SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第六十二話

「一体……いつから?」

「ずっと前から、さ」

 

 正確に言うと、ネギが不老不死の話をしたあたり、である。つまり、彼と彼女の会話を、ノエルはずっと聞いていたと言うことになる。

 そんなノエルは、いつものにこやかな表情を一切崩さずに言った。

 

「ネギくん、それに明日菜さん」

「は、はい……」

「僕もまた、力を行使できる人間として言わせてもらいたことがあるけれど……力を持つことが必ずしもいいこととは限らない」

「……」

「ネギ君の言う通り、力には大きな責任が伴う。それを行使する権利があるのか、逆にソレを行使しない権利があるのか、ソレで悩んで苦しむことがある。かくいう僕も……」

 

 と、いいながらノエルは≪Xチェンジャー≫を取り出し、ソレをあたかも青春をなぞっているかのように懐かしい目で見つめながら言った。

 

「普通に生活をしていた人間達を裏の世界に引き込んでしまった。その経験がある。それも、自分自身の目的のために、ね」

「え?」

 

 そう、ノエルもまた力を与える人間であった。与えることができる人間だった。かつて力を与えた人間の一人だった。

 

「彼らにだって目的があった。取り戻したいものがあった。でも、僕はその理由を利用して、彼らに決して踏み越えさせていけない一線を越えさせてしまった」

 

 三人の、怪盗の事である。彼らはそれぞれに取り戻したい人がいた。兄、恋人、親友。それぞれに違うけれど、自分の命を賭してでも、他の人間が自分のやりたいことをなしてくれればいいとさえ願って命がけで闇の世界に入った一般人だった三人。

 ノエルは、執事の人間を通してその三人に力を与え、力の行使する方法レクチャーした。

 全ては、自分自身の望みのために、かつての恩人に会いたいと言う願いのために、己は何人もの人間を利用したのだ。そう思っている。

 

「その人達は……」

「一人は未成年であることも考慮されて執行猶予処分、一人は各地を転々としながら警察の目から逃げて、そのために取り戻したかった大事な人とも離れ離れになった。そして、最後の一人は……表向きは真っ当な仕事に就くことができなく、探偵なんて物をして、今でも僕たちの手助けをしてくれている」

 

 確かに三人とも目的を果たすことができた。しかし、その結果彼らは果たして何を手に入れたのだろう。

 大切な人を取り戻すことができたと言う達成感。

 自分自身の目的を果たしたと言う充実感。

 足を踏み入れれば二度と出ることは叶わない裏世界とのコネクション。

 ノエルは彼らに力を与えた。その結果、あまりにも大きな代償を支払わせることとなってしまったのだ。

 

「それだけじゃない。僕は多くの人間の人生を狂わせて、そして……彼らが大切にしたいと思った人間達にも手を出した」

「……」

 

 そう、それもまたノエルの罪の一つ。快盗戦隊ルパンレンジャーの三人は、自分達の最後の戦いともいえ、そして大切な人達を奪った元凶たる≪ザミーゴ・デルマ≫との戦いにおいて、外部から一切シャットダウンされてしまった世界に取り残されてしまったのだ。

 その三人を救ったのは、皮肉にも彼らが取り戻した大切な人達。ノエルは、その大切な人達にも盗みの極意を教え、そして一年の時を奪った。彼らが望んだこととはいえ、それもまた立派な罪であった。

 他にも大勢の人間を騙し、あるいは傷つけて来た。その傷は決して癒えることはない。そう実感しているからこそ、彼は言う。

 

「ネギ君。人間に必要なのは、力でも、賢さでもない、覚悟……じゃないかな?」

「覚悟……」

 

 そう、覚悟だ。例えそれが違法としりながらも、例えそれが自分の欲望を叶えるためである事を知っていてもなお他人を巻き込む覚悟。誰かの人生を背負う覚悟が、本当は必要な事であったのだ。

 

「僕は、この寿命が尽きるその日まで、一人でもいい……誰かの人生を取り戻す。それが、僕が僕自身であるが故の……そして、僕が犯してしまった罪の償いになるのだと、そう信じて」

 

 彼には二つの姿があった。だが、もうもう一つの姿、怪盗の姿になることは特別な事情の時を除いてほとんどない。それは、決別、なのかもしれない。彼ら共に戦った、いや戦ってくれた仲間たちへの深い感謝。彼らへの恩義があるからこそ、彼は怪盗ではなく、警察として生きることとした。

 それが、今の自分の罪滅ぼしなのだから。

 罪滅ぼし、なんと単純な一言なのだろう。その言葉だけを使えば反省をしているかのようにに思わせて、しかしどこかでその言葉を使えば免罪符になるという思惑もある。果たして本当にその人物が罪を悔やんでいるのか、そしてその罪を償っているのかは、誰にも分からないのだから。他人はおろか、本人にすらも。

 人間らしい愚かさと、浅ましさの詰まった言葉だ。

 

「そして事件に巻き込まれる覚悟をしたのが明日菜さんであり、3ーAの人間の何人かだった。ただ、それだけ……だろ?」

 

 だからこそ、だ。ノエルは断定することもなくその言葉を使用してしまった。ソレが、さらにネギの罪悪感を増長させるものであると知らないで。ネギは、爪が固い皮膚に食い込みそうになる程の拳を作りながら言う。

 

「でも、僕はその覚悟を問うこともしなかった! だから、中途半端に巻き込んで……皆を危険な目に合わせました!」

 

 そうだ。自分は覚悟を問わなかった。明日菜にも、他の大勢の仲間たちにも。問いた人間は、刹那や古といった、元々戦いの道に精通していた人間たち。そのほかの少女たちはどうだろう。

 明日菜の場合は、完全に受動的だった。勝手に自分が彼女の目の前で魔法を晒して、彼女がそれに気がついて、そして彼女は何も知らないままに≪こちら側≫に来てしまって。他の人間もそう。自分が魔法をつい見せてしまったから、遊びの延長線、しまいにはその覚悟が足らなかったが故に、何も知らない数人の女の子を危険な魔法世界に足を踏み入らせてしまって恐ろしい目に合わせた。

 唯一、全ての真実を知って、いや知ろうと言う覚悟を持ってやってきたのは、たぶん文化祭の時の千雨くらいだろう。それ以外は、覚悟する猶予もなくこっちの世界に引き入れてしまった。二度と戻ることのできない、足を踏み入れてはならない、普通の女の子としての日常何て遅らせることのできない世界へと。

 

「結果的には……だね」

「……最初から、話していれば」

「ソレを信じてくれたかな?」

「……」

 

 最初から、自分が魔法使いであると言う事を、魔法の恐ろしさを話していれば、いや自分が理解していればこんなことにはならなかったのだろうか。少なくとも、あの夏の冒険をしなかったが故にSAOをプレイしている円や鳴滝姉妹が周りに取り残される恐怖に縛られて、SAOという世界を冒険しに行くことは、なかっただろうか。

 分からない。彼女たちの性格なら、そんなものなかったとしてもSAOをプレイしていたかもしれないし、それにノエルの言う通り、もしも最初から自分が魔法使いなのだと、魔法の世界は危険だから足を踏み入れてはならないのだと全員に言っていたとしても、ソレを信じてもらえたか。

 分からない。誰にも、分からないことだ。

 

「僕の時もそうだった。異世界人であることを仲間に隠し、自分の本当の目的も隠して行動して、傷つけた」

「……」

 

 ふと、ノエルはその一瞬ネギたちから目線を外し、階下へと続く階段の方を見た。そして、儚い笑みを浮かべて言う。

 

「ネギ君、君が秘密を隠したのは仲間達を守りいただその一心、そうじゃないかな?」

「いえ、違います」

「ネギ……」

 

 ノエルの言葉に、しかしネギは間髪入れずに否定した。仲間を守りたかったから魔法の事を話さなかった、いや違う。自分は、そんな高潔な人間じゃない。

 

「僕はそんなかっこいい人間じゃない。僕はただ掟で魔法の事は秘匿しておかないといけなかったから、自分がオコジョにされるからソレが怖かったから! だから、皆さんに秘密にして……だから……」

 

 掟とは、ルールとは、悲しい物である。辛いものである。他人を縛るために誰かの定めたソレに従わなければ生きて行くことすらも許されないのだから。誰かを守りたい。その心すらも鎖でがんじがらめにされて身動きが取れなくなってしまうのだから。

 そのルールのせいで、一体どれだけの人間が傷ついた。一体どれだけの人間の人生が狂わされて、どれだけ、償いようのない悲しみが産まれた。

 完全ではない人間が作り出した勝手なルールに従ったネギは勝手に救われていたかもしれない。でも、周りの人間は、ネギの事を信頼していた人間たちは、そのルールによって不幸になった。ちっぽけな一つの種族を救うためのルールが、また別の多くの種族の人間たちを狂わせるルールへと変貌してしまった。

 もう、何があっても引き返すことのできない罪。

 

「なら、それを最初から伝えてもらいたかったですわ」

「え?」

 

 と、その時だった。ノエルが現れた階段の方から、一人の女性。委員長雪広あやかが穏やかな表情をして現れたのである。

 

「皆さん……」

 

 いや、彼女だけじゃない。他の3-Aの面々や春麗たちもいた。そして、それまで広々としていた屋上が多くの人でごった返したのを見計らって、ある少女が言う。

 

「私達は、別にネギ先生の秘密を根掘り葉掘りと聞きたいんじゃないの。ただ、友達として、生徒として、そして……仲間としてその近況を聞けるだけで、ただそれだけで良かった」

「その結果巻き込まれたのが明日菜達で、巻き込まれなかったのが私達、でしょ?」

「桜子さん……」

 

 運否天賦という物がある。果たして、この場合はどちらの方が運がいいのか。クラスの大多数が世界をまたにかけた命がけの戦いをしていると言うのを知らないままに人生を謳歌する方が運がいいのか、それともいっそのことその戦いに巻き込まれて一緒にその苦難の道のりを歩くのが運が良かったのか。

 今となってはよく分からない。でも、分かることはただ一つ。桜子や柿崎、そして今もSAOにいる数人は一切事件に巻き込まれなかった。だから、仲間外れ、いや≪平和な世界を楽しむことができた≫。それが、全てである。

 

「……アスナさん……残り短い時間です。でも、残ったその時間を……思い出にしましょう」

『その為に、私達も全力で楽しみますから!』

「ユエちゃん、さよちゃん……」

 

 そして、それは巻き込まれていた人間たちもまた同じこと。巻き込まれていたけれど、最後の最後で重大な秘密を抱えられてしまった少女たちもまた、健やかな笑顔を見せるとそう言った。残りたった数カ月、されど、とても尊い数カ月を一緒に楽しもうと。

 

「ネギ先生もね! 長い人生の中の短い時間かもしれないけど、その時間が大切な時間になる様に……」

「私たちも、応援するアル!」

「皆さん……」

 

 その言葉に、フッと笑ったのはきっと同じ立場のエヴァだったのだろう。

 もう、少女たちの中に秘密や隠し事は何一つ存在しない。あるのは、全てを知って、全てを理解して、そのうえで仲間として友として、一緒にいたいと願うこの世界の未来を一身に背負う少女たちだった。

 

「……」

「いいのかい? 春麗刑事」

「人は、たくさんの出会いと別れ、そして拳を合わせることによって成長できる」

 

 タカミチに問われた春麗は、どこか遠いところを見ながらそう呟いた。かつての、いや今の自分がそうだからこそ出る言葉だったのかもしれない。多くの世界を渡り歩き、多くの出会い、競り合いを経験したからこそ出る言葉。ソレを踏まえて、彼女は少女たちに言った。

 

「貴方達がソレを理解して自ら、死の世界へと行くと言うのなら、私には止められない。それが、人の意思だから」

「人の意思……か。ふぅ……僕も、彼女達を見て決心したよ……この世界を、あんな世界にしないようにこっちの世界で頑張るとね」

「……えぇ」

 

 未来を生きることになる少女たちのために、少しでもあの世界をいい物にしようと、少しでも捻じ曲げようと、大人たちはここに決意するのであった。

 なお、蛇足だがここで柿崎から≪他に何か隠し事している人いる!?≫という言葉に対してザジが≪私魔族≫と一言しゃべって≪ザジがしゃべった!!≫となったのはここだけの話。多分この場に千雨がいたのならば、突っ込むところそこじゃないし、さっきもしゃべってただろと言っていたところであろう。

 それはさておき。

 

「それで、ここに来たってことは、誰がSAOをプレイすることにしたのか、もう決めたのかい?」

「いいえまだよ」

「結局、全員がSAOをプレイしたいってなって、まとまりがつかなくなったんだよね」

 

 エヴァから色々と助言を受けてなお、誰一人としてその世界に赴こうとする意志を翻したりはしなかった。そこに絶対に助けたい友達がいるから。そこに、自分たちの仲間がいるから。その向こうの世界に、未来が待っているから。

 

「だから……」

 

 なので、最後に物を言うのはやはり。

 

「はいくじ引き!」

 

 ある意味、麻帆良流のやり方、であるのだろうか。

 

「赤いのが七本、ソレを引いた人間が……」

「SAOに、向かうってことですね……」

 

 と言いながら、桜子が出したのは≪二十≫本の紙の束。彼女は、ソレをネギに手渡した。見ると、確かにに内七本の先に赤色のマーカーで色付けされていて、それが当たりくじという事なのだろう。

 そして、ソレをネギに手渡したのはきっとこの3-A、その前身たる2-Aの時から≪選択≫をしてきた彼だからこそ託すことができたのだろう。

 命を懸けた戦いに参加するのかを、決めるその役目を託すことのできる、信頼のおける人間として。

 

「よし、ソレじゃいっせぇので引くよ!」

 

 それぞれの紙の切れ端を持った少女たち。桜子のその言葉に、無表情数名、笑顔大多数。引いても引かなくても地獄であると言うのにそれでもなおその道を選択しようとする人間の顔つきにはどうしても見えなかった。だが、それでこそ麻帆良学園の生徒、といっても過言ではないのだろう。

 

『せぇの!』

 

 そして、引かれた札は―――。




 あまりにも過去改変の話がややこしすぎて読者も混乱しているかもしれないので、以下にパラレルワールドを含めた設定を載せると同時に、以降この設定を固定します。

≪過去改変についての設定≫
・SAO開始前の時代(特撮勢以外)
 それぞれにそれぞれの世界があるため過去を変えても別のパラレルワールドと言う分岐が生まれるだけ。
・SAO開始後の時代
 パラレルワールドはあるにはあるが過去を変えたら未来が変わる。
・この世界線に与えられた影響
 未来を変えたらその分パラレルワールドとなる分岐が生まれるはずが根底となる世界の歴史を変えてもその一秒後にはこの世界の歴史の一つ(未来を変えたと言う歴史となる)になる。
 過去に戻る手段はいくつも存在するが、11月06日以前の過去に戻ることができない(SAOの歴史には干渉できない)。
・つまり
 ここまでこじれた設定になったのは特撮勢(特に仮面ライダーカブトと電王とジオウ)のせい。
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