SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第一章 12話

 そして、場面は再び死の淵に立たされていたシンケン・Rへと戻る。

 

「お前たち、どうして……いや、どうやって……」

 

 シンケン・Rは安堵する以上に困惑していた。何故、リーファやナデシコがこの場所にいる。

 ホルンカの町、そしてそこで受注することのできるクエストの事に関しては彼女たちに言ってないはずなのに。

 百歩譲ってはじまりの街の中で情報を仕入れることが出来たとしても、その後この森に来るまでには多くのモンスターを倒し、危険を顧みずにたどり着かなければならないのだ。それが、自分が手ほどきをしたとはいえ彼女たちがここまで早くたどり着くことが出来るなど。

 そんな彼女の疑問に、ナデシコは笑顔で言った。

 

「案内してもらったんです! 元βテスターの人に!」

「元βテスターだと?」

 

 一体誰が。そんな疑問を呈する直前だった。密集し、シンケン・Rを襲おうとしていた個体が倒されたのを感知した別のリトルネペントが、またシンケン・Rの事を襲おうとしていた。まだ身動きの取れないシンケン・Rを守ろうと、リーファとナデシコは臨戦態勢を取った。しかし、それは無駄な行為に終わる。

 

「ハァ!」

「フッ!!」

「ヤァ!!」

「!?」

 

 リトルネペントの背後から現れた戦士達。シグナムやレイアース、そしてシンケン・Mの三人。いや、それだけではない。他にも自分が≪現実≫で見知った顔たちが目の前に現れ、そして次々とリトルネペントを斬り伏せ、その身体をポリゴンの欠片に変えていく。

 それが何分続いたことだろう。気が付けば、集まっていたリトルネペントの四分の一が倒され、密集状態は緩和された。それだけじゃない。シンケン・Rの身体を縛っていた粘着液の効果も切れ、ついにその身体を動かすことが出来るようになったのだ。

 シンケン・Rはすぐさま後方、リトルネペントの動きではすぐにたどり着くことが出来ないような距離にまで対比すると、回復アイテムであるポーションを一気に飲み干す。

 すると、ほとんど喪失していたHPバーは見る見るうちに回復し、安全圏である緑色を指示した。これでひとまず一撃を喰らえばゲームオーバーという紙一重の状態から脱することが出来た。

 そして、新しい剣をアイテムストレージの中から取り出すと、まるで図ったかのようにシグナムとシンケン・Mを殿と残し、他のプレイヤーも彼女の元に集まった。残った二人は、リトルネペントを足止めする役目を果たし、その間にシンケンRに状況の大まかな説明をするつもりなのだ。

 

「間に合ってよかったです、シンケン・R」

 

 駆け寄ってきた男性プレイヤーが言う。彼、そして彼の隣にいる女性のプレイヤーはシンケン・Rも見知っている顔だ。βテスターであることもそうであるが、彼らもまたシンケン・Rと似た秘密を抱えた戦士達なのだから。

 

「M、N……やはりお前たちも巻き込まれていたのか……」

 

 仮面ライダーエグゼイドに変身する宝生永夢ことプレイヤー名≪M≫。

 もう一人は、≪N≫。仮面ライダーには変身することは無いが、仮面ライダースナイプに変身するゲーム病専門の開業医である花家大我の助手ともいえる人間だ。

 Nは、現在アメリカを拠点に活躍しているプロゲーマーであるのだが、その経歴に興味を持ったゲーム会社、アーガスから依頼を受けてゲーマー枠にてβテスターをMと共にしていた。

 そして今回もまたサービス開始とほぼ同時にログインした二人はこのデスゲームに巻き込まれてしまったのだ。

 MとN。二人の事は同じβテスターであったために知っていたし、また茅場晶彦の件もあって注意するように促していた仲間でもあった。だから、二人がこのゲームをプレイしていることは知っていたから分かるのだが、もう一組の男女に関しては分からない。

 

「貴方たちは?」

 

 そう、この場にはMやNのほかにもあともう二人、彼女の知らない二人がいたのだ。いったい何者なのだろうか。Mたちと一緒にいるところから考えて、ただのゲームプレイヤーではないはずであるだが。

 

「初めまして、俺は津……じゃなかった≪AGITΩ≫です!」

「私は、こっちでは≪ANAM≫って名前です。よろしくお願いします」

「そうか……」

 

 ≪アナム≫の事に関しては分からないが、もう一人の男性。アギトと名乗った人物の正体に関してははっきりと分かった。

 彼は、彼もまた仮面ライダーなのだ。Mの先輩ライダーである仮面ライダーアギトに変身する男性。

 自分は戦隊であるために会うことは無かったため、実際にその顔を見るのはこれが初めてであるのだが、まず間違いないのだろう。

 事実、彼女の勘は当たっていた。アギトは、仮面ライダーアギトに変身して戦う男性であるのだ

 そしてアナムはその男性が二十年近く前に居候をしていた家の長女。現在はアギΩが経営するレストラン≪AGITΩ≫の従業員として働いている。

 

「それにしても……一人で秘薬クエに向かったって聞いてたけど、こんな大ピンチなんて聞いてないって」

 

 とNは言った。この口ぶりから察するに、恐らくシンケン・M―あのメンバーの中で彼女だけがM又はNと連絡を取ることが出来たプレイヤーである―から自分が一人でホルンカの村のクエストに参加したことを聞いたのであろう。

 とはいえ、まさかこのような状態に陥っているとは夢にも思ってもみなかったと思うのだが。

 

「済まない、私のミスだ」

 

 シンケン・Rは、コペルが自らの保身のために実を壊した事実を告げることは無かった。もとはと言えば、自分が彼の中にある闇に気が付かなければならなかったのに、それを怠った自分にも責任はあるから。

 

「けど、間に合って良かった……」

「リーファ……」

 

 気まずい。あんな別れをした後なのだから、面と向かって話すのが。

 この状況、とてもじゃないが耐えられない。しかし、この状況を真に打破するためにはまず自分自身の過ちを認めて彼女に謝罪しなければならない。だが、一体何を言えばいいのか。そんな言葉のロジックを頭の中で考えていたシンケン・Rにナデシコは言った。

 

「話は後です。今はこの状況を切り抜けましょう」

 

 そう、まだリトルネペントは大量にそこにいる。そしてそのすべてをシグナムとシンケンMが相手をしているのだ。早く前線にもどらなければ今度は二人が危なくなってくる。

 

「……あぁ、なら一つ言わせてくれ……」

 

 シンケン・Rはゆっくりと歩く。そして、彼女たちの背後にまで到達すると、振り向かないようにして心の底からの思いを込めて行った。

 

「助かった……ありがとう……」

「ッ! うん!」

 

 果たして、その時彼女は笑っていたのか。それは、前にいたリトルネペント達だけが知っている。

 

「行くぞ!」

「ハァァァァ!!!」

 

 そして戦士たちは向かう。凶暴なモンスターのひしめく戦場へと。

 だが、状況は明らかに優勢であった。先ほどまでは二人ともがβテスターだったとはいえあまりにも数が多すぎて途中で対処することが難しくなっていた。だが、今回はベータテスターが三人いるだけじゃなく、彼女が信頼を置く者ばかりがいる。これならば、少しミスをしたとしても他の者達でカバーすることが可能になる。現実でも戦士として戦う者達だ。覚悟はコペル以上にあるであろう。

 しかし、その覚悟は彼のソレとはちがう。純粋な覚悟。誰かを犠牲にするなどという事をみじんも考えていない覚悟。

 皆で、誰一人かけることなく生き残るという覚悟であった。

 

「これで!!」

 

 ナデシコが、リトルネペントを相手に突き攻撃である短剣系ソードスキル≪アーマーピアース≫を繰り出した。

 リトルネペントはその攻撃を受けると短いうめき声をあげてその時を止める。そして、その身体は青白いポリゴン片となってから爆散。そのデータは電子の海に帰った。ナデシコは気を緩めることなく次の敵を探すために辺りを見回した。

 だが、そこには何もいない。自分の仲間たち以外に動くものは存在しなかった。そこでようやく彼女は先ほど倒したリトルネペントが最後の一体であったことに気が付く。

 

「もう、出てこないみたい?」

「そのようだな……」

 

 そのシグナムの言葉に安心したのか、ナデシコはヘトヘトになりながらゆっくりとその場に座り込んだ。リーファはそんなナデシコの肩を、お疲れ様と言わんばかりに叩く。このゲームに置いては肉体的な疲労はHPのように数値化されないし、それによって身体の動きに変化なんて訪れることは無い。

 しかし、精神的な疲労という物はVRになっても付随する物であり、神経を研ぎ澄ませる時間が長かったためそれから解放された瞬間にあたかも実際に身体を強く動かした時のようになってしまうのだ。

 みると、ナデシコの目の前には淡く光る球体、リトルネペントの胚珠が落ちていた。気が付いてはいなかったが、どうやら自分が倒したリトルネペントは花付きと呼ばれている物だったようだ。

 ナデシコはそれを拾い上げるとアイテムストレージの中にいれる。

 

「ちょうど人数分の胚珠を手に入れれたか……」

 

 と、シンケン・Rが言った。

 この一連の戦いの中で、人数分のリトルネペントの胚珠を手にいれることに成功したプレイヤー達。先ほどまであんなにリトルネペントを狩ってわずか一個しか取れていなかった物を、ここまで大量に入手するなんて、少しだけ怒りも湧いてくるほどだ。

 もしかしたら、リトルネペントの実を破壊した後に現れる大群を全て倒せば人数分の胚珠を落とすというフラグでもあったのかもしれない。もちろんそんな危険なこと試すわけにはいかないのだが。

 と、ここでナデシコが気が付く。

 

「あ、でも私片手剣じゃ……」

 

 そう、彼女の習得しているスキルは≪片手剣≫ではなく≪短剣≫。つまり、片手剣を入手したとしてもソードスキルを使用することはできないのだ。それではせっかくの剣が宝の持ち腐れである。そう心配したナデシコだが、シグナム、そしてMが言う。

 

「良いじゃないか。貰っておけば」

「レベルを上げて、スキルスロットが増えたらそこに片手剣スキルを入れれば使える時が来るから持ってても損はないですよ」

 

 主に使用していた短剣が壊れた時の保険として別の攻撃手段を持っておくのも悪いことではない。そうMに促されたナデシコはそういう考えもあるんだと思いながら自分が片手剣と短剣二つを持って戦う姿を想像した。

 ちょっとカッコイイと思った。しかし、ゲーム内においてはその二つは併用できないのであしからず、と言ったところか。

 

「リーファ、ナデシコ……」

「あ……」

「……」

 

 その最中、シンケン・Rが意を決したように声をかけた。そう、リトルネペントという邪魔者を倒したからには、本題に移らなければならないのだ。

 自分が彼女たちにした行い。その不義理にけじめをつけなければならない。本当は分かっていたのかもしれない。彼女たちの性格であれば、例え危険な道であったとしてもついてきてくれると。だが、だからこそだったのかもしれない。

 自分は、元々現実の世界で戦う戦士の一人。世界の平和、市民の命のために戦う戦士だった。だからこそ、何の力も持っていない、戦う宿命にない少女たちを助けたかった。

 でも、それはいらぬおせっかい。いや、自己満足にすぎない。例え自分が現実で戦う力を、そして戦う宿命を持っていたとしても、それがゲームの世界には全く通用することのない幻想にすぎない。

 今の自分は、彼女たちと同じ存在だ。だというのに、自分はただ彼女たちの命を守りたいという英雄思想に塗れてしまって、自分自身を危険にさらすことによって彼女たちを救おうとした。結果として、それは大失敗して彼女たちに救われることになってしまったのだが。

 だからこそ謝罪したかった。こんな自分が、二人を助けようとして吐いた暴言を、例え許されないかもしれなくても、それでも謝りたかった。

 そんな彼女の言葉が出る前だった。

 

「ありがとうございます」

「え?」

 

 ふと、リーファの口から出たその言葉にシンケン・Rは戸惑いの表情を見せる。何故、自分にお礼なんて。

 

「シンケン・Rさんが、私たちの事を思って、はじまりの街に置き去りにしてくれたこと、分かってますから」

「でも、それでも私たちも戦います! だって、私はお姫様の家臣だから!」

「……」

「たまには頼りにしてください。私も、丈瑠の家臣でもあり、姫の家臣でもあるんですから」

「茉子……」

「もう少し肩の力を抜け。今は、私たちも同じゲームに閉じ込められた者同士なのだから、共に協力しよう」

 

 リーファ、ナデシコ、シンケン・M、シグナムの言葉。

 そのすべてが心に突き刺さる。

 

「っていうか、シンケン・Rが全部背負い込む必要なんてないじゃん」

「え?」

 

 と、Nが言った。それは、いったいどういう意味なのか。

 

「だって、SAOをデスゲームにしたのも、閉じ込めらえたのも、全部茅場晶彦のしたことでしょ?」

「皆で、ノーコンテニューでクリアしましょう。そして……」

「帰りましょう。みんなの居場所へ」

「そして……私たちの事を待っていてくれる。友達の所に!」

「……」

 

 そうか。自分は少し気負いすぎていたのかもしれない。

 自分が、茅場晶彦に協力したせいでこんなデスゲームが産まれてしまった。そんな責任を感じていたのかもしれない。

 だが、違う。そう、彼女達の言う通りだ。このゲームがデスゲームになったのも、この世界に閉じ込められたのも、全て茅場晶彦という一人の人間がしでかしたこと。自分もまた、そのゲームを作るのに協力≪させられた≫被害者なのだ。

 何も自分一人が背負い込むものではない。自分一人が責任感を負う必要なんてない。だって、自分には自分の罪を罪とも思わない仲間たちがこんなにもいてくれるのだから。

 

「私にも、こんなに良き友がいてくれたのだな……」

「姫……」

 

 あの時の丈瑠も、こんな気持ちだったのかもしれない。そうシンケンRは回想する。

 あの時、影武者として志葉家を、そしてシンケンジャーを率いて戦っていた志葉丈瑠。

 だが、自分はそんな彼に重責を負わせないように、そして侍としてのプライドとして血祭ドウコクを倒すための封印のモヂカラを習得して家臣たちの前に現れた。しかし自分はその時には思い至らなかった。

 シンケンジャーの絆、家臣たちと自身の影たる丈瑠の絆の深さ。そして、自分のせいで傷つくその絆に。

 もう二度と同じ過ちはしまいと心に誓ったのに。十三年経ってまたしても自分は絆を傷つけようとしていた。それも、今度は自分とこの世界で出会った仲間たちとの絆を。

 だがそれでも仲間たちは自分との絆を重んじてくれていた。大切にしてくれていた。それが、彼女にとってはとても、とても嬉しいことだった。

 あの時の丈瑠も、一度自分が傷つけたことなどどうとでもないように家臣たちとの深い絆によって立ち直っていたという。きっと、今の自分と、あの時の丈瑠は同じなのだ。そう、思わずにはいられなかった。

 

「皆、すまなかった。私は、一人で全部解決させると、そうしなければならないと思っていたらしい……だが、これからは違う。共に、このゲームをクリアしてくれるか?」

 

 だからこそ、シンケン・Rは誓う。今度こそ、仲間たちと共に歩む道を。自分自身がこの世界でできた絆を大切にしてこのゲームを共にクリアしようと。仲間たちに宣言した。

 

「はい!」

「えぇ!」

「勿論です、姫」

 

 もちろん、仲間たちの返事は肯定、了承、そして笑顔。

 

「……ありがとう」

 

 思わず笑顔になってしまったシンケンRは、この時改めてできたこの世界での絆を深く噛みしめるのであった。

 こうして、彼女たち最初のクエスト、そして最初の危機は脱することが出来た。

 しかし油断してはならない。この先、もっと大きな罠が待ち受けているに違いない。その時、果たして彼女たちはソレを乗り越えることが出来るのか。

 だが、案ずることは無い。彼女たちにはこの世界でできた大事な絆がある。それをもってすれば。きっと―――。

 夜は深くなる。しかし、まぎれもなくそこにあったのは希望という名前の大きな光。その光に集まるかのように、多くのプレイヤーはその森へと歩を進めるのであった。




プレイヤーNo.10 ???(M【M】)ログイン
プレイヤーNo.11 ???(N【N】)ログイン
プレイヤーNo.12 ???(アギト【AGITΩ】)ログイン
プレイヤーNo.13 ???(アナム【ANAM】)ログイン

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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