SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第一章 2話

 さて、ゲームにログインできたリーファは、すぐさまフィールドに出陣。とまではいかない。実は今フィールドに出てもしょうがないのだ。

 フィールドに出るには必要な物が最低でも二つある。

 一つ目に、言わずもなが武器である。この世界に来てみてアイテムストレージと呼ばれるものをみてみたのだが、そこには何もアイテムが存在していなかった。当然、武器である剣も。SAOは、近年のRPGの中では珍しく魔法というものを一切排除したゲームであり、ソードアート・オンラインの名称にふさわしいほどに剣が重要なアイテムとなるのだ。そのため、フィールドに出るためには武器である剣が必ず必要になってくる。

 そして、もう一つの必須アイテム、それが回復アイテム。これはどのゲームでも一緒のことであると思うが、ゲーム開始当初はHP、つまり命とも言える物が少ない。このゲームの場合HPの最低値はたったの250。これが、どのくらいの安心感を持てる物であるのかは、実際にフィールドにでて敵と戦ってみなければわからない。だが、何の対策もなしにフィールドに出るのはかぎりなく危険であろう。そう考えれば、回復アイテムは最善の一手であると考えられる。そのため、回復アイテムを持っていないのは、ほとんど丸腰で敵の陣に乗り込んでいくのとほぼ同じであるのだ。

 この二つを買いたいのだが、少しだけ歩いた先にこれみよがしに剣を売っている露天を見つけた。すでにプレイヤーが何十人もそこに押し寄せて武器を手に入れようと躍起になっている。本来はここで武器やアイテムをかったほうがいいのだろうが、リーファは何かが引っかかった。

 ゲーム初心者であった自分は、少しでもオンラインゲームのことについての情報を得るために色々なゲーム攻略サイトを回った。当然発売前だったSAOの情報については微々たるものしかなかったが、しかし他のゲームでも傾向と対策という物は取れる。その結果、リーファはある一つの情報を知ることができた。

 武器やアイテムを売っているお店が、必ずしも一つの街にひとつとは限らない。というものだ。つまり、この街にはまだ武器屋、もしくは道具屋という物があるかもしれない。それも、先程の露天よりも安く買える同じ剣が売られているお店が。

 露天で売られている剣をみたとき、リーファの心に引っかかったもの。今考えてみると、それは値段だったのかもしれな。

 たくさんのプレイヤーがたむろしていたためによくは見えなかったが、人混みの間から見えた剣の値段は、先にゲームからプレゼントされていたお金ーこの世界ではコルというらしいーの8割を使うものだった。最初の剣で持ち金の8割を失うのはまだしも、それでは一緒に売られている回復アイテムはひとつかふたつくらいしかかえない値段だ。

 ゲーム開始地点から一番近い売り場、他のアイテムが少数しか買えなくなる値段設定。これを考えた時、リーファは閃いた。これは、開発者である茅場晶彦の罠なんじゃないかと。

 つまり、どれだけ高い剣であったとしても、初めてプレイするプレイヤーで、なおかつ一番近い売り場で売っている物であるのだから、ソレ以外に買える場所なんてない、どれだけ高かったとしてもソレを買わなければしょうがない。露天の配置は、プレイヤーをはめるいわば心理的なトリックなのではないか。

 だからリーファは、その露天から離れた。そして探す。他に武器が売られているお店を。安くて、回復アイテムを一緒に買えれるようなお店を。

 

「あっ……」

 

 ふと、リーファには一人の女性の格好をしたプレイヤーが目に入った。武器が売っている露天には一切目移りすることなく、一もくさんに路地裏の方に走り去っていくプレイヤーだ。

 もしかして。リーファは、そのプレイヤーの後をつけてみることにした。ただ、追いかけていると知られれば振り切られるかもしれないし、それに相手も気分が悪いだろうから付かず離れずの距離で。

 それからどれくらい走ったことだろうか。陽の光も浴びずに影となった路地裏は、まるで本当に外国の地を走っているかのような気分になってくる。陽気なBGMも、そこにはいると少しだけ小さくなり、明るい場所との対比を顕著にさせてくれる。

 自分は、実際に外国へと行ったことはないのだが、もしも行ったことがある人が見れば、この光景をどう思うのだろう。この綺麗な光景を何も知らない人が見たら現実だと思うのだろうか。

 そんなことをかんがえながらプレイヤーのことを追っていると、ついに彼女はその場所に来た。

 

「こんなところにも、露天が……」

 

 表の通りからは決して見えないような場所。そこにこじんまりとした露天がひとつあり、その周囲に数名のプレイヤーがいた。中には先程みた女の格好のプレイヤーもいる。

 そして、その露天で並べられていたのは、先程の表の通りで売られていた剣と全く同じもの。違うと言えばその値段だ。断然こちらの方が安いし、一緒に売られている回復アイテムのポーションというのもそこそこ安い。

 やはり、こちらで買うのが正解だったようだ。そうと決まれば話は早い。リーファは、ある人物にメッセージを送ると露天の老店主に話しかける。

 すると、目の前に現れたのは売られているアイテムの名前、値段、いくつ買うか、そしていま自分が所持しているお金の残高という項目。

 なるほど、こうやってお店でアイテムを買うのか。そう思いながらリーファは≪スモールソード≫という剣、そして余ったお金でポーションを購入する。これで、お金の残高はほぼゼロとなった。

 リーファは、露天から離れるとすぐさまアイテムストレージからスモールソードを出現させる。

 そこそこの重さを感じる剣だ。いや、そもそも重さを感じ取れるという時点でいかにこのゲームがリアリティあるものであるのかを実感できるというもの。他のゲームでは入手したアイテムを実際に持つということはできないため、直に触れる、重みを味わうことができるというのはこのSAOというゲームだけの特権であるといえよう。

 この少し重く、そして扱いが手やすそうな剣が、これからの自分の相棒。新しい剣を手に入れるまでの武器になるわけだ。そう考えると、少しくらい愛着が湧いてくる。今後、他の武器を手に入れればこの剣を使うことはなくなるであろうが、しかしアイテムストレージの中にはずっとずっと入れておこう。このゲームをクリアする、その日まで。そう、リーファは心に誓った。

 十数分後、リーファの姿はまだその露天の近くにあった。アイテムをゲットしたのであとはフィールドに出るだけであるはずなのだが、どうしたのか。

 実は、彼女には共にゲームをプレイしようと話をしていた友人がいたのだ。先程メッセージを送った三人が、その友人である。

 三人のうち二人とは、ある剣道の大会で出会った。実際に試合をしたのはそのうちの一人で、自分はあっさりと敗北してしまった。相手の方が学年がひとつ上だったということも理由にはあったが、しかしそれ以上に力の歴然たる差が大きかったのは間違い無いだろう。

 そしてどうやらその子も自分と同じく剣道場を家に持っており、祖父に鍛え上げられた自分のように、親兄弟に教えられて剣道が強くなったそうな。そんなこんなで二人は意気投合し、さらにその子の知り合いで応援に来ていた大学生で、こちらも剣道をしているというお姉さんとも仲良くなった。

 運命の悪戯か何か、話をきくに二人もSAOを入手したというではないか。三人が一緒にゲームをプレイしようという話になるのにそう時間は掛からなかった。結果、大学生のお姉さんのお友達の女性も加えて四人で遊んでみようということになったのだ。

 しかし、こう考えてみるとできすぎた偶然だ。もはや何かの必然性をも感じ取れてしまう。まるで、この四人でゲームをプレイすることを仕組まれていたかのように。

 ふと、リーファは気がついた。もしかして、今この露天に来ているプレイヤーの中に兄がいるのではないかと。

 こんな路地裏にある露天、ゲームにログインしたばかりのプレイヤーが見つけられるはずがない。おそらく知っていたのだ。この場所に剣が安く買えるお店があるということを。そしてそれを知ることができたプレイヤーは、このゲームを先にプレイすることができたβテスター、あるいはβテスターから事前に情報をもらっていた友人くらいなもの。だから、今この場所に来ていたプレイヤーの中におなじくβテスターだった兄がいてもおかしくはないのだ。

 いや、兄はまだ病院で検査を受けているはず、ここにいるはずがないではないか。そんなこと、分かり切っているのに。いたとしてもとっくの昔に剣を購入してフィールドにでていることであろう。兄の性格から考えるにきっとそうするに違いない。

 不思議だ。気がつくと必ず兄のことを考えるようになっている。兄が剣道をやめてゲームに入り浸るようになってから疎遠になっていたというのに。

 一体、自分に何が起こっているのか。不安だ。しかし、気持ちの悪い不安じゃないのが、唯一の利点だった。

 

「あ……」

「え? あッ!」

 

 先に声を上げたのはどちらだったか。ともかく、リーファが顔をあげると、そこには見覚えのある顔があった。

 

「あなた、ひ……じゃなかった《レイアース》さん?」

「それじゃ、君は……リーファでいいんだね」

「うん!」

「よかった、会うことができて……」

「私もです。《フィアッセ》さん! 《シグナム》さん!」

 

 リーファの前にいたのは三人の女性の格好をしたプレイヤーだ。それぞれにリーファの知らない顔、そして名前を持った見知らぬ友人。

 しかし、双方ともに誰が誰なのか判別することができていた。事前にキャラクターの容姿をこうするというメールを送り合っていたからだ。知り合いであるというのにプレイヤー名で呼ぶのは、それがネットリテラシーとしての常識であるとネットには書かれていたから。いわゆる身バレ防止のためである。

 知り合い同士でそんなことをして意味があるのかと思ってしまうが、しかし誰が聞き耳を立てているのか分からないので知り合い同士でもプレイヤー名で呼び合おうということで四人の間で定めていたのだ。

 

「まさか、こんなところに露天があるなど、言われなかったら気がつかなかった」

「はい、私もです」

「教えてくれてありがとう、リーファ」

「いえ、私も見つけたのは偶然ですし」

「それじゃ、ちょっと待っててね。すぐ装備を整えてくるから」

「はい!」

 

 そう言って三人のプレイヤーは露天の方に歩いていき、リーファと同じくスモールソードを購入した。やはり剣道を嗜むものとしては似たような得物の方が使いやすいというのだろうか。

 それから少しの間談笑したのち、四人のプレイヤーは街の外に向けて歩き出した。いよいよ四人の、リーファの冒険の始まりである。




プレイヤーNo.2 ???(レイアース【0arth】) ログイン
プレイヤーNo.3 ???(フィアッセ【Fiasse】) ログイン
プレイヤーNo.4 ???(シグナム【Signum】) ログイン

 因みに、分かっていることかもしれませんが、この≪フィアッセ≫というプレイヤーは原作ゲームにのみ登場するキャラの事ではありません。あくまで、名前を≪借りた≫女性です。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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