SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
アリアが倉庫から離れて数十分、彼女はまだ帰ってきていない。キンジと翔太郎たちの間にとても重い沈黙が流れる。ちょっと気まずい状況になって来た。
まさか、外で何かがあったのか。例えば、財団Xによる実力行使。今回の一件で彼らがアリアの事を狙っていたと言う事は警察に知れ渡ってしまった。彼女が一人になったタイミングで財団Xがアプローチを仕掛けたとしたら。
キンジは、その足を一度入口の方に向けた。
「安心しろ」
「え?」
しかし、そんな彼を止めたのは照井である。
「外の警備は厳重にしている。周囲数百メートルに怪しい物が来た時にはすぐに連絡が来るよう手配もしてある」
「……万全の状態、ってことですね」
「これでも、私は警察庁の長官だからな……」
と、三宮が締めくくった。なるほど、この二人が言うのであれば安心だ。キンジはどこか安心感のようなものを感じ取っていた。
ということは、次に考えるべきはどうしてアリアが電話にここまで時間を喰っているのかだが、そうなれば考えられるのは一つだけだ。
「マミ……か」
そう巴マミ。アリアの事を先輩と慕い、そしてつい数時間前に魔法少女の真実を知って泣きじゃくっていたあの子。アリアはあの時間違いなく迷っていた。魔法少女になるか、どうか。でも今となってはその迷いの一つである母親の事が警察庁長官という権力のある人間によって保障されているから、残っている迷いの原因となれば、たった一つ。
巴マミを、この世界に置いて行くかどうか。
キンジの目から見てもあの子は危うい女の子だ。危険と綱渡りの世界で戦ってきて、自分たちの真実を知って、今にも心が壊れかけの女の子。そんな子を一人残していくことに、アリアはきっと迷いを感じているのだろう。それがキンジの仮説だった。
「マミ? ソイツも武偵か?」
「……違います。ですが、今のアリアが迷う事があるとするなら……ただ、それだけかと」
「どういうことだ?」
という翔太郎の言葉に、キンジ一瞬だけ言い淀んだ後に言った。
「話せません」
と。
「何?」
「武偵として、安易に他人の情報を流すわけにはいかない。特に、本人の許可もなく……」
そう、例えそれがいつかは魔女という怪物になってしまうおそれのある魔法少女であったとしても、いやであるからこそ、なのかもしれない。そんな女の子たちの情報をむやみやたらに公開したらどうなる事か、キンジは頭の中だけであるがすぐにその結末に思い当ってしまった。
目の前の三人はいいかもしれない。だが、他の人間にまで知られてしまったら。最悪の場合は―――。
そんな彼の言葉に、三宮はフッと笑うと言った。
「いい心がけだ。流石、遠山キンジくん。遠山警視正の甥っ子だ」
「≪おじさん≫を知っているんですか?」
「あぁ、≪息子≫よりも優秀な親戚がいると、よく話しをしてるよ」
「そうですか……」
キンジは、その言葉に良く言うなと心の中で呟いた。遠山警視正、本名遠山金三郎はその役職通り警視庁警視正という警察の中でもかなりの上層部に位置する人間だ。警察庁と警視庁、その在り方や本来の目的など色々と違いがあるために多くの人間の中で軋轢を生んでいると噂には聞くが、しかし彼と遠山警視正にはそんな事関係ないのだろう。
遠山警視正は、その名前の通り遠山の金さんの末裔の人間、要は自分と同じ立場にある人間だ。その名に恥じないような活躍もよく耳にし、またその≪息子≫の活躍も時たま耳にするほど。警視正は自分の方が優秀等と三宮には言っているようだが、しかし咄嗟の判断力、機転、そして近接戦闘に限っては≪彼≫の方が一枚上手なのかもしれない。そう、キンジは思っていた。
SAOに行く前に、一度話をしておくか、キンジがそう考えた時だった。
「待たせて悪かったわね」
「アリア……」
アリアがゆっくりと倉庫の中に戻ってきたのである。決意の赤い瞳をその目に宿した、ぐつぐつと燃え滾る覚悟を背負い、後顧の憂いを絶った彼女の姿は、間違いなく自分の知っているアリアその物だ。そうキンジは思っていた。
「それで、返事は?」
「やるわ、スケバン
決意を秘めた女性の言葉に、男性陣四人はそれぞれに含み笑いを浮かべる。なるほど、これがカドラのアリア、か。キンジ以外の三人はどこかで納得したと言う。これだけの気力と迫力があるのならば、確かに優秀な武偵と言われるのも間違いではないと。
「そうか、ありがとう……そして、すまない」
「……」
と、深々と≪再び≫その頭を下げた三宮。それもそうだろう。本来であればデスゲームの世界に民間人を送り込むなんてこと、したくないはずなのだから。例え、それが武偵という一定の力と権利を持った人間たちであったとしても、彼らからすれば、まだ未来溢れる子供たちを戦場に送り出すことと同じこと、そう思っていたに違いない。
キンジはそんな彼に対して言葉をかける。
「顔を上げてください、三宮さん」
「……」
ゆっくりと、顔を上げた三宮。キンジはさらに続ける。
「アリアが言った通り、俺たちはあかりを、後輩たちを救うために≪自分たちの意思≫でSAOに行くんです」
「えぇ、別にあなたに謝ってもらう必要はないわ。私たちは≪誰か≫にSAOに行かされるわけじゃない。私達は私達のしたいことをする……たったそれだけの事よ」
「……ありがとう」
もしかしたら、三宮はその言葉に救われてしまったのかもしれない。ふと、彼の脳裏に愛娘の顔が思い浮かぶ。
日本に置いて三人しかいない超度7の超能力者、その能力故に他人への関心も、また他人からの接触もほとんど無かった愛娘。今では信頼できる友達や、上司ができて、≪特務エスパー≫として活躍しているはずの娘。
しかし、彼女は今回の事件に巻き込まれてSAOの中にいる。本音を言ってしまえば、三宮が一番あの世界に、SAOの世界に恋焦がれていたのかもしれない。
だが、それらは全て私情。彼には警察庁のトップとしてやらなければならないことがたくさんある。腐敗しつつあった警察の闇の部分の是正、それにともなう横やりなどの牽制、文字にしてしまえば多くの困難が彼の中にはある。ソレを放ってSAOには行けなかった。そんな自分が、娘と同じ年頃の少年少女たちを巻き込んでしまう事に負い目を感じていたのだろう。
救われた。その言葉はまさしく、警察という一権力が持っているはずのソレを他者にも与えなければならない仕事をしている人間にとっては敗北に近い言葉だった。
「その代わり、ママを死刑にしたら風穴開けるわよ」
と、アリアは翔太郎に向けて拳銃を向けた。勿論安全装置をかけて、である。
「あぁ、そうならないように必死になるさ」
翔太郎は、そう言いながら帽子をかぶりなおした。髪を掻く振りをしながら顔から溢れる脂汗を拭い、そんな翔太郎の事を横目で見ながら照井がフッと、笑った。
「っで、キンジ。アンタも本当にSAOをプレイするの?」
と、アリアが念を押すように聞いた。自分がSAOをプレイするのには理由がある。しかし、彼の場合はあまりそんな理由はないように思えるのだ。
だが、キンジはその言葉に対して凛とした表情で言う。
「最初っからSAOをプレイするつもりだったさ。事情が変わったとはいえ、武偵憲章を破るつもりはないからな」
「……第一条の事?」
「あぁ……仲間を信じ」
「仲間を、助けよ……でも、貴方あかりたちと話したことほとんどないでしょ?」
「だが、後輩であり、お前の
アリアは、つらつらと並べられた言葉に対して、それもそうねと言わんばかりのため息をついて言った。
「……ないわね」
と。
こうして、神崎・H・アリアをふくめた数名の武偵のSAO参加が決定したのであった。
「全く、子供の癖して覚悟が決まってやがる……アリア、絶対にお前の母親の無実の証拠を掴んでやる。絶対にだ」
と、その場を締めようとした翔太郎。が、しかし。
「信じるわよ、格好つけな探偵さん」
「なッ……」
「フッ……」
と、銃口を向けられて脂汗をかいていたことを棚に上げられ、照井にも笑われるのであった。
結局なんだかんだあっても、彼のハーフボイルドっぷりは健在なのかもしれない。
ふと、一陣の風が吹いた。その風は、倉庫の中にまで入ってきて、少女の髪を撫でる。
頑張って、そう言わんばかりに。
プレイヤーNo.220(DRPNo.9)神崎・H・アリア(???【???】)≪原作:緋弾のアリアAA≫
プレイヤーNo.221(DRPNo.10)遠山キンジ(???【???】)≪原作:緋弾のアリア≫
プレイヤーNo.222(DRPNo.11)星伽白雪(???【???】)≪原作:緋弾のアリア≫
プレイヤーNo.223(DRPNo.12)理子・峰・リュパン4世(???【???】)≪原作:緋弾のアリア≫
プレイヤーNo.224(DRPNo.13)ジャンヌ・ダルク30世(???【???】)≪原作:緋弾のアリア≫
登場キャラの関係で緋弾のアリア無印の方も参戦。でもメインはAAの方。