SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
この世界には、目には見えない存在がいる。彼らは、時に人間と共に暮らし、時に人に害を及ぼし、そして自らの後悔を消すための旅を続けている。たとえ、それが叶わぬ物がいたとしても、それでも彼らは自分の人生の残り香を世界に残し続けている。
これは、そんな残り香を感じることができる数少ない人間と、それを取り巻く多くの友達のかけがえのない日常の話。
の、はずだった。あの日が訪れるまでは。
「おっはよー!!」
「あいっかわらず元気だな山田は」
普通の公立高校の普通の教室。その三年生のとあるクラスに登校してきたのは山田健太である。通称アホの山田。いつでもハイテンションな性格で空気をほとんど読むことのない男子生徒である。
そんな山田に声をかけたのは上原佳菜。このクラスに所属する女子学生である彼女は携帯ブログを趣味としており、彼女のある日常を映した日常ブログは、あるカテゴリーのランキングで1位になったことがある。たびたびとあることで炎上したり捏造疑惑が持ち上がったりするのだが、本人にとっては本当に日常であったことであるのでそんな疑惑を持たれることはやや気に食わないそうだ。
「これが元気出さずにはいられないって!!」
「どうしたの~?」
さらにもう一人声をかけたのは女子生徒は小川真琴。とある腐ったものが大好きな変わった人間だが、それ以外はいたって普通の女子高生である。腐ったもの大好きということ以外は。
「実は、SAOの予約抽選に落ちて……くっそー! 誰よりも早くプレイしたかったのにぃ!!」
SAOというのは、今世間で話題となっている最新型VRMMORPGである。正式名称ソード・アートオンライン。ナーヴギアというヘッドギアを用いてゲームの世界に自分の意志ウキを入り込ませるそのゲームは、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚、それら護岸のすべてを、そして意識までもをゲームの世界に入れ込み、実際に自分の身体を動かしている感覚になれるゲームなのである。
しかし、そんな世界中のゲーマーが喉から手が出るほどに欲しそうなゲームであるのに、初回販売の本数はたったの一万本のみと狭く、さらにその中から二千本は別の理由ですでに販売元から離れているため、一般販売される個数8000本。それを日本中のゲーマー、ゲーマーではないにかかわらずに熾烈な争奪戦を繰り広げているのだ。結果、この山田はその争奪戦に敗れてしまったらしい。
この山田の叫びを聞いていた上原は、そういえばという顔でさらに隣にいる女子生徒に聞く。
「SAOって、確か江角が予約してたゲームじゃなかったっけ?」
「「えぇ~!!!?」」
「あぁ、今朝メールが届いてた」
彼女の名前は江角京子。中学時代は元ヤンキーという経歴を持つ女の子で、当時はナンパやカツアゲに遭遇していた学生たちを持ち前の眼力と力で守り、いわゆる鼠小僧的なことをしていたそうだ。そんな当時の彼女につけられた異名が、≪灼髪の救世主≫である(本人はそう呼ばれることは気に入らず、もしも本人の前で言おうものなら校舎裏行き若しくはその場で一つの屍が出来上がる)。
「す、すげぇけど……まさか救世主がゲームを気に」
数秒後、生きる屍前にて。
「まぁ、応募するだけならタダだったからな」
「で、当たったと」
「無欲の勝利って奴だね」
まぁ、当たったからには楽しんでくるよ。そう江角は言う。
ここまで見ていればただただ普通の女子高生と一名の男子高校生の会話である。そう、ここまでは。しかし、彼女がその教室に入ってくれば話は全くと言っていいほど変わってくる。
この生徒たち自体はいたって普通の少女たち。しかし、そのクラスを異端としている存在がいる。そして、その存在は今自動ドアと化した普通のドアから教室に入ってくる。
「皆さん、おはようございます」
「おはよう! 天海さん!」
「おっはよう!!」
「おう、おはよう」
「おはよう……」
天海響黒い長髪が特徴で謙虚で礼儀正しい女の子。母親は自分を産んだ時に亡くなっており、父と二人暮らししている。とある特徴がなかったらいたって普通で小綺麗な女の子。だが、もんだはその特徴であった。
「? 上原さん、どうしました?」
「なぁ天海。何かあったか?」
「え?」
と、上原は携帯を天海に向けて言う。
「ど、どうしてわかるんですか?」
「そりゃ……」
「「「ん?」」」
と、他の三人が上原の携帯を覗き込む。その瞬間三人ともが納得した。そう、彼女の最大にして最凶の特徴。それは、彼女の後ろに浮いている存在にあった。
「後ろのコギャルが自慢げにこっち見てるから。なんかムカツク」
『えっへん』
現実の目線では何も存在しないように見える。しかし、携帯という機械の目線を通してみると、響の後ろの空間に、足のない日焼けしたガングロ系の女の子が浮かんでいる。1990年代によくいた女子高生スタイルという時代錯誤な格好をした女の子は現世に生きる存在ではない。
彼女は、幽霊である。10年ほど前に渋谷で遭遇したビル火災によって亡くなったそうだ。彼女、天海響に出会ったのは二年ほど前のことだ。
天海響。普通の女の子の世に見える彼女には実はとある能力を備わっている。それが、霊感体質。
幼い頃から、彼女は他人には見えないものが見ることが出来た。見るだけではない。見て、聞いて、触って、そしてすでにこの世との接点が途切れかけた存在と現世を繋げる存在として生きてきた。
と言っても、彼女はそんなに大したことはしていない。彼女はただただ日常を過ごしてきただけだ。他の人たちとはほんのちょっぴり違う、ただ友達が増えただけの日常を。
彼女がこの学校に転校してきて二年。彼女と友達になることによって周りの友達の日常も少しずつ変化していった。その一番最たる例が、上原のブログであろう。
彼女の日常ブログは、天海響の存在によって彼女の周りに集まってくる幽霊やこの世のものではない存在、あと猫一匹によって染め上げられており、そのおかげでオカルトブログランキング1位常連のブログサイトとなっているのだ。
「実は、葉書の懸賞に当たりまして……」
「葉書!?」
「今でも葉書の懸賞ってあるんだぁ」
ネット時代のこのご時世。懸賞の応募にもネットのサイトを使うことが一般的となっている。だが、その元祖ともいえる存在が、雑誌や新聞などの広告で宣伝している葉書による懸賞である。そして、ソレ自体は絶滅危惧種となっているものの確かに存在している。そう、響の後ろにいるコギャルと同じように。
「それで、なんの懸賞に当たったの?」
「はい、確か最新のゲーム機と新しく発売されるゲームソフトだとか」
「「「ん?」」」
今このタイミングで最新のゲーム機とゲームソフト。これには生きる屍以外の三人にも覚えがあった。
「天海さん、それって」
「それって! SAOとナーヴギアのこと!?」
ここで生きる屍から復活した山田はすさまじい勢いで聞いた。それに対して、天海はやや困惑したような表情を浮かべながら。
「はい。あ、でもゲーム機の方は確かにナーヴギアという物だったんですがゲームソフトの方は確かソードアート・オンラインっという名前だったような」
「それの略称がSAOなんだよ」
「え? そ、そうだったんですか!?」
「何にも知らないんだな」
現在の世間の話題から一人置いてけぼりを喰らっている天海。世間の流行にうというというのか、それともあまりそういった物には興味がないと言ったほうがいいのか。とにかく一つだけ分かることは、本当にSAOを欲しかった山田がSAOを手にいれることが出来ず、それほどSAOに興味がなかった二人の少女がSAOをゲットしたというやや理不尽なことが起こったという事実だ。
「はい。最初は、私も応募しようとは思っていなかったんですが、コギャルさんが応募した方がいいと……」
『だってぇ、なんだか面白そうだしぃ、マジでゲキヤバって感じ~』
と、後ろにいるコギャル霊が言った。
因みに、霊感のない天海以外の四人は、実際には彼女の姿を見ることも、その声を聴くこともできない。しかし、携帯電話という近代文明の遺産を使用することによって、彼女の姿形、声を感じ取ることが出来るのだ。
「んで、どうしてコギャルが自慢げなんだ?」
「あ、はい。実はこの懸賞に皆さんもご協力を受けまして……どうやら、コギャルさんの葉書が当たったみたいなんです」
余談だが、響の母親は彼女を産んだ際に亡くなっており、現在は家で父親との二人暮らしである。そのため、皆さんというのが一体誰の事なのだろうかと彼女のことを知らない人間からすると思うのだが、響の友達四人組にとっては、それは簡単に検討が付いた。
「皆さんって、アレか?」
「? あ、はいそうです!」
上原は、響の背後を指さしながら言った。響はそのジェスチャーを受けて後ろを振り向く。そこには当然何もいない。だが、携帯と響には見えていた。無数の人魂と、白いワイシャツに赤いスカートの少女の幽霊、それと落ち武者の幽霊の姿が。当然、彼女の友達の『霊』たちである。
既にこの世の物ではなくなっている者たちではあるが、いわゆるポルターガイスト現象を用いることによってさまざまな物質を持ち上げたり動かすことが出来る。そのおかげで響の手助けができ、彼女の幽霊友達が多いことから、懸賞葉書が何百枚も出来上がったのだ。
「でもすごいよね。葉書の懸賞って言っても、たくさん葉書があったはずなのに、当たるなんて」
「まぁ、世代だからだろな」
彼女の生きていた時代、それはまだインターネットが今のように発達していたわけではなく、そういった懸賞系列の主流は葉書だった。当時は、葉書の懸賞だけで生活をするというバラエティ番組の一コーナーがあったりした程だ。その世代を生き、その世代で亡くなったコギャルだからこそ、どのような物が懸賞に当たりやすい葉書であるのか知っていたのだろ。
「いいなぁ、天海さん。俺もプレイしたかったなぁ!」
「ねぇねぇ天海さん! 実は江角さんもSAO当たったんだよ!」
「え? そ、そうなんですか?」
「まぁな」
『へぇ、よかったじゃん響っち! さすがにゲームの中まではうちらも入っていけないし』
SAOはVRゲーム。普段の響がプレイするようなファミコンとは違って実際にプレイヤーの意識がゲームの世界に入り込む種類のゲームだ。そのため、いつものように響の後ろから彼女がプレイしている姿を見たり、いつものポルターガイスト現象を使ってプレイしたりすることはできない。
普段から一人ボッチになることがない響にとって背後に、周りに幽霊の姿が一切ないという状態はほとんどありえないこと。だから、VRゲームというものをプレイすることは、かなり心細いことだったし、幽霊たちにとっても気がかりなことであったのだ。
「はい! 江角さんが一緒なら心強いです!」
「でもすごいね! たったの一万本しかないのに、その内の二つを私たちの友達が持っているなんて!」
「案外、まだいたりするかもな」
「ん?」
その時、上原は見た。教室の外、廊下からこちらを見ているこのグループのもう一人の友達の姿を。
まさか天海までSAOをゲットしているとは。登校してきた井上成美は友達グループの会話を教室の外から聞き、何故か教室の中に入ることを躊躇していた。
井上成美は、天海響の親友であると言ってもいい人物だ。恐らく、当の本人は否定するかもしれないが、周りの目から見てもまぎれもない事実である。
下校時も一緒に帰ったりし、休日や長期休暇の際には一緒に遊びに行ったり家に泊まりに行ったりとそこまでやっておきながら井上の方は親友というのを否定している。
素晴らしいほどに簡単な言葉を使うとすれば、彼女はツンデレなのである。
『ツンデレ』なのである。
「って、なんで私教室に入ろうとしないんだろう……」
そんな当の成美本人は、そもそも何故自分が教室に入ろうとしないのかが不思議で仕方がなかった。
理由はあるとすれば、彼女の近くにいるたくさんの幽霊たち。実のところ彼女は幽霊や超常現象と言ったオカルトが大の苦手なのだ。それもまた、終始オカルトのすぐそばにいる響のことを親友扱いしない理由にもなっていると言ったほうがいいだろう。
天海響が1年生の時に転校してきて以降2年間、学校では主に彼女の周囲での超常現象が多発している。普通の引き戸が急に自動ドアになったり、3cm程の隙間から声がしたり、ラップ音なんてあまりにも多発しすぎて誰も驚かなくなっているほど。で、あるが彼女成美は絶対に幽霊の存在を信じることはしない。半ば無理がある気がするが、彼女が信じないというのだから、信じないのであろう。
「なんでだろうなぁ~」
「ッ!」
と、そんな成美の後ろからいつの間にか教室から出た上原が声をかけた。
成美は、突然の声に驚き後ろを振り向いた。だが、こういったビックチ系列に関してはもはやよくあることの上、知っている人間であったため大声を出してまで驚くということは無かった。
「まっ、どうせ天海に一緒にSAOしようって言い出せないんだろうな」
「な、そ、そんなわけないでしょ! そんなの、まるで友達みたいだし……その……」
彼女たちの関係を知っている者ならだれもが思うだろう。ツンデレ、ここに極まれりと。それを聞いた上原はため息をつきながら言う。
「ホント、難儀な性格してるよなお前」
「な、なによ……」
「……ゲームの中だったら幽霊も天海には近づかないだろなぁ」
「ッ!?」
成美は、そんなこと思いつきもしなかったという表情で上原のことを見た。
もしも彼女のすぐそばに霊が寄ってこないというのならば、自分が彼女を怖がる必要も理由もなくなる。あわよくば、彼女としんゆ
「って、何考えてんのよ私は!!?」
「ホント、難儀な性格してるよな」
上原は、再度彼女のそういうと一緒に教室に入り天海のもとに向かった。
「えぇ!? 井上さんもSAOゲットしたの!?」
「ま、まぁたまたま予約に応募したらね」
「よかった、それじゃ江角さんと三人で仲良くゲームが出来ますね!」
「な、仲良くって……まぁ、悪くはないけど……」
と、いうことで結局は三人で一緒にゲームをプレイしようという話になった。というよりも、友達同士なのだからそういう話になっても当たり前ではあるが。
しかし、ここで江角が一つ気になっていることがあった。
「なぁ、天海」
「はい?」
「お前の家って、パソコンあったか?」
「え?」
ソードアート・オンラインは、インターネット回線を使用してプレイするゲームである。そのため、プレイするためにはインターネット接続ができるパソコンが必須となる。が、しかし彼女の家は現代日本でも珍しいほどに古風な家で、昭和の家がそのままタイムスリップしてきたような家であった。
「あ、そういえばナーヴギアはインターネットにつなげないといけないって……」
「えっと、確か前に天海さんの家に言った時には……」
なかった。インターネット設備やデスクトップパソコンどころかノートパソコンすらもなかった。余談だが、彼女は携帯電話を持っているのだが、そんな古風な家柄故彼女が初めて学校に携帯電話を持ってきた際には山田は驚愕していた。とはいえプリペイドの携帯で、使用上限は1000円というこれまた現代の女子高生にしては厳しめの物。ということでまだまだ携帯電話ですら現代に追いつけ追い越せの状態の彼女にとっては、パソコン等もってのほかであった。
ーと、いうことでー
「先生の許可を得てパソコン教室のパソコンを一台使わせていただけることになりました」
とりあえず初日の内だけという条件付きではあるが、学校のパソコン教室のほとんど使っている人間がいないパソコンを使ってもいいよと言うことになった。
使っていいよと言われたのだが、天海以外の面子は、そのパソコンを見て苦笑いを浮かべる。
「でも、まさかそのパソコンが呪いのパソコンだなんてね」
偶然か、はたまた故意であるのか、先生の指定したパソコンというのは彼女たちの中ではおなじみとなっている呪いのパソコンだったのである。
呪いと言ってもパソコンの中に幽霊が潜んでおり、その幽霊とパソコンを通してチャットが出来たり、パソコンの幽霊がTwitterをしていたりとするだけなのだが。いや、それを『だけ』と表現していいのかはともかくとして、とにかくこれで問題は無くなった。
「けど、先生はいいとしてパソコンの中の幽霊はいいのか?」
「はい。快く許可していただけました」
と、天海が言うとパソコンにチャットの画面が出現。
【お好きにどうぞー】
という言葉が書き込まれる。幽霊が潜んでいるパソコンを使ってゲームをプレイするというのは、ある意味で問題な気もするのだが、そこは天海響である。全く動じず、パソコンに向けてほほ笑みかけるのである。問題、というよりそのパソコンに対してうろたえているのはたった一人だけ。
「の、呪いのパソコンでゲームって……本当に大丈夫なの?」
「なんなら井上が使ってみたらどうだ?」
「無理無理無理無理無理無理無理ぃぃぃ!!!!!!!!」
果たしていつの日にか天海響の霊感体質を、オカルトという物すべてを受け入れる時が来るのだろうか。一生来ないのであろうか。それは、これからの彼女の人生にもよるのかもしれない。
そして時間は放課後の帰り道。少女たちと男子生徒一名は一緒に通学路を下校していた。普段はそれぞれに帰り路が違うためここまでそろって帰るということはごくまれであるはずなのだがこれには理由がある。
誰が言い出したか、天海と江角、そして成美のソードアート・オンラインで使用する名前、通称アバターネームとキャラエディットをみんなで決めようということになったのである。そして成美にとっては嫌々ではあるが天海響の家でその話し合いをすることとなったのだ。これに関してはネット知識に疎い天海響がSAO内で本名でのプレイをする可能性があるということを考えての事。それから彼女のために少しばかりかインターネット用語の勉強会もしようということになったのだ。
「江角さんはどんな名前を付ける予定なの?」
「普通にメシアとかでいいんじゃねぇか?」
「喧嘩売ってんのか上原」
「それじゃ、天海さんはどんな名前にするつもりなの?」
「すみません、それはまだ……」
『心配しなくても、響っちにはウチがナウでヤングな名前をつけるって!』
「……」
成美は、前を歩く響を含めた友達の姿を見て思う。こんな日常が続けばいいのになと。オカルト関連のことを除けばの話ではあるが、しかし彼女は今のこの日常が好きだった。
それもすべて彼女が、天海響が転校してきたおかげ。彼女のおかげで自分の周りは人数に半比例して騒がしくなり、毎日毎日楽しい日々を送っている。オカルト関連のことを除けばの話であるが。
何故、この時、この普通の情景を見て彼女がそう思ったのかの理由は、定かではない。だが、もしかすると彼女には、何か野生の勘のようなものがあったのかもしれない。この先、何かこの日常の風景を一変させかねない出来事が起きる、そんな予感が。天海響によって鍛えられた直感がそう彼女に語りかけているのだ。
「あの、天海……」
「はい?」
「そッ、その……」
成美は、天海に何かを伝えようとする。けど、その先の言葉が出なかった。先に自分の口から出すことが恥ずかしかった。
いや怖かったのかもしれない。その言葉を言ってしまうと、もう後戻りが出来ない気がして、もうこの日常に戻ることが出来ないという気がして。
口に出すのが恥ずかしくて、怖い言葉。そんな物がこの世に存在するのだろうか。いや、存在するのだ。けど、何故怖いという感情が表出するのか、それを知っている者はこの世でたった一人だけ。今のところあいまいなイメージでした怖いという感情が沸かない彼女にとっては、その言葉を発するののは本当であれば簡単なことであるはず。しかし、その言葉は出なかった。
天海は、そんな成美の顔を見て、微笑みながら言う。
「ゲーム、一緒に楽しみましょうね」
「あッ……そ、そうね。アンタが一緒にしたいっていうんなら、私もやってやってもいいわよ!」
「はい、よろしくお願いします」
こうして、彼女は約束してしまった。
彼女は約束させてしまった。
後に、この言葉が彼女たちの間に大きな亀裂を作ってしまうのかもしれない。
けど、今はまだ彼女たちはその大きな亀裂に気が付いておらず、ただただ明るい未来のことを思い浮かべるだけであった。
彼女たちが立ち止まるチャンスは、もうそこには存在していなかった。
時刻はすでに黄昏れ時間近。どこからかカレーの香しい匂いがしてくる。そんなとある日の放課後であった。
以下に挙げる小説の中で見たいものはどれですか?
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SAO ヴァルキリーズ
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例の作品も入れたSAOヴァルキリーズ
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ロス:タイム:ライフ 天海春香編
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レヴュースタァライト×まどか☆マギカ
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プリキュア風性格まどかのまどマギ再構成
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プリキュアオタクシンジのエヴァンゲリオン
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七匠オリジナル小説
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ほかの小説の完結希望