SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第一章 13話

 ホルンカの村にまで戻ってきたシンケン・R一行。あの後森から出る時に何人かのプレイヤーとすれ違った。その動きから察するにほとんどがβテスターであったのだろう。だが、中には素人丸出しのプレイヤーもいたため、きっと自分とは違って一緒にログインした仲間と来たプレイヤーもいたはずだ。

 一度加勢しようかとも思ったのだが、大量のリトルネペントを倒したばかりで精神力がすり減ってこれ以上戦いを続けるのは困難であったし、見ているとプレイヤー同士互いに守り合って戦っていたことから、その一団を心配するのも失礼に当たることだろ。

 いつか、階層ボスとの戦いの時には再会する、互いにそれまで強くなっていよう。そう、シンケン・Rは思いながらも、森のフィールドを抜け出した。

 そして、その直後だった。

 

「あっ……」

「ん?」

 

 ホルンカの村の入り口。そこに一人の見知った男性プレイヤーの姿があった。プレイヤーは、自分の事を見るととてもおびえたような表情を見せている。当然だろう。本来、自分は彼の事を親の仇のように憎んでいなければならないのだから。

 実質、自分は彼に殺されかけた。もしもリーファたちが来てくれていなかったら既にゲームオーバーとなってこの世界から永久にログアウトしていたはずだろう。

 本当なら恨み節の一つや二つ言う権利はあるのだが、しかしシンケン・Rはそんな彼にむけてほほ笑むと言った。

 

「コペル。そうか、無事に帰ることが出来たのだな」

 

 コペルは、そんな優し気な声色に不器用に、少し引くような驚き方をした。まぁ、そうなるのも分からなくはないが。

 

「あ、あの……」

「姫、知り合いですか?」

 

 何か言いたそうだったコペルを遮った。いや、遮るつもりなんてなかったのだろうが、しかしナデシコは無邪気に聞いてきた。

 いまさらながら、彼女にとって自分に対しての姫呼びはこれからデフォルトとなっていくのだろうか。元々姫呼ばわりされるのは慣れているが、しかし改めて自分よりも年齢が下である者から面と向かって言われると、少しだけ恥ずかしい物がある。

 

「一緒にお前たちが来るまで、クエストをしていた者だ。敵に囲まれて、逃がしたのだがな」

「へぇ……」

 

 コペルは、今度こそちゃんと驚くことに成功した。当たり前だろう。確かに一緒にクエストをしていた者。敵に囲まれて彼女に逃がしてもらったというのは当たっている。

 だが、その状況を作り出したのは、実を割ってリトルネペントを集めたのは、彼女を≪MPK≫しようとしたのは。

 

「あの、僕は!」

 

 その時、シンケンRは彼の肩をポン、と叩くと耳元で言った。

 

「もう、二度と同じ過ちを犯すではないぞ、コペル」

「ッ……はいッ……」

「?」

 

 コペルは、その彼女の言葉を生涯忘れることは無かったという。こんな、こんな自分に、彼女を殺そうとした自分を許してくれるばかりか、同じ轍を踏まないようにと助言までくれる。そんな人間、今までのネットゲームの世界でいただろうか。

 自分がいたネットゲームの世界。そこはほとんどの人間が私利私欲のままに生き、自分こそが頂点を取るのだという野望に塗れたアンダーグラウンドの世界だった。

 そのためには他人を蹴落とすことも、罠にはめることも、汚い手段を使うことも厭わない人間ばかりしかいなかった。そして、自分もいつしかそんな人間になっていた。

 だからなのかもしれない。デスゲームになったばかりであるというのに、その時の癖が抜けていなかった自分は、彼女を犠牲にすることによって自分自身を生かそうとしていた。そんなこと、許されることじゃないのに。

 でも、それでも生きたかった。また現実に戻りたかった。そのために、強く成りたかった。

 自分勝手をしてでも生きて、生きて、生きていたかった。

 そんな自分を、彼女は―――。

 甘すぎる。でも、その甘さが彼にとってとても心を打つ瞬間であった。

 

「またいつか、一緒にクエストにチャレンジしよう」

「はい! ありがとうございます!」

 

 ホルンカの村に入るシンケン・Rと仲間たち。彼は、彼女たちの姿が見えなくなるその時まで、ずっと頭を下げ続けていたという。自分に大切なこと。これは、ただのゲームじゃない。命を賭ける物、プレイヤーが命を奪いあっては決してクリアできない物。助け合って、護り合ってこそクリアする道が開ける。

 そんな大切なことを教えてくれたシンケン・Rに、彼は感謝の念を忘れることは無かった。

 この後、彼はさらにレベルとスキルを磨き、攻略組の一員としてSAOの世界を駆けぬけることとなる。

 彼が、≪PK≫や≪MPK≫に手を染めることは二度となかったという。

 

「これが、≪アニールブレード≫ですか?」

「そうだ。攻撃力、耐久値、どれもこれからしばらく戦っていくには申し分のない剣だ」

 

 それから数十分後、クエストを受注した民家にまで戻ってきた彼女たちはその前で手にいれたアニールブレードを出現させ、一度、二度と振っていた。

 

「なるほど……スモールソードよりも重いな……」

 

 シグナムにとって、重い剣であればあるほど自分が現実で使っていた剣に近づいて行く。さすがに≪相棒≫と比べれば頼りはないが、しかし最初のスモールソードに比べればまだましな方だろう。

 

「どうします、これから?」

 

 シンケン・Mは、手にいれたアニールブレードをアイテムストレージの中に戻すと、周囲にいる者達、特にβテスターである者達に今後の予定を聞く。

 

「もう夜も遅い、動くのは明日からにして、今日は宿を取ろう」

「そうですね。本当なら、この剣を試したいところですけれど……」

「出現パターンがハッキリしていないから、今フィールドでると危ないしね」

 

 なるほど、確かにそうだ。クエストクリアの報酬として経験値ボーナスがもらえたことによってレベルはシンケン・RやNが5、他の者たちは4にまで上昇。プレイヤー全体から見れば十分トップクラスのレベルであると言えるが、しかしだからと言って慢心してはいけない世界。もしも強力なモンスターに襲われでもすればあっという間にゲームオーバーになる危険があるのは変わりはない。

 アニールブレードの力を試したい思いはあるのだが、ここは念には念を入れて今日の所はもう宿に泊まって続きはまた明日にすることとした。

 幸か不幸か、先ほどリトルネペントの大群を倒したことによって落した素材を売ることによってコルは溜まっているので、他の面々も一泊二泊できる程宿に泊めることが出来るはずだ。今後の事を話し合ううえでも同じ場所で泊ったほうが良いであろう。

 ふと、ここでナデシコは今自分たちが出た民家の方を見て言う。

 

「リーファちゃん、遅いですね」

「そういえばそうだな……何かあったのか?」

 

 そう。最後に民家に入っていたリーファが一向に出てこないのだ。自分も含めて民家に入って剣を奥さんに渡すとすぐに出てこれたので、もうそろそろ出てきてもおかしくはないのだが。

 

「私、様子見てきます!」

「頼んだ」

 

 ナデシコは、シンケン・Rたちにそう言うと、民家の中に入っていく。

 時たま、一人のプレイヤーが入っていると他のプレイヤーは入ることが出来ないという設定の家があるそうなのだが、この家はそうじゃない様子だ。

 

「リーファちゃん?」

「あ、ナデシコさん……」

 

 ナデシコが見たのは、その場にあった椅子に腰かけているリーファの姿。どうやら既にNPCには胚珠を渡しているようだ。NPCの奥さんは、鍋をコトコトと煮込み続けている。

 もちろんゲームキャラであるため生きてはいない。ゲームのプログラミング通りの動きしかしない無機質な人形のような物だ。けど、胚珠を渡した時のまるで弾けるかのような笑顔は、今でも覚えている。本当にゲームの世界の表情であったのか、そう疑問に思うほどに≪生き生き≫とした顔は、自分たちの努力が報われたような気がして嬉しい物だった。まぁ、一番努力というか、苦労したのはシンケン・Rだったはずなのだが。

 

「どうしたの?」

「うん、ちょっと……」

「?」

 

 その時だ。NPCの奥さんが鍋の中のスープを掬うとソレを皿に移し替えた。

 

「あ、動き出した……」

「さっき、ナデシコさんの後に入った時にこのNPC奥の部屋に入っていったの。だから、もしかしてと思って……」

 

 なるほど、確かに自分は先ほど手にいれた武器を一度アイテムストレージの中にいれようとして苦労した結果他の人たちよりも遅れて民家から出た。その時、次に入ろうとしていたリーファの目にはドアの隙間からいつもとは違う行動パターンをするNPCの姿が見えていたのだろう。

 確かに、同じ行動パターンしかしないNPCが違う動きをしているのならば、自分も彼女と同じで気になって残ってしまうだろう。

 NPCは、部屋の奥にある部屋のドアを開けると、その中にスープを入れた皿を持って入っていった。二人もまた、その後を追って部屋の中に入っていく。その部屋には、ベッドの上で眠る一人の少女。

 そうだ。このクエスト、そもそも病床に伏せる一人の女の子のために秘薬を作るための材料を取りに行くという物。つまり、その秘薬を飲むための少女が一人必要だったのだ。NPCの女性は、女の子に近づくと、それに気が付いた女の子はゆっくりと起き上がった。そして、手に持ったスープを手渡しながら言う。

 

「アガサ、ほら、旅の剣士様が森から薬を取ってきて下すったのよ。これを飲めば、きっとよくなるわ」

「うん……」

 

 女の子は、スプーンで人掬い取ると、そこにフーフーと息を吹きかけてからおっかなびっくりソレを飲み込んだ。

 瞬間、彼女もまた弾けるような笑顔になる。このところ、やはり親子なのだろう。母親によく似ている。ゲーム世界のキャラクターであるとはいえ、こんな笑顔を見ることが出来てより一層達成感という物を感じた。あぁ、自分はこの子の命を救うことが出来たんだと、なんだか暖かい気持ちになることが出来た。

 女の子は、自分たちの姿に気が付いたのだろう。その明るい笑顔を向けると言った。

 

「ありがとう、お姉ちゃん」

「ッ……」

「リーファさん?」

 

 その時、リーファの顔が歪んだ。一瞬だけだが見せた悲しい表情。それが、どういうわけか印象に残って、離れることは無かった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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