SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第四十六話

 彼ら、アイドル達の前に現れたのは七人の少女たち。いや、一人は少女ではなく大人である。しかし醸し出している雰囲気は間違いなく少女のソレである。その少女の格好は、明らかに他の人間とは異質だった。特に、耳が、である。

 一瞬だけ、数年前から世界中に住み始めているジューマンと呼ばれる種族かと思った。でも、彼らは全身がそうであるのに対して、彼女は耳だけが人間とは違うだけ、のように見える。

 いったい何者なのか。

 

「プロデューサーさん、知っている人ですか?」

 

 と、音無に問いをかけられたプロデューサー。先ほどの自分の反応から、この少女たちの中に自分の知っている人間がいると、悟られたのだろう。

 そう、知っている。自分は、彼女を。数日前に一度出会って、カフェで話をして、そして≪ある話≫をして、でも最終的には自分の方から断ってしまった。

 全く持って、どう考えてみても少女にとってすればあまりにも失礼な態度をとってしまったと、今では反省している。彼女には何の落ち度もないと言うのに、罪悪感にかられて提案した内容をつくがえしてしまったのだから。

 そんな少女が、どうしてここにいるのか。

 

「え、えぇ……でも……」

「今日から、お世話になります。風鈴アスミと申します。この子はラテ」

「ワン!」

「え……」

 

 動揺するプロデューサーに対して、彼女風鈴アスミは春に吹く風のような穏やかな笑みを浮かべると、そう自分と、そして一緒に連れて来た子犬の紹介をした。

 聞き間違い、だろうか。いや、そうであってほしかった。だって、彼女の言葉をそのままに受け止めると、自分は、もしかしたら―――。

 そんな不安をよそにして、隣にいた、どこか凛々しいと言う印象を受けるキリッとした顔の少女が言う。

 

「私は、沢泉ちゆです。よろしくお願いします」

「円亜久里よ。よろしく」

「私は白雪ひめ! ひめでいいよ!」

「明堂学園、軽音部! 池田彩と」

「工藤真由です! よろしくお願いします!」

 

 続けざまに、それぞれの制服に身を包んだ少女たちが自己紹介をする。最後の軽音部、つまりギターやドラムなどでバンド演奏をする学校の部活動の事なのだが、同じ制服と、その紹介から、その二人が同じ軽音部に入っていることだけは分かった。

 でも、それ以外の少女たちに関してはよく分からない。でも、一番よく分からないのが。

 

「で、最後に私がフェリシア! よろしく!!」

 

 この、猫耳を頭に付けた、いや生やしている女の子、だ。

 プロデューサーはその名前を聞いてようやく思い出すことができた。そうか、彼女は確か、でもどうしてこの場所に彼女が来たのか、いやその疑問は他の少女たちにも言えることのはずだ。

 彼女たちが一体何なのか、しかしプロデューサーはすで答えを持っていた。その答えに、たどり着くのがもしかしたら嫌だったのかもしれない。

 

「よろしくって……社長、まさか!」

 

 と、高木にまるで助けを乞う様に聞いたプロデューサーに対して、彼はやはり動じることのない表情をして言う。

 

「その通り。彼女たちは新しく765プロでアイドルとして活動してもらう子達だ」

「な……」

「彼女たちの声や性格に関しては既に私も熟知している……彼女たちは、間違いなくアイドルとしてやっていけるだろう」

「……」

 

 本当ならば、愕然としなければならないのかもしれない。しかし、プロデューサーは彼のその言葉にどこか安心感を覚えたような気がした。自分の目は、間違いじゃなかったのだとそう、教えられたような気がしてしまった。それが、彼女たちの人生を狂わせるのかもしれないのに。

 

「数日前に、お会いきりになって以来でしたね。プロデューサーさん」

「あ、あぁ……」

 

 と言うアスミの言葉に、にわかに色めきだす765プロアイドル一同。

 

「プロデューサー、アスミさん……という方にあったと言うのは、どういう事でしょう?」

「そ、それは……」

 

 思わず、プロデューサーは言葉を濁す。彼女たちに、このことを伝えていいのだろうかと悩む。だが、そんな心配など知ったことはないと言わんばかりに、アスミは一切の遠慮もなく言った。

 

「私が、スカウトという物を受けたのです」

「え……?」

「ちゆ、亜久里、ひめの三人は私のお友達で、一緒にアイドルしないかと誘ったら喜んでついて来てくれました」

 

 と。つまり七人の内四人は顔見知り、という事か、とどこか他人事のような事を考えて居たプロデューサーに対して、律子が、いつものようなきつい目で聞く。

 

「プロデューサー、どういうこと?」

「ごめん、皆には黙ってて……でも、君たちを信頼していないわけじゃないんだ! 765プロを盛り上げるための何かが必要だと思って、それで!」

 

 言い訳がましいと思われるかもしれない。でも、確かな事なのだ。本当なのだ、何か765プロ復権のための起爆剤のようなものが欲しかった。でも、そのために765プロの家族たちを裏切るというわけではない。置いてけぼりにするわけでも、捨てるわけでもない。ただ、今の765プロの状態では、アイドル活動が困難になると言うのは確かな事。ソレを考えたうえで、彼はアスミをスカウトした。それだけ、なのだ。

 それだけの理由で、自分は765プロの家族たちだけじゃない。アスミや、彼女と一緒に着いて来てくれた友達の人生を歪めてしまうかもしれない。ソレを考えるだけで、怖かった。今更ながら、情けない話である。

 とはいえ。

 

「そう言う事じゃなくて、です」

「え?」

 

 プロデューサーの不安は杞憂な物となるのだが。律子はさらに話を続ける。

 

「どうしてこんな逸材がいたのに私たちに何の相談もなかったんですか?」

「そ、それは……」

「まさか、新しいアイドルを迎え入れたら私達は765プロにとって必要じゃないって思われる。そう思ったんじゃないですよね?」

「……」

 

 図星だ。この辺りやよいは鋭いと感じる。純粋だからか、それとも兄弟が多いからこそ他人の心を見抜く力があるのか、どちらかは分からないが、しかし彼女たちが強かったのは確かだ。

 

「アイドルとして、後輩ができる事は嬉しいことだゾ!」

「そうです! それもこんなに顔も声も、スタイルもいい子達が来てくれるなんて!」

「私たちも、それに負けないように頑張らなければ……そう思えます」

「ま、どんな子が来ても、ミキミキの可愛さには負けるけどね」

「皆……」

 

 そうだ、最初から全部彼女たちと相談すればよかったこと。彼女たちが来る者は拒まずな性格であることは、重々承知の事だったじゃないか。ライバルがいればいるほど燃えてくれる。それが彼女たちだったじゃないか。

 765プロが、アイドル事務所として内面的に大きくなって、忘れてしまっていた。初心の心得。それを、改めて教えてもらったような気がした。

 

「でも、アスミさんとその友達三人はともかくとして、池田さんと工藤さんは……?」

 

 ふと、あずさがそう問いかける。確かに、ちゆたち三人はアスミの誘いで来た―後々冷静になって考えてみると、自分のスカウトした人間の友達に他にもアイドル候補として十分な逸材がいたことに驚きだが―のだが、二人の高校生は一体どこから出て来たのか。それに答えたのは、他でもない高木であった。

 

「うむ、実は彼女たちは私が直々にスカウトしたのだよ」

「社長が!?」

「その通り。実は数日前に匿名のメールが来てね。中を調べてみると、彼女たちの学園祭の動画が入っていたんだ。見てみるか?」

 

 と言い、高木は会社で使用しているパソコンに添付されていた動画を開いた。

 そして、その中身は圧巻の一言だった

 

「うわぁ、凄い!」

「キレイ……」

「これが、学園祭?」

「まるで、本当のライブみたいなの!!」

「それにこの歌声……まるで本職の歌手の様です」

「ランナウェイを歩いている人って、確かモデルの……」

 

 来海ももか。確か現役高校生のカリスマモデルとして、有名な女の子だ。以前雑誌で見かけたことがある。その女性を含めた何人かの少女たちが様々な趣向を凝らした衣服に身を包んで歩き、そのバックで歌をうたっているのが、二人のようだ。

 体育館と思わしき空間の中、たくさんのペンライトによって照らされた世界。そこを練り歩く少女たちを邪魔しないように、しかしその存在感ははっきりわかるほどの美声が響き渡っている。もし、実際にこの光景を生で見た人間がいるとするのならば、一生の思い出になってであろう。そう思えるほど、圧巻のパフォーマンスを見せた少女たち。なるほど、社長がスカウトするわけだ。

 

「誰からのメールかは分からなかったが。しかし、実際に彼女たちの通う学校に行って話してみた。そして、二人には光る物を……原石のようなものを感じ取った」

「それで、スカウトしたんですか……」

 

 先ほど、匿名のメールと言っていた、何者なのか分からない。765プロのファン、であったのならばこんなに嬉しい事はないが、どこか怪しい部分があったのは確か。だからこそ、社長自ら彼女たちの所に向かったのだろう。

 彼曰く、本当は彼女たちは他の軽音部のメンバーー全員が男性であるがーもバックバンドなどのサポートとして一緒という事が条件の一つとして提示されたのだが、その男性陣直々に自分たちはそんなレベルではないと断ったのだとか。

 なので、ここにきているのはそのバンドのボーカル二名だけ。それで十分なのだ。ここに来てくれたこと、勇気をもって足を一歩踏み出してくれたことに、プロデューサーは心の中で感謝をしていた。

 

「あの、芸能界の事とかよく分からないし、どうして私たちがスカウトされたのかもよく分からないんですけど……よろしくお願いします!!」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「ようこそ、765プロへ」

「は、はい! うわぁ、本物の三浦あずささんと四条貴音さんだ……」

「な、なんか緊張する……」

「すぐ慣れるわ」

「そうそう! 大きな会場で一緒に歌ったら、二人もすぐにスーパーアイドルの仲間入りだゾ!」

「うっうー、なんだか想像するだけで楽しくなってきた!」

 

 プロデューサーは、少女たちの強さを再確認することができた。それと同時に、心の中で閉じ込めていた熱い使命感のようなものが燃え滾る感触がした。これだ、自分が欲していたのはこの感覚なのだと、心の中でもう一度噛みしめる。と、同時に決意する。

 絶対に、この少女たちを沢山のアイドルの中の一人として、埋もれさせるわけにはいかないと。

 そして―――。

 

「でも、どうしてフェリシアさん……あなたまでここに?」

 

 彼女に絶対に負けないアイドルにして見せると、固く誓うのだった。




ヴァンパイアシリーズ
          参戦。

 ちなみにこのサイトの禁止事項に
・芸能人などの実在する人物が登場する作品の投稿

 とありますが、ご覧の通り今回から登場したのは≪同姓同名≫でその人達が≪声を当てた≫ご本人達モチーフの架空のキャラなのでセーフ。
 因みに今回から765プロにくる面子は独断と偏見で決めました。
 というか、このアイドル編って某作品が参戦できてたらこの辺でかなりの転換期を迎えるはずだったんですよね……。
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