SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

41 / 361
メインシナリオ第一章 6話

 あの時の光を、私は永遠に忘れることはない。

 あの、友達と出会って、二回目のキャンプ。正確には、一回目は富士山を見にいくために自転車を漕いで疲れ果てて寝ていたらいつの間にか夜になっていたためキャンプとは言えず、二回目というのもソロキャンをしていた友達のところに自分が勝手に行っただけなのだが。

 その時、自分は初めてキャンプ場(駐車場)で夜を明かした。そして、友達がテントの近くにおいていた椅子。そこから見た富士山の傍から昇る朝日。

 綺麗で、神々しくて、眩しくて。自分の心を照らしてくれているかのようで、あの景色は、光はいまでも思い出すことができる。とても、とてもいい思い出だ。

 そして、今回彼女が包まれた光は、その時の光に極めて似ていた。ただ一つ、違うところを挙げてみるとするのならばそれは、あの時見た光は希望に満ち溢れた光で、この時の光は、絶望の中に誘う光だった。ただ、それだけだ。

 青白い光に包まれたナデシコの体は、一瞬にして意識が刈り取られる。その時の感覚は、この世界に初めて来た時のそれと極めて似ていたようにも感じた。

 とにかく、目が眩んで閉じた彼女の目が再び開かれた時。彼女がいたのは先程までこの世界でできた友達と一緒にいた草原などでは無く、石畳で舗装された大きな広場の中にあった。周りを見てみると、次々と自分と同じように青白い光に包まれたプレイヤーが出現している。その数はどんどんと増していき、いつの間にか広場はプレイヤーで埋まってしまった。

 この場所、彼女には見覚えがあった。

 確か、このゲームの世界に最初に来た時に自分が立っていた場所。はじまりの街の中央広場だ。広場の中央に見える時計台には見覚えがある。違うところといえば、自分がログインした時には昼まで、空には青空が浮かんでいたのに対して、今の空は夕焼けに焦げたような色をしているということくらいだが。

 

「ナデシコさん!」

「あ、リーファさん!」

 

 その時、人混みをかき分けてリーファが現れた。恐らく、彼女もこの場所に青白い光と共に連れてこられたのだろう。

 

「よかった、みんな近くに飛ばされてたみたい……」

「え、それじゃ他の皆も?」

「うん近くにいるよ」

 

 もしかしたら距離的に似たよった場所にいた人間は近しい場所に飛ばされるようにプログラミングされていたのかもしれない。とにかく、こんな予想外の事態に陥って、知っている人間が近くにいるということは安心できる。ナデシコは、リーファの後をついていき、シンケンRたちと合流する。

 

「姫! みんな!」

「よし、これで全員揃いましたね」

「だが、一体何が起こった?」

「姫、何か分かる?」

 

 全員揃ったはいいものの、何が起こったのかさっぱりわからないのは変わらないことだ。

 一体何が起こっているのか、何故自分達がこの場所に飛ばされたのか。βテスターであったシンケンRなら何かわかるだろうか。

 

「あの光は、場所を移動する際の《転移》のエフェクトだったのはたしかだ。問題は、アイテムを使っていないのにも関わらずどうして全員がこの場所に飛ばされたのか……だが」

 

 自分達が体験した青白い光は、本来転移結晶というアイテムを使用したり、階層を移動する際のエフェクトであるそうだ。

 しかし、転移結晶というアイテムを自分達は使用してはいないし、階層は先程までと同じく第一層。やはり、この場所に飛ばされるような原因は考えられない。

 可能性の話ではあるが、とシンケンRは話始める。

 

「このような大人数が同じ場所に一斉に飛ばされたのだ。これは、個人のプレイヤーでできることじゃない。恐らく、外部から何らかの方法を用いてこの場所に集められたのだろう」

「外部? あ、それじゃログアウトできないバグが起こってるってわかって!」

 

 内部からログアウトすることができなくなっていると外部の人間が気が付いて強制的にログアウトさせようとしているのではないか。そう、リーファは推測した。しかし、シンケンRは首を振って言う。

 

「いや、それなら全てのプレイヤーをわざわざこの場所に連れてきた意味がわからない」

「いわれてみれば、ログアウトさせるだけならその場でもできるはずだしな」

 

 SAOのシステム上、本来であればゲーム内のどのような場所であったとしてもログアウトすることは可能であるはずなのだ。特定の場所にいかなければログアウトできないという設定でない限り、全てのプレイヤーが集められた理由なんて一切ないはず。

 憶測に憶測が重なり次から次へと謎が増えていく中、近くにいた別のプレイヤーが上空に現れた異変に気がついた。

 

「おい、なんだよあれ!?」

「え?」

「ん?」

 

 見ると、なにか赤い六角形が点滅している。さらにそこには≪WARNING≫という文字が書かれている。プレイヤーたちがそれを見つけた刹那その赤い光が空一面、正しくは第一層の天井に映し出されている空一面に広がっていった。時間が経たないうちに当たりは夕焼けの橙色の景色からまるで地獄と見間違えるほどに真っ赤で、薄気味の悪い物へと変わっていった。

 それだけではなかった。天井から隙間を縫うように血のような真っ赤な液体が流れだし、それが空中で何かの形を形成していく。あれは、フードをかぶった人だろうか。巨大な、黒鉄宮とほとんど同じ大きさのフードをかぶった人間が空中に浮かび上がった。プレイヤーではないことは間違いないだろう。

 フードをかぶった人間は、両手を広げると頭に響くような声で言った。

 

『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』

「私の……世界?」

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

「ッ!」

「茅場……晶彦だと」

「姫……」

「確かに、声は茅場晶彦と同じだ」

「それじゃ本物?」

「実際に会った姫さんが言うんだから、間違いはねぇんだろうけどよ……」

 

 この中で、というよりもすべてのプレイヤーの中でも数少ないと思われる実際に茅場晶彦に会って話をしたシンケン・Rは断言する。その声、口調、話し方などの特徴はいづれも茅場晶彦に瓜二つ。まず、本人と見て間違いないだろう。

 

「けど、なんで茅場晶彦さんがわざわざ?」

「バグが発生したことに関しての説明のため……だけで製作者が現れるの?」

 

 ナデシコの疑問に、リーファもまた疑問文を交えながら答える。

 だが、このゲームは元から大注目されて発売されたゲーム。そのサービス開始初日にゲームの進行に支障が出るようなバグが発生したのだから、開発者自ら説明のために現れてもおかしくはないのかもしれない。

 あり得るのかもしれないのだが、何故だろう。胸が締め付けらるようだ。不安に押しつぶされるかのよう。今、とんでもないことが起こっているというのに、それに一切気が付いていない自分たちの事を死神があざ笑っている。そんな風に思ってしまう。

 そう、もうこの時に既に感づいていたのだ。これが、ただのバグではないという事を。そして、とんでもない大事件が発生しようとしているという事を。感づいてしまっていたのかもしれない。

 無情にも、彼女たちについにその時が訪れてしまう。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

「え?」

「仕様……だと?」

 

 シンケン・Rは言葉が出なかった。

 あまりにも衝撃的な発言で言葉が出なかったのか。いや違う。脳が理解することを拒んだのだ。

 これほど隙を見せてしまったのは一体いつぶりであろう。あの時の自分であったら外道衆に襲われていればひとたまりもなくやられていたであろうと、後に邂逅するくらいに棒立ちとなっていた。

 そして、それは他のプレイヤー達も同じく、皆が皆茅場晶彦の言葉の意味を理解しかねていた。しかし、茅場は続ける。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』

「ッ!」

 

 耳を疑う発言だった。

 このゲームにあるクリアという概念。それを達成する唯一の方法が百層あるすべての階層を踏破して、頂上にまつラスボスのモンスターを倒すことにある。

 つまり、彼の言う城の頂を極めるまで、というのはつまるところ、ゲームクリアが成されるまでゲームの外に出ることはできないという言葉も同じ。

 冗談じゃない。つまり、自分たちはゲームクリアまで閉じ込められたという事ではないか。こんなもの、拉致監禁と同じだ。

 

「じょ、冗談ですよね……ゲームがクリアされるまで出れないなんて……」

「……」

 

 シンケン・Rはナデシコの言葉に返答することが出来なかった。何故なら、彼女自身信じ切れなかったこともあるが、もし茅場晶彦のいう事が事実であれば、自分は彼女に残酷な真実を告げなければならなかったから。

 

「ナデシコ……お前、現実ではいくつだ?」

「え? えっと、16歳……高校二年生ですけど……」

「そうか……」

「?」

 

 シンケン・Rは沈痛な面持ちで、下を向いた。もし自分の考えが正しければ、ナデシコ、そして確か中学生であると聞いたレイアースとリーファの三人には、これから残酷な言葉が茅場晶彦からプレゼントされるはずだ。

 そうでない場合、そして理解が出来ない場合は、自分から告げねばならない。彼女たちの青春の終わりを。

 

『また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除もあり得ない。もし、それが試みられた場合……』

 

 一瞬の間。まるで、言葉を噛みしめるかのように、自分の言葉によっているかのように茅場晶彦はためを作り、そしてゆっくりと言った。一万人の息を飲む声が聞こえるかのような重苦しい空気の中で、茅場晶彦は言い放ったのだ。

 

『ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

「!」

 

 その残酷な言葉は、全てのプレイヤーをどん底に叩き落すのに十分な物であっただろう。

 今、茅場晶彦は宣言したのだ。このゲームには、ナーヴギアには人を殺す力があるのだと。今ゲームをプレイするすべてのプレイヤーが生と死の境目にいるのだと、知らしめたのだ。

 だが、あまりにも突然のことすぎて理解が及ばない者も大多数いる。クラインもその一人だ。

 

「ハハハ……何言ってんだよアイツ、おかしいんじゃねぇのか? そんなことできるわきゃねぇだろ。ナーヴギアは、ただのゲーム機じゃねぇか……脳を破壊するなんて、そんなことできるわけが」

「きっと、できる……」

「え?」

 

 答えるのは、意外なことにナデシコであった。絶句の表情を浮かべたまま、口を手で押さえたままで膝を地面に付いたナデシコは、恐る恐る言う。

 

「私、料理が好きで……電子レンジも使うんですけど……レンジから出ているのって、マイクロ波っていんです。もし、ナーヴギアからでるっていう高出力マイクロウェーブが、そのマイクロ波と同じなら……」

「ナーヴギアの中の頭を、電子レンジと同じ状況にすることも可能というわけか……」

 

 これは、本当にナーヴギアからマイクロ波が出ているという仮説と、そのマイクロ波が人体に影響を与える程度に出力を上げることが出来るという推論の二つを使用した推察だ。

 しかし、理論的にはあの茅場晶彦の説明に特に問題はない。つまり、やろうと思えばできてしまうという事なのだ。

 もしも、茅場晶彦がそれを実行する狂人であるのならば―――。

 

「あれ? でも、ナーヴギアってコンセントから電気を取ってますよね……コンセントから電源コードを抜いちゃえば……」

 

 ふと、リーファが気が付いた。ナーヴギアに人を殺せるほどのマイクロ波を出せる力があるとしても、電子レンジと同じであるというのならばナーヴギアのコードをコンセントから抜けば電力が供給されず、マイクロ波も発生しないのではと。

 が、しかしそれもダメだった。あるのだ。もし電源コードが抜かれたとしてもマイクロ波を発生させることのできる方法が。

 

「いんや、確かナーヴギアには大型のバッテリーが内蔵されてる。確かギアの重さの三割はバッテリーセルだって聞いたことがあるぜ」

 

 なるほど、つまり電源コードが抜かれれば電気をそこから抽出してマイクロ波を発生させることが出来る。と、言うことか。

 だが、それでも問題点は山積みだ。

 

「で、でもそれだと停電になったら危ないんじゃないの!?」

「そうだな、停電になれば電源コードから電気は流れてこなくなってナーヴギアを外したと誤解され、マイクロ波を発生させられる可能性もある……」

 

 雷か、あるいは送電線の故障か、どちらにせよ家の電気が止まってしまうという事態に陥れば、そのようなことが起こる可能性があるのだ。

 もし、そうなれば外の世界で友達や家族がいくら注意しても自然現象によって死亡するというゲームの世界にいる人間たちにとっては手も足も出ないゲームオーバーの仕方になりかねない。

 そんな、極端な話をすれば運の要素も混じってくるような設定にしたこと、茅場晶彦はミスであると気が付いていないのか。

 否、気が付いていた。この問題点には。茅場晶彦は言う。

 

『より具体的に言うのならば……十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーブギア本体のロック解除または分解もしくは破壊の試み―――以上のいずれかの条件に追って脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局及びマスコミを通して告知されている。因みに、現時点でプレイヤーの家族友人などが警告を無視してナーブギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果……』

 

 緩急織り交ぜた話。そのすべてを聞き漏らさないように注意していたリーファにとって、突然の沈黙は恐怖でしかなかった。いや、すべてが正確に言うのならば恐怖であるのだが、しかしあまりに現実離れしすぎた物であるために恐怖を感じる余裕すらもなかったと言ったほうが良いのかもしれない。

 そして、沈黙の後空中にいくつもの画面が表示され、そこには―――。

 

『残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

「にひゃ……」

 

 ところどころで消えるかのような悲鳴が上がったような気がした。

 茅場晶彦が出したスクリーンには、様々なメディアで報じられている事件の第一報が掲載されていた。中には、被害者の名前と、そして写真が使われている物も存在する。

 最初の犠牲者となったのは京都に住む大学生だったらしいことまで見て取れた。

 そして、映し出されるのはSAOに家族を捕らえられてしまったのであろう女子高生が泣いている姿。プロジェクトSAOに参加した765プロのアイドルが記者に詰め寄られながらもタクシーに乗り込む姿。そして緊急事態にも関わらずアニメを放送しているいつもの放送局等々、様々な反応が見て分かる。

 フェイク動画でもない限り、これは本当に現実世界で起こっていることなのだろう。さすがに、これを見せられてしまえば、茅場晶彦の言葉を少しでも信じなければなるまい。

 

「信じねぇ、信じねぇぞオレは!!」

 

 だが、その中で一人クラインは茅場晶彦の言葉にかみつく。どうせただの脅しだろ、オープニングの演出なんだろと、まるで否定しなければ自分がどうにかなってしまうと思っているかのように。

 実際、この時のクラインの精神状態は普通ではなかった。

 彼自身、信じられない出来事の連続で頭が回り切らず、もう何を信じていいのか、こんな異常事態を受け入れていいのか、まったく判断が出来なかった。

 だが、シンケン・Rは感じ取っていた。これは、本当に起こっていることであるのだと。実際に人死にがあったという事が、まるで手に取るかのように分かっていた。

 何故か、それは先ほど茅場晶彦が出した映像の中に、彼女にとって見覚えがありすぎる存在が映り込んでいたからだ。

 ナナシ連中。それも、13年前に匹敵するほどの量で進行していた。つまり、それだけの悲しみが現実世界にあふれているという事だ。

 もし、茅場晶彦の言う通り1万人規模のプレイヤーがゲームの世界に閉じ込められ、そこからさらに200人以上の人間が死んでしまっているというのなら、この規模となることは容易に想像が出来る。

 

「丈瑠……」

「皆……」

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の身体は、ナーヴギアを装着したままに時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護体制のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に臨んで欲しい』

「……ッ」

 

 ゲーム攻略。頂に到着するまで外に出ることはできないと言っていたからこそ、そう言うのだろうと思っていた。しかし、実際に言われるとなんとも腹の立つ言葉だ。

 

「何言ってやがんだ! ゲームを攻略しろだなんて、ログアウトできない状態で、呑気に遊べってか! ふざけんな!!」

 

 クラインの怒りももっともだ。しかし、これだけならばまだいい方だ。シンケン・Rはもう一つの事態を危惧していた。これ以上に最悪な出来事、それは。

 

「しかし、十分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

「な、んだと……」

「そんな……」

「やはり……か」

「嫌ぁ……」

 

 クラインは、唖然とした表情を見せる。開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろ。驚愕に歪んだその顔は、しばらくもとに戻ることは無かった。

 ナデシコ、リーファ、そしてフィアッセの三人はそれぞれに口を手で押さえたり、また脱力しながら崩れ落ちた。

 レイアース、シグナム、シンケン・Mは拳を握りしめて怒りを抑え込んでいる様子。

 そして、ただ一人この事態を思い浮かべていたシンケン・Rは唇をかみしめて茅場晶彦から目を背けてつむる。

 今、自分のヒットポイントつまりHPは、たったの250程度。それが、今の自分の命の総数。例え現実の自分がどれだけ強かったとしても、このHPゲージの全てがゼロになった瞬間に、傷の深さどうこう言う前に、戦える戦えないと論議する前に、自分は死んでしまう。

 常に命がけの戦いに参加している自分ですらも、この事実に震えているというのに、一般人である人間たちがどういう心情であるのか、想像するのに難くはないだろう。

 

「こんなの、ゲームじゃない……」

 

 レイアースのつぶやきに、シンケン・Rは心の中で同意する。

 そう、こんなものはゲームではない。いや、ゲームであるはずがない。

 そもそもゲームという物は現実世界から切り離された虚構を楽しむ娯楽。そこに命のやり取りが発生してしまえば、その概念そのものを崩しかねないのだ。

 だが、いくら否定したとしても、嫌がったとしても自分たちの全てを牛耳っているのが目の前にいる茅場晶彦であるというのであれば、一切を従うしかないというのが、とてもつらいところだ。

 

『諸君が、このゲームから解放冴える条件は、たった一つ。先に述べた通り、アインクラッド最上部、第百層までたどり着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 

 生き残ったプレイヤー、つまりゲームオーバーになったプレイヤーは現実世界に帰ることは二度とないという事。ゲームクリアすれば死んだプレイヤーも一緒に帰れるなんて救済措置は一切用意されていないということか。いや、そもそもそんな生易しい物を用意してくれるなんて、端から思ってはいなかったが。

 

「ね、ねぇシンケン・Rさん……」

「……どうした、ナデシコ」

 

 ここで、ナデシコはあることに気が付いた。けど、もしもそうだった場合自分は、自分たちは―――。

 

「確かさっき、βテストじゃ2ヶ月で……」

「……八層しか、進めなかった……」

 

 つまり、単純に計算すれば百層を攻略するまで25ヶ月もかかると言うことだ。

 シンケン・Rは、さらにその情報に補足するかのように言った。

 

「ゲームオーバーになれば死ぬという事実を前に、積極的にゲーム攻略に赴く人間は当然少なくなる。そうすれば、必然的に攻略スピードは落ち、下手をすれば……その倍の時間はかかるだろう」

「そう……ですか」

 

 このゲームには、涙を流す機能はない。当然だ。笑顔や怒りなど顔の筋肉で表現することが出来る単純な感情はともかく、悲しみの際にでる涙は人それぞれ個人差がある。そんな物をゲームで表現しようとするのは、到底無理な話なのだ。

 けど、分かる。きっと今彼女は泣いている。自分の、高校生活が失われてしまうという事実に、二年もの間友達と会って、キャンプをすることが出来ないという事実に。

 今高校二年生である彼女は、二年経つと大学生、友達も同じことだろう。高校生は、中学生や小学生とは違い義務教育の範囲外。つまり、このゲームをプレイしている時間が長くなれば長くなるほど彼女は自動的に留年を繰り返すことになってしまう。もしそうなれば、彼女は同級生たちと同じ学年を歩むことはできない。

 いや、下手をすれば退学という可能性も無きにしも非ず。そうなれば、大学生になることもおぼつかなくなる。就職にだって影響が出る。高校中退となる彼女が、まともな職業に就けるかどうか。彼女がキャンプを自由に行き来する時間を与えられないような会社に就職してしまう恐れだってある。さすがに今の精神状態の彼女がそこまで考えられる余裕があるかは分からないが。

 リーファとレイアースもまた中学生で自動的に学年が上がっていく分には問題はないが、その後の受験の問題がある。恐らく、どれだけ早くゲームをクリアしても受験シーズンには間に合わないだろう。他人から遅れた学力を取り返すまで一年、二年、いやもしかするとそれ以上かかるかも。どちらにしよ、彼女たち三人の人生への影響は心身的にも巨大な物になる。

 

「奴の狂気に気付いておきながら……すまない」

 

 シンケン・Rはただ、そう謝ることしかできない。あの時、確かに自分は茅場晶彦の心の奥にある闇に気が付いていた。外道の心があるというのに気が付いていた。それなのに、結局は茅場晶彦を止めることが出来ず、それどころか自分は茅場に協力した形となってしまった。非常に悔しい。そして、哀しい。

 

『それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

 そう聞くや否や、ほとんどのプレイヤーはメニューウィンドウを出現させるとアイテム欄のタブを叩いた。ナデシコやリーファたちもまた、ゆっくりではあるがそのタブを探し出し、ゆっくりと叩く。

 そこに、ここに来るまでは存在もしていなかったアイテムが一つだけ存在していた。アイテムの名前は≪手鏡≫。何故このような物がプレゼントであるのか。シンケン・Rは、ナデシコとほとんど同じタイミングでそのアイテムをタップして、オブジェクト化のボタンをタップする。すると、淡い光と共に目の前に自分の顔が映る鏡が出現し、彼女たちはソレを恐る恐る手に取った。

 その瞬間である。突如、リーファを、シンケン・Mを、ナデシコを、フィアッセを、シグナムを、そしてクラインやすべてのプレイヤーの姿を白い光が包み込んだ。

 そして、シンケン・Rもまた、その白い光に包まれ、ついに何も見えなくなった。




 ところで私、SAOって
 ナーヴギアーパソコンーインターネットって感じで繋がってると思ってるのですが、もしかして……
 ナーヴギアー有線LANーインターネットってな感じで、パソコンには繋がっていないんじゃと思うようになりまして。どうなんでしょうか?

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。