SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第三十五話

 全くって肌に悪い時間まで起こされている物だ。時刻は既に深夜三時。確かに武偵として依頼を受け付ける時にこの時間帯まで行動するのは多々あることだったが、しかし今回のソレは依頼とは全く関係のない物。

 自分と、キンジの両方に同時に送られてきたメールに従って廃工場にその姿を現した二人の武偵は、当然のようにその手に拳銃を持っていた。はたから見ればどちらが悪人なのかよく分からないが、とにかく工場の前の放置されたコンテナの影に隠れて、アリアが言う。

 

「いい、キンジ……油断しないでね」

「分かっている。だからこそこうして武装してきているんだろ?」

 

 そう言うとアリアはやや苛立ちを隠せていない様子で言った。

 

「馬鹿ね、そんなの前提条件。油断しないって言うのはいつどんな敵が現れたとしても確実に倒せるように準備をしておくって事よ」

「だな……」

 

 確かに、差出人不明のメールでここに来るようにと言われて、能天気に無防備ではい行きますと言う人間はあまりいないだろう。

 さらに言えば、そのメールに描かれていた一文も問題だ。

 

「SAOに関する事……か」

 

 そう、そこにはそう書かれていた。SAOの依頼について話がしたいと。つまり、彼女たちにメールを送った人間の正体は、恐らくあのSAOの依頼をしてきた人間と言うことになるはずだ。

 その人間の正体を知る。ただそれだけでもこの場所に来ると言う大義名分はある。なお、当然のことだが武偵とは何の関係もなく混乱の中にいるマミは家にいてもらうことになった。本当は、今の精神状態の彼女を残していくことに少しだけ罪悪感のようなものを感じたのだが、しかし彼女からも武偵の仕事なのだから行ってきてと促され、家から出されてしまった。

 その、勇気に免じて二人は来たのだ。この場所に。それにしても、今日昨日で本当に色々とあった物だなと感心してしまう。

 死刑宣告された自分の母の面会に行ったり、魔法少女になるかの瀬戸際に立たされたり、そしてその魔法少女の真実を知って落ち込んでいる少女を叱咤激励したり。本当にこれ一日、ひいてはたった半日で起こった出来事であるのかと驚くことだ。

 しかし、この夜に起こる出来事は恐らくこれが最後、いや最後にする。そうアリアは決断し、周囲を警戒しながら工場の中に入って言った。

 当然のことながら、その場所は廃工場なだけあってライトの一つもなく、中は真っ暗闇。何も見えない。二人は自分の視力に頼ることをやめて聴力、そして触覚を頼りにして前に進む。

 その時、だ。

 

「神崎・H・アリアさんと。それから、遠山キンジくん……だね」

「ッ!」

 

 という言葉と同時に工場のライトが照らされた。電力だけは通っていたのか、はたまた今回のためだけに電力を通したのか。どちらかは分からないが、しかしその声が聴こえて来た方向に反射神経で銃口を向けた。

 一瞬のうちに銃口を向けたのを流石とは言えない。しかし、二人がプロであると言うのは、その相手の正体をみるまえに銃口を引くことはなかった。その一点に集約されることだろう。

 事実、もしもここで引き金を引いていたら、二人は最重要指名手配犯となっていたことだろうから。

 

「っと、そんなに警戒しないでくれたまえ……私は、こういう者だ」

「それは、警察手帳……この名前は!?」

 

 といって、老年に差し掛かろうとしていた男性が取り出した物は、自分たちが数多くの依頼を受ける中で見ることの多かった警察手帳。ソレを開いた男性の名前は―――。

 

「警察庁長官……ですって!?」

「三宮……という。よろしく頼む」

 

 ここで、日本の警察システムの話を挟むことを許してもらいたい。

 日本にはおよそ二十六万人の警察官がいると言われている。それらは、大体が地域の所轄や県警によって管理されていることが大多数の事。東京も例外ではない。東京都内で連続的に多発している大事件に対して、勿論近くにある警察署の人間がその調査に当たるのだが、その際の統括する役割、捜査を手助けする場所として、≪警視庁≫と言う物が存在する。

 だが、その警視庁よりも上の物が存在している。それが日本全国の警察の管理、運営を任されている機関≪警察庁≫。つまり、目の前にいる人間は、その日本警察全員を管理するそのトップの人間であると言う事だ。

 ソレを理解したうえで、二人は銃口を下げた。当然、相手が偽物であると言う可能性も考慮してその引き金からは指を離すことはない。

 

「警察庁長官……全ての警察を統括して……『私のママを逮捕した』人間が、何の用?」

「アリアッ!」

 

 少々厭味ったらしい言葉になってしまったし、その件についてほとんど関与していない人間を追求すること自体間違っている。しかし、それでも彼女はそう言わざるをえなかった。言わなければならなかった。そうしないと、自分の鬱憤が解消できないから。ただ、それだけの自己満足のために警察のトップを敵に回そうとしていた。そんなアリアをキンジは咎めようとする。が、その前に三宮長官が動いた。

 

「……そのことについてだが、まずは……申し訳ない」

「ッ!」

 

 といって、深々とその頭を下げたのだ。突然の謝罪に驚いた二人、しかしだからと言ってアリアの怒りが静まることはなかった。

 

「申し訳ないってなに……今更謝られても、今更そんな事言われても、ママの死刑が確定した事実は覆らないのに!」

「いや、それはまだ分からねぇ」

「え?」

 

 たった一人の人間が今更謝ったところで、母親の死刑がなかったことになんて、ならないのに。そんな悔しさを伴った彼女の言葉に反応するかのように、二人の男性が現れた。

 一人は、黒い帽子をかぶった人物、もう一人は真っ赤なバイクスーツのようなものを着こんだ人物。

 

「貴方たちは?」

「俺の名前は左翔太郎……風都で探偵をしている」

「俺は照井竜……同じく、風都の刑事だ」

「風都……あのドーパント事件の……」

 

 キンジは知っていた。ドーパント事件。かつて風都という町で発生したというガイアメモリという普通の人間を怪人にさせる物が流布されて、数々の小規模な、しかし人の命が奪われたこともある事件もいくつか含まれた事件。

 目の前の二人は、その事件で配られたガイアメモリの大本を潰し、一時の平和を取り戻した戦士なのだが、当然その事はまだキンジたちは知らない。

 いや、知る必要もない事だろう。なぜなら、これからの話にはそのガイアメモリの話はほとんど関係ない事なのだから。

 

「翔太郎さん、違うとは……一体」

「その前に、この資料を見てくれ」

「これは……」

 

 と言って差し出されたのは、タブレット端末だ。少しだけ背面に傷がついているが、しかし画面自体は動く様子。ソレを操作していた時、キンジは心臓が止まりそうになった。そう、ある単語を見たから。

 

「キンジ?」

 

 アリアは、そんなキンジの様子を見て何か不安のようなものを感じた。照井もそう感じたのだろう。彼は一言だけ言った。

 

「≪イ・ウー≫」

「ッ!?」

 

 と。

 

「裏の世界でのある組織の名前の一つだ」

「名前の、一つ……ですって?」

「そうだ」

 

 ≪イ・ウー≫。様々な犯罪行為に手を貸す犯罪結社で、数多くの事件を起こしてきた組織。そして、母にあらぬ疑いをかけたその大本。アリアは、そんな≪イ・ウー≫を追って数多くの事件を追って、そしてたくさんの傷を負って来た。そんな組織。しかし。

 

「各地域で、あらゆる名前を使って裏の世界のマーケットを牛耳っている組織。イ・ウーとは、その組織のほんの一握りに過ぎない」

「一握り……ですって!?」

 

 あの巨大な組織が、あんな大きな権限を持つ組織が、それよりも大きな組織の一握り、本当にそう言うのか。そんなアリアの心に重石のように乗せられた事実に対して、翔太郎は言った。

 

「その組織の本当の名前は≪財団X≫。かつて、風都を騒がしたドーパント事件の裏に潜んでいた闇の巨大組織、通称死の商人と呼ばれている連中の事だ。そして、俺はその財団Xと数日前に戦闘になった。その時に見つけた資料が、それだ」

「貸して、キンジ」

 

 財団X。イ・ウーをもその組織の参加に入れていると言う組織の存在。その衝撃もそこそこにアリアはキンジからその資料の入ったタブレット端末を奪い取るように取った。この時既に何か予感がしていたのかもしれない。彼らが、その資料を自分たちに渡した事。その理由にどこか察しが言ったのかもしれない。

 果たして、やはりアリアの予想した通りだった。

 

「これって……ママの事が書いてある……まさか!?」

「単刀直入に言おう。アリアさん、君には……」

 

 三宮はそう言うともう一つのタブレット端末を取り出すと至極真面目な顔をしてこう言ったのだ。

 

「≪四代目スケバン刑事(デカ)≫に、なってもらいたい」




 実は薄い伏線はあったあの作品が、≪まずは≫設定のみ参戦。
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