SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「忙しい中すまない、有栖零児」
「いや、Kの一族と森羅は代々協力関係を築いてきたからな。どうってことはない」
「……そうなのか、それは助かる」
「それで、前々から言っていた、気になる事の答えが見つかったのか?」
「あぁ、その結果森羅にも調査を求めることとなった」
「……詳しく話を聞かせてもらおう」
「昨年、俺は一人の患者の治療を行った。HIVに罹患した患者で、AIDSへの移行も近くに迫っていた。俺はその患者に対して移植手術を行い、HIVは完治し、今は……SAOの中にいるためどうともいえないが、身体的には問題がない」
「……なるほど、それでソレの何が問題なんだ?」
「問題なのは、その移植元となったドナーだ」
「ドナー?」
「……DNAがその患者とほぼ一致していたのだ」
「……」
「手術前に違和感を感じ取った俺は、使用した血を警察の協力の下鑑識に依頼をした。間違いはない」
「赤の他人とDNAが一致する確率は確か……」
「一番低くて、四兆分の一だな……」
「あり得ない奇跡だな」
「いや、それだけではない」
「どういうことだ?」
「本来、俺が行った術式はより未来に実現するはずだった物だ。確かに、これまで幹細胞移植によるHIVの完治の前例はあったが、それらは全て偶発的な事、偶然白血病患者の治療のために用いた臍帯血の中にレセプターの異常があったことによる完治事例だった。現代では、まだそのようにレセプターに異常を発生させるような技術は発展していない」
「……つまり、そのレセプターの異常がある臍帯血が手に入ったのも奇跡……」
「そう、この二つは確かに≪理論上は可能≫だ。しかし、その確率は天文学的な物になる。俺たちはソレを、クローン技術によるものだと考えた」
「クローン……≪何故≫だか記憶にあるな。政財界の大物が病気の治癒のために手をまわし、クローン臓器を作成するように依頼をし、私腹を肥やしていた組織があると。だが、その組織は確か……」
「俺たちが潰したはずだ。しかし、意思を継いだものがいる可能性もある。故に、DNA検査を依頼した刑事が調査をしたのだが……」
「結果は、どうだった?」
「ドナーとなった≪人間≫はちゃんと存在した。臓器移植コーディネーターにも聞き取りをし、正規的な手続きが行われた移植であったと判断されたのだ」
「……それはそれで、不気味だな」
「不気味なのはまだある。いや、ソレが今回君たち森羅に接触した理由なのだが……」
「なんだ?」
「執刀日だ」
「?」
「先も言ったように、俺がその子のオペを行ったのは去年の事だ。しかし、あらゆる資料の中で、俺が執刀したのは≪今年≫の四月という事になっている」
「……それは、確かに不気味だな」
「監視カメラの映像、カルテの記述、手術室の使用記録、その全てが改竄されていた。まるで、≪元々そうだった≫と偽装するように、だ」
「……一つ聞いておくが、記憶違いではないのだな?」
「あぁ、他の人間にも話を聞いてみたが、全員が確かに去年にオペをしたと証言している」
「……」
「これは、人智を超えた何かが関わっている。故に、特務機関森羅に協力を仰ぐことにしたのだ」
「確かに、その辺は俺たちに適任かもしれないな……」
「……どうやらお前も気になっているようだな」
「当たり前だ。これでもいくつも修羅場を潜っている」
「俺たちKの一族、そして特務機関森羅との関係これは、本当に≪存在する物≫なのか?」
「記録の改竄とその患者のドナーについての謎……そして俺たちの関係の謎……確かに、森羅でなければ詳細に調べることはできないことだな。分かった、俺に任せて……ムッ!」
「零児ッ!」
「あぁ、なんだ、この気配は……妖気?」
「ケケケ! この俺の気配に気がつくとは、大した人間たちだな!」
「新手の怪物か、貴様何者だ!?」
「ケケ! 冥土の土産に教えてやるよ!」
「俺の名前は、マクラガエシ。新妖怪の一人だ!!」
「マクラガエシ?」
第三章外伝 完