SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「ナーヴギア! それに、SAO!?」
桐壺が取り出したものは、件の話の中にも出てきたゲーム、SAOとSAOをプレイするのに必要な機器であるナーヴギアが5セットであった。それをみた谷崎たちは桐壺が何をしようとしているのか察する。
「なるほど、我々もゲームの中から茅場晶彦を探すという事か……」
「けど、そう上手くいくのかしら?」
「うん、いくらゲーム開発者でも自分の作ったゲームをするとは限らないし……」
そう。いくら手詰まりの状態にあるとはいえ、ゲームの世界に茅場晶彦がいるかどうかなんて確定したわけじゃない。もしかしたら、外の世界、つまり今自分達がいる現実の世界から高みの見物を決め込む可能性もあるというのに。
「実のところ、この二つは、我々が集めたものではないのだ」
「え?」
その言葉に小さく驚いた会議室の面々。しかし、その後に続いた朧の言葉にさらに驚くことになる。
「数日前、B.A.B.E.L宛に小包が届いていました。差出人の名前は、茅場晶彦……」
「茅場晶彦って!」
「SAOを作った本人が直接B.A.B.E.Lに送ってきたってことか!?」
茅場晶彦が送ってきた小包の中、そこには、今彼らの目の前にあるSAOやナーヴギアが入っていたのだとか。なぜ、茅場晶彦がB.A.B.E.Lにそのようなものを送りつけてきたのか、一切の理由は不明だが、しかしそのヒントともなるものが同封された手紙に書かれていた。
「手紙?」
「うむ……止めたけば私を見つけたまえ、B.A.B.E.Lの諸君……ただ、それだけが書かれていた」
「茅場晶彦からの、挑戦状……」
皆本、並びに手紙を受け取った張本人である桐壺もまたそう解釈をした。『止めたけば』か。茅場晶彦の言葉が気にかかった。
止めたけばとは、一体なんだ。何を止めろと言いたいのだ。たかが一ゲームで、何を止めろと。
茅場晶彦の本心は分からないが、ともすれば脅迫とも思える内容に、桐壺はすぐに三宮紫穂の父親であり、警察庁長官である人間にコンタクトをとり、相談したのだ。
「そして、日本の警察に局長が相談を持ち込んだことを耳にし、今回のこの合同捜査を依頼しました」
と、ドギーが補足説明を入れる。元々、茅場晶彦が宇宙から何らかの物品を運び屋に持ち込ませたことから調査をしていた彼らは、B.A.B.E.Lに対して直接SAOを届けたというその行動に何らかの意味があると判断したのだ。
「我々宇宙警察も独自に手に入れたSAOで二名ログインすることになった。B.A.B.E.Lの方々にも、ゲーム内外で茅場晶彦の手がかりを残った刑事や、国際警察の方々と一緒に探ってもらいたい」
まさか、国際警察まで動くような事件なのかと、会議室の面々の顔に緊張の色が走る。
国際警察。それは、その言葉とおり世界各国に支部を持ち活動をする警察機構の事だ。何年か前、異世界から来た犯罪者集団ギャングラーや怪盗を相手に奔走していたその姿は、彼らの脳裏に強く刻み込まれている。
「一つの組織でできることなどたかが知れている。茅場晶彦の目的がなんにせよ、宇宙から危険な物を取り寄せた可能性があり、そしてそれを悪用する恐れがある以上、見て見ぬふりなんてできんよ」
確かにそうだ。茅場晶彦が取り寄せたものの種類によっては、地球人類を滅亡に追い込みかねない大事件に発展する恐れがある。そのようなこと、なにがなんでも阻止しなければならない。だから、この複数の組織間の連携、やりすぎとも思えるような集まりは、それでもまだ力不足ではないのかと思わせるものがあったのだ。慎重に慎重を喫して困るものではない。これはもうすでに、エスパーやノーマルといった次元を遥かに超えた先にある事件になりかけていたのだ。
「そこでだ、このSAOとナーヴギアだが……」
「……」
「……」
と、桐壺は話を切り出す。そうだ。茅場晶彦から送られてきたSAOとナーヴギアは五つだけ。今この会議室にいる面々の数には到底及ばない。きっとこれから、使用する人間を発表するのかもしれない。
果たして、真剣な眼差しを受けた桐壺が次に発した言葉。
「ここにいる者たちの中で、欲しい者はいるかね!」
それは、少年少女達だけでなく大人達に至るまでをずっこけさせるのに十分すぎる程だった。
「局長! そんな大事な任務を志願制にしてどうするんですか!」
「いやぁ、しかしゲームの中じゃ超能力は使えんからねぇ。誰が行っても同じだと……」
「遊びじゃないんですよ!」
「うむ……」
と、大声をあげて抗議をする皆本。しかし、桐壺の意見にも一理あった。
「ですが、確かに超能力を使えないというのはかなりのデメリットになりますよ」
「あぁ、俺たちから超能力を取っちまえば、それこそ普通の人間だ」
ゲームの世界では超能力を使うことができない。これは必然だ。だから、もしもこの会議室の中にいるエスパーがSAOの世界に行ったとしても、自分達の本当の力の一つも出すことができないのは明白。つまり、今までの任務の時のように超能力を使用してすぐに事件解決、なんてことできなくなる。
例え、超度が高かろうと、それを取ってしまえば、彼彼女達はみな子供。いつも自分達が頼りにしていた武器が使用できないとなると、それはもうエスパーもノーマルも関係なかった。
「普通の……」
「人間……」
その言葉に、少しだけ心揺らされた少女達がいた。
確かに、少し前の自分達は憧れていた。超能力のない、普通の人間。普通の暮らしというものを。
その力で、一体どれだけの人間を傷つけてきたことか。どれだけの不自由を被ってきたことか。誰かに優しくされて、でもその優しさの裏側を知って、なにも信じられなくなってやさぐれて、友達も信頼できる人間もできず、どれだけの苦汁をなめてきたことか。
今となっては、超能力こそ自分達のアイデンティティー。ソレがあったからこそ、今まで多くの人たちを守って来れたのだという自負はある。でも、それでも時折考えるのだ。もしも、超能力なんて使えない、普通の人間だったら自分達はどうなっていたかと。
もし、超能力がなかったら、今の自分はいない。周りにいる仲間達とも出会うことなんてなかった。でも、それは超能力がない人生でもおなじことがいえる。もしも自分に超能力が備わっていたら、一体どんな人生が送れていたのだろうか。どんな友達と出会えていたのだろうかと。結局は、立場の問題に行き着いてしまう。
一方が一方をずっと羨ましがるという、答えのない堂々巡り。自分達はその堂々巡りの人生の中に答えを見つけようとしている。見つけるために頑張っている。でも、それでも時々、思ってしまう。考えないようにしても、それでも、頭に浮かんできてしまう。超能力のない人生というものを。二度とは戻ることのできないその道を。
「なら、一人目は僕が行きます」
「なっ!」
「皆本!?」
そして、そんな彼女達を尻目に、まず最初に志願したのは、ザ・チルドレンの現場担当主任、皆本光一であった。
「超能力者であっても普通の人間になってしまうのなら、元々ノーマルである自分が行けば、何のデメリットもありませんから」
「皆本君……」
確かに彼の理論は筋が通っている。超能力の使用に慣れている人間が、ゲームの世界で戦おうとしても、体に溶け切った感覚が抜け切ることなく窮屈な思いをすることだろう。
でも、ノーマルである自分であれば、そんなデメリットも越えることができる。そう考えたのだ。
「み、皆本が行くなら私も行く!」
「うちも!」
「右に同じ」
と、ザ・チルドレンの三人が次々に手を上げた。
「君たちはダメだ!」
「なんで!?」
「もしもゲーム中に確率変動値7の事件が起きたらすぐに対処できなくなるだろ」
確率変動値、とは。B.A.B.E.Lに所属するエスパーが予知した事件を変える、つまり予知を覆すためにはどの程度の超度を持った人間でなければならないのかというものを示す値のことだ。
そして、その最高レベルは7。つまり、確率変動値7とは、今日本に三人しかいない超度7のザ・チルドレンがいなければ覆すことのできない予知であるといえるのだ。
もしもチルドレンの三人、あるいは一人でもゲーム中に確率変動値7の予知が発生した場合、移動や捜査、または災害救助の際に迅速に行動することができなくなる。皆本はそれを危惧しているのだ。
「せやったら皆本はんも同じやろ!」
「皆本さんがいるから私たちはチルドレンは事件を解決できるんでしょ?」
「私たちはチームだろ? 皆本がいないチルドレンなんて、チルドレンじゃないじゃん!」
何も、自分達三人の力だけで予知を覆してきたわけじゃないと主張する三人。確かに、自分達がいたからこそ、予知を覆して、大勢の人々を救うことができていたのかもしれない。でも、その裏には必ず皆本という存在がいてくれた。皆本が、その頭脳を生かして自分達にさまざまな指示をくれていたからこそ、解決できた事件が数多くあるのだ。
皆本の事件現場への到着が遅れること。その結果、予知を覆すことができなくなる。確かに彼女達が危惧する理由もわかるというものだ。
「しかし……」
「なら、こういうのはどうだ?」
と、妙案を思いついた様子の賢木。
そのすぐ後、SAOをプレイすることとなる五人が選ばれることとなった。しかし、この時の彼女達は知る由もなかった。
それが、悪夢への片道切符。再びこの会議室にいる面々全員が顔を合わせるまで長い時間をかけるということを。
憧れていた普通の人。だけど、そのために手に入れたのは普通ではない生活。
自分達は、超能力のせいで随分と不幸せな生活を強いられてきた。そう思ってきた。でも、ソレは違った。
不自由な生活の中でも、理解者であるB.A.B.E.Lがあったからこそ、学校に通うことも、友達を作ることもできた。なにより、超能力があったからこそ手に入れることができた仲間たち。
でも、超能力のない世界は、地獄だった。
超能力のある世界とない世界、離れ離れにされた少年少女達。そして、大人達。超能力を使うことができない超能力者達による、再び不自由な世界に戻るための矛盾した戦いが、今始まる。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい