SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 あれ? あの人の命日って確か……。となったので参戦予定だけど本格参戦はかなり先になるため秘密のままにしようとしていた作品の出番です。


前夜祭の前夜祭

 人材の墓場、と言うものはどの組織にも置かれてある物だ。簡単にクビを切れない人間を同じ部署に集め、雑用などの差し支えのないものをさせて飼い殺しにする部署。

 それは、日本の正義を守るはずのこの警視庁にも存在している。

 特命係、警視庁の陸の孤島と揶揄されるこの部署が設立されてから三十数年。その間にこの特命係に配属になった人間は十数人。

 しかし、ある特定の人物だけはその三十数年と言う長い時間係長としてその特命係の看板を守り続けてきた。果たして、それが名誉なことであるのか、それとも窓際部署に押し込められた意地であるのかは定かではない。

 しかし、これだけは言える。

 特命係は、決してただの窓際部署なのではないと言うことを。

 

「右京さん、今日もこてまりに寄るんですか?」

「えぇ、君も来ますか?」

 

 既に外は秋から冬に移り変わろうとして肌寒くなっている中。特命係係長の立場である杉下右京はトレンチコートをその手に持ちそう言った。

 

「ぜひ! お供させていただきます!」

 

 そう、笑顔で言ったのは現在の特命係に所属しているもう一人の人員である亀山薫である。

 この部署に所属している人間は以上に述べた二人のみ。そして、この特命係係長である杉下右京こそ、この課で三十数年働いている警察官。

 彼は、以前は俗に言うキャリア組と言う物で入庁してきた警察官であり、本来であればこのような部署に飛ばされることなどなく、出世コースに乗るはずであった。

 しかし、とある籠城事件の指揮を任されたこと。それが、彼の運命を変えてしまう。

 籠城事件は、当時の上司の独断先行によって杉下の静止も虚しく強行突入によって、人質や突入したSATの隊員にも死傷が出る惨事となってしまう。

 現場の指揮を任された杉下は、その全ての責任を押し付けられ、結果特命係が創設。その係長として一切の捜査権限のない窓際に追いやられてしまったのだ。

 が、しかし彼はそんな捜査権限がないと言う事実など知らぬと言うようによく事件現場に足を運び、事件を解決に導いていく。本人は興味本位で立ち寄っているつもりであるらしい。

 そして、亀山薫はそんな杉下右京の下に付いた人間の中で最初に長期間事件解決のために奔走した男。

 亀山も、元々は犯人に人質にされると言う失態を犯してしまったがために特命係に配属となった刑事だった。だが、そんな経緯今はもう関係ない。二人は良きパートナーとして、さまざまな事件に関わってきた。

 狂気的な連続殺人事件、爆弾テロ、そして世間を揺るがすバイオテロ。彼らがいなければ日本という国がどうなっていたか分からないというほどの大事件を尽く解決してきた二人。

 ある事件を契機とし、海外に渡った亀山ではあったがこの度、諸事情により十四年ぶりに日本に帰国。再び二人の特命係が再スタートとなった。

 人は、二人のことをこう呼んだ。

 史上最高の『相棒』と。

 

「ん?」

「おや?」

 

 警視庁の廊下。行きつけとなっている料理店へと向かおうとしていた二人に最初に気がついたのは、遠くの廊下の角から突如として現れた相手の方であった。杉下もまたそれに若干遅れて反応する。

 

「どうも、杉下警部殿」

「えぇ、どうも」

 

 黒いスーツという警察官が着るべき制服を着ていないにも関わらず、こんな夜遅くまでまで庁内にいるということはーーー。男のことを知らない亀山は聞いた。

 

「右京さん、誰です、この人?」

「彼も捜査一課の刑事です」

「へ? ってことは……」

「伊丹刑事から話は聞いてるぜ……特命係の亀山……さん」

 

 と、言いながら青年はかけていたサングラスをややずらしてその先にある鋭い眼を見せるとややシニカルに微笑んで見せた。

 亀山、そして捜査一課の刑事である伊丹は犬猿の仲で、互いに罵り合うことが多く、十四年前、そして亀山が警視庁に復帰した今も仲良く喧嘩を現場内外問わずにしている。

 

「松田陣平。一応今は、捜査一課強行犯三係の目暮班所属の刑事だ」

 

 目暮。という人物については知っている。確か本名は目暮十三。階級は警部であったか。たまにすれ違う時に杉下右京の部下であるということの労をねぎわってくれるため、印象に残っている。

 しかし部下についただけでその苦労を嘆かれるなんて、一体どれほど杉下右京という人間と付き合うのが難しいことであるのかがわかるという物だ。

 それにしても、である。

 

「けど、この前の事件の時にいましたっけ?」

 

 彼、亀山薫がこの日本に帰ってきてからすでに半月の時が経とうとしていた。その間あれよあれよと舞い込む事件に、杉下右京は次々と首を突っ込み、亀山薫もそれについて行って数多くの事件を解決に導いて言っていた。考えてみれば十四年前に自分が特命係にいた時よりもかなりのハイペースであった。

 その事件の調査の際、いつもの捜査一課の刑事たちに頻繁にあっては伊丹と喧嘩したりを繰り返していたわけであるが、その時にこの松田刑事の姿はあっただろうか。いや、彼だけじゃない。先ほども話に出したあの目暮警部にも事件現場にて遭遇したことは無いように思える。一体どうしてだろか。

 

「彼は捜査一課の中でも別の地域を担当する人間ですから」

「別の、地域?」

「出戻りのあんたは知らないだろうな」

 

 そう言うと、松田は改めてサングラスをかけ直し、右京は人差し指を立てて言った。

 

「近年。全国各地で殺人や窃盗、また異世界からの侵略者といった特殊な犯罪も増えています。それら全ての事件を解決するためには、それ相応の人員の適切な配置と、迅速な対応が求められます。そのためには旧来の制度では頭打ちになってしまう。そこで、白馬警視総監や大岩捜査一課長の陣頭指揮の下、作られたのが班制度。それぞれの課の警部以上の階級を持つ警察官が、十人程度の警部補以下の階級の警察官を率いてそれぞれの地域を担当、事件の捜査をする制度です。我々が彼や目暮警部と遭遇しなかったのは、彼らが担当する米花町や杯戸町に足を踏み入れたことがないからですねぇ。あぁ、もちろん担当地区以外にも赴くこともあります。その地域だけを担当するのであれば、所轄署の必要性が無くなりますからねぇ……」

 

 以上、非常に長い台詞を終えた右京。松田はその後ろで感心するかのように小さく拍手を送っていた。

 

「俺がいない間にそんなもんが……」

 

 亀山は驚いていた。確かに、自分がいた時よりも犯罪の数が増えているとは思ってはいた。しかしその結果警視庁にそんな改革が起こっていたなんて。

 

「因みに、伊丹刑事や芹沢刑事、そして出雲刑事は小山田管理官の班に所属しています」

「管理官?」

「えぇ、大岩捜査一課長が信頼を置く部下の一人と聞いています」

 

 管理官とは、警視庁の管内、つまり東京都内で事件が発生した場合に所轄に捜査本部が設置された際の陣頭指揮を司る役職の事だ。なるほど、確か管理官の役職は警視以上の階級を持った人間に限定されているはず。右京の言葉と矛盾することは無いが。

 

「確か前に捜査会議をした時の管理官って……」

 

 そう、確か少し前にあった事件で捜査本部が立った時の管理官は、小山田という人間ではなく、松本清長という人物だったはず。その左目に着いた大きな切り傷は、今でも思い出せるほどに特徴的で、かなりの修羅場をくぐってきたのだと亀山にも実感させるものだった。

 確か、彼もまた管理官ではなかったのだろうかと考えていた亀山に、右京は言う。

 

「亀山君。別に管理官は一人というわけではないんですよ?」

「そ、そうなんすか!?」

 

 そうなのである。管理官は、警視庁に一人でなければならないという規則などない。そのため、管理官が複数人いてもおかしくはないのだ。というか、このことは警視庁に務める警察官であれば周知の事実であるはずなのだが。

 

「えぇ……君、十四年間サルウィンにいたおかげで色々忘れているようですねぇ……今夜はこてまりには寄らず、勉強会でもしましょうか?」

「い、いえまた今度にします今度にします……」

 

 と、二度同じ言葉を繰り返して強く固辞した亀山。なお、サルウィンといいうのは彼が十四年前にとある事情にて渡航したミャンマーとバングラデシュの間に位置している国であり、政府をはじめとしたさまざまな組織が腐敗していることによって不安定な情勢が続いている国。つい先日反政府革命によって共和制が瓦解したことが伝えられたが、そこには学校の校長であった薫の教え子である少女の活躍があったのだが、それはまた別の話。

 少なくとも、亀山がかなり危険な国、いつ殺されるか分かった物じゃないような命の危険を感じる国に十四年間いたという事だけは覚えてもらいたい。

 

「たくっ、事件ばっかりで退屈しねぇよ、この国は」

「君も、随分と疲れ果てているようですねぇ」

「フッ……」

 

 まぁ、現状の日本も毎年のように侵略者に襲われたり、人間同士で殺人や放火などの事件が多発したり、はたまた超常現象によって日本が起点となった世界崩壊が起こりかけたりと、なんやかんやで一番命の危険がある国であるような気もするのは放っておくことはできないだろう。

 上記の一連の事件がほぼ毎日のように起こるのだから、その分警察官たちの疲労は常にピーク状態に達しているのは当たり前だろう。業務改革のおかげでその負担は確かに減ったが、それでもまだまだ事件は数多く待っている。今、こうしている間にもどこかで事件が起きているのかもしれない。それを考えると、おちおち寝てもいられないのだろう。

 だが、杉下は考えていた。松田の場合は少し違うのであろうと。彼はそんな細い神経の持ち主じゃない。それこそ、今自分の隣にいる亀山薫と同じくらいの図太く、強靭な神経を持った人間であると知っているのだから。

 

「あ、そうだ。この後一杯やらないか?」

 

 そんな苦労をねぎらおうとしたのか。亀山は松田に酒をおごろうとした。しかしつい先日警視庁に復帰したばかりで、おまけにとある事件の責任で減給を食らってあまりお金も持っていないはずの亀山が、誰かにおごるくらいのお金を持っているとは思えないのだが。

 しかし、そんな心配をよそに松田は言った。

 

「悪いが、遠慮しとくぜ。まだ、やるべきことが残ってるんでね」

 

 と。右京は表情を一つも変えることなく言った。

 

「そうですか、ではこれで」

「あ、ちょっと右京さん」

「……」

 

 松田の隣を通って廊下を歩く右京。その背中を負った亀山。松田は、どこか感慨深そうにその彼らの後姿を眼で追っていた。

 どこか既視感を覚えたのかもしれない。亀山薫という、自分の同期に似た人間に。そして、杉下右京という人間に、今はもう警察からもその記録が抹消されてしまっている自分の同期の姿を重ねていた。タイプは全然違うが、しかし話に聞く限りの洞察力や完璧超人ふりは、彼そっくりだ。

 そして、そうやってともに歩く姿は自分とアイツに似ているのかもしれない、とも。松田は歩き出そうとした。明日に、そして明後日の大事な日に向かって。

 

「おっと失礼。最後に一つ、よろしいですか?」

「なんだ?」

 

 だが、そんな彼に向けて杉下は質問をした。これは、杉下右京の口癖のようなもので、主に事件の容疑者や目撃者に対する尋問の、最後の最後にする質問。人によっては大したことがないようなくだらないような物。しかし、その裏には事件の真実を真芯でとらえる質問が多い。それが、彼の洞察力の高さを物語っているのかもしれない。

 

「彼の墓参りには、もう行ったのですか?」

「……」

 

 瞬間、サングラスの向こうにある松田の瞼がピクリと動いたような気がした。

 

「フッ……抜け目ねえな警部殿は……」

「細かいことが気になるのが、僕の悪い癖で」

「明日行くさ。仲間と一緒にな」

 

 ただそれだけ言うと、松田は振り返ることなく手を振りながらその場を立ち去った。残されたのは、その言葉に満足げな右京と、質問の意味が全く分からなかった亀山だけである。

 

「なんです? 墓参りって」

「今から三年前の11月7日、彼の同期だった男性が殉職したんですよ」

「殉職?」

 

 殉職。それは、職務の最中に何らかの原因を持って死亡すること。死と隣り合わせの警察官にとっては切っても切り離すことのできない存在。少し前に一緒に笑いあっていた仲間が、次の日には犯人追跡中に死亡するなんてこともあり得る。その時の悲しみは、例え強靭な精神力を持った人間であっても計り知れないものがあるだろう。

 特に、同期という志を共にした仲間の死には。

 

「だから、命日に墓参りを……って」

 

 ふと、ここで亀山気が付いた。

 

「明日はまだ6日ですよ?」

 

 そう。今日はまだ11月5日。彼の同期が殉職したという日が7日であるのだから、命日の墓参りをするのには一日だけずれてしまっている。すこしおかしくないだろうか。

 

「それは彼も重々承知でしょう。ですが、当日には墓参りなんてする余裕は無いと思いますよ?」

「へ?」

 

 今年の11月7日、何かが起こる。そう、松田も考えているのだろう。自分もまた、三年前から警視庁に送られてきていた数字だけが書かれたFAXを見てそのように考えているのだ。きっと、11月7日に何かの事件が起こる。松田は、その事件に備えているのだろう。

 事実、11月7日にある事件が発生した。松田は、その事件を解決させるために人柱となり、多くの人間を救うことになった。しかし、その結果ある女性にトラウマを植え付けてしまうこと名になるなんて、この時の彼は知る由もなかった。

 そして、この時の彼らも考えていなかった。まさかその前日の11月6日。日本、いや世界を震撼させるような大事件が発生するなんて。予想することも推理することもできない、伏線も一切敷かれていないような凶悪な事件。日本全国の警察官を相手にした超特大のミステリー。果たして、それを解決に導くのは杉下か、松田の意思を継ぐものか、それとも―――。




名探偵コナン
      参戦(前書きの通り本格的な出番はかなり先)

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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