゃなくてもデスゲームに囚われたと言うだけで何らかの事件に発展する恐れがある。
ということで彼女の除外されるとして、だ。
「私は遠慮させてもらうわ」
「かれんさん?」
意外なことにここで拒否権を発動させたのはプリキュア5の一員である水無月かれんであった。彼女の場合、妖精以外の仲間四人をSAOに囚われているから真っ先に向おうとすると思っていたのだが。
「私、今あるバンドのキーボードのサポートに入っているの。だから、そのバンドと、ボーカルの子のためにも、ね」
「バンド?」
「あぁ、あのバンドね」
と、隣にいた美希が言った。そう、彼女の言うバンドとは勿論『グロウィングアフターティータイム』の事だ。確かに現在のキーボードは環で、彼の性格ならきっとその場を譲ることはないだろう。
ある場合を除いて。そして今回そのある場合が発生する可能性がある。なので、彼女はこの世界に残ることにしたのだ。
大丈夫。仲間たちだったらきっと、生還してくれるから。自分の助けなど必要ないから、そう信頼して。
「私も、アイドルに誘われていますので今回は……」
「へぇ……」
という事で、アスミもまたSAOに関してはパスをする様子―――。
「ってえぇ!? アイドル!!??」
と、軽く流そうとしたところでひめが思わず声を上げてしまった。
余談だが、実はプリキュア陣営、ほとんどのリアクション担当&ツッコミ担当と言ってもいい人間がSAOの世界に行ってしまっているため、こういったものができるのはほとんどひめだけになっているのが現状、となっていたりする。
「はい、765プロさんというところから誘われて」
「……」
「はぁ……本当の事よ。私もその場にいたから」
と、ことの真相を確かめるためにアスミと同じプリキュアチームの残った一人であるちゆに目線で確認を取ったらそんな返答が来た。
「まぁ、本当にアイドルになるかどうかはアスミにアイドルって言うのがどんなものなのかを教えてから決めるけど……」
「皆様もどうですか? アイドルになられては」
「い、いやぁ……」
「私は遠慮するわ。もう、そっちの世界には区切りをつけたから」
というのは、元子役で、少し前までメディアでの露出も多かった薬師寺さあやである。アイドルと女優。少しだけ違うとはいえもう自分はその世界から離れる決心を付けた。自分にはもう関係のない話。
関係のない、話。
「あの、話が脱線してますけど、SAOに関しては?」
「あ、そうだった」
と、大福に言われてようやく本題に戻った少女たち。だが、残る面子は、やはり悩んでいるようだ。自分の人生と、仲間たちを信じると言う思いを天秤にかけ、果たしてどちらを取るべきなのかと。
そんな時、だった。
「あの、私に一つ、考えがあるのですが」
「え?」
ある少女が、手を挙げたのは。
プレイヤーNo.213(DRPNo.2) 相田マナ(???【???】)≪原作:ドキドキ!プリキュア≫
プレイヤーNo.214(DRPNo.3) 菱川六花(???【???】)≪原作:ドキドキ!プリキュア≫
プレイヤーNo.215(DRPNo.4) 四葉ありす(???【???】)≪原作:ドキドキ!プリキュア≫
作者自身が思ってた、多分SAOの世界に行きたがるだろうな枠その2。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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