SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 プリキュア編後編は二話で締めさせていただきます。


メインシナリオ第三章 外伝 第四十一話

「え……」

「今の声は……」

 

 氷の上を鋭利な刃が滑ったかのような甲高い声は、その近くを歩いていたれいかややよいの耳にも入っていた。

 今の声、間違いなくみゆきの声だ。この一年間何度も聞いてきたのだ。聞き間違えるはずがない。何度も聞いて、何度も一緒に笑い合った。そんな友達の声。

 けど、その少女が、一体何で先のような金切り声を上げたのか。まだ彼女の家まで数軒は離れている。それほどまでに大きな叫び声をどうして出したのだろうか。当然ながら、二人の胸中に不安の二文字が踊る。

 二人は、互いの顔を見ると頷き合い、走り出した。

 彼女の、友達の家へと。そこに、絶望が待っているとも知らないままに。

 

「みゆき!」

「みゆきさん!!」

 

 それとほぼ同時刻のこと。玄関で話をしていた育代、ほのか、そして大福の三人は血相を変えてみゆきの部屋へと来、そのドアを壊すかの勢いで開けた。彼女に何があったのか、その答えを知りたいがために。

 けれど、答えはその先にはなかった。

 

「え……」

 

 そこには、誰もいなかったのである。文字通り、人の姿はなかったのだ。当然、みゆきの姿も。

 あまりにも混乱していたのだろう。育代は、どういうわけかそのことに関してあまり関心を持つこともなく、彼女が幼いころの時のように、ドアの近くにあった電気を入れるスイッチに指をかけ、そして部屋いっぱいを光で照らした。

 だが、やはり星空みゆきの姿はなかった。あったのは、何十枚と床にばらまかれていた≪黒い色鉛筆≫と≪クレヨン≫で彩られたいくつもの絵。それから、それらを書くために使ったと思われる全ての色が均等に使用された形跡のあるソレらと、育代が先ほど持ってきた昼ご飯のみ。

 

「みゆき、みゆき!!」

 

 育代は、そんな手を付けられていない昼ご飯を見てようやく我に返ったのだろう。鬼も凍ると言わんばかりの表情を見せて娘の姿を探す。だが、当然ながらどこにも彼女の姿はない。クローゼットの中にも、ベッドの下にも、本棚の向こうにも、どこにも。

 

「みゆきさん……一体どこに?」

「もしかして……」

「え?」

 

 ほのかは、一つの可能性を思い浮かべていた。そう、≪ふしぎ図書館≫。世界中のメルヘンが集められたとされている図書館であり、彼女たちスマイルプリキュアの拠点ともなっていた場所。彼女たち、というより自分も含めてだが、その戦いが終わった直後からはほのかもまたそのふしぎ図書館を利用させてもらっていた。

 その図書館に陳列されている本は、彼女の知的好奇心をそそる物がいくつもあったし、何よりその本棚を利用することによってこの世界のありとあらゆる場所に移動できるという利便性を持っていたからだ。だから、もしも彼女がこの部屋からいなくなったからくり、トリックとして一番に思い浮かぶのはソレであろう。

 

「本棚は……開けられた様子はないみたいね……」

 

 けど、どうやらソレはない様子だ。というのも、ふしぎ図書館を利用する方法というのが、本棚の本を移動させるもの、なのだがしかし本棚は隙間なく本で詰まっていて、その方法を利用することはできないことが分かる。

 だとしたら、彼女は一体どこに行ったというのか。大福は部屋の中を改めて見渡した。ベッドの下から覗く数枚のスケッチ、開きかけのクローゼット、紙で埋め尽くされているように見える床。そして、その紙を中心としておかれている色鉛筆とクレヨン。

 

「……」

 

 なんだろう何かが引っかかる。だが、大福の考えがまとめられる前に彼女たちが来てしまった。

 

「みゆきさん!」

「みゆきちゃん!!」

「れいか、ちゃん……それにやよいちゃんも……」

 

 れいかとやよいだ。二人は、開けっ放しとなった玄関から入ってきたようだ。当然勝手に人様の家に入るなどという事は本当はしたくなかった。だが、先ほどの悲鳴を聞けば誰だって心配になってしまうだろう。それが、友達であるのであればなおさら。だから、彼女たちの行動を非難することはできるはずがない。

 

「一体、何が……」

「それが……」

 

 おそらく、自身も動転してるはずのほのかが、れいかとやよいに話しかけている最中にも、大福は念のために手袋を着用して、育代に問う。

 

「少しだけ、部屋の中の物に触ってもいいですか?」

「え、えぇ……」

「ありがとうございます」

 

 と、礼を言った大福が向かった場所。それは星空みゆきのベッドあった。大福が部屋を見渡した時、目についた物、その中でもまるで隠されているかのように置かれたソレが異様に気になっていたのだ。

 大福は、床一面に散らばった紙の束を踏まないように心掛けながらベッドに向かうと、その下に置かれているスケッチブックに手をかけ、そして引き抜いた。

 すると、その先にあったのは。

 

「これって……」

 

 もしかして、いやけどあり得る事なのかもしれない。もしそうだったとすれば、もう一つ自分の中で不思議に思っていたことの答えにもつながっていく。大福はそう考えた。しかし、その絵は≪今のこの状況≫に対しての答えではない。彼女は苦虫を嚙み潰したような顔をしながらベッドの下にソレを戻した。

 その、刹那。

 

「え……」

「どうかしましたか?」

「いえ……いま、何か……」

 

 ベッドの下にスケッチブックを戻そうとした時、何かに当たった様な気がした。でも、一体何に。大福はゆっくりとベッドの下を覗き込んだ。どうやらかなり奥の方に≪丸い球体≫があるようだ。何だろうか。大福は恐る恐るそれに手を伸ばし、掴んで引き抜いた。

 すると、その手の中にあった物は。

 

「これって……」

「まさか!?」

「みゆ……き?」

 

 桃色の水晶玉のような物。手のひらサイズのソレの中に≪星空みゆき≫が映し出された球体だ。

 

「これ、どういうことなんですか? どうして、みゆきちゃんが水晶玉の中に……」

 

 大福は、目の前の光景に不思議な顔を崩すことができなかった。球体の中に入っているのは、星空みゆき、という女の子で間違いはない。制服姿で、暗い顔をしながら体育座りをしている。髪もボサボサで手入れが行き届いていない点と言い、己が事前に聞いていた彼女の情報とは完全に剝離した少女。

 だが、隣にいる彼女の母親が、彼女をみゆきと呼んだのだ。ならば、間違いはないだろう。しかしだとすれば、この姿は一体。

 

「シッ」

「え?」

「静かにして……」

 

 大福が、再び疑問を口にしようとした時だった。ほのかが、人差し指を立てて周囲に押し黙るように言った。すると。

 

「なにか、聞こえない?」

「……本当」

「誰かの、泣く声……」

 

 何者かが、すすり泣くような声が聴こえてくる。まるでお化けのように、しかしそれほど恐ろしいとは感じない。むしろ甲高くて、かわいらしい鳴き声、ともいえるのかもしれない。ともかく、そんな声が聴こえてくる。どこからか、聴覚をさらに研ぎ澄ませて、ソレが聴こえてくる場所を探ってみた。すると、そこは―――。

 

「クローゼットのなか?」

 

 半開きになっているクローゼット。そこから聞こえてくるようだ。恐る恐る、大福がその扉を開いた。すると、その先にあったのは、小さなぬいぐるみ。いや、違う。この子はもしかして。

 

「まさか、貴女プリキュアの……」

「「キャンディ!」」

 

 やはり、そうか。プリキュアというのは一人一人というわけではないが、必ず一チームに一体は妖精、あるいはそれに類似した種類のマスコットが付いていると大福は聞いていた。恐らく、二人がキャンディと呼んだこの要請もまた、その中の一人。

 大福の推理は当たっていた。そのぬいぐるみのような体躯、白のふわふわとした毛と金色のツインテールの髪の毛をした≪女の子≫の名前はキャンディ。やよいやれいかが所属しているスマイルプリキュアの妖精の一体で、メルヘンランドから来た妖精である。

 

「やよい! れいか!」

 

 彼女は、クローゼットから飛び出すと、やよいの胸に飛び込み、泣き始めた。

 

「キャンディ、一体ここで何があったのか、教えてもらえませんか?」

 

 と、れいかが冷静に、かつキャンディの目線に会わせながら聞いた。すると、キャンディはすすり泣きながら言う。

 

「グス……よく分からないクル。白い妖精とみゆきが話してる時に、いきなり黒いモヤモヤっとした煙が現れて、みゆきがその中に吸い込まれて……キャンディは、みゆきにクローゼットの中にいれられて良く見えなかったクル」

 

 そして、気がついたときにはみゆきはこんな姿になっていたと、言うことか。彼女の言葉からは、具体的な事は良くは分からない。しかし少なくともこの世の物とは思えない物に、星空みゆきは吸い込まれてしまった。という事は確かなのであろう。

 

「……そうなの、キャンディ、ちゃん。ね……怖かったでしょ?」

「クル、みゆきのお母さん……」

 

 そして、育代はやや残念そうながらも、しかし恐れを抱いていたであろう妖精を優しくあやすように言葉を紡いだ。なお、後々聞いてみれば、この二人は初対面同士であったそうだ。であると言うのにこの適応力の高さ、流石プリキュアのお母さんと言ったところだろうかと、大福は思ったそうな。

 いや、そんな事よりもだ。

 

「いったい、みゆきちゃんはどうなったの?」

「……恐らく、いえ想像はできます」

「え?」

 

 と、ほのかが呟いたのを大福は聞き逃さなかった。その言葉には、信じたくないという思いと、自分の中の知識との葛藤が聞き取れた。

 そして―――。

 

「みゆきさんの状態は……」

 

 ほのかは、説明をしようとした。

 その、刹那。

 

「え……」

「はー! 間に合った!!」

「あ、貴女は!?」

「「誰?」」

 

 本棚から光が放たれて、一人の女の子が現れた。いや、女性なのか、ともかく、彼女はその場にいる人達を、そしてれいかの持っている物を見て言う。

 

「みゆきを、≪みらい≫を、皆を救いにきたよ」

 

 その日、星空家からエガオが消えた。あったのは、キャンディがクローゼットから飛び出した瞬間に床に零れ落ちた数冊の本と、そして散らばった黒色で描かれた紙の束たち。これまでの彼女達の人生、それらが全て、最初から幻想であったと、そう言うかのように。

 その日、≪四人の女の子≫と≪二人の女性≫、そして≪一体の妖精≫が、所在不明となった。




Q.どうしてこうなった?
A.小説の書き方を元に戻した。そしたら頭の中にあった構想が全部混ざり合った。結果伏線なんて何もないマジのマジでここからどうするのって内容になった。

 スマプリ組の扱いに関して、頭の中で色々と思考実験を繰り返した結果、絶っっ対に賛否両論あるけれど、頭の中で飽和状態になっていた別の要素の解決案としてもこれが浮かびました。
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