SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
彼女はゲーム初心者だった。その為、読むべき取扱説明書や本来行うべきである諸々の設定を抜かしてしまったのは仕方のない事なのかもしれない。
ネットも初心者だった。するものと言ったら友達とのグループLINEくらいで、そのため≪本名≫でプレイし、外見も一切変えなかったのは仕方のない事と割り切ってしまってもいいのかもしれない。
だが、あまりにも不用心すぎる。後の彼女の仲間になるプレイヤー達は総じてそう言っている。
この後、彼女にはSAO内最初で最悪の危機が待ち受けている。危機意識も全くない頃に起こったこの出来事で、下手をすればその時点で彼女の人生が終わっていてもおかしくはない。そんな出来事が待ち受けていた。
「うわぁ……」
彼女がこの世界に来たのは、ゲーム開始から30分ほど経ってのことだった。
先も言った通り、ゲーム初心者であった為にゲーマー組のようにサービス開始直後にログインするということがなかったのだ。だが、そのおかげでゲーム開始ポイントでの渋滞というものに遭遇しなかったのは幸いだった。
「すごい……」
彼女がまず目を奪われたのは、その景色にだった。始まりの街、その門の外に見える草原。そしてさらに奥に見えている山々。彼女の純粋な眼を潤すのに持って余るほどの光景だった。
少女は、その景色をもっと近くで見ようと思い、駆け出し、始まりの街の外に出る。
その瞬間、視界に映っていた≪INNER AREA≫という紫色の文字が消えていた事に彼女は気がつかなかった。いや、もし気がついていたとしても、説明書を熟読していなかった彼女が、その意味するところを知ることはできなかっただろう。
そんな彼女の事、自分が自分がと考えているゲーマーが気がつくはずもなく、彼女は1人で旅を始めてしまう。だが、もしゲーマーの1人が彼女に声かけていればこんな事態は簡単に避けられたはずだ。
彼女は何も知らない。いや、知らなすぎた。まさか、自分が自殺行為に等しい行いをしていると、全く気が付かないままに童のようにかけ出して言ってしまったのである。
時間にして十分くらいは走っただろうか。彼女の姿は草原のど真ん中にあった。森があり、湖があり、山があり、自然にあふれた場所だ。そこで立ち止まり、寝転ぶ少女。
「これが、SAOなんだ……」
感慨深げに呟く。最初は、よく知らないこんなゲームを、それも≪ソロ≫で行うなんて不安でしかなかった。
じゃあ何で申し込んだんだ。突っ込まれるかもしれないが、これはただ単に本当は友達皆んなでする予定だった、という理由があったからだ。
彼女の友達に、一人SAOに興味のあった人間がいた。そこで、予約の抽選に友達皆んなで参加した。その結果、ゲームのことをよく知らない彼女一人が当選していた。
最初は、本当にゲームをプレイしたいと思っていた友達にあげようと思っていたのだが、当選したのは自分なのだからと辞退したために結局は自分がプレイすることとなった。
しかし、ゲーマーである他の人間を差し置いて、かつVRゲームなんて物よく知らない自分がプレイしても良いのだろうかと悩んだ。
なおかつ、一年も前からの友達との共通の趣味とは違い、今回は1人での参加で他の友達のノウハウも一切ない。そんな状態で何かしらをするなんて初めてのことで、とても、とても不安だった。
だが、そんな不安などはこの世界に散りばめられた宝石よりも綺麗な景色を見ていたら忘れてしまいそうだ。
それはまさしく、あの1年前。自分がふとした思いつきで自転車を漕いで富士山を見に行った時のよう。
あの時の富士山は、あの時のとても綺麗な夜の富士はまだ頭に残っている。
言いようのない感動。言葉に表すことができない感激。友達に出会わせてくれた感謝。あの全ての気持ちは、きっとこれからの人生では決して味わうことのできないだろう幸福感だろう。
皆は、今頃何しているだろう。確か、同じサークルの友達はバイト、そして、自分が引っ越してきて最初にできた最高の友達は、ソロキャンに行くと言っていた。
思えば、友達はこの景色を見れないのだ。この大きな空の下にはいないのだ。そう考えるとなんだか少し悲しくなってくるがしかし大丈夫だ。自分にはあの友達と過ごした記憶がある。友達みんなと行ったキャンプの思い出がある。溢れ出す思い出、蘇る景色。それがあれば何も寂しくはない。そう、寂しくなんてない。
「さて! まずはどこに行こうかな?」
少女は起き上がると両手を上げてそう言った。その時、彼女は気がついた。
「ガルルルルルル……」
背後から聞こえてくる唸り声に。
まさか、この声は。
彼女がキャンプする場所は基本的に山の中、或いは湖の近く、とにかく自然にとても近い場所である。
そのため、よく立て看板で『熊出没注意』だったり、『猪出没注意』であったりの看板を見ることが多々ある。だが、幸運なことに彼女はそのどちらにも遭遇したことはない。そのため、そのような命の危機に遭遇した事は全くない。
そしてもちろん狼なんてのにも遭遇した事はない。もし、遭遇したとするのならばそれはそれで事件にもなる。
何故なら日本に住む野生の狼、ニホンオオカミは、自分が産まれるとうの昔に絶滅して存在しないはずなのだから。
だが、それは日本だけ、引いては現実の世界だけの話。忘れてはならないのが、ここがゲームの世界であると言う事だ。
油をさしていない機械のように後ろを振り向いた彼女。そして、そこにはいた。見た目からして間違いなくそれだと気がつけるほどにどの世界でも、ゲームの世界でも不変の存在である一匹狼の姿が。
「オオ……カミ?」
この世界では≪ダイアー・ウルフ≫と呼ばれているモンスターだ。
「ワァァァァァ!!!」
少女は、その姿を見るとすぐ立ち上がって逃げる。が、しかし目の前の獲物を逃してくれるほどモンスターは甘くなかった。
ターゲット、つまり少女はダイアー・ウルフの標的とされてしまったのだ。
逃げる少女、追うオオカミ。まさか、自分がこんな風に獣に襲われるなんて思いもよらなかった。
いや、このゲームはそもそもRPG。敵のモンスターに襲われる可能性があること、わかっていたことのはずだったし、その覚悟を持ってゲームをプレイし始めたのではないか。だが、あまりにも見目麗しい景色に眼を奪われて彼女は失念していたのだ。
結局は、彼女のあまりに不用心な性格が招いた事態。だが、こんな事態一つ自力で解決できなければこの先の景色を見にいくことなんてできないのだ。
戦わなければ。本当は動物を傷つけるなんてことしたくはないが、しかし今はそんなことを言っている場合じゃない。
後ろを向くと、ダイアー・ウルフが自分と同じ速さで迫っていた。
全力で走っていたつもりなのだが、なんだか現実とは自分のスピードが違うように感じる。ゲーム上のシステムである敏捷力はレベルアップしなければあげる事ができないので、デフォルトの敏捷力ではモンスターを引き離すまでには至らない、いや下手をすれば追いつかれてしまうかもしれない。
このまま逃げていても、どうしようもなくなる。ここは戦わなければ。
少女は、武器を取り出そうとした。
「えっと、武器武器……って」
武器を取り出そうとした。
「どこにあるの!?」
武器がどこにあるのかわからなかった。
ゲーム初心者あるある。武器の取り出し方がわからない、である。
剣といえば鞘に刺さっている。と、いうことで自分の腰元に触れたものの、そこには剣は刺さっていなかった。
それじゃ、背中にあるのかも。そう思って背中に手を回してみるも、やはりそこにも剣はない。
ではどこにあるというのか。
そうだ、武器とはつまりアイテムということ、ならばアイテムを保管している場所の中にあるかもしれない。
そうと決まればアイテムを呼び出そう。
「って、どうやったら出てくるの!?」
なんと、少女はアイテムストレージの出し方すらも知らなかった。
つくづく取扱説明書のありがたみが分かるというものだ。
なんてこと言ってる場合じゃない。
「ど、どうするのこれ!? えっと、えっと、剣! 出てこい! 出て! お願い!!」
無駄である。しかし、彼女はそれが無駄な行為であることを知らない。
慌てていた。だから彼女は気が付くことが出来なかった。フィールドに落ちていた石ころに。
「え、うわぁ!?」
少女は、その石コロにけつまずき転んでしまう。
痛みは、ゲームの中であるために感じない。それに、ヒットポイントもこれくらいじゃ減ることは無い。だが、問題は足を止めてしまったという事だ。
「あッ……」
ダイアー・ウルフは立ち止まり、少女を襲う態勢を整えていた。閉じ切らない口の間からは、鋭い歯がキラリと見えている。あんな牙でかまれたら痛いだろうな。などと思うが、これから自分がその牙でかまれてしまう事になるのだからそんな感想考えるなんて、どうかしている。
「こ、来ないで!?」
逃げなければ。そうは考えている物の、恐怖に足がすくんで動けない。ゲームであるというのに足がすくむなんて、なんてリアリティのあるゲームなのか。などと考えている余裕はなかった。
このままじゃまずい。このままじゃ、自分は死んでしまう。いや、ゲームなのだからゲームオーバーなのだろうか。
まさか、『本当に死ぬ』とは思ってもいないが、だけれど襲われて殺されるという感覚に似た物は味わうかもしれない。そう考えたら、怖くて怖くてたまらない。
誰か、助けて。あの時みたいに。一年前の時、自分が暗闇の中で独りぼっちだったときに助けてもらった時のように、あの子のように優しい誰かに助けてもらいたかった。
けど、こんな広い草原なのだ。そんな偶然あるわけがない。
そうこう考えている間に、ジリジリと自分に迫ってくるダイヤウルフ。そして、ついにその口が開かれた。
「ガルルルルル!!!」
「ひぃっ!?」
ダイアー・ウルフが少女めがけて飛び掛かる。もうだめだ。少女は目を閉じた。その時だ。
「キャン!?」
「え?」
ダイアー・ウルフが子犬のようにかわいい声を上げた。ゆっくりと、少女が目を開けると、その先には―――。
「いくらゲームとはいえ……騎士として目の前で襲われている少女を見過ごすわけにはいかないな」
長い、ピンク色のポニーテールをした凛々しい女性が経っていた。
少女を最初に見つけたのは、リーファであった。
「あ、あれって……」
「ん?」
武器をそれぞれに買い、さっそくフィールドに出てみた彼女たちは。しばらく草原の中を歩き回っていた。
ただ、それだけでも楽しい物だ。鼻に抜ける土や草の香ばしいにおい。当たる風。それらすべてを感じ取るだけでも自分が日本とは別の世界に来たのだという気分になれて楽しい。
耳に抜けるBGMは、これからの冒険への期待をふつふつと沸きあがらせるほどの曲で、聞いているだけでも歩を前に進めてしまいそうだ。
そんな中での出会いだった。オオカミに追われている女の子のプレイヤーを見つけたのは。
「あの子、武器も出さないでなんで逃げているの?」
「武器を買っていない……何てこと、ないわよね?」
実はその通りなのだが、この時の彼女たちは知る由もない。
「もしかして、ゲーム初心者なのかも……VRゲームが初めてとか。だから、目の前にいきなりモンスターが現れてパニックになっているのかも」
まだそちらの方があり得る。実際、ベテランのゲーマーであったとしても、目の前に本当にモンスターが現れれば、パニックを起こしかねないというのは考えられること。
きっと、彼女もゲーム初心者もしくはVRゲームが初めてなのだろう。だから、あれほど慌てているのだ。
その時、彼女たちは逃げている少女が発している声を聴いた。
「なんか言ってません?」
「えっと、剣出てって……」
「やっぱり、剣買ってなかったんじゃ……」
「それか、出し方が分からないか……だな」
事ここにいたり、何故追われている少女が剣を出現させないのかの理由が分かった。だが、あまりにも迂闊だ。剣を買っていないにしても、剣の出し方を分からないにしても、アイテムの確認もせず、丸腰で街から出てしまうなんて。だが、初心者らしいと言えば初心者らしい行動ともいえる。
「あ、ころんじゃった……」
見てると、少女のプレイヤーは石ころに躓いて転倒してしまった。それを見て、ダイアー・ウルフがジリジリと近寄っていく。
さて、自分たちはどうするか。この場合、見捨てて彼女がゲームオーバーになったとしても黒鉄宮という場所からリスタートするだけですむ。そもそも、彼女と面識もない自分たちが助ける理由なんてないはずだ。だから、この場合彼女の事を助けなくても、あまり問題はない。
問題はない。と、思う。だが。
「どうします?」
「愚問だな……だろ? フィアッセ」
「えぇ」
彼女たちの中の答えはすでに決まっていた。
まず、最初に飛び出したのはシグナムだ。シグナムは、初期装備のスモールソードを飛び掛かろうとしたダイアー・ウルフを突き刺した。その衝撃で、ダイアー・ウルフはやや吹き飛び、少女との間にシグナムが入ったことによってその距離を安全圏にまで離すことが出来た。
「いくらゲームとはいえ……騎士として目の前で襲われている少女を見過ごすわけにはいかないな」
「あなた、大丈夫?」
「え? あ、はい! ありがとうございます!」
少女は、ゆっくりと立ち上がるとそうフィアッセに返事をした。ゲームの中であるために怪我の心配はないとはいえ、かなり怖い目にあったはず。だというのに少女はその怖さを忘れてすぐに笑顔になることが出来ていた。きっと、本当は強い人であるのだろう。
「剣はどうしたんですか?」
「え? えっと、出し方が分からなくて……」
「出し方が分からないって、まさか買っていないんですか?」
「え? 買うって、買わなくちゃダメなんですか?」
「やっぱり……」
最悪な予想が当たってしまったようだ。やはり、彼女は剣を購入すらもしていなかった。もし他にプレイヤーが通っておらず、いたとしても自分たちのようにお人よしのプレイヤーではなかったら彼女が即ゲームオーバーになっていたであろうことは想像するに難しくない。
「リーファ、レイアース、その少女を頼む。フィアッセ、お前は左から回ってくれ。私は右からだ!」
「はい!」
「分かった!」
「えぇ!」
シグナムは、そうそれぞれに指示を出すと右側に走る。フィアッセもまたそれからワンテンポ程ずれてから左に走った。
二つの方向に分かれたことにより、ダイアー・ウルフはどちらから相手をしていいのか分からず、混乱状態になるはずだ。そう、これが普通の現実にいるモンスターであるのならば。しかし。
「ッ!」
「私たちには目もくれないか!」
ダイアー・ウルフが狙っているのは少女のプレイヤーのみ。ダイアー・ウルフのターゲットは、シグナムに攻撃された後もまだ少女のプレイヤーの方に残っていたのだ。だが、ある意味ではこれも想定内の事だ。
「リーファ、レイアース! 頼んだ!」
「「はい!」」
ターゲット、などという物当然シグナムは知らない。だが、敵がどのような動きをしてもいいように、少女の事を襲うという事は変わらないという事もあるだろうと考えて、二人を護衛に付けていたのだ。
「ハァァァァ!!」
「ヤアアアァァ!!」
二人は、それぞれに右斜め上から、左斜め下から攻撃を加える。
ダイアー・ウルフは、二つの赤い線、二人が斬った痕跡を残したまま吹き飛ぶ。
「「はあぁぁぁぁぁ!!!」」
そして、吹き飛んだ方向にいたシグナム、フィアッセの二人が左右から同時に真一文字に切り裂く。ダイアー・ウルフは、地面に落ち、何度か転がった。
「倒したの?」
「いや、まだのようだ……」
「え?」
そう、まだダイアー・ウルフのHPは、残っている。確か、ヒットポイントには安全域のグリーンゾーン、注意域のイエローゾーン、そして危険域のレッドゾーンの三種類があると説明書には書いてあった。
いま、ダイアー・ウルフのヒットポイントゲージの色はイエロー。自分の最初の攻撃も含めて五回の攻撃を行なったというのに、まだイエローゾーンなのだ。
どういう事だ。あまりにも攻撃力が低すぎる。こんな序盤も序盤の敵に対してここまで攻撃しても少ないダメージしか与えられないとなると、今後の戦い方にも支障が出てしまう。
こういう時、ゲーマーという人種であれば、何か弱点をつかなければならないのか、攻撃が通りづらい仕掛けがあるのではないのかと感ぶる事ができる。だが、この面々の中にそんなことを考えられるほどのゲーマーはいない。なので、やることはただ一つ。
「とにかく、5回の攻撃で半分と言うことは……あと5回で倒せると言うことだ!」
「ええ、そうね!」
「そ、それでいいのかな?」
「良いも悪いも、それしか方法がないんなら!」
理屈としてはそれで正解なのである。しかし、はた目から聞いていると、脳筋のソレに近い何かを感じる発言だ。
ともかく、そうと決まれば話は早い。
「フッ!」
「ハァッ!」
「ハァァ!!」
「ハァァァ!!」
四人は、次々と一閃、また一閃と攻撃を加えていく。
「「「「せーのっ!」」」」
そして、ダイアー・ウルフの背後に回った四人は一斉に振り返って最後の一撃を加えた。ダイアー・ウルフのHPバーはその一連の攻撃を受けて徐々に徐々に減っていき、そして最後の一ドットが消えた瞬間、オオカミは動きを止める。
そして、その身体は青白いガラス片となって崩壊した。これが、彼女たちがこの世界で遭遇した初めてのモンスター戦であった。コルや経験値の入手表示はリーファの目の前に現れたので、どうやら最後の攻撃を行ったと認定されたのはリーファであったようだ。
「ふぅ、なんとか倒せましたね……」
「だが、何故こちらの攻撃がさほど通じていなかった?」
「やっぱり、レベルが低いからかな?」
戦闘が終わり、ゆっくりと話す時間が出来た四人。議題となっているのは何故自分たちの攻撃がそれほど効果を与えられなかったのか。
予想したのは、まだ自分たちのレベルが低いからという物だ。しかし、本当にそうであったのならばこのゲームはかなりシビアな作りになっていると言わざるを得ない。最初のフィールドの敵の時点でこれだけの攻撃を与えなければ倒せないのは、ゲームバランスの問題を感じる。
第一、普通に10回程度攻撃を与えなければ敵を倒せないというのならば、自分たちのように何人ものプレイヤーで一緒に戦闘をしている者ならともかくソロ、つまり一人でプレイしている人間の苦労は自分たちの比ではない。つまり、大勢での戦闘を前提としたゲーム設定となっているのだ。ゲームの幅が狭まっているような気がしないでもないが、本当にそれが茅場晶彦というゲームディレクターの目指したゲーム設計であるのだろうか。
「あ、そういえば」
「え?」
リーファは、取扱説明書のある一文を思い出した。確か、あの説明書はゲームの中でも確認することが出来たはずだ。
リーファは、右手の人差し指と中指を上から下に振るう。すると、鈴の効果音と共に、目の前にメニュー・ウインドウという物が出現する。リーファは、その中にある≪Help≫の項目を押す。すると、そこから派生してさらにいくつもの項目が現れた。
リーファが、その項目をタッチすると、ウインドウが出現して長文が流れ出す。確か、あの一文があったのはゲームの仕様の項目だったはずだ。
「あ、これです」
「ん?」
リーファは、自分のメニュー・ウインドウをシグナムたちに見せることが出来るように不可視モードから可視モードに変える。これによって、普段はメニューウィンドウの持ち主のプレイヤーではなければ見る事ができない他プレイヤーのメニューウィンドウを見る、もしくは見せる事ができるのだ。
「ソードスキル?」
「あ、そうか。そういえばSAOはソードスキルってものを駆使して戦うゲームだって」
「そういえば、ネットでそんなことを言ってたわね」
レイアース、そしてフィアッセはその文字を見てこのゲームの特徴を思い出したようだ。だが、シグナムは、その言葉を聞いたことがない様子だ。CMや人気アイドル達が行っていた宣伝の番組でも紹介があったはずなのだが、不思議である。
SAOは、近年のRPGとしては珍しい魔法を排除したゲーム。徹底して剣での戦いを強いるゲームなのだ。そして、その剣を使用して戦うに当たり茅場晶彦が作ったギミック、それがソードスキル。簡単に言えば、必殺技だ。
そう、このゲームでは我流での戦い方は推奨していない。そのため、我流での攻撃は、ソードスキルを駆使して戦った時のそれと比較して体感2~3割ほどの攻撃力しか持ち合わせていないのだ。理由としては恐らく、ここにいる四人のように現実世界でも手練れである人間がプレイして、プレイヤー間での格差が広がることが内容にであろう。
確かに、せっかくゲームという現実では味わえない力を使うことが出来る空間に来れたというのに、そこに現実での強さが反映されてしまっては興覚めである。
だから、このゲームをより一層楽しむためには、ひいてはこの先を進んでいくためにはこのソードスキルという物の取得が急務となってくるのだ。
メニュー画面の中には、今自分が持っているスキルを表示する項目もあった。今自分たちが使えるスキルは片手剣のみ。それをタッチすると二つの名前が出現する。これが、ソードスキルなのであろう。
「えっと≪スラント≫と、≪ホリゾンタル≫?」
「今、私たちが使えるのはこの二つだけみたいですね」
さらにその項目をタッチすると、技の使用方法も乗っていた。今度の戦闘ではこのソードスキルという物を試してみるべきだろう。
とにかく、この世界で戦うための攻撃方法は分かったので、次の話に移ろう。
「それで、貴方」
「え? あ、はい!」
「武器も持たないでフィールドに出るなんて、危ないわよ」
「す、すみません!」
少女のプレイヤーは、小さくなって反省する。申し訳ないが、反省しているその表情があまりにも可愛すぎる。だが、こんなかわいい顔をできるプレイヤーが、実は男性が操作していました。という可能性もあるのが残念と言わざるを得ない。
実際に現実でも女の子という可能性もなくはないが、しかし現実の事を聞くのはマナー違反でもあるため、リーファたちはソレを聞くことは無い。
「あの! 助けてくれてありがとうございました!」
「いや、我々はただ通りかかっただけだ」
「はい、大したことなんてしてませんよ」
「それでも、命の恩人です!」
言葉遣いからも、元気はつらつな少女であることが見て取れる。しかしゲームの世界で命の恩人なんて、とてもオーバーな子である。
なんて、この時は後にあんなことになるなんて思ってもみなかったので笑っていた。まさか、本当にシグナムたちが命の恩人になるなんて、この時は誰も想像していなかった。
「君、一人でゲームをプレイしているのかい?」
「はい……本当は、友達もプレイしたがってたんですけど、私一人だけ手にいれることが出来て……」
「そっか、運がよかったわね」
「はい!」
この時は後にあんな(略)。
「あ、だったら私たちと一緒にゲームをしませんか?」
「え?」
「そうだな。一人でプレイするよりも、仲間がいる方が心強いだろう」
「は、はい! よろしくお願いします!」
というより、この子を一人にしていると先ほどのようなことになるかもしれないから放っては置けないと言ったほうが正しい。
「それで、貴方名前は?」
「私は≪ナデシコ≫! よろしく!」
とにもかくにも、これで保護欲求がくすぐられる女の子が仲間に加わった。現実の世界でも知り合いだったシグナムたち一同を除いて、初めてこの世界でできた仲間である。
プレイヤー№5 ???(ナデシコ【Nadesico】) ログイン
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
-
ヴァルキリーズfeatボーイ
-
プロジェクトSAO
-
アルティメットカオス
-
無への逃走
-
肯定あるいは否定
-
フィクションスターズ
-
〜いろんな著作物から以降はいらない
-
タイトルはそのままでいい