SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第二十話

「アンタの所にも来た? SAOとナーヴギア」

「え……」

 

 一瞬、彼女は鼓動が速くなったのを感じたという。

 明石薫が通っているのは、極普通の中学校。そう、日本中どこにでもあるような普通の、エスパーとノーマルが混在している普通の学校だった。

 少し違っているところと言えば、自分たちザ・チルドレンのエスパーが、日本で三人しかいない超度7であることを学生も、先生も知らないと言う事。

 それから、エスパーテロリストとも言うべき集団、パンドラのメンバーが通っていると言う事。と言っても、もはやテロリストとしての実態はないに等しくて、本来その人間たちを取り締まるべき自分達とも親友と言っても良い間柄になって仲良くなっていると言うのが現状なのだが。

 でも、その友達もまた、一人いなくなってしまっていた。パンドラからも、一人SAOの世界に連れていかれてしまったのだ。パティ・クルー。パンドラに所属している、ちょっとマニアックな趣味を持っている女の子。でも、一緒にいるとなんだかやっぱり楽しい女の子。

 でも、その子も、仲間二人も、そして同じエスパーだけど自分たちの正体を全く知らない普通の友達である千里も、ここにはいない。

 寂しい物だ。前々から仲の良かった人間がいなくなると言う事は、空白となった椅子と机を見ていると改めてそう感じる。そう思いながら席に付こうとしたその瞬間だった。背後からその言葉を吐かれたのだ。

 

「澪……それって、まさか……」

 

 その言葉を残したのは、パンドラのメンバーの中でも自分達が一番古くから知っている女の子、瞬間移動能力者の筑紫澪だった。

 そして、その言葉の意味なすものを察することのできない薫でもなかった。本当は詳しくその話を聞きたかった。でも、周りにはクラスメイトがたくさんいるし、自分たちの正体を完全に隠している状態で本音でしゃべるにはあまりにも状況が悪すぎたのだ。

 

「昼休みに屋上で話して、澪……」

「……」

 

 という事で、薫はやや苛立った怒気を込めた言葉で澪に言った。薫のその言葉に、本当だったらもっと話をよく聞きたかったであろう澪はしかし、これ以上しゃべると何が飛んでくるか分からないと言う恐ろしさを感じ取り、その場から引くことにした。

 それから四時間近く、薫は心ここにあらず、と言った感じだった。授業の内容も、教科書の内容も頭に入ってこない。枯れた木を全力で倒そうとする木枯らしのように、涼やかで恐ろしい嵐のようにすべてを聞き流していた。

 途中で先生に当てられたり、注意されることはなかったのかと疑問に思うかもしれないが、実際には先生もまたそんな彼女の怒気に当てられていたのだろう。何も言う事もできずに彼女の苛立ちを許容するしかなかった。

 そして、待ちに待った昼休み。彼女は澪、そして同じパンドラの人間であるカズラとカガリの二人、そして自分と同じバベルに所属して、自分の隣の家で暮らしているバレットとティムを連れて屋上へと向かった。

 ドアを固く締め、誰も外に出て来れないようにと鍵を≪無理やり≫閉めた薫は、澪に聞いた。

 

「朝の……どういう事、澪……」

「……言葉の通りよ。私と、それからカズラにも届いたの。SAOとナーヴギアが」

「カズラの所にもッ!?」

 

 その言葉に、隣にいたカズラ、本名玉置カズラが頷いた。と言っても、それはパンドラによってつけられた偽名であることは知っている。そして、本当の名前がなんだったのか、そもそも名前があったのかも彼女自身が知らないのだ。それは澪や、パンドラに所属する多くのエスパーが同じこと。

 彼女は、基本的にはテレポートを基本とした合成能力者で、身体を触手のように自在に変化させる空間変異と言う物を使い、更には接触感応能力まで使えると言う女の子だ。

 

「そう。私たちが住んでいるロシア大使館、そこに私たちに届いたのよ」

「それも二人の名指しでな」

「私と同じだ……」

 

 そこには、まさしく薫に届いていた時と同じ、澪とカズラ以外の二人が使用すればマイクロ波で脳を焼き切るという文言が付いていたダンボール箱が届けられたのだという。自分の時もそうだが、どうしてわざわざそんな手紙を送付する必要があったのだろう。薫の疑問にバレットが答える。

 

「恐らくそう付けなければ、他の人間が使用する可能性もあったから、だと思われます」

「え?」

「なるほどな。確かに、バベルにもパンドラにも沢山の人員がいる。そのメンバーに使われたら元も子もないってことか?」

 

 バレットに次ぐようにカガリも言った。確かに彼の言う通りだ。もし仮にそれが自分に届いたとしても、ソレを自分が使うとは限らない。他の人間。そう、バベルで言うなら桐壺局長辺りが使ってもおかしくはないのだ。というか、絶対に使う。それを防ぐために名指しで使命をしたのだとしたら辻褄は合うだろう。

 因みに、桐壺に関してはザ・チルドレン含めたバベルのエスパーをSAOに閉じ込められたことがよほどショックだったらしく、ここ三週間は寝込んでしまっているそうなのだとか。なので、現在バベルの運営はその秘書である柏木がしているらしい。

 それはともかくだ、これで茅場晶彦の思惑ははっきりと分かった。

 

「私や澪、カズラ……そして、皆本を確実に捕えるための……罠?」

「皆本!? 皆本の所にも来てるの!?」

「う、うん……」

 

 澪がそれまでのややクール寄りの側面からはみ出して大声で言った。実は以前、皆本は澪に拉致監禁されたことがある。が、そこで食事がインスタント食品に偏りすぎだとか、化学調味料の取りすぎで味覚障害が起こっているとか、挙句には彼女の服の洗濯をしたりとか、まるで澪の保護者のようにふるまって以来、意外と仲がいいと言ってもいいのだ。

 

「皆本は、言ってた。SAOの世界に行くんだって。きっと、葵や紫穂を取り戻すために……」

「……あんたは、どうすんの?」

「私は、皆本から絶対にプレイするなって言われた。確率変動値7の事件が起こったらどうするんだって……」

 

 ソレを聞いた澪は、あきれたように口から息を吐くと言った。

 

「しょうがないわね。なら、私も行くことにする」

「え?」

「今朝までは悩んでた。その、パティーはパンドラの仲間ってだけで、友達、ってわけじゃないけど、その……アンタの代わりってことで行ってあげるわ!」

「澪……」

 

 そっか、本当はパティーを助けに行きたかったんだね。でも、理由が欲しかった。素直じゃないから。ド直球でパティーの事を助けに行きたいなんて言えなかった。だから、何か一つでも、SAOの世界に行く理由が欲しかった。そうなんだよね。

 

「しょうがないな。澪が行くって言うのなら。私だって参加するわ」

「カズラ!? 本気か!? だって、今朝までは」

 

 と、カガリが焦ったように言う。しかし、そんな彼に対してカズラは一言。

 

「確かに私もそんな気はなかったけど、でも……澪一人じゃ何しでかすか分からないし」

「な、なによその言い方!」

 

 薫は感じ取っていた。この子も、そうだったのかと。理由が欲しかったのかと。パティーを助けに行く、その名目が欲しかったのかと。

 

「いいな、二人とも……自分で決めることができて」

「薫……」

「……」

 

 二人は、パンドラという組織に所属しているとはいえ、実質その行動に関しては自由選択が許されている。故に、今回のようにデスゲームと言う危険極まりないことに関しても自由意志での参加が許されているの。

 例え、危険が待っていたとしても。

 対して自分はどうだ。バベルという国家組織に縛られ、日本という大きな国の平和を守るために自分の力が必要だとこの世界に残らされることを強制させられて、自分の意思を貫くことが、仲間たちを救いに行くことができない。

 本来、テロリストのはずのパンドラ。

 本来、正義の味方と言われるバベル。

 でも、その正義の味方であるが故に行動を制限されるのなら、自分は本当に正義の味方であり続けていいのか、あり続ける意味があるのか。そのために、大事な人を救いに行けないのなら、大事な人たちがその世界に入ると言うのなら、自分は。

 何のために、バベルに所属しているのだろうか。

 自分は、どうすればいい―――。

 自分は―――。

 と、その時だった。

 

「!?」

 

 薫の腕に付けているリミッター兼通信機器が鳴り響いた。これは、腕時計型をしているためあまりそれを付けていても目立たない代物であり、通信機器としても有用な物なのだ。

 ソレに連絡が届いたということは。

 

『薫!』

「皆本!?」

『今、バベルから連絡が来た! 変動超度7! 現場は郊外にある採石場だ! 至急向かってくれ、俺もすぐ向かう!!』

「ッ!」

 

 やっぱり、自分はずっと縛られている存在なのだ。ずっと、ずっと、ずっと―――。

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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