SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第十七話

 天草シノは、ボイスレッスン中に心ここにあらずだった状態の自分を恥じた。

 あのバンド、≪グロウィングアフターティータイム≫のボーカルとしての居場所を手に入れた彼女。その後、自分の歌声を岩沢や柿崎たちに追いつけるかどうかは分からないがしかし、なんとか彼女たちと肩を並べるくらいになりたいと、自己的にボイスレッスンに通い始めたのだ。

 そこは、多くの芸能人を輩出した事でも有名で、授業料もかなり高いレッスンスタジオだった。運が良かったのは、バンドの仲間の一人に環がいたこと。そして彼に相談を持ち掛けたところ半額のレッスン代を出してもらえたことだ。全額負担しようとまで言われたのだが、それは断った。

 自分は、環の事を仲間の一人として見ているのだ。ATMとして見ているわけじゃない。だから、半額出してもらったそのレッスン代も後になったら返す予定にしている。

 そしてレッスンスタジオの先生に、自分の歌声を聞いてもらった感想は、驚くべきことに今現在の状態で歌手としてデビューしても〇コ〇コ、違ったそこそこの歌声なのだ、と言う事だ。元々生徒会長として常日頃から腹の底から声を出し続けていたことか、とあることで体力が付いていたことも理由にあるのだろう。

 とにかく、自分はダイヤモンドの原石の一つだと、そう言われた。勿論、シノはそれが自分の自己肯定感を上昇させるためのおべっかであることを知っていた。でも、それでも彼女は自信を持ってレッスンに臨んでいた。

 と、彼女は思っているのだが、実際に彼女の声は一流と言っても過言ではない物だった。レッスンの先生の言葉は真の物だったのだ。これは、磨けば伸びる逸材、そう先生が思ったのは間違いない事。それこそ、成長途中の桜の木のように、少しの手入れを加えるだけでさらに伸びることができる、成長することができる。そんな彼女の秘められた実力を伸ばすためにレッスンはかなり厳しいものとなった。

 だが、それでもそのレッスンをこなすことができた。やはり彼女が生徒会長として数多くのタスクをこなしてきたその結果なのだろう。

 いや、もう生徒会長ではない、か。

 実は彼女は前の中野梓に関わる事件を機に桜才学園の生徒会長を辞任したのである。元々受験直前というこの時期まで生徒会長をやっていたのがおかしかったほどで、本来ならもう少し前に生徒会長を辞任していたはずの彼女。

 しかしSAO事件によって居場所を、仲間を奪われた彼女にとって、あの生徒会室は彼女の唯一の居場所となってしまった。だからそれをくんで多くの先生たち、そして時期生徒会長として選ばれていた人物―本当は津田がなるはずだったため補欠選挙のようなものが開かれていた―からは辞任を保留してもらっていたのだ。

 自分の、アイデンティティともいえるソレを守ってもらっていたのだ。

 でも、もうそんなもの必要ない。自分には新しい居場所が、いてもいい場所ができたから。いてもいいと、そこで、仲間たちの帰りを待っていてもいいと言える場所ができたから。だから、彼女は辞任した。

 生徒会役員、生徒会長天草シノを、引退したのである。

 これで心置きなく歌の練習ができるなと思っていた、そんな矢先の事だった。あの、茅場晶彦の声明が、ディレイログインの話が出てきたのは。そして、彼女は戦慄した。その言葉が通ずる先にある物を。

 そう、自分は持っている。ナーヴギアも、SAOも。本当だったら、警察に渡さなければならないかもしれないその二つ。だが、彼女を含めた多くの人間たちはソレらを警察に渡すと言う事を拒んでいた。

 何故かは、彼女たちも分かっていなかった。でも、もしかしたら気がついていたのかもしれない。いつかは、こんな日が来るだろうと、いつかはSAOプレイきっかけとなるソレが起こるのだろうと。今回の茅場晶彦による犯行声明が、そのきっかけ。

 これを逃すと二度とSAOの世界に行くことはできなくなってしまう。仲間たちと会うのが、また遅くなってしまう。仲間たちに会いに行けるチャンスが、無くなってしまう。

 どうすればいいのか。天草シノは一晩悩み続けて、寝不足になってしまっていた。そしてそんなコンディションでレッスンに行っても良い結果が出るはずもなく、理由を伝えて、今日のレッスンは少しだけ短めにしてもらった。

 先生に謝罪して、自分の家に歩を向ける中、彼女は考えていた。

 果たして、自分は、自分の居場所をどこに向けるべきなのだろうかと。

 SAOか。

 それとも、グロウィングアフターティータイムというバンドの、セカンドボーカルとしての立場か。

 そう、自分はあのバンドの中心ではない。中心と言う立ち位置は、そのバンドごとによって違うかもしれないが、少なくともグロウィングアフターティータイムはメインボーカルの岩沢雅美と、中野梓と言う女の子を中心としているバンドだ。

 さらに言えば、結成目的がかなり特殊であったため、元のバンドではギター&ボーカルを務めていた柿崎も含めて、三人ボーカルがいると言う異色のバンド。その三人の中で、一番音楽に造詣が深くなかったのが、自分だった。

 今なら、まだボーカルも生徒会長としての立場と同じくして避〇、ではなく辞任してもいい。だが、そんな生半可な覚悟であのバンドのボーカルを務めようと思ったのか。そんな覚悟を持って、ボーカルとしてのレッスンスタジオに通い始めたのか。

 そんなわけない。自分は、自分の居場所を、いてもいい場所を、あのバンドに見つけたのだ。だから自分はここにいるのだ。ここにいたいのだ。変えの利く人間であることは知っていてもなお、それでもここで仲間たちの事を待っていると誓ったのだ。

 でも、それでもと思う。あのナーヴギアとSAOが、家にある限り、自分は決してSAOをプレイしないとも言い切れないと、あの世界に行きたいと言う欲求が満たされることはないと。勿論欲求と言っても○欲ではない。等と彼女は心の中で自分自身に対して突っ込むと言うある意味高度なプレイをしていた。

 

「私は、どうすればいいのだ……アリア、鈴……津田……」

 

 シノは、≪元≫生徒会役員の三人の名前を呟きながら空を見上げた。空は、青空、とまでは呼べないどんよりな天気をしていた。自分の心と同じだ。二つの相反するソレが混在する心と全く、同じ。

 そう、あのナーヴギアとSAOが自分の家にある限り自分の心がSAOから離れることはないと分かっていた。でも、それでも彼女は手放さなかった。手放せなかった。それが、仲間たちにつながる一本の細い糸だと知っていたから。だから彼女はソレらを手元に置き続けた。あたかも、仲間たちとの思い出の一つであるかのように。

 もがき続け、あがき続けて手に入れた居場所と、仲間たちというかつてとまた同じ居場所。

 自分がいるべき場所は、果たしてどこなのか。どうすればいいのか。どこに向えばいいのか。心も、身体も、迷い続けていた。

 そんな、時だった。

 

「メール?」

 

 彼女のスマホが鳴ったのだ。どうやら、≪グロウィングアフターティータイム≫のメンバーで情報交換をするためのモバイルアプリにもたらされた情報であるようだ。ここには、梓や柿崎達、それからバックアップメンバーやその創設に協力してくれたキラメイジャーの≪二人≫。今はまだ手術後であり、なおかつ携帯を持っていない岩沢も、後にそのメンバーに入れる予定の、その通信モバイルアプリに、ある、一つの言葉が流れて来た。

 それは―――。

 

「え……」

 

 彼女にとって意外な、でもどこか納得する文言だった。

 なお、余談ではあるが彼女がそのメッセージを受け取ったのは、ある≪教会が存在している学校の前≫、だったそうだ。




 シノに関しては夢の中であるとは言えアイドルとして様になっていたので、歌唱力は十分であるとさせてもらいました。
 それと、シノから生徒会長と言う最大のアイデンティティを無くしたのですが、しかし彼女の年齢とSAO攻略までの時間考えたら絶対にその時が来るし、なんなら時期的にそうなってて当たり前、みたいな部分があったのでここで書かせていただきました。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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