SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
ホルンカの村にたどり着いたのは、始まりの街の門をくぐってから一時間も経っていない頃だった。
あたりはすでに日が落ち、この世界が死のゲームとなってから初めての夜が訪れていた。
この世界の時間は、外のソレと全く同じになっているということは、βの時に既に調査済みだ。
つまり、外の世界でもこの事件が起こって初めての夜。果たして、どれほどの人間が眠れずにいるのだろう。日本中の警察、SAOに関係した人間たち、それから検視官や病院関係者も眠れていないのかもしれない。
そして、彼女の仲間たちもまたそう。人の悲しみで増大した三途の川の水に乗って現れるナナシ連中という怪物を相手にして対応に追われて今日は寝るに寝れないだろう。
なら、自分一人が寝ているわけにはいかない。シンケンRは今夜は寝ずに自らの強さ、つまりレベルを上げることに専念する予定だった。
その前にまず手に入れなければならない物が一つ。このホルンカの村でクエストをクリアすることによって手にいれることのできる武器《アニールブレード》。
片手剣使いの初期装備であるスモールソードよりも優れたソレは、今この階層で手にいれることのできる武器の中では最高ランクに位置する武器だ。それを手にいれないことには自分自身のレベルアップにも程遠い。
この村にたどり着くまでに出現するダイアー・ウルフやフレンジー・ボアを倒し、またリーファたちと共に何体ものモンスターを倒していておかげで、レベルは2に上がっていた。その際にステータスポイントという物が出現する。
ステータスポイントは、レベルアップに際して取得できる能力値やスキルを上げるためのポイントであり、本来なら戦闘系・生産系どちらにも使用することのできる物だ。しかし、残念ながら現在の自分のスキル欄はというと、たったの二つしかなく。その一つ目は《片手用直剣》という武器を使用するためのスキルに当てられ、もう一つに関しては先ほど《索敵》というスキルを当てはめた。
この《策敵》ともう一つ《隠蔽》というスキル、この二つは低レベルのプレイヤーでも取得することが可能なスキルの中でも有用性に関しては群を抜いて重要。そのため、このどちらかのスキルは早い段階で取得しようと考えていた。
夜になり視界が不良となっていく中で瞬時に敵モンスターを見つけなければならないと考えた時に、自分は《索敵》のスキルを選んだ。今はまだ熟練度が低いために狭い範囲でしか敵やプレイヤーを見つけられないが、それでも暗い中で敵を見つけるのにこれほど有効な物はない。
とにかく、ホルンカの村にたどり着いたシンケンRは、まず一軒の武器屋に向かうと、アイテム欄に存在するいくつもの素材アイテムを売却すると、防御力を上げることのできる《ハーフコート》、そして今持っているスモールソードよりもランクが上の武器、《ブロンズソード》を購入する。
このブロンズソード、これから手にいれようとしているアニールブレードよりも攻撃力は高いのだが、耐久度という項目が低く設定されており、さらに植物モンスターの放つ溶解液に対して弱点を抱えている武器だ。そのため、この第一層を攻略するためには、アニールブレードを手にいれた方がより効率が良くなる。そう、効率が良くなるために。
「……」
自分はそのために、仲間たちを捨ててきた。
置いてきた。
リーファやナデシコ、それに茉子もまたあの街に放って自分人だけでこの場所にやってきて。
最低だ。ただ、その言葉に尽きる。
13年前、あんなにも仲間の絆を目の当たりにしたというのに、自分はこの世界でできた仲間の気持ちを汲むことが出来なかった。
怖かったのかもしれない。自分と一緒に戦って、守り切ることが出来ずに、死んでしまう彼女たちが。
いや、死ぬとは決まっていない。もちろん、できる事なら彼女たちを守り切りたい。それが切なる願いだ。
だが、外の世界では剣の達人であったとしても、この世界では単なるプレイヤーの一人としてしか存在することのできない自分が、一体何人のプレイヤーを守ることが出来るだろうか。
何人のプレイヤーが自分のせいで死ぬことになるだろうか。想像もしたくない。
だから、自分は逃げたのだ。責任から。
だから、自分は一人で旅立ったのだ。償うために。
13年前と同じだ。あの時も自分は―――。
よそう、これ以上考えると二度と戦えなくなる。そんな気がした。
とにかく、シンケンRは早くクエストを開始するためにとある民家を目指した。
村の奥に存在する、古い民家。しかし、この村には似たような民家がいくつも点在しているため、この家がクエストの開始ポイントであると初見ではんだんするのは 難しいだろう。
自分だって、βテストの際に出回った情報がなければ絶対に見つけることが出来なかった。
なんとも矛盾している。多くのプレイヤーが協力することが必須のゲームに置いて、ただ一人で攻略に臨もうとするなんて。シンケンRは、そう自笑してから民家の中に入っていった。
「こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう、食事を差し上げたいけれど、今は何もないの。出せるのは、いっぱいのお水くらいのもの」
「いや、それで構わない」
中にはいると、そこには鍋を棒でかき回している女性の姿。《NPC》だ。つまり、彼女には意識はない。このゲームが作り出した偽りの命を持つ者。しかし、まぎれもなくこのゲームの世界限定で生きている存在でもある。
シンケンRは、その女性の誘いに快く乗る。もしもここで遠慮しても、結果的には水が出てこなくなるという事象が起こるだけであり、それ以降の進行に変わりはない。だが、心情的にはせっかくの誘いを断るのはしのびないという気持ちが先走る。だから、彼女はその提案を受け入れる。
女性は、古びたコップの中に水を一杯分だけ入れると、再び鍋に向き直りその中身をかき回す。水自体に何か特別な物が入っているというわけじゃない。飲んでも、プレイヤーの身体には何の変化も起こらない。このイベントはここからが本番なのだ。
それから一分か、二分か経った頃、右側に存在するドアの向こうから子供の咳き込む声が聞こえてくる。女性は、それに対して暗い顔をして肩を落としている。偽物の存在であると知っていたとしても、誰かがこのように落ち込む様子を見せるというのはとても心苦しいものだ。
外の世界の仲間たちも、このような顔をしていることだろう。一刻も早くゲームをクリアし、現実の世界に戻らなければならない。
その時だ。女性の頭に金色のクエスチョンマークが出現。これがクエスト発生の証なのだ。
「何か、困っていることがあるのか?」
シンケンRがつかさず彼女に聞くと、女性の頭の上のクエスチョンマークが点滅を始める。これは、クエストを受諾したという合図のようなものだ。女性は少し考えるような顔をしてから意を決したように言う。
「旅の剣士さん、実は私の娘が……」
聞けば、彼女の娘が重病に犯されており、市販の薬草を煎じて与えても一向に治らず、治療するには西の森の生息する捕食植物の胚珠から取れる薬を飲ませるしかないとのこと。しかし、その植物がとても危険な上、花を咲かせている個体がめったにいないために自分ではとても手に入れられないという事だった。
だから代わりに剣士、プレイヤーにとって来てもらい、もし持ってきてくれればお礼として先祖伝来の長剣を授ける、という話だった。
このセリフは、βテストの際にまるっきり同じセリフを聞いたのだが、このセリフを聞かなければクエストは進行しないのでやや煩わしいのだが辛抱強く聞く。
女性が口を閉じると、視界の左側にクエストログという物が表示される。これで、クエストが正式に受諾された形となる。
「あぁ、任せろ。必ず、私が採ってくる」
本当はこんなことを言う必要はない。しかし、侍として黙って出て行くのは彼女の矜持が許せなかった。
シンケンRは、そう女性に言葉をかけると急いで家から飛び出した。
直後、広場中央にある小さな櫓が自鐘メロディを奏でる。午後七時だ。
クエストを受諾するだけで既にデスゲームが開始されてから一時間半経っている。もっとペースを上げなければならないか。
彼女は、軽快な音楽を背中に受け、不気味な音を立てる夜の森へと向かった。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい