SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
かつて、某国の秘密組織が、エスパー能力者を利用したビジネスを考えたことがあった。
くしくも、それはバベルやパンドラのエスパー達が対峙した≪
対して、彼ら某国が行ったのは、日本に追いて、エスパーの中でも特出した力を持ったエスパーをスカウト、そして洗脳することによって人間兵器とする事だった。
特出した力、エスパーの中でもそう言われる存在など超度7の薫たちくらいじゃないか、そう思われるかもしれない。
しかし、いたのである。一人、バベルも、日本政府も、パンドラですらも把握することのできなかった一人の合成能力者が。
幼い頃からその力に悩まされ、周りの人間からは気持ち悪いと迫害を受け、拒絶され、世界中を憎んだエスパー。
しかし、とある先生によって勇気づけられて、自分の力を正義のために、自由のために使うと決めた、いわば、≪四人目の超度7≫。その名前は。
「初めまして。俺の名前は、風田三郎。自由のために戦っている≪少年同盟≫の一人だ」
「少年、同盟?」
「そっ、私は小牧瑠美。で、こっちにいる二人が近藤大太と根津誓夫。私達は『コング』と『ネズミ』って呼んでるわ」
「シャァァ……」
「ウホッ!」
と、言うのはカズラと戦っていた女性だ。なお、少年同盟にはもう一人協力者がおり、彼らの支援をしているのだが、仕事が忙しくて来れなかったらしい。
「少年同盟とは一体?」
「……今から、そう五年前。俺たちは、≪怪人同盟≫として、ある男に集められたんだ」
「≪怪人同盟≫?」
「あぁ」
そう、彼らは本来この世界にごく普通にいるはずの超能力者だ。それぞれに力は違えども、その扱い方は違えども、それぞれにそれぞれの個性あふれる能力を持っていた。
しかし、彼らの力は他の超能力者のソレを凌駕したものであり、エスパーの力を制御するリミッターやECMも効果がない物であった。
「リミッターやECMの効果がないだって!?」
「本来、ソレらは人間のエスパー中枢に刺激を与えて、エスパーとしての力を抑える効果があります」
「けど、俺たちにはそれが効かなかった。だから、子供のころから……」
「……」
皆本も薫も、その顔を見て彼の過去に何があったのかすぐに察した。リミッターが効かないと言う事は、自分の力を制御できないと言う事。抑えきれない力で、誰かを傷つけて、怖がられて、孤独の中にいて、そんな生活を続けてきたのだろうと簡単に想像することができた。
「でも、どうしてそんな子たちがこれまでバベルに報告が上がってこなかったんですか?」
皆本が気がついたように質問する。そう、例えリミッターが使えない能力者がいたとしても、いや、いるからこそそのような人物がいると言う事だけでもバベルに報告が上がるはず。
そうすれば、自分たちバベルがすぐに何らかの措置を取ることができたはず。なのに、どうして。
「それが、全く分からないのよね」
「ウホッ!」
「え?」
分からない、どういうことか。皆本はその言葉を発した女性に聞いた。
「どういうことです、瑠美さん」
「ルビィでいいわ。そうね、その前に私たちの罪、について話した方がいいかしらね……私たちみんな迫害を受けてた。ずっと、ずっと、怖がられて過ごしてきた。その中で、私たち四人が出会って、≪怪人同盟≫として旧人類……つまり、進化していない古い人間たちを抹殺しようとした」
「なっ!?」
「けど、そんな俺たちを、ある人達が止めてくれたんだ……」
「ある、人達?」
「あぁ……」
と言いながら、三郎は手をギュッと握りしめると、目を瞑ってから、決意を込めるように再び目を開けて言った。
「元仮面ライダーフォーゼ。俺たちの元担任の先生と、元仮面ライダー部の人たちだ」
「仮面ライダー部?」
「仮面ライダーフォーゼ……」
そして三郎は語る。フォーゼの変身者である如月弦太朗と、その学生時代の友人たちで作り上げた仮面ライダー部は、卒業して五年後、再集結し、彼らが≪怪人同盟≫になるようにとそそのかした人間がいたこと、自分達が、騙されていたのだと言う事を明かされたのだと。そして、如月弦太朗が、仮面ライダーフォーゼとしての戦う姿を捨てての捨て身の説得をしてくれたこと。
そして、それ以来≪怪人同盟≫は解散し、≪少年同盟≫として、人知れず世界の平和のために戦っていたと言う。
「その少年同盟には、他にも多くの人間。俺たちを利用していた奴の言葉を借りると……≪新人類≫と呼ばれる同じくらいの年齢の仲間が集まった。俺たちは、その少年同盟の代表。みたいなものだ」
「みんな言ってた。自分たちの力に、周りの大人は誰も理解してくれなかったって、まるで、≪この世界には超能力なんて物はない≫と言わんばかりに……」
「そんなことが……」
あるのか。あり得るのか。皆本は思考を回転させる。この世界に置いて超能力者、エスパーの存在が表立って認識されるようになったのは日本で言うところの戦前から、だ。その時からエスパーは自分たちの周りにごくありふれた存在としてそこにあって、大人たちもソレを受け入れて。
なのに、どうして彼らだけが迫害を受けるような目に合ったのだ。どうしてここにいる人間たちだけが、≪新人類≫と呼ばれるカテゴリーでその≪怪人同盟≫に呼び込んだ黒幕に手招きされた。
どうして。
しかし、皆本はその答えに辿り着くことができなかった。いや、仮説はある。だが、その仮説はある意味でとんでもない理論を基にした原子物理学に置いてみても未解明の領域の話。だから、事ここに置いてそのことについて論議している場合ではない。そんな難しい話をしても意味はないと、彼は判断した。
「とにかく、俺たちはずっと迫害されてた。でも、それでも、変身できなくなった先生の代わりにこの世界を守る。それが、俺たち少年同盟の目標となったんだ」
「それじゃ、さっきの茶色い姿と青い姿は?」
と、ソレと戦っていた薫が聞いた。それに対して、三郎はニヤリと笑うと言う。
「サナギマンとイナズマン。俺が変身した姿だ」
「サナギとイナズマ……確かに、あの茶色い姿はサナギの様だったな……」
そして、それから現れた青い姿は、まるでそのサナギから解き放たれた蝶のように見えた。そう皆本は語る。
そう、それが風田三郎が真の力を発揮した姿。変身前であったとしても様々な超能力を使える彼であるのだが、サナギマンになればその身体は頑丈な外皮に包まれてどのような攻撃も通さない。
そして、エネルギーがたまった瞬間にその外皮の殻が破けるように中から青い姿をした戦士、イナズマンが誕生する。そのイナズマンの力は、先ほどの薫との模擬戦で魅せた通り凄まじいものがあり、超能力も格段に上昇する、そんな戦士だ。
「今回のSAO事件は、俺たちも独自に茅場晶彦の調査をしていたんだ」
「どうして……って聞く必要ないわよね」
と、カズラが呆れたように言った。そう、さっきから彼は言っているではないか。自由の戦士と、まるっきり人間の自由のために戦う某元都市伝説のヒーローそのものだ。
果たして、ソレをテレパシーで感じ取ったのかどうなのかは知らないが、三郎はカズラに頷くとルビィが言う。
「そこで、私たちのバックアップをしてくれてる子、今日は来てないんだけど……その子がバベルに協力を仰いだらって話になって」
「それは……すまなかった」
「え?」
「皆本……」
その言葉を聞いた瞬間。皆本はスッと彼らに頭を下げた。まるで、それが当たり前であるかのように、頑なに頭を下げたのであった。突然の謝罪に面を喰らった少年同盟の四人。皆本は、スッと顔を上げると言う。
「本来であれば子供の頃に助けてあげられたかもしれない。君たちを悪の道にそそのかす連中から、守るのは、俺たち大人の役割だったのに、それを……」
もし、彼らの存在を知ることができていたら、もしも彼ら新人類の四人が幼い頃に、バベルで保護できていたら。もしかしたら彼らを悪の道に進ませる事はなかったかもしれない。
それに、彼らの年齢とあの力だ。バベルに入ってくれれば、きっと薫達の良き先輩として違った人生を歩ませることができたかもしれない。そんな、皆本の後悔。
「ソレを言うなら、私達パンドラだって」
「彼らの事を知れたらすぐに保護していただろう。≪
「私たち、悪の道の方よね?」
「確かに」
と、紅葉、真木の二人の言葉に同じパンドラのエスパーの澪とカガリが突っ込んだ。
そう、今でこそこうしてバベルの面々と一時的な休戦を表明したパンドラであるが、その正体はさまざまな犯罪に手を出すテロリスト。
もし、そんなところに風田達が保護されていたとしても、同じく悪の道に誘われている様なもの。
少なくとも、彼らに誘われなくて良かったと、風田は心の中で思うと同時に、出会えなくて良かったという安堵も生まれる。
「顔をあげてください。確かに、俺たちは孤独でした。高校までは、でもだからこそ俺たちは如月先生に、俺たちのことを本当の意味で理解してくれる人と出会うことができた」
「そうね」
「そうそう」
「ウホッ!」
「風田君……」
出会えなかった不幸。しかし、その不幸のおかげで、如月弦太朗と言う最高の教師と、そしてたくさんの理解者を得ることができた。
それまでの孤独感、トラウマが全部吹き飛んでしまうほどの青春を味わうことができた。それで、十分だった。
そして、そのおかげでまた、こうして≪ダチ≫に出会うきっかけもできたのだ。
「改めて、俺は風田三郎です。よろしくお願いします」
と言って差し出された手。皆本はそれを握ると、彼はそこから手を様々に絡め、組み合わせ、最後には拳同士をぶつける。
「これは、俺たちの先生の友情の証です。その先生も、今はSAOの世界で頑張っているんです。だから、俺たちも頑張ります、この世界で、貴方達の代わりに」
「風田くん……ありがとう」
確かに、皆本は彼らを救う事ができなかった。しかし、一人の男が彼らを救ってくれた。道を築き上げてくれた。そして、彼らは、その道のりで今頑張っている。その先生が作ってくれた、しかし自分たちの足で、自分たちの力でしっかりと作っていった道を、仲間たちとともに。
あれだけの力だ、風田の超度は想像だが薫たちチルドレンの三人と同じ7だろう。そんな彼の力があれば、確率変動値7の事件が起きても予知を変えることができるかもしれない。
いや、彼だけではない。ルビィやネズミ、コング、少年同盟の面々の力があれば、きっと。
ふとここで皆本は隣にいる女性たちを見て言う。
「そう言えば、この二人は? 君たちの話からすると、少年同盟、というのではないんじゃないか?」
そう、確かに風田は自分たちと年があまり変わらない人間たちが新人類、少年同盟であるのだと言っていた。しかし、彼らの横に立っている二人の女性は、失礼ではあるもののどう見繕っても二十代の風田たちよりも年上にしか見えない。一体、彼女たちは。
「その通りだ。皆本君。二人の女性の内一人は、地球署の刑事だ」
「え?」
というと、一番左側にいた女性が、羽織っていたフードを完全にはぎ取った。その下からは。黄色と黒を主体とし、彼女の事を紹介したドギーと同じような服装をした人物が現れた。
「宇宙警察地球署、ジャスミン。ってことでシクヨロ」
「し、シクヨロ?」
「一体いつの時代の言葉?」
「もしかして京介とかばあちゃんと同じ能力で若さ保ってる系?」
「おだまり! 私はこれでもまだア・ラ・フォ・オだから」
じゃあなんでそんな昔のギャルみたいな言葉を使っているのだと突っ込みたくなるのだが、それ以上は彼女の眼力が許してくれなかった。
彼女の名前は礼紋茉莉花、コードネームはジャスミン。地球署に所属している特捜戦隊デカレンジャーのデカイエローである。因みに、他にも地球署のメンバーが何人かいる中で彼女が選抜された理由、それはドギーが語ってくれた。
「ジャスミンはエスパーだ。超度は6、感応能力者だ」
「感応能力……」
「それも、手袋をはめてないと能力を制御できないから超度が下げられているだけで、その力自体は超度7に匹敵するそうです」
「え? それじゃ、紫穂と同じ力を持っているってこと!?」
と、柏木の言葉に薫が反応した。それと同時に皆本は思い出していた。あの日、あの運命の会議室の中で地球署のメカニック、スワンという女性が超度7に匹敵する力を持っているエスパー捜査官がいて、その捜査官が取り調べていたアリエナイザーの頭を探ってみたのだと。
彼女の事だったのか。ジャスミンは、薫に近づくと、手袋を外して手を差し伸べる。
「そゆこと。その紫穂ちゃんって子の代わりができるか分からないけど、こっちの世界は任せて、薫ちゃんは向こうで頑張ってきて」
「あ、あぁ……」
困惑した表情でジャスミンの手を取った薫。
その、瞬間だった。
『私と同じ、私達と同じ超度7のエスパーが、二人、この日本にいたんだ。なんだか、とっても嬉しい!!』
「フフッ」
「?」
薫は、気がついていないようだ。自分の気持ちに、しかしジャスミンには分かっていた。彼女が、自分と同じ超度7の日本人に出会えたと言う事に。正確に言えば風田はまだ新人類であるために超度は測ることができないし、ジャスミンは超度7相当の力を持っているとはいえ超度6。つまり、薫の超度7の仲間が増えた、という言葉には少し語弊がある。
だが、まるで幼子のように心の中でウキウキとしている薫の心を少し読んでみると、彼女がどれだけエスパーの仲間の事を、友達の事を大事に思っているかの情報しか流れてこない。
彼女は、純粋なのだろう。純粋であるが故に、壊れやすい心を持っている。でも、その純粋さゆえに例え相手がどんな人間であったとしても受け入れる度量を持っていた。そう考えることもできるはずだ。
この子の分まで、この子の友達の分まで頑張らないとな、そうジャスミンは思ったと言う。
そしてジャスミンは薫から手を離すと言う。
「そしてそして、最後に残ったこの方は」
と、まるで殿を紹介する家臣化のような古臭い物言いに、ついうっかりフードをかぶった人物も笑ってしまったようだ。クスクスとした笑い声と共にフードの中から現れた女性。この流れからすると、やはりこの女性もエスパーなのだろうかと、薫が考えて居た時だった。
「あ、貴方は!?」
「え?」
皆本が反応したのである。知り合いなのだろうか。
「皆本、知り合い?」
「いや、少し前に資料で見ただけだ。確か僕の記憶によると、彼女は……」
と、皆本が言葉を発する前であった。女性は、笑顔を振りまきながら言う。
「アギトの会会長代理の岡村加奈。よろしくお願いします」