SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第一章(終)

「……」

 

 夢は、見ることが出来なかった。いや、もしかしたらソレがこの世界の仕様であるのかもしれない。

 目が覚めたら、実は全部が自分の見ていた夢であって、起きたら自分の部屋。そこで二度寝くらいして姉にたたき起こされて、寝ぼけ眼をこすりながら食べる朝ごはん。

 そして、その後はみんなの待つ。友達の待つ学校へと走って行って―――。

 全部、夢だったらどれほどよかったであろうか。

 

「ゲームの中……だよね」

 

 無情なことに、自分が目覚めたのは昨晩から泊っているホルンカの村に存在する宿だった。

 あの後、リーファと共に民家から出たナデシコは、シンケン・Rの案内でホルンカの村の中で一番内装が整った宿を紹介してもらった。二人で一部屋を使える宿を取ってもらい、リーファと相部屋となってこの部屋で一夜を過ごした。

 やっぱり、自分はこの世界の住人となってしまったんだな、そんな悲しい気持ちが舞い降りてくる。

 ゲームがクリアされるまで、自分は家族にも、友達にも会うことが出来ない。知り合いが一人もいないこの世界で、初めて出会った人たちとこれからやっていけるのだろうか。

 ふと、ナデシコは横で眠っているはずのリーファを見た。

 

「リーファちゃん?」

 

 だが、そこには誰もいなかった。布団の中はもぬけの殻、リーファの姿は何処にもない。トイレ、のはずはないしお風呂だろうか。でも、風呂のある方向をみても使用している様子はない。一体、彼女は何処に行ったのか。

 

「あ……」

 

 ふと、窓の外を見たナデシコ。まだ日が昇らず真っ暗なホルンカの村の広場、その中央に彼女は見た。リーファの、姿を。

 

「……」

 

 この時、リーファは何を感じていたのだろう。虚しさか、それとも悲しみか。懐かしみか。

 あの少女、アガサを見てからという物、胸にこみあげるその思いを抑えることが出来なかった。

 なんだか親近感がわいてしまったのだ。彼女が看病されている。そんな姿を見ていると。

 あの時の、兄の姿を思い出してしまったのだ。

 

「リーファちゃん? どうしたの?」

「ナデシコさん……」

 

 その時、宿から現れたナデシコ。心配させたかもしれない。リーファは、彼女にやんわりとした笑顔を向けた後言った。

 

「あの家にいたあの子……」

「あの子って……アガサって子の事?」

「うん……あの子見ていたら、思い出しちゃて……」

「え?」

「昔ね、風邪を引いて寝込んじゃったことがあったの。お父さんは海外赴任中で、お母さんは仕事で会社に行かないといけなくなって、お兄ちゃんがその間に看病してくれた……」

 

 それは、とてもとても大切で、大事な思い出。もう兄は忘れているのかもしれないが、しかし自分にとっては決して忘れることのできない過去。

 

「身体中の汗を拭いたり、冷却パッチを取り換えてくれたり……それに、私のわがままで生姜湯まで作ってくれた」

 

 今でも覚えている。少し生姜の味が濃くて飲みづらかったけど、でも自分の事を思って作ってくれた、兄の初めての料理。作り方もよく知らないであろう兄が作ってくれた、とても心の暖かかくなる料理。

 

「味は、あんまりおいしくなかったけど、なんだかそれがとても嬉しくて……大切な……思い出で……」

 

 アガサとの出会いが、その過去を思い出させてくれた。でも、それと同時に望郷の念に駆られてしまった。

 

「会いたいな……お兄ちゃんに、もう一度……」

 

 帰りたい。また、兄と、両親と会いたい。会って、またあの生姜湯を作ってもらいたい。

 でも、ソレが一体いつになることか分からない。半年、一年、二年、三年、それとも―――。

 そうなった時、兄はあの生姜湯の事を覚えていてくれているだろうか。それが怖くて、悲しくて、辛くて、そんな気持ちがふつふつと沸いてたまらない。

 

「何回でも会おうよ。ゲームをクリアしたら」

「え?」

 

 ナデシコは、そんな彼女の声に、昨日と同じ笑顔でそう言った。

 

「だって、ゲームをクリアしたら、すぐ会えるでしょ? それで、一緒に遊びに行って、どこか遠くに行ったりして。皆で集まってキャンプして、夜は皆んなで鍋パーティー! って、あれ? 途中から私の話になってる?」

「……フフッ」

 

 なんだか、その天真爛漫ともいえる笑顔を見ていると、こっちもまた笑顔になってきてしまう。

 そう。ゲームをクリアしたら会えるのだ。兄に。例え、何年かかろうとも。兄はきっと自分の事を覚えている。あの生姜湯の事は覚えていなくても、私が兄のその初めての料理の味を覚えている限り、色あせることのない大切な思い出である限り、自分は兄にあの時と同じ笑顔を見せることが出来る。

 何を怖がっていたんだろう。自分と兄の関係は決して変わることのない絆。その絆があれば、どれだけの年月が経とうともすぐにいつもの関係に戻ることが出来る。だって、自分たちは兄妹なのだから。

 頑張ろう。頑張って帰ろう。そして、また兄と一緒に笑いあおう。あの時の思い出を語りながら。

 

「お前たち、早いな」

 

 その声に二人が振り返ると、そこにはシンケン・R、そして昨晩のクエストに参加した者達皆がいた。

 

「あ、シンケン・Rさん。皆も」

「なんだか、目覚ましよりも早くに目が覚めちゃいました」

「私もです」

 

 どうやら、今日は全員が目が冴えてしまったらしい。まぁ、デスゲームなんてものになってすぐに熟眠できる程の図太い神経を持っている人間がそうそういるとは思えないが。

 と、思ったのだが後に聞くと、どうやらアギトやシグナムと言った人間は熟睡していたらしい。早起きできたのは、いつもの生活習慣故早起きすることが多かったからだそうだ。

 また、シンケン・RやM、Nといったβテスター組は、昨晩は一夜かけてこれからの攻略に関しての相談をしていたらしい。聞くところによると、Mたちもはじまりの街で別れた仲間がいるそうだ。と言っても、自分たちのように喧嘩別れというわけではなく、人数調整や情報収集、そしてβテスト当時に情報屋をしていたプレイヤーに会うために残っただけで、しばらくしたら合流しようと話しているらしい。

 まさかこれだけの人間全員が早起きするなんて、偶然を通り越して奇跡的な確率と言ってもいいだろう。

 

「だが、おかげでいい物が見れそうだぞ」

「え?」

 

 いい物、とはどういう事だろう。疑問に思ったナデシコを導くかのように、シンケン・Rは空を指さした。

 

「ほら、あれを見ろ」

「え? あ……」

 

 すると、そこに待っていたのは―――。

 

「正式サービス開始から、初めての夜明けだ」

 

 初めての訪れた夜から世界を解放するために現れた一筋の光だった。これが始まりの光。そう思えるほどに神秘的に光る線状の、しかし人工的な夜明け。

 でも、新しい日々の幕開けに相応しい輝きだった。

 

♪眩しい朝日で♪

「キレイ……」

「こんな景色が見れるなんて……」

 

♪Wake up!! Sunday morning 輝く空を♪

「でも、偽物なんですよね……」

「例え偽物でも、その心に映る感動は、本物のはずだ」

「そうですね……」

 

♪眺める Brand new day♪

「リーファちゃん?」

「一緒に見に行こう。ナデシコさん」

 

♪風に寄り添う 他愛ない時間が 右から左へと流れる♪

「え?」

「現実で、こんな景色、一緒に見に行こう。本物の朝日を一緒に見よう。ここにいるみんなで」

「ッ……うん!」

「その時は、私の仲間も一緒に連れて行こう」

 

♪Let's have a good time together♪

「もちろん私も! 友達みんな連れてくる!」

 

♪この場所で♪

「料理なら、俺たちに任せてください!」

 

♪笑顔で手を取り合おう♪

「アギトはレストランを経営してて、アナムはそこで働いてるんです」

 

♪Always be yourself 明けない夜はない♪

「そうなんだ! 私も、料理が得意なんです! 現実に戻ったら、一緒に作りましょう!」

「お、いいですね!」

 

♪True melody 想いを♪

「私も、腕を振るいます!」

「まだゲームがクリアできるって決まったわけじゃないのに……」

 

♪そっと重ねて 世界は空で繋がってる いつまでも♪

「できるさ、私たちみなの力を合わせればな」

「はい! きっと……ノーコンテニューでクリアしてやるぜ! ですね」

「フッ……」

 

♪この先も みんなで手を♪

「あ、そうだ! 自己紹介しよう!」

「自己紹介? そんなのさっき……」

 

♪取り合おう Always be yourself 明けない夜はない♪

「偽物の名前じゃなくて、本物の名前でってこと! ≪各務原なでしこ≫! よろしくね!」

「え?」

 

♪True melody♪

「……そうだな。今更個人情報だとかは問題にはならんだろう」

 

♪想いを♪

「≪志葉薫≫だ」

 

♪そっと♪

「≪白石茉子≫」

 

♪重ねて♪

「プレイヤー名と同じだ。≪シグナム≫」

 

♪出会いは♪

「≪獅堂光≫!」

 

♪ほら近くに♪

「≪宝生永夢≫です」

 

♪旅が♪

「≪西馬ニコ≫!」

 

♪キミを待ってる世界は♪

「≪津上翔一≫です! よろしくお願いします!」

「≪風谷真魚≫です」

 

♪空で繋がってる♪

「私は……」

 

 その時、作り物の風が吹いた。その風は、同じく作り物の朝日に向かている。リーファは、髪を抑えながらも、朝日の方を向いた。まるで、ソレに向けて名前を告げよ。そう言われているかのように。

 そして、リーファは言う。

 

♪いつまでも♪

「桐ヶ谷……直葉です!」

 

 限りある日常を奪われて、それでも新たな日々を送る決意を朝日に誓った侍たち。

 いつの日か、親しい者達のいる世界へと戻る。そのための戦いの日々が幕を開ける。

 メインシナリオ第一章、まずはこれまで。




ゆるキャン△
仮面ライダーアギト
      参戦

プレイヤーNo.2 ???→獅堂光(レイアース【0arth】)≪原作:魔法騎士レイアース≫
プレイヤーNo.4 ???→シグナム(シグナム【Signum】)≪原作:魔法少女リリカルなのは≫
プレイヤーNo.5 ???→各務原なでしこ(ナデシコ【Nadesico】)≪原作:ゆるキャン△≫
プレイヤーNo.6 ???→志葉薫(シンケン・アール【Sinken・R】)≪原作:侍戦隊シンケンジャー≫
プレイヤーNo.7 ???→白石茉子(シンケン・エム【Sinken・M】)≪原作:侍戦隊シンケンジャー≫
プレイヤーNo.10 ???→宝生永夢(M【M】)≪原作:仮面ライダーエグゼイド≫
プレイヤーNo.11 ???→西馬ニコ(N【N】)≪原作:仮面ライダーエグゼイド≫
プレイヤーNo.12 ???→津上翔一(アギト【AGITΩ】)≪原作:仮面ライダーアギト≫
プレイヤーNo.13 ???→風谷真魚(アナム【ANAM】)≪原作:仮面ライダーアギト≫

 次回は、SAO最初の被害者が出たその少し前まで時が遡って外伝となります。
 外伝は、明言しない限り短編となります。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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