SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
思えば、不幸ばかりの自分の人生だと思っていました。
母を早いうちに亡くして、特待生枠で入った超お嬢様おぼっちゃま学校では花瓶を割って、その借金の返済のためにホスト部なんてものに入らされる始末で、自分はなんて運のない人間なのだろうかと、つくづく思っていました。
ですが、それでもまだ幸運だったのだと、自分は今この時になって思います。
赤いフードをかぶった巨大な人影を前にする自分は。なんと、不幸な人間なのでしょうかと。
「ここが、SAOですか……」
SAOサービス開始直後、ほかのゲーマーから少し遅れたくらいの時間五ログインしたハルヒ、いやコハルは現実感がないと思いながら長い髪を撫でていた。
因みに、現在の身体は桜蘭高校の保健室のベッドの上である。彼女の家のアパートにはWI-FI設備が当然のようになくて、パソコンもかつて常陸院ブラザーズからもらったノートパソコンくらいしかなくてゲームを存分にプレイできる環境になかったからだ。
だから、彼女は休みであるというのにわざわざ学校にまで赴いて高校のパソコンを借り、ゲームをプレイしているのだ。当然お嬢様おぼっちゃま学校である桜蘭高校であるためセキリュティは万全。よからぬ人間が保健室に立ち入っただけで某霊長類最強の女性の所属する会社その他諸々から警備員が送られてくるので、それを考えればあの保健室程安全な場所はないともいえるのだが。
「ヤッホー、コハル」
と、その時。彼女に近づいてくる男性プレイヤーがいた。電球に集まる蛾のようにナンパ師に来た一般プレイヤーかと思うが、しかし違う。その顔を見たコハルは言った。
「あ、カオル……じゃなかった、オルカ」
「残念! 僕はルカの方だよ」
「ううん、オルカだよ」
自信たっぷりにオルカに言ったコハル。その屈託のない笑顔に、諦めた男性プレイヤーは、ややむすっとした顔で言った。
「……顔も変えて声も変えてるのに何でわかるかな?」
そう、実は彼女の推測は当たっていた。声も姿も、まるっきり現実世界のヒカル、この世界ではルカという名前にしている彼と同じにしていたのだが、彼はカオル、つまりオルカなのである。現実で普通に学校生活を送っていた時からもそうだったのだが、どうして彼女は自分たち双子の見分けがつくのか疑問が絶えない。
「うーん、なんとなく?」
「あ、そ」
と、疑問に思ってもそう言った答えが返ってくるのだから、まさしく天然と言うものの怖さは相当なもの。
しかし元々の性格であるとはいえ、その天然からくる直感がゲーム世界でも有効だなんてある意味で恐ろしい。この直観力、罠を探るときなどに使えるのではないだろうかとオルカが考えたのはここだけの話である。
「オルカ、オルカ!」
「ルカ……」
と、恐らくいつまでたっても立ち話に夢中でなかなか合流しないオルカに業を煮やしたのだろう。オルカと似たような容姿のルカが、二人に駆け寄ってきた。瞬間、コハルは二人の背後に薔薇の絵のようなものが飛んでいる幻覚に苛まれることになる。
「いつまで経っても来ないから、心配したじゃないか」
「こめん、ルカ……でも」
「言い訳はいいよ……そのかわり」
「あ……」
オルカをそっと顔の近くにまで抱き寄せたルカは、その耳元でささやいた。
「ずっと、僕のそばにいてくれ」
「ルカ……」
「ゲームの中でも平常運転なんですね」
呆れ顔のコハル。というより別にホスト部の営業中というわけでもないのに何故いつもの営業のようにふるまう必要があるのかとはなはだ疑問に思たコハルの質問に対して、ルカは言う。
「そりゃ、今回はホスト部の抽選で当たったお客様達もいるし」
「これも、いわゆるホスト部の営業の一つってわけ」
「自分はゲームの世界に来てもホスト部から離れられないんですか……」
確かに、須王環がホスト部の常連の間で行ったビンゴ大会の当選者も一緒にプレイするとは聞いていた。だが、それがホスト部の営業の一つに入っているなんて初耳である。どうしてそういった重要な情報は自分の耳に入れてくれないのかと、イメージの中で環を睨め付けたコハルはふと、気が付いた。
「ところで、環先輩は?」
そう、このパターンではいつも最初に自分の事を迎えに来るであろう環が一向に現れないのだ。いつもだったらルカやオルカが現れるよりもずっと前に自分に突進してきてゲームの世界でも可愛いなんて馬鹿なことを言ってきそうなものなのだが、どうしたのだろう。
「殿は、家の用事で少し遅れるって」
「え?」
「何でも、鏡夜先輩やハニー先輩たちが出席するパーティーに行ってるらしいよ。来るのは、夜になってからだってさ」
どうやら、環の親、つまり桜蘭高校の理事長の方から経済界の多くの著名人が列席するパーティーへの出席を頼まれたらしい。環は、あれでも須王グループを継ぐ可能性が高いおぼっちゃま。そういったパーティーには社交辞令的にでも出席しておいたほうが後々の役にも立つのであろう。
とはいえ、である。
「言い出しっぺが遅れてどうするんですか」
遅刻OKであるのならば自分も家で勉強の一つや二つしたかったというのが本音である。
今の彼女は弁護士になるための試験勉強真っただ中であるし、特待生として成績を落とすことはあってはならない。だから、こんなゲームで遊んでいる時間があったらそれを勉強に当てた方が得だとしか考えることが出来ないのだ。
「まぁまぁ、殿が来る前に……」
「僕たちは僕達で、楽しくやろ、コハル」
「はいはい、ところで……」
まぁ、やり始めてしまった物は仕方ないと、コハルはふと周囲を見渡してから聞いた。
「他の皆さんは、まだ来ていないんですか?」
他の皆さん。それは先ほども言ったホスト部の常連の中で行われたビンゴ大会の当選者の事だ。
その中には、自分の親しいというかよく話してくれる者もいるため、ちょっと気になっていたのだが、少し周りを見てもそれらしいプレイヤーはいない。だからまだ何人かは来ていないのだろうと推測したのだが、それはまったく的外れだった。
「皆向こうにいるよ」
「コハルが来るのを待ってたのさ」
と、ルカが親指で指した方向。そこには、女性プレイヤーが三人、そしてその女性プレイヤーたちからやや離れたところに男性プレイヤーが一人。なるほど、確かに自分が一番最後であったようだ。それにしても早すぎる。
自分はゲームがサービス開始になってから十分少々してからゲームをプレイし始めたのだが、この集まり具合からして、おそらく彼女たちはサービス開始直後からゲームを始めていたのだろう。
「すみません……まさかサービス開始早々にみんながプレイし始めるなんて思ってもみませんでした……」
「それぐらい、楽しみにしてたって事さ」
「いいとこのお嬢様と言っても、女子高生だから」
「そういうものなんですか?」
「「そういうものなの」」
この二人の言葉に、コハルは意外だと思いながらも冷静にホスト部の営業中の彼女たちの姿を思い返してみる。
だが、確かにちょっとした遊びに夢中になったり、和気藹々と楽しそうに話す彼女たちの姿しか思い出せない。それは、まさしく普通の女子高生と瓜二つの姿であっただろう。
彼女たちが特別な人間であると思ったことは無い。確かに、庶民の生活に対して物珍しそうな目で見てて、事あるごとにイラっとさせるような上から目線ー本人たちにその気はないのだろうが-はあった。でも、それでも普通の女の子として自分は接してきた。
だから、そんな女の子たちがただのゲームにも夢中になるのは、ある意味では普通の事だったのかもしれない。
コハルは、ルカやオルカに連れられて彼女たちの元に向かった。確かに勉強で忙しい毎日だ。でも、少しくらい現実を忘れて遊んでも悪くはないのかもしれない。
彼女たちとならそれが出来る。そう信じていた。
でも、この時のコハルは知らないでいた。
この先、彼女たちとの付き合いがとても長いものになるなんて。
そして。
自分の夢にまで影響を与えることになるなんて、
信じることができなかった。
桜蘭高校になんて、入らなければよかったなんて、一瞬でも思う時が来るなんて。
こうして、桜蘭高校ホスト部のSAOは始まりを告げたのである。
プレイヤーNo.14 藤岡ハルヒ(コハル【KOHARU】)≪原作:桜蘭高校ホスト部≫ログイン
プレイヤーNo.15 常陸院カオル(オルカ【ORUKA】)≪原作:桜蘭高校ホスト部≫ログイン
プレイヤーNo.16 常陸院ヒカル(ルカ【RUKA】)≪原作:桜蘭高校ホスト部≫ログイン
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい