SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

322 / 361
 今回、IDOLM@STERと関係のあるあの子がやってきます。


メインシナリオ第三章 外伝 第四十四話

 去りし者がいる時、来るべき者もいる。

 彼女は思わず目に涙を浮かべていた。色々なことに巻き込まれた。いろんな事件に遭遇した。いろんな経験をして、いろんな人たちに出会えて、そして今の自分がここにいる。

 けど、その始まりは全てこの人だったのだ。

 振り返ってみれば、たった数年前の出来事だったのに、まるで何十年もの間の出来事であったかのように誤解してしまう。

 それほどまでに、彼と、自分の関係性は遠い物となってしまったのだ。

 

「まさか、もう一度君に会えるとは思ってもみなかった」

 

 と、壮年ともいえる年齢の顔をした男性が、少女に声をかける。それは、まるで親の真心のようにとても温かい声だった。

 その声に、少女もまた薄く笑みをこぼしながら言う。

 

「高木……社長さん。ご心配をおかけしました」

 

 ついうっかり、あの頃と同じ名前で呼びそうになってしまった。癖、である。その癖があったから、自分は新人の頃から何も変わらない、変えられない、そう思って彼から巣立って独り立ちした。

 けど、やっぱり彼と会うと昔の自分が顔をだす。それほどまでに、彼女は現765プロ社長高木の事を信頼していたのである。

 そんな彼女の意思をくみ取ったかのように、高木はまるで白昼夢でも見ているかのように思い浮かべる。

 

「……立派になった物だなぁ……新人の頃は、どうなる事かと思っていた」

 

 そう、あの頃はまだ自分は何も知らなった。芸能界の事を、アイドルの事も、何も。だからこそ、目の前にいる少女にはいくつもの苦難を与えてしまった。

 ある時は舞台上で、ある時は舞台裏で、色々なトラブルの原因を作った自分と彼女。故に、高木と彼女の信頼関係は深い物と言えるのだろう。

 

「お互い様です」

 

 そう、彼女が微笑んでいてくれる限りは。

 彼女にとっても、高木との思い出はと聞かれればいくらでも出てきてしまう。思い出し、それを言葉に出しても足りないくらいの思い出を、経験を彼はくれた。その後前述したように色々な普通の生活をしているだけでは絶対に経験することのないかけがえのない時間を。

 

「それで、私の所に来た理由を聞いてもいいかい?」

 

 そんな思い出をくれた、だからこそ自分は彼の役に立ちたい。そう思って、あの≪森羅≫の本部から出た後にすぐにこの場所に来たのだ。

 

「……SAOとナーヴギアについて、です」

 

 765プロの、事務所へと。

 この言葉を聞いた瞬間に、高木は何もかも察したと言う。

 

「……」

 

 一方で、同じ事務所の真下の階、そこに一人の男性がいた。男性は机を目の前にして顔を、組んでいる手の間に置くしかなかった。額に、自分の手のひんやりとした感覚が移る。

 まるで、今の自分の心のように冷たい手、ソレを感じながら、彼、プロデューサーは悩む。

 

「SAO……か……」

 

 昨日、彼は高木から聞いていた。765プロに一つのSAOとナーヴギアが茅場晶彦から届いたのだと。

 この期に及んで、まだこの事務所の人間を奪うつもりなのかと、勿論彼は憤慨した。

 けど、どこかで同時に、期待感のようなものを感じ取ってしまった。

 

「もしこれを使えば、俺は皆の所に行くことができる。けど……」

 

 天海春香、如月千早、菊池真、萩原雪歩、水瀬伊織、双海亜美、そして真美。今ゲームの世界に閉じ込められている仲間、いや家族たちに会うことができる。そんな淡い期待艦。

 けど、それと同時に己には使命があるのを認識している。

 こっちの世界に置き去りにされた自分と同じ家族、やよい、あずさ、美希、貴音に響、以上五人のアイドル。その内自分が担当しているのはあずさ以外の四人だ。でも、皆、己の大事な家族。765プロという屋台骨の下に集った、仕事仲間なんかじゃない。ともに戦う家族として、彼女たちを置いて行くことなんて、できる者か。

 それに、事務員の小鳥や、同じプロデューサー仲間の律子だってそう。皆、大事な家族、そう思っている人間たちを置いて、一人逃げることなんて、していいのか。

 でも―――。

 

「皆、俺は……」

 

 彼は無限ループの中にいた。どれだけ考えてもどちらかが不幸になる未来しか待っていない、そんな結論が出ることのない問いを永遠に繰り返し続けていた。繰り返して、繰り返して、悩み、苦しみ、そして希望が絶望に変わる。

 もしかしたら、茅場晶彦はそんな自分の事を見たいがためにSAOを送って来たのではないか、そう思えるほど。

 ここまで絶望と希望は反比例であると実例を出されてしまえば、誰だってこうなるのは当たり前だ。

 そんな人間を救う事ができるのは、当然。

 

「プロデューサーさん……」

 

 家族、のみ。

 

「音無さん、皆……」

 

 いつも聞いている女性の声に顔を上げたプロデューサー。すると、そこには先ほど説明した事務員の音無小鳥と、律子と、そして響たちアイドルの姿があった。

 前までだったら、こんな光景も当たり前だった。アイドルが、全員同じ事務所の中に集まって、和気藹々と話し合いをして、あぁでもない、こうでもないと討論を重ねて、よりよい物にして行って、そして生まれたのが765プロという小さいけど、世界中に胸を張って送り出すことのできる事務所。

 でも、今となってはその光景にすら虚無的な物を感じてしまう。なぜなら、彼女たちはいわゆるスターアイドルなのだ。日々、たくさんのテレビ番組に、CMに、雑誌に乗るはずの少女たち。本当だったら、今こうして集まるのもスケジュール的に困難になっているはずの女の子達。

 その子たちが、皆一様に集まっている。その光景程、彼にとって絶望を与える物はない。

 その少女たちの内の一人、貴音が、プロデューサーの机の上に置かれている段ボール箱を指さすと言った。

 

「それ、茅場晶彦から届いたゲームのセット、ですよね」

「ッ! どうして、ソレを……」

 

 段ボールは、どこにでもあるような茶色で無地、郵便配達用の紙も貼っていない簡素な物だ。ソレを、はた目から見てソレであると分かるのは不可能な事なのに、どうして彼女は言い当てたのか。

 答えは、シンプルだった。

 

「この間、社長室の前を通った時に耳にしました……」

「そうか」

 

 あの声を、聴かれてしまったのか。自分が、高木に半ば八つ当たり気味に言った、あの言動を。

 彼女の言葉を聞いて、プロデューサーはどこかあきらめ気味の表情を浮かべた。

 

「ねぇ、プロデューサーはSAOの中に行くつもりなの!?」

 

 瞬間、彼の頭はまるで大やけどを負った人間を見た時のように凍り付く。そんなしてはならないと分かっているはずなのに、自分とは違うというただそれだけの事を直視した瞬間に出してしまう、一瞬だけの愚行。それに似た感覚を、彼は感じた。

 

「私たちを置いて行くなんて……そんなの、酷いゾ!」

「いや! そんなことはしたくない! けど……」

 

 そうだ。そんなことしたくないに決まっている。家族を、放って行くことなんてできない。答えなんて、決まっていたじゃないか。

 けど、その後に続く言葉が、彼が悩み苦しんでいる理由なのかもしれない。

 

「行かなければ、君たちの誰かが行こうとするだろ?」

「……」

 

 そう、自分が行かないとなれば、きっと、この中の誰かがSAOに行くと言い出すはずだ。

 自分にソレを止められるのか。SAOに行かないと判断した自分だったら、なおさらだ。

 

「俺だって、もう嫌なんだ。これ以上仲間が、家族がバラバラになるのは……」

「プロデューサー……」

「……」

 

 心の底からの本音。本当だったら、曝け出したくなかったソレを、行ってしまうほどに彼の心は疲弊していたのかもしれない。その証だったのかもしれない。

 プロデューサーは、自分が仕事のためにと使っているメモ帳に挟んでいる写真を取り出す。

 そこには、笑顔の765プロのアイドルが全員映っていた。今、SAOの中にいるアイドルも含めて、全員が全員、素晴らしい笑顔を浮かべていて、そして未来への期待に溢れていて。

 もう、この笑顔を汚したくない。絶対に。でも、そのためには自分がプレイするしか道はない。

 彼は、追い詰められていた。

 

「なら、私が765プロの代表者になります」

「え?」

 

 天使の囁き、のようなものが彼に届いた。いや、彼だけじゃない。目の前にいるアイドルたちみんなその声を聞き、振り返った。

 すると、そこには765プロ社長である高木、そして一人の、≪どこかで見たことがあるような≫女の子がいた。

 

「高木社長……それに、君は……どこかで……」

「オホン、えぇ……紹介しよう」

 

 と、一度咳ばらいをした高木は、にっこりと笑う少女を手のひらを差し出すように紹介する。

 

「彼女は、私が以前プロデュースを担当したアイドルだ。名前は……」

「神田桃……です!」

「神田……桃……?」

 

 ここに、高木の下に集まった二組のアイドルが、初対面を果たしたのであった。




 ワンダーモモ
       参戦!

 なお、ストリートファイターと同じように参戦作品には入れません。
 本作中でも高木社長が言ってますが、時代設定がかなりおかしなことになってます。本作品の中で高木社長、普通の社員から数年で一つの会社の社長になるまでに一体何があったのか……。
 あと、765プロのPさんの役割が、絶対可憐チルドレンの皆本と被ってる件。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。