SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第三章 外伝 第八十六話

 愛城華恋の名乗りを受けた瞬間、舞台は再び明るく照らされた。そこには、それまで存在していた数多のかきわりも、舞台装置も存在しない、まっさらな、まるで新造された舞台のように綺麗な木目が彼女を待ちわびていた。

 これからもう一度、ひかり輝く、彼女の事を。

 華恋は、その舞台の上に出現した階段の頂上から、まひるの事を見下ろしていた。

 そして―――。

 

♪潔く カッコ良く 生きて行こう…♪

「ハァッ!」

 

 舞台の下から跳ねるように現れた一本の剣を空中で持ち、彼女に向って跳んだ。

 

「くッ!」

 

 まひるは、その攻撃をメイスで受け止めた。重い。これまでの、どの攻撃よりも重い攻撃だ。

 いや、違う。当たり前だ。彼女のその剣が、いつも華恋が使っている物とは違っている。

 見た目も、そして込められているキラめき、想いも全然違う。この剣は、確か。

 

「その剣は!? ひかりちゃんの!」

「そうだよ、私達の絆の証だよ!」

 

 今もなお、SAOの世界で戦い続けているライバル、神楽ひかりの武器であった。

 

♪たとえ2人離ればなれになっても… Take my revolution♪

「なんでそんなに聞き分けがないの華恋ちゃん!」

 

 押し込まれそうになったまひるは、しかし何とか押し返すことに成功した。いや、違う。彼女が自ら飛びのいたのだ。

 空中でバク宙をしながらまひるとの距離を取った華恋は、またもや舞台の下から現れたもう一本、今度は自分の剣をー肩に刺さっているのと同じ種類の剣をー掴んだ。傑作である。まるで、舞台が彼女が勝つのを望んでいるかのように味方している。

 

「私が立つ舞台を私が決めたの、だからごめん! まひるちゃん!!」

 

 そう叫んで、再び彼女に駆け寄った華恋。二刀使い、まるでななのように彼女はその二振りを柔軟に扱って、まひるを攻め立てる。

 無論、これでもまだまひるの方が圧倒的に技量が上である。

 三つの武器が交差するたびに火花が、鉄と鉄同士がぶつかった小気味のいい音が鳴り響く。

 

♪光差す校庭(garden) 手を取り合い誓い合ったなぐさめ合った もう 恋は二度としないよって そんな強い結束はカタチを変え♪

「ごめんって、謝って済むなら! 私たちが、離れ離れになる意味ないのに!」

「それでも、私は立ちたいの! 誰かの望む舞台じゃない、私の望む舞台の上に!!」

 

 華恋は必死に訴える。自分が望んでいる舞台がどこであるのか。自分が立ちたい思っている舞台がどこであるのか。演じたい劇が何であるのか。

 反対されるのもお構いなしに、いや違う。彼女が自分で決めたこと、ソレを否定することなんて、誰にもできるわけがないのだ。

 

「そんなことしたらどうなるか、分かってるんでしょ! だからこんなに必死で止めようと! ッ!」

 

 そんな彼女の意思に応えるかのように、一つのかきわりが舞台の上側から落ちて来た。ライバルを閉じ込めた、ナーヴギアの形のかきわりである。そう、彼女が望んだ世界、彼女が立ちたいと願った舞台。

 それはSAO。

 知っている。だからこんなにも必死で止めているのに、どうして彼女は止まってくれない。どうして彼女は自分よりも舞台少女としての活動が短いと知っていてもなお、女優としての未来を知らなくとも、ここまで強気でいられるのか。

 

「くっ!!」

 

 まひるには、考える余裕はなかった。かきわりを砕いた、その先には華恋はいなかった。

 

♪今じゃこんなにたくましい 私たちのLife style, everyday…everytime♪

「華恋ちゃんよりも、経験を積んでるのに、どうして、こんなに!」

 

 翻弄されている。まるで同じ種類の鳥が争う様に翻る合戦をする中、どうしてここまで華恋が己をも魅了する動きができるのか。そう、心の中で呟いたまひるに対して、姿が見えない華恋が言う。

 

「心がキラキラしてるからだよ!」

「なんて?」

「心がキラキラして、新しい舞台を待ち侘びてるから!」

 

 刹那、再び舞台が一人の女の子、愛城華恋の姿をスポットライトに当てた。華恋は、胸に手を当てると言った。

 

♪頬を寄せあって♪

「心臓が破裂しちゃいそうなほどドキドキしてるの!」

「だからなんなの!」

♪うつる写真の笑顔に 少しの寂しさつめ込んで♪

「確かに私はみんなと違う。女の子としても、舞台少女としても半人前で、演技や歌だってみんなから見たら遅れてるかもしれない! でも!!」

「くっ!」

 

 瞬間、彼女の身体から光が溢れ出した。まただ、また彼女のキラめきがこぼれて、そして世界を包み込む。

 自分の世界を変えてくれたように、自分の未来を指し示してくれた時のように、まひるには、その光がとても尊い物に見えた。

 

♪潔く カッコ良く 明日からは 誰もが振り向く女になる たとえ2人離ればなれになっても 心はずっと一緒に♪

「舞台少女愛城華恋は、日々進化中だから! 一分、一秒毎に新しい自分になっていく。今までの自分の素肌が破けて中から新しい自分になっていくのが、よく分かるの! まひるちゃんだったら、分かるでしょ!!」

「ッ!」

 

 つい、見惚れてしまった。まひるがそう思っている間にも、舞台は刻一刻と変わる。新しいかきわりが、新しい舞台装置が、そして新しいキラめきが、一分一秒ごとに増えていく。

 最初はまっさらな大地だったのに、いつの間にか宝物に囲まれているかのように、彼女の作り出してくれた世界のようにどんどんと広がりを見せていく舞台に、いつしかまひるは酔いしれてしまったのだろう。

 頭が、クラクラとして立っているのも億劫になってきた。

 そんな事、決してあってはならないのに。

 

♪愛は お金では買えないって知っているけど♪

「分かったところで、何も変わらないよ」

「……」

 

 まひるは、唇をかみしめて振り絞るかのように言った。それは、今までの演技をしている自分じゃない。素の自分のソレである。

 

♪“I”でお金は買えるの? T.V.で言ってた 無感動…無関心きりがないね 若い子みんなそうだと思われるのは♪

「どっちかが舞台に立って、どっちかが舞台を諦めて、観客として見てるだけしかできない。幕内で起こってる中でしか見ることのできない舞台を、外で寂しく待つことしかできないのに!」

 

 結局、舞台に立つ人間と、立てない人間は違う。勿論、観客も全然違う。

 観客は、緞帳が降りている間の舞台の奥で行われている本番前の最後のチェックや、その舞台に立つ人間たちが裏でどれだけ努力してきたかを知らない。時には怒号が溢れて、無茶苦茶な舞台にあって。でもそんな舞台であっても舞台女優たちは皆必死に練習してきた。今日、その日、その舞台を見に来てくれる人たちの事を思って。

 そんな裏の情景を、観客たちは決して見ることができないのだ。決して。SAOはそれと同じだ。そう、まひるは感じていた。

 華恋が、ライバルたちが別の舞台で輝いている姿。ソレを見ることもできないなんて、知ることもできないなんて、そんなの、辛いではないか。

 舞台の上で光り輝いていたとしても、観客がソレを感じ取れなければ何の意味もないのだ。だから、自分は。自分たちは。

 

「寂しく待つ必要なんてないよ……」

「え?」

 

 やんわりと、笑顔を見せた華恋は、ゆっくりとまひるに歩み寄りながら囁く。

 

♪feel so bad! どうしようもないじゃない でもね私達 トモダチの事何より大切にしてる きっと大人よりも♪

「期待して待ってて、私が、私たちが帰って来るのを、私たちが新しい私たちに進化して帰って来るのを、まひるちゃんもこの舞台で待ってて」

 

 まひるは、その後の台詞が何であるのか、分かった気がした。きっと、華恋だったらこういうはずだという経験則。華恋の事を良く知っているからこそ、知ることのできた。彼女のライバルだからこそ、知れた言葉。

 

「この、舞台で……」

 

 それに同意するかのように、華恋は朗らかな笑みを浮かべて剣を構えた。

 

「この、現実という舞台で!!」

「ッ!!」

 

 もうこれで何度目か、交差した二人の武器。

 

♪夢を見て 涙して 傷ついても 現実はがむしゃらに来るし 自分の居場所 存在価値は無くせない 自分を守るために♪

「ハァァァァァァァ!!!!」

 

 時には川の濁流のように荒々しく。しかし時にはせせらぎのように静かに。疾風怒濤という言葉が似あうほどに攻勢に出た華恋の攻撃、迫力にまひるは押されるばかりだった。

 これだ、これこそが愛城華恋なんだ。まひるはしかし、絶対に≪ファン≫にはならないと強い意思で彼女の攻撃を捌きながら、攻撃の隙を伺うのである。

 

「す、すげえ……」

「なんて荒々しく、しかし若々しさに溢れる舞台なのでしょう……」

「je n'arrive pas à y croire……(信じられない……)」

 

 一進一退の攻防に、亀山や真矢たちが唖然とした、あるいは微笑みながら反応した。

 笑みを浮かべているのは、舞台少女ばかりの様子。そう、それはまるで―――。

 

「でも、懐かしい……」

「あの頃の私達も……」

「こんなんどしたなぁ……」

 

 なつかしきふるさとで遊んだ思い出を回顧するかのようだった。そう、あの頃の自分たちもこんな風に無邪気に楽しんでいた。オーディションという、舞台に立つための戦い。仲間たちの中で、必死に頑張って一番になりたくて、望んで、戦って、演技をして。

 あの時その星を掴めたのは愛城華恋、そして神楽ひかりの二人。いや、結果論かも知れないが、もしかしたら全員が星を掴んでいたのかもしれない。スタァという名の、たった一つしかないはずなのに、華恋によって、そしてひかりによって救われたキラめき。

 そして、そのキラめきは―――。

 

「……」

 

 この男をも貫く。

 何なのだろうこの気持ちは、華恋という少女の姿を見ていた右京は、立ち上がったままこわばった表情を浮かべる。

 

「これが……舞台少女ッ!」

「右京さん?」

 

 これがまだ、舞台女優にもなっていないアマチュアの少女たちの演技なのか。いや、華恋以外の少女たちは未来の、成功した自分たちの知識を持っているからいいとしよう。しかし、華恋は本当にまだアマチュアだ。己がこれまで見て来たたくさんのプロの女優の演技よりも拙くて、朧気で、夢心地で。

 でも、それは最初だけだった。今の彼女は違う。まるでそう、彼女の台詞と同じだ。進化しているかの如く舞い、叫び、そして躍動するその姿は、彼にも多大なる影響を与えていた。

 そして、興味、という毒薬を彼に飲ませるのだ。もしも、彼女たちがSAOの世界で、成長してきたのならば一体どのような姿になるのかと。キラめきという毒、しかし特効薬でもあるソレに、彼もまた蝕まれたのかもしれない。

 

「フッ!」

 

 マントを翻した華恋。一瞬剣が抜け落ちそうになるがもう一度差し治した。ギリギリの中での戦い。華恋は常に背水の陣なのである。剣を抜かれれば、あるいはバランスを崩しただけでも剣は抜かれ、マントは落ちる。

 ソレを肩に刺しながら、しかし躍動している華恋のマントから現れた物。

 それはサーベル

 それは短剣。

 それはレイピア。

 それはロングソード。

 それは弓矢

 それは二刀一対の剣。

 それはハルバート

 それは薙刀。

 それは、メイス。

 それは―――。

 

「みんなの武器を、使えるの華恋ちゃん!?」

 

 このオーディションに、あのオーディションに参加していた九人の舞台少女の武器。一瞬にして、まるでマジックのように出現させた姿は、彼女自身が関わった少女達の思いを知っているかの様に思えた。

 華恋は、矢で牽制しながらも近づくと、レイピアによる一突きをまひるに与えようとする。ソレが避けられると二刀の、ななが使っていた刀で踊るように近づき、そして地面に刺さったハルバートを振り上げる形で舞台の下から引っこ抜き、その勢いのまままひるを攻撃する。

 何とか、紙一重で避けたまひるは、どこかで絶望のようなものを感じた。あぁ、自分の知っている華恋はもういないのだと。自分の知り合いだった華恋はもういない。他者の武器をも自分の物にする。いい意味で捕らえると吸収力が強いのだと言える。しかし、悪い言い方をすれば、混ざってしまったとも。

 たくさんの舞台少女を見て、自分を見失って、他の少女たちの≪ブキ≫を取り入れないと自分を表現できなくなってしまったのだと、まひるは感じる。

 

「まひるちゃんだってできるよ!」

「私が?」

 

 否だ。華恋はやはり、笑顔を振りまきながら言う。

 

「そう! 私達は離ればなれになっても強い絆で結ばれている! 舞台を(たが)えても同じ道を行くことがなくなってもそれでも通じ合えるの!」

 

 そうだ。これは自分を表現できなくなったわけじゃないのだ。≪二つ≫のメイスが重なった。

 

「それが、舞台少女!!」

 

 確かに自分たちは違う道を行く。二度と同じ舞台に立つことができないかもしれない。でも、それでも自分たちがスタァを目指して切磋琢磨したその時間は消えることはない。

 彼女の中からも、自分の中からも。だからこそ、自分の武器の他にもみんなの武器を出すことができた。そう信じている。信じているからこそ、彼女は叫ぶのだ。

 脚本家からそう指示された。でも、自分自身でも言いたいと思った、その思いの丈の言葉。

 自分たちは何か。舞台に引き裂かれた少女たち? 夢を追い求めただけの愚かな世捨て人? ノンノンだよ。

 自分たちは、自分たちの≪スタァライト≫を目指した、聖翔音楽学院≪九十九≫期生。

 

「それが私達、≪スタァライト九九組≫!!」

「スタァライト……九九組」

 

 華恋命名≪スタァライト九九組≫。

 まひるは、唖然とした表情を浮かべたあと、にっこりと≪いつも通り≫のまひるの笑顔を見せて言った。

 

「勝手にそんな名前つけて……」

 

 と。華恋も、その表情を見て満足げに微笑んだ。ようやく、まひるもこの舞台を、このレヴューを楽しみ始めたようだと。

 しかし、どんな舞台にも必ず終わりは存在する。

 

♪I'll go my way 戻れない それぞれの 道を選ぶ時が来る前に♪

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 何度も何度も武器を交差させた二人の体力は、既に限界に近かった。華恋は、ひかりの短剣を構え、まひるもまたメイスを構えなおす。

 フラフラで、それでも笑顔を絶やすことなく華恋は言う。

 

「次が最後だよ、まひるちゃん……」

「最後……」

 

 サイゴ、か。その言葉がどれほど重い物なのか、それは舞台の上に立つ人間も、ソレを見ている観客たる少女たち、右京や亀山にも分かっていた。

 

♪こんなにも こんなにも 大切な思い出…とき放つよ… Take my revolution 生きて行こう♪

「そうだよ、私と、まひるちゃん。最後のオーディション。最後の、舞台!!」

 

 もうこれで全てが終わる。自分たちのオーディション、自分たちの青春の日々に終止符が打たれるのだ。やっと、やっと終わる時が来るのだ。舞台少女としての日々に幕が閉じる。

 それを表しているかのように緞帳が、舞台の天井に、そして二人の後ろと左右に現れる。まるで、決着を急かすようにと、カーテンコールは終わりなのだと、そう示すかのように。

 

「……ううん、最後じゃない」

「え?」

 

 華恋は、その言葉が良く聞こえなかった。今までハキハキとしゃべっていたはずの少女が、突然呟くように言葉を紡ぐのだから、当然なのかもしれない。

 

♪現実はがむしゃらに来るし 自分の居場所 存在価値を見つけたい ♪

「なんでもない……そう、なんでもないの! だから!!」

 

 幸か不幸か、まひるは自分の言葉が華恋に届いていなかったことに気がつくと、とびっきりの、これまで見せたことのない笑顔と、そして瞳から零れ落ちる清流のような涙を浮かべながら叫ぶ。

 

「最後は、私が勝つ!」

♪今日までの♪

「くっ!!」

 

 舞台が抉れるくらいの勢いで華恋の懐に飛び込んだまひるは、彼女の肩に刺さっている剣の柄に手をかけ。

 

♪自分を♪

「貰ったよ!!」

 

 抜いた。これで、マントが下に落ちる。

 勝った。まひるが、そう考えた瞬間である。

 

♪潔く 脱ぎ捨てる 裸になる 自由を舞う薔薇のように♪

「ッ! ハァッ!!」

「!?」

 

 華恋は、マントを持つと、まひるの顔に向けて投げたのである。

 

「目隠し!?」

 

 なんと、大胆な行動であろうか。舞台少女としての彼女たちの重要なアイテムであるソレを、あえて利用するなんて。観客となっていた舞台少女たちの間にも緊張が走る。

 

「次の攻撃で決まる!」

「えぇ! 最後に舞台の上に立てるのは!」

♪たとえ2人離ればなれになっても 私は世界を変える♪

「その舞台にふさわしい人物です!!」

 

 右京が叫んだ。その刹那。

 

「ハァァァァ!!!」

 

 華恋の持っていた短剣が、まひるの留め具を弾き飛ばした。しかし、その瞬間に華恋のマントもまたまひるの顔から滑り落ちて、二人のマントがほぼ同時に、地面に付いたのである。

 

「「はぁッ、はぁッ、はぁッ」」

 

 まるで、マラソンを走った後のように荒い息を立てる二人の舞台少女。勝者は、彼女たち自身にも分からない程の僅差。

 きっと、その勝敗を見極めることができる者は、人間の中には誰もいないであろう。

 

「ッ!?」

 

 何故なら、勝敗を決めるのは人間ではない。舞台装置、なのであるから。

 上空から落ちて来たのは、小道具の古い金庫であった。それが、一方の女の子の方にその口を開けて、中身を見せる。

 ソレを見た瞬間に、≪まひる≫は悟ったという。

 

「私?」

 

 自分が、負け、そして親友が勝ったのだと。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……約束して、華恋ちゃん……」

「何を?」

 

 ナーヴギアとSAOを手にした華恋に対して、まひるが、メイスを杖にするかのようにして全体重を乗せて、約束をする。

 

「帰って来れたら、私たち表の役者だけでも構わない。九人の、華恋ちゃんが言った九九組で一緒に、スタァライトをやるって」

 

 そう、例え今の九十九期生全員が集まれなかったとしても、観客が誰一人としていなかったとしても、例えソレが自己満足だったとしても、帰って来た全員も含めて、向こうの舞台で成長した仲間達、現実という世界で成長した自分達だけでも、一緒にスタァライトを、あの舞台をやろうと。

 

「……うん、約束する」

 

 当然、華恋の答えは、そしてソレを見ていた舞台少女の答えは同じものだった。

 華恋は、まひるに手を差し出すと、やはり彼女を救ったモノを浮かべながら言うのだ。

 

「だから……行ってきます! まひるちゃん!」

「……うん、行ってらっしゃい。華恋ちゃん!」

 

 こうして、最後のレヴューが終了した。彼女たちの青春の淡い日々を犠牲にする新しい舞台の幕開けとともに。けど、誰もが清々しい顔を浮かべていた。これでいいのだと、自分たちに言い聞かせるように。

 彼女たちの人生は加速する。違った舞台、違った歴史、そして違う未来に向かって。

 思い出したかのように、華恋は≪T≫のマークのバミリに刀の先端を突き刺すと叫ぶ。

 

「……ポディションゼロ!!」




 以上、過去≪スタァライト九九組≫が【Animelo Summer Live】、通称アニサマにて披露したカバー楽曲を使用させていただきした。
 本当はもう一曲あるけど、歌詞の内容的にここで使うのは適切ではないと判断しました。
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