SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第五十七話

 この世界における魔法。その歴史は数百年を簡単に遡るほどの歴史がある。その中でも、彼らの魔法は初歩中の初歩として、灯を付ける、手を触れずに物を動かすと言った定番の物から、果ては大嵐、相手を氷漬けにすると言う危険な魔法まで多岐にわたる。

 ネギ・スプリングフィールドは九歳の時にイギリスの名誉ある魔法学校を卒業した後、この麻帆良学園女子中等部に修行という名目で駆り出されてきた。彼の家は、俗にいうエリートと呼ばれるものだった。理由は親が、世界を救った英雄だったから。

 ただ、それだけ。

 そんな英雄の影を多くの人間が追い求めていたのだろう。それが、イギリスという魔法という分野においては上を行っているはずの場所での生活を彼に勧めることはなく、結果として知人や、そして彼自身を守る手段がたくさんある麻帆良学園都市へと向かうことになった。

 そして、麻帆良での教師初日、彼は運命的な出会いをした。それが、神楽坂明日香、である。彼女は、転校初日にネギが魔法を使用する姿を目撃。本来魔法という物は秘匿されるべき者であり、一人でもその存在を知られてはならないのだ。だから、ネギは彼女の記憶を消そうとして、失敗。以来、明日菜を巻き込んだドタバタが始まる。

 もしかしたら、彼女にだけ知られている状態だったらよかったのかもしれない。だが、それは彼のクラスの事情、そして彼自身の素性が許してくれなかった。三年生に上がった途端、多くの事件が彼、彼女たちを襲った。このクラスに所属する吸血鬼のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの起こした吸血鬼騒動を始め、関西の呪術協会とのいざこざ、麻帆良を襲ったネギの故郷の仇、そして、麻帆良祭―――。

 これらの事件でネギは数多くの仲間をクラスメイトから作った。この時点で、およそ半分が魔法という存在を知って、そのさらに半分以上が彼に協力的となった。彼にとって、心強い仲間が集まった。

 でも―――。

 半分は、何も知らなかった。その結果、最悪の事件が起こった。それが、魔法世界≪転移事件≫だ。

 魔法世界、通称ムンドゥス・マギクスとはこの今自分たちがいる現実と対にになって存在するもう一つの世界。獣人や妖精などが普通に存在し、魔法技術を基盤とした独自の文明に溢れた世界。つまり、魔法の溢れた世界であると言う事だ。

 ただ、それだけを聞くと何の害もなさそうに思うかもしれない。しかし、当然ながらその世界にだって悪人がいる。この現実世界をはるかに凌駕した悪人が、そして獣人や妖精がいるように、数多くの危険な動物が徘徊しているのだ。

 その事件は、≪ある女の子≫の運が招いた悲劇だった。否、違う根底から言えばネギたちが彼女たちに何も言わなかったことが原因で起こった事件、好奇心という人間だったら普通に所有している物を掻き立てられた結果起こったモノ、であると言えるだろう。

 その女の子は、他の≪魔法の事を一切知らない≫人間たちと一緒に、朝早くにどこかに行こうとしているネギとネギの仲間たちを追ったのだ。彼らが向かう予定だった魔法世界へと転移するための場所へと。

 その場所へ向うには、それなりの力、案内人等が必要だった。ごく普通の一般人が好奇心だけで入れるような場所じゃなかった。けど、≪彼女≫にはそんなもの関係なかった。

 結果、≪彼女≫は多くの魔法の知らない仲間を危険な魔法世界に送り込むことになり、そしてそこから命の危険、人権の危機にさらされるような事件に、巻き込むことになった。

 そんな≪彼女≫は、≪幸運≫にもその転移に巻き込まれることはなかった。何も知らないで、イギリスでの夏休みを残った少女たちとともに過ごしていた。何も知らずに、何も知らされずに、何も感じずに、ずっと、ずっと、ずっと。

 今日、この日まで。

 

「え……」

「そんな……」

「魔法に魔法世界……ねぇ……」

「随分、思っていたよりも大きな話みたいだ」

 

 3-A組の教室。そこには当初予定していたネギと、生徒たちの他に春麗とノエル、そして先生を代表したタカミチとシスターシャークティもまた同席していた。

 春麗と古菲の戦いが終わった直後、彼らは、集まっていた、あるいは集まりかけていたギャラリーを何とか退散させると、春麗からSAOとナーヴギアを回収しに来たという話を聞いた。国際警察という大きな組織が動いたことすら驚きであるのだが、しかし超からすればむしろ好都合ともいえる事だったのかもしれない。

 超は、ちょうどいいからと二人をこれからのネギによるこれまでの説明会に参加させることを提案。タカミチは自分とシスターシャークティ、魔法を使用できる先生、通称魔法先生の中でも中立派の人間が同席することでソレを許可した。

 そして、その結果がこれである。前述した文章では軽くおさらいのように書いたのだが、彼女たちへの説明は軽く三時間にも及んだ。どの事件でどのような人間が動いたのか、どのような魔法が使われたのか、そしてどの人間が巻き込まれ、どの人間が何も知らなかったのか、そして≪何も教えられてこなかったのか≫、正真正銘これまで秘匿にしていた情報を全てネギたちは話したのである。勿論、魔法世界での戦いの顛末も。

 

「あ、あの……お二人はそんなに驚かないんですね」

 

 と、春麗に聞いてきたのは、手渡されたネギの名簿によると村上夏美、という少女らしい。彼女は魔法世界での事件で偶然その世界に入ってしまって事件に巻き込まれた人間。そこから、魔法の世界に足を踏み入れた人間の様だ。

 そんな少女には、全然驚いた様子を見せずにむしろ余裕の表情を見せている春麗とノエルが不思議だったのだろう。春麗は、苦笑いを浮かべて言う。

 

「私も色々な経験してたくさんの世界を周ったから」

「……一応聞きますけど、世界って、≪国≫って意味ですよね?」

「国≪も≫、だけど単純に……別の世界もね」

 

 その言葉を深く、噛みしめた春麗は目を瞑って、思い返す。これまでの戦い、多くの世界での出来事と、そこで出会った人々との交流を。

 

「単純にこことは違う平行世界や未来世界、それに魔界なんて場所にも行ったわね」

 

 ピクッ、と真名とそしてサジという名前の少女の耳が動いた。真名はフッと笑うと言う。

 

「去年から今年にかけて随分と荒らしてくれたらしいな」

「龍宮さんは何か知ってる感じ?」

「あぁ、少し前に魔界に大勢の異世界人がやってきて好き放題やってくれたらしい。魔界三代当主の一つアーンンスランドの次期当主や七貴族の一つのマキシモフ家を巻き込んでいたそうだが」

「まぁね」

 

 その二人は色々と巻き込まれた結果自分たちの冒険について来てくれた面々だ。アーンスランドの女性、モリガンとは一緒にペアを組んで戦ったこともある旧知の中と言ってもいいだろう。デミトリ・マキシモフもまたどこか退屈を紛らわせるための参加のような側面もあったが、しかし結果としてソレで自分たちが大いに助かったのも事実。

 そんな人間たちも巻き込んで行われたあの激闘の数々、忘れようと思っても忘れられない。

 

「不死身の恐竜も不法投棄した」

「あぁ……」

 

 と、ザジからの指摘を受けて春麗は困った顔をした。そう、実は以前の戦いに置いて自分たちは窮地に陥った。魔界の空高くを飛ぶ飛行戦艦の甲板に置いて、何度倒れても蘇って自分たちの事を襲う恐竜、アロサウルスと戦っていた。というか、それ以前に何度も何度もその恐竜は測ったかのように自分たちの前に現れ、正直ストーカーか何かと言っても過言ではない程に追い回されていた。

 そんな時、ついにその恐竜に致命傷を浴びせることができた。それが魔界の空中での戦い。だが、その恐竜はそれでもなおよみがえろうとした、そうそれはまるで≪ゾンビ≫のように。当時はこれもまた極秘情報であったために開示されていなかったのだが、実は後々自分たちも対峙することとなったとあるウイルスに感染していたため、倒しきることができなかったのだ。

 ソレを察知した、アメリカ統合戦略軍のある工作員の機転により、アロサウルスは空中戦艦のカタパルトから発射されて、投棄された。

 魔界、に。

 

「あれは……事情が事情だったから……その、ゴメンネ☆」

「色々と別世界でもやらかしているようだ。かくいう僕も、異世界人の末裔なんだけどね」

「え、そうなの?」

 

 そう、この場にいる人間たちがそれぞれの秘密を持つ中、当然ノエルだって普通の人間じゃない。のだが―――。

 

「ウィ、だからちょっとやそっと驚く話も、そんなに……だけど」

 

 そんなことを解説している場合ではない様子だ。

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