SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第三十六話

 スケバン。それは、中学校あるいは高等学校によって不良行動をする女子生徒の事を指す言葉だ。主に、70年代から80年代に流行した言葉であり、現在においては死語に等しい言葉となっている。

 ソレを踏まえてだ、アリアはもう一度噛みしめるように言った。

 

「≪スケバン刑事(デカ)≫? なによ、それ……」

 

 一見して不釣り合いな両者の言葉の統合にアリア、キンジ双方ともに困惑している様子だ。事実、スケバンという存在は不良であり、時には物を壊したり人を恫喝するために警察のお世話になっていたことが多い。

 故に、この違和感も相当な物であるだろう。ソレを察したのか、翔太郎が帽子を目部下にかぶって、ハードボイルドを気取りながら言った。

 

「簡単に言えば、警察の女子高生版……だそうだ」

「あぁ、まさしくその通り」

 

 と、三宮が彼の言葉を継ぐ。そして、どこか遠いところを見ているかのような目で言った。

 

「かつて、この日本に一人の……夫殺しの疑惑をかけられて、死刑判決を受けた母親を持つ女子高生がいた」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アリアとキンジは同じことを思った。

 

「それって……」

「アリアと同じ……か」

「その通りだ。違うところと言えば、その少女は文字通りのスケバンで、少年院に送られた記録もあると言う事だな」

 

 なる程、それは確かにアリアとは違う。どうやら、その少女は随分とヤンチャをしていたらしい。いや、その理由如何と何をやったかによってはそのヤンチャが非常に生生しい物になる可能性もあるが、とりあえず、その少女の話の先を聞くことにしよう。

 

「そして、その少女の母親もまた……冤罪の疑惑がかけられていた」

「ッ!」

 

 そんなところまで、同じとはある意味で驚きを通り越して呆れすらも起こしてしまう。アリアは既視感を覚えるその少女に、いつかあってみたいとこの時心の中で思ったそうだ。

 

「そして、ある人物がその高校生に対して指示を与え、高校で発生、もしくはその近辺で発生している事件の調査と犯人の捕縛に協力してもらう。その代わりに、母親の死刑執行を先送りにしてもらう。そして徐々にその事件の真相に迫りその全てを明らかにして母親の冤罪を晴らす働きをした」

「つまり、死刑の延期と引き換えに危険な極秘の任務を受けて活動する学生刑事……それが≪スケバン刑事(ルピ)≫って事か……」

「その通りだ」

 

 キンジが総括するように言った。それにしてもとんでもないシステムだ。人身供養、あるいは人質か。何にせよ、その人にとって一番大切な人を立てにとって人一人をこき使っていたのには変わりのない事。

 しかし、アリアはそれ以外の事で気になっていたと言う。彼女は、おぼろげな瞳で聞いた。

 

「その人は……お母さんを取り戻すことができたの?」

 

 その学生刑事が、自分の思いを達成できたのか。しかし、三宮は厳しい顔つきをして言った。

 

「警察の機密事項の一つだ。外部に漏らすことはできない。現に、君たちも今初めて、スケバン刑事(ルピ)という名称を知っただろう?」

「確かに……」

 

 武偵という立場になると、学校で様々な過去に発生した重大事件についての授業が行われる。だが、その授業の中でスケバン刑事(デカ)なる名称が出てきたことはないはず。そう二人ともが思っていた。

 つまり、武偵という特殊な立ち位置の人間ですらも開示されない情報であると言う事。

 この世にはまだまだ知らない情報が山のようにある。ソレを改めて嚙みしめたのだろう様子を見た後に、三宮は言った。

 

「機密情報を簡単に漏らすことはできないだが……これだけは約束しよう」

 

 といって、三宮が取り出した物を見た瞬間にアリアの顔がサァッ、と青ざめるのが分かった。まるで幽霊でも見たかのような表情をした彼女。それもそのはずだ。なぜなら、彼女の目の前に提示されたもの、それは。

 

「死刑執行命令書……」

「いや、まだ上申書の段階だ。これがもう一つ上に行けば、ソレになるのだがな」

 

 という。アリアが一瞬だけ誤認してしまうほどの衝撃。彼女が見た物は間違いなく母の死刑執行に欠かせない書類であったのだ。

 三宮はもしもこれがもう一つ上に行けば死刑執行命令書になると言っている。だが、押されている判子の数からいって既にその条件は達成されているようにも感じてしまう。だから、アリアはその紙を見た瞬間に死刑執行命令書であると誤解してしまったのだろう、とキンジは推測する。

 

「もし、君がスケバン刑事(デカ)となり、SAOに入ってくれるのならば……君の母親の死刑執行を延期させる」

「延期って……それじゃ、ママの死刑執行はもう決まっているみたいじゃない!?」

「その通りだ」

「ッ!」

「おい、照井」

「事実を言ったまでだ」

 

 と、いっそ清々しいと言ってしまうほどの照井の言葉に、翔太郎が苦言を呈した。だが、アリアの心に揺れはない。いや、それ以上揺れることはないと言った方がいいのかもしれない。

 分かっていたから、その書類を見た瞬間にそうだと気がついていたから。あまり驚くことはなかった。むしろ一周回って冷静になったのだろう、一つ彼女にとって大きな気がかりとなる物があった。

 

「あまりに速すぎない?」

「あぁ……」

 

 キンジも気がついていたようで、アリアの言葉に同意した。

 某事件に置いて、死刑が確定した死刑囚に対して刑が執行されたのが判決から四か月。それが、現代日本の法律施工後の中で一番最速で死刑執行がされた事例とされている。

 それに引き換え、アリアの母は死刑宣告を受けてまだ一週間も経っていない。これはあからさまに速すぎだ。その言葉に対して、翔太郎が言う。

 

「全部財団Xが裏で手を回していたことらしい。俺は、その資料で事の真相を知って、この照井に相談した。そしたら……」

 

 彼は、その書類を見た瞬間にアリアとその母親に迫っている危機を知り、警察組織の人間で、かつ仮面ライダーの仲間でもある照井竜に相談を持ち掛けたのだ。そしたら、彼はその資料を取ってすぐにある場所に向かった。

 警視庁に、である

 

「俺にもツテという物がある。俺は、この資料を先日の事件で協力したとある人間に共有した」

 

 これは、大岩一課長の事である。彼の正義感だ、何かしらの対処をしてくれるかもしれないと言う期待と共に向かった結果、その後は完全に予定調和。大岩一課長は、知り合いであり警察の組織というくくりの中では上官に当たる三宮にこの情報を直接持っていった。

 まるで―――。

 

「まるで、何者かの意思でそう動かされていたかのように……」

「……」

 

 アリアとキンジは言葉も出なかった。まさしく、そうだったから。

 どこかで途切れていてもおかしくなかったバトンだ。誰かが握りつぶす可能性だって多分にあった。いや、現代日本の警察組織という存在を考えればそう考えられてしまうほどに現在の警察組織という物の在り方が問われている時代。そんな臭い物に蓋をする人間がいてもおかしくなかった。

 まさしく、現状で最も正規なルートで、かつ正義感に溢れた人間たちの中を潜り抜けて言ったのが、その悪魔の所業の隅々まで綴られた資料だったのは、皮肉以外の何物でもないだろう。

 しかし不思議だ。

 

「イ・ウーの……財団Xの狙いは何だったの? どうして私のママを死刑にする必要があったの?」

 

 ずっと考えていたこと。どうして、イ・ウー、いや今となってはその母体となっている財団Xと言った方がいいのかもしれないが、どうしてその組織は母に冤罪を吹っかけたのか。どうして、母親が巻き込まれなければならなかったのか、それが常々疑問だったのだ。

 いったい、どうして。そんな疑問に対して翔太郎が少々罰の悪そうな顔をして、ソレを帽子で隠しながら言った。

 

「それは、財団Xが……アンタの≪遺伝子≫を欲しがったから、だそうだ」

「え?」

 

 反射的だったのだろう。瞬間、アリアは自身の下半身がキュッ、と引き締まったような感じがしたと言う。少し、下品な事だったと、後々反省しているそうだ。




 ドラマ版だと四代目は既にいるのでは? と思われるかもしれませんが、実は初代のとある扱いの関係がありましてこの設定になりました(本当は二代目三代目も居ないことにしようとしたと言うか映像媒体として入手できるのが初代だけという事情で前述の設定になりかけたのですが、色々考えた末にこうなりました)。
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