SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

3 / 361
hack//死亡遊戯(元タイトル:SAO×.hack)

 この場所に来るのは久しぶりだ。オレンジ色を基調とした服と頭巾、そして青色の髪の少年は、そのエリアのゲートを背にして感慨深く思っていた。

 ヨーロッパ風の見た目は、あの世界とあまり変わらないが、こちらの世界は懐かしさがあった。

 それに想像力も沸き立たせる。もしも、この世界が本当にあったらどんな匂いなのか。風が当たったなら、それは涼やかなのか、暖かなのか。もしも日が照り付けていたのなら、きっと暑いだろう。そして虚構であるこんな世界が、本当あったとしたら、ワクワクするだろう。

 いや、自分は知っている。この世界とは違う物の、異世界にはそんな景色があったことを。そして、その世界で戦ったということを。

 この世界で、彼は戦った。その世界を脅かし、多くの人間に恐怖を植え付け、奪おうとした存在と。そして彼、いや彼らは英雄となった。その世界を救った英雄に。

 そして、英雄に待っていたのはまた別の世界だった。待っていたというより、巻き込まれたという方が正しいが、その結果彼は二度も多くの世界を舞台とした戦いを経験し、そして帰ってきた。

 この世界。『ザ・ワールド』に。

 

「皆は元気にしてるだろうか?」

 

 彼が久しぶりの世界で最初に思ったこと、それはこの世界で出会った仲間たちの事だった。

 『ザ・ワールド』で発生した大事件、それを共に解決へと導いた仲間たち。ある事情によって一か月ほど連絡を取っていなかったのだが、どうしてるのだろうかと気になっていたのだ。

 

「久しぶりね! カイト!」

 

 そんな時、後ろにあるゲートが機動し、PC―この世界におけるプレイヤーの事―が一体出現した。彼、カイトは振り返らなくてもそれが誰なのか分かっていた。笑みを浮かべ、振り向いたその先にいたのは女性型のPC。褐色の肌に模様が描かれたそのPCは、このザ・ワールドにおけるPCのデフォルトキャラの一つだ。女性型としたのは、時折ネカマといって現実とゲーム世界での性別を逆にさせて遊んでいるPCがいるからだ。しかし彼は知っている。彼女は間違いなく女性なのだと。あの事件で知り合い、そしてリアルでも合うようになったその少女のPC名を、カイトは嬉しそうに言った。

 

「ブラックローズ!」

 

 ブラックローズ、この世界でできた最初の友人であるPCだ。

 

「元気してた?」

「あったりまえでしょ! っていうか、連絡ぐらいしなさいよ」

「ごめん(笑)」

「まぁ、βテストの期間中は向こうに集中したいからっていうのは知ってたけど、せめてメールの一つくらい送りなさいよ」

「うん、でもおかげであのゲームにのめりこむことが出来たよ」

 

 カイトはこの一か月『ザ・ワールド』にログインすることは無かった。その理由は、先ほどブラックローズが言った通りにあるゲームのβテストに参加していたからだ。

 βテストとは、まだ発売前のゲームを少人数のプレイヤーに遊んでもらい、バグはないか、操作性はどうか、敵は強すぎないか等多くのプレイヤーが困ることなくプレイできるようにいわばシミュレーションしてもらうためのゲーム会社が行うイベントのことだ。

 彼は、今日本中で注目の的となっているあるゲームのβテストに参加していたのだ。日本全国の応募に対してたった千人しかない枠に入り込めたのは奇跡ともいえるのだが、ともかくそのおかげで話題のゲームをいち早くプレイすることが出来た。

 

「で、どうだったの? 世界初のフルダイブ型RPG,ソード・アートオンラインってのは」

 

 ソード・アートオンライン、通称SAO.ナーヴギアというヘッドギアを用いてゲームの世界に自分の意識を入り込ませるそのゲームは、世界で初めてのMMORPGとして注目を集めていた。ザ・ワールド自体VR技術の発展によりまるでその場所にいるかのようにゲームをプレイできるということで注目を集め、今では2000万人以上のプレイヤーがいるゲームだ。しかしSAOはそのさらに先を行くゲームなのだ。

 ザ・ワールドは確かに視覚と聴覚はゲームの世界に入り込むが、しかし操作となるとコントローラーが必要だった。だがSAOは違う。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、五感の全て、そして意識までもがゲーム世界に入り込み、実際に自分の身体を動かす感覚でゲームを楽しむことが出来るのだ。

 そんな革新的なゲームであるために世間のゲーマーは、いやゲーマーだけではない多くの人間が注目した。それだけではない。その販売方法がさらに注目された。

 

「すごく楽しかったよ。あ、そういえばブラックローズは予約できたの?」

「予約どころかじゃないわよ抽選よ抽選。それも倍率数十倍の超レアアイテムなんだから」

「まぁ、そりゃそうだよね(笑)」

「だいたい、初回販売本数たったの1万なんて、しぶりすぎよ!」

 

 そう、このゲームこれだけの注目度があるにもかかわらず、初回販売個数がたったの1万個しかないのだ。そこはあまりにも高性能を求めすぎた結果在庫をそろえることが出来なかったのか、はたまた逆に数を絞ることによってその希少性をさらにあげるためだったのか。

 とかく、そのために多くの人間がそのたった一万の為にいたるお店で少なく販売されているゲームの予約に飛びついたのだ。

 おまけに、一万といってもその内の千個はβテスターに行き渡っているためにもっと競争率は高くなる。それこそ、血で血を洗うような戦いがあらゆるところで行われているのだ。

 

「それじゃ、ブラックローズは予約できなかったって事?」

「そう思う?」

「え?」

「なんと! 東京の端っこにあるゲーム屋さんで一つ予約できました!!」

「本当に!? すごいじゃないか、おめでとう!」

 

 あまりにも希少性の高いゲームであるために彼女も手に入れることができないという事も考えられたため、これは朗報だ。新しくプレイするゲームなのだから、それがなんであったとしても一人でも多く知り合いがプレイしてくれるというのはうれしい。

 

「みんなは、ゲットできたのかな?」

「すぐに聞いてみましょう。全員ログインしているらしいから」

「そうだね」

 

 彼らのいうみんな、全員というのかつて彼らがが遭遇したこのネット世界の危機に対してともに戦った仲間たち、通称『ドットハッカーズ』のことだ。カイトは、そのドットハッカーズのリーダーだった。いや、正確にはいつの間にか彼の周りにたくさんのPCが集まっていたという方がいい。そんな仲間たちも一部を除いてゲーマーと言われる存在。なので、この件のゲームにも注目し、それぞれが手に入れるために奮戦していたのは、カイトも知っている。果たして、彼らは手に入れることが出来たのか、カイトとブラックローズは、水の都『マク・アヌ』にいるはずのドットハッカーズの面々を探すことにした。

 そして、それから約二時間が経った頃、SAOを手に入れることのできたメンバーだけで話し合うことになった。結論から言って、SAOを手に入れることが出来たのは、カイト、ブラックローズの二人を含めて5人だった。

 

「へぇ、それじゃミストラルは、旦那さんが手に入れてくれたんですか」

「うん、このザ・ワールドにハマったなら、こっちも遊ぶべきだって(/≧▽≦)/」

 

 まず一人目はミストラル。僧侶のような格好をしたPCで、まるで少女のような見た目をしている。しかしその外見は裏腹に現実では子育てを元気にこなしている母親である。

 以前の事件では妊婦の状態で参加して、一度お腹の子供のことを考えて離脱したこともあったが、しかしカイトのことを助けるためにもう一度ログインし、事件解決のために奔走した、ドットハッカーズの仲間の一人である。

 

「きっとミストラルも気にいると思うよ」

「うん、楽しみにしてるね(≧∇≦)ノ」

「でも、ミストラルはいいとしてあなたはちょっと意外ね」

「え?」

「あ、でもザ・ワールドもお父さんからの花嫁修業にって進められたんだから、今回もそうなんじゃないのかな、ねぇ寺島良子」

 

 寺島良子。天使風の格好をしたPCだ。以前の事件に参加したのはやや遅めであり、さらにネット初心者だったPCだ。彼女のPC名がまんま本名であるのは、初心者故個人情報を隠さなければならない必要性を理解していなかったためである。このザ・ワールド自体も昨今の女性はネットくらいできなければならないという父による花嫁修業の一環として贈られたものだそうだ。だから、今回もそれなのかとカイトが聞くと寺島良子は笑みを浮かべならな言う。

 

「はい。どうやら、父がSAOの開発に出資していたそうでそのお礼で……」

「お礼って?」

「聞いたことがある。SAOを作るのには一つのゲーム会社が払うことのできないほどの予算がかかったって。だから、日本中の企業や財閥にお金を出資してもらうように頼んで、そのお礼で出資者にはSAOとナーヴギアを無料配布したって」

「はぁ!? 何それ、ずるいじゃない。こっちがどんだけ苦労してッ!」

「まぁ、出資者の何人かは断ったって話だし、その人たちのおかげでSAOをプレイできるんだし、いいじゃない」

「そうは言うけど……」

 

 不満はまだ尽きないものの、しかしカイトの言うことももっともだ。それに、そのおかげで寺島良子もSAOをプレイできるのだから良しとしよう。

 これで、SAOをプレイする五人中四人の説明が終わった。残った一人は、カイトの目の前にいる翼の生えた騎士風のPCだ。だが、カイトはその人物がSAOをプレイするというのが寺島良子とはまた別の意味で少し意外だった。

 

「でも、まさかバルムンクまでSAOを予約してたなんて」

「同じVRゲームであるSAOは、ザワールドのライバルでもあるからな。少し見ておいていいと思ったんだ」

 

 バルムンク、通称蒼天のバルムンクの異名を持つザ・ワールドのPCの中でも古参のプレイヤーの一人かつ、屈指の実力者である。そんな彼のザ・ワールドに対する愛情は尋常な物ではなく、ただの一プレイヤーであるにも関わらず前の事件ではいの一番に誰よりも早く事件の調査を始め、時にカイトやCC社のリョース、ハッカーであるヘルバとも対立を繰り返しながらも最後には分かり合い、事件解決のために共に奔走したのだ。

 そんなザ・ワールドのプレイヤーの中でも一番ザ・ワールドを愛しているであろう彼が別のゲームをしようと考えるということが、カイトたちには意外だったのだ。

 

「俺も、いずれはCC社への就職を目指している。その時にザ・ワールドの機能改善のための手段が見つかるかもしれない。そのために、視点を広げる必要があると考えただけだ」

「そっか……」

 

 バルムンクは、未来を見ているのだ。今自分が楽しんでいるこのザ・ワールドをさらにより良い物発展させる。そのための方法を色々な場所から探ろうとしているのだろう。そして、その一つとして選んだのが、SAOをプレイするということなのだ。

 

「サービス開始まであと一週間、待ちきれないわね」

「そうですね。あ、カイトさん。プレイヤーネームの付け方をお教えできませんか。今度は失敗したくありませんし」

「うん、そうだね。それじゃみんなで考えよう」

「(っ °Д °っ)あぁ!? もうこんな時間!? 晩御飯の用意しなくちゃ!」

「本当だ。いつの間にか長話しちゃったわね」

「それじゃ、今日のところは解散して、明日寺島良子のプレイヤーネームについて話そうか」

「はい。よろしくお願いします」

「そんじゃ、またね! カイト!」

「バイバイ!ヾ(≧▽≦*)o」

 

 そういうと、それぞれにログアウトしていく仲間たち。最後に残ったカイトは一人青空を見つめていた。

 

「SAO……そして、ザ・ワールドか……」

 

 カイトは知っている。ザ・ワールドはバージョンが変化はしたものの7年後まで残っているということを。

 彼は出会ったのだ。ある世界を巻き込んだ事件の時に、7年後のザ・ワールドから現れたPCを。そして、一部ではあったがみた。7年後のザ・ワールドを。

 

(ハセヲ、君のいた時代……SAOはどうなっているのかな)

 

 そして疑問に思った。7年後のVR技術のことを。あの時のハセヲから聞いた。ハセヲのログインしているザ・ワールドは今自分がログインしているザ・ワールドの操作方法とほとんど変わらないと。その時は何も思わなかった。しかしSAOが発表された今になってそれがあまりにも不自然だったことに気が付く。

 もしもSAOが流行したままだとすれば世の中の主流はフルダイブ型のVRになっていて、コントローラーを使用する時代は古いものとして扱われるはずだ。もしCC社一つだけが古い考えを持ったままだったとしても、ハセヲの話からするとザ・ワールドは今の時代とも変わらず人気を保っているらしいから、やはりそれを考えるとフルダイブ型のシステムが主流にならなかった理由が分からない。発売前のSAOの人気に反して、その内容がひどい物だったのか。いや、βテストのときはそんな様子はなかった。むしろ、これからはこんなゲームが増えていくものだとそんな確信に近いものがあった。

 

「なにか、嫌な予感がするな……」

「おっ! 久しぶりじゃな、カイト!」

「え?」

 

 その時、彼に声をかけるPCがいた。

以下に挙げる小説の中で見たいものはどれですか?

  • SAO ヴァルキリーズ
  • 例の作品も入れたSAOヴァルキリーズ
  • ロス:タイム:ライフ 天海春香編
  • レヴュースタァライト×まどか☆マギカ
  • プリキュア風性格まどかのまどマギ再構成
  • プリキュアオタクシンジのエヴァンゲリオン
  • 七匠オリジナル小説
  • ほかの小説の完結希望
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。