SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 安直すぎるサブタイトルである。


幸運の星

 日常、それはちょっとしたことで崩れてしまう。子供が公園の砂場で作った砂の城と似たようなもの。

 ここに、その日常を謳歌している一人の女の子がいた。

 

「……」

 

 パソコンを触っている少女。その部屋には多種多様のオタク文化の象徴と言われるもの、フィギュアやポスターといったものが置かれていた。その辺り、かなり前に紹介した小牟と似たようなところはある。

 しかし、大人で資金力のある彼女とは違って、ここにいる少女はまだ高校生。バイトはしているものの、資金力の差は歴然だった。特にここ最近は部屋の雰囲気が殺風景になってしまって、何か人生において大事なものを奪われてしまったよう。しかし、それが何なのか分かっていなかった。

 そんな彼女、泉こなたは今現在ネットサーフィンをして情報を集めている。来季放送予定のアニメの情報や、新しいライトノベルの情報。ネトゲの攻略サイトの巡回も欠かさずに行い、人生を豊にする方法を模索していた。まるで、盗まれてしまった心を探すが如くに。

 

「……」

 

 そう、自分は何か大切なものを奪われてしまったのだ。でも、それが何なのかわからない。

 部屋の様子はいつもと変わらない。前と何ら変わらない普通の部屋だ。だが何かがおかしい。

 自分のなかのアニメの知識。アニメの歴史。そして、実際のアニメーションの歴史。どれをとっても何の誤りもなく正しい。

 でも何かが違う。

 自分が歩んできたオタク道。自分が、見て、聞いて、そして楽しんだ数々のアニソン歌手の、声優のライブ。すべてが正しい記憶だった。

 でも、何かが違う。

 その何かがわからない。何だかもどかしい気持ちになってしまっていた。

 そんな彼女だったからだろう。あのゲームに目を奪われてしまったのは。なくしてしまった心の拠り所を補完するかのようにそのゲームを欲してしまったのは。

 いや、もし彼女が何かを失っていなかったとしても同じことだったのかもしれない。何故なら、彼女はオタク。彼女はゲーマーだったから。だから、彼女が失ったものは何の関係もない。

 

「……」

 

 そう、思いたい。

 

「……お?」

 

 その時だ。ピロンという軽快な音がパソコンから鳴ったのは。これは、電子メールが届いたときの音。そうか、もうそんな日になったのかと、こなたはおっかなびっくりに自分に届いた電子メールのボックスを開く。

 複数ある受信ボックスの中、新着したメールがあることを赤いランプで示す受信ボックスを見つけたこなたは、右手で操作するマウスの左クリックを2回素早く押した。

 届いたメールは一つ。こなたは、そのメールにカーソルを合わせると再びにかいクリックした。

 

「おぉぉ……」

 

 そして現れた文字はーーー。

 

「ということでSAOが当たりました」

「へぇ……」

「まぁ……」

 

 場面が切り替わって。ここは彼女が通っている高等学校の一つの教室。その一画であるこなたの机の周りには三人の女の子がいた。

 SAO、それは(以下略)。

 

「アンタねぇ、自分が受験生だってことわかってんの?」

 

 と、いうのは柊かがみ。いわゆるごく普通の常識人ツッコミキャラである。彼女のいう通り、こなた、そしてその友達三人はまとめて高校三年生という受験生なのである。だから、たった一万本しかない初回販売の抽選に応募すること自体おかしいはずなのだ。

 

「このビッグウェーブに乗り遅れるのは惜しい者なのだよかがみ」

「たく、浪人しても知らないわよ」

「その時は、SAOをする時間が多くなるということで」

「はぁ……」

 

 と、能天気で何も考えていない風のこなたにあたまをかかえたかがみ。まぁ、彼女がこんな感じの性格なのは重々承知。SAOというものを小耳に挟んだ時から嫌な予感はしていたのだが、まさか本当に応募していたとは思っても見なかった。

 

「でもすごいねこなたちゃん。あれって、最初の販売本数が少ないから、抽選でも当たる確率低いって聞いていたのに」

 

 と、いうのはかがみの双子の妹である柊つかさ。天然な部分が垣間見えるお人好しの女の子だ。

 

「まぁ、名義を使ってたくさん応募したからねぇ」

「そんなことしていいのでしょうか?」

 

 と、いうのはおっとりした性格のように見える、いわゆるお姉さん的ポジションの高良みゆきである。

 彼女のいう通り、それは少しずるいのではないかと思うのだがこなたは言った。

 

「みんなやってることだよ? 禁止事項にもそのことは何も書いてなかったからねぇ」

「そうなんだ」

 

 こなた曰く、これは異例中の異例なのだとか。普通こういった抽選の場合は、同一のIPアドレス、つまり同じパソコンからの応募は弾く仕組みになっていたりして重複当選はしないはずなのだ。それなのに、その抽選はたとえIPアドレスが同じであったとしても、名前が違っていれば重複当選も可能という破格の待遇が書かれていた。

 これは乗らないてはないと、こなたはちゃんと自分の知り合い何人かに許可を取り、住所と名義を貸してもらって応募したのだ。

 

「え?」

「へ?」

「あ、あれってそうだったの……」

「安易に名義貸してたら将来大変なことになるよかがみ」

「グッ……」

 

 主に、詐欺師とか闇金融とかに騙されるかもしれないから、という意味だそうだ。

 

「いやぁ、人足を集めるのも大変だったよ。ゆーちゃんやその友達に秋葉原で仲良くなったゆりねさんやパティの知り合いにも頼んだりして」

「後半誰よ!?」

 

 ゆーちゃん、というのは現在こなたの家で居候をしている彼女の従妹の小早川ゆたかのことである。が、かがみたちが知っているのはそれだけ。後に出てきたゆりねという人物やパティという人間に関しては全く知らない。

 こなたが言うには、ゆりねは大学生、パティというのは中学生で、時折秋葉原の古本屋やらメイド喫茶などで出くわすことがあったのだ。いつしか意気投合し、互いに連絡を取り合う仲になっていたのだとか。

 自分の知らない彼女の交友関係に驚くのと同時に、ちょっとした嫉妬心を覚えたようなかがみなのであった。

 

「まぁ、4個も当選するのは予想外だったけど」

「4個?」

「まぁ、それはすごい確率ですね」

 

 この辺り、何者かの意思のようなものが憑依しているような気がしてならないのだが、触れないでおこう。

 

「そだよ。そのうちの一人はずばり! かがみなのである!!」

「ハァッ!?」

「まぁ、正確に言えばかがみの名義で応募したのが当たったってだけだけどね」

 

 たった一万個しかないゲームの一つが当たったのだ。本来であれば喜ぶべきところであるのだが、かがみはそうはいかない。

 とても焦った様子でかがみは主張する。

 

「ダメに決まってるでしょ! 私、ってかあんたも受験生でしょ!!」

 

 最もな正論である。SAOのサービス開始は十一月。受験生にとってラストスパートをかけるべき時期であり、ゲームなんてものにうつつを抜かしている場合ではない。

 と、言ったかがみだが、こなたはそうなることを当然読んでいたらしく、まるで昔に放送していたCMのチワワのようにつぶらな瞳で彼女を下から見上げながら言った。

 

「限定一万本だよ。今世紀最高のゲームだよ、やらなきゃ損だよ」

「うっ……でも……」

 

 こなたはさらにかがみの手を握った。もはや絵面が告白か何かのような気がしてくるほどに危ない光景になってきた頃。かがみははぁ、と息を吐くと言った。

 

「あぁもう、分かったわよ! ただし、最初の一日だけよ!」

「うっし!」

 

 こうして、根負けしたかがみもまた、SAOの世界へと行くことになったのであった。こなたは、それだけ聞くと、先ほどまでのつぶら波にとみを海苔のように細くすると、彼女に見えないように後ろを向いてガッツポーズをした。

 もちろん彼女の言い分も尤もだし、一人でプレイしても楽しいものであることは容易に想像できる。しかし、MMORPGは大人数でプレイすることが前提のゲームであり、より多くの仲間がいることで攻略の難易度が左右される。だから、ともにたたかってくれる仲のいい仲間は一人でも多い方がいいのだ。

 となると、気になるのはあと一つだ。

 

「それで、他には誰が当選したの?」

 

 こなたは、四個のSAOが当選したと言っていた。そのうちの二つは自分とこなたであるとするのならば、あともう二つは誰のものなのか。まさか、つかさとみゆきではないだろうか。

 いや、そうだったら先程自分を名指しで指名なんてせずに全員に報告するはずだ。だから、違うのだろうと容易に想像することができた。

 

「まぁ、まだ本人にプレイするか聞いていないから、もしいらないって言われたら他の人に渡す予定だけど」

「……」

 

 だったら別に自分が断ってもよかったのではないか。そう思っても仕方のないことを言い放つつかさに、怒る気もさらさら起きなくなってしまったかがみであった。

 

「それで、誰なんですか?」

「それはね……」

 

 こうして、泉こなた、柊かがみ、そして後の二人。計四人のSAOが今この時から始動し始めた。後に、かがみはとあることを決意することとなった。もう友達だからと言って名義貸しなんてしないと。

 だが、その決意はあまりにも遅すぎることとなってしまう。




らき☆すた
     参戦
 今回サブタイトルで分かったかな?
 あと、まだ参戦させてない作品一つのヒントも出しました。
 冷静に考えると日本アニメーションの象徴的な作品がいくつも消失しているからこの作品世界のオタク系キャラがかわいそうだな……。
 実はあまりにも作品を持ってきすぎるのは不憫ということになるので、温情でとあるゲーム会社の作品、それにジャンプ系作品に関しても少ししか参戦させないようにして、フィクション作品としてこの世界に残存させている所存です。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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