SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
一瞬にして、俺の意識はこの現実という大多数から見ればクソゲーであると言われている存在から切り離されてしまった。
次に目の前に現れたのは白を背景にして赤やら青やら黄やらと、正直こんな光景を本物の目では見たくないであろう色彩が次から次へと流れてくる。
だが、いい意味で現実離れしたこの光景こそ、現実の世界から切り離されてゲームの中の世界という全世界の人間が現実逃避のために熱望する世界へと足を踏み入れるということを否が応でも俺に教えてくれる。
本当にこれをゲームであるとするのなら、ここらあたりでOPなんなりああってもよさそうなものだが、あいにくこのゲームにはそんなものは設定されていないようでただ≪Welcome to Sword Art Online!≫というどこかの街の喫茶店にある簡易的なウェルカムボード並みにあっさりとした文面だけで歓迎され、まぁ少しだけ残念な気持ちになる。OPとは、ゲーム内の設定やら世界観やらの説明を簡易的に知ることが出来る有能な手段であるのに残念だ。
考えてみれば、このゲームにはタイアップ曲のようなものはなかった。このような大きなゲームであるのならば人気アーティストとコラボしてのOP曲等あってもよさそうな物であるのに。
俺が事前に集めた情報が正しければ、というよりハルヒによればβテストの際、ハルヒですらも知っているようなアイドルが何人か参加していたそうだ。なので金やら人脈やらはなかったわけじゃないはずなのだが、そのあたり疑問である。
さて、余談はこれくらいにしよう。パスワードやらなんやらの入力が終わって、ついに別世界に旅立つ準備ができたようだ。
何かに引き込まれる感覚がしたと思った次の瞬間、俺の身体には感じたことのないヌルっとした重力に押されて、一つの大地へと足が着地する。まるで長旅を終えた直後のような独特な疲労感と、それを一瞬で吹き飛ばすほどの景色が目の前に広がっていた。
「おいおい、マジかよ……」
正直、俺はSAOという物を少し舐めていたのかもしれない。たかがゲームだと侮っていたのかもしれない。しかし、前言全てを撤回してもいい、それぐらい驚愕の光景が広がっていた。
ヨーロッパのどこかの街に瞬間移動したのかと思うほどの石畳が広がり、目の前には黒光りする大きな建物、唯一現実感がないと言えば空の景色くらいだが、それ以外は完全に現実の世界にありそうなほどリアルな光景が広がっている。
夢か幻か、いやここはゲームの世界であるので幻でもあっているのかもしれないが、ともかくとてつもない物を俺は今体験しているのだ。その光景は、俺の胸を大きく躍らせるのには十分な物だったことは間違いない。
そんなこんなしている間にも、周りには青白い光と共にたくさんの人間、いやプレイヤーが次から次へと現れている。全員が全員俺のように感動を覚えているのかは不明だが、とりあえずここにいるとその多数のプレイヤーに押しつぶされるであろうことは目に見えているため、早々にそこから立ち去ることにする。
さてさて、それから数分たち、俺は、先ほど降り立った空港であれば到着ロビーに近い場所から離れ、と言っても目の前にあった黒光りしている建物の中なのだが。
何故他の場所ではなくこの建物の中だったのか、それは建物の中にいる人間に原因がある。
キャラクターとしてデフォルメされてはいるが、どことなく面影を残した女性プレイヤー。ポニーテールである。どことなく俺とアイツの強制的なつながりを表しているかのようで、とりあえず事前に打ち合わせていたような姿であるソイツに俺はいつものように声をかけた。
「よう、ハ……いやヤスミ」
誰だそれは。というのは嘘で、それがこの世界でハルヒが使用しているプレイヤーネームなのだ。
正直知っている人間を別の名前で呼ぶというのは慣れるまでに時間がかかるであろうが、とりあえずソレがハルヒから教えられた名前であるのでそう呼んでみる。
すると、少女はいつものように凛々しい顔をし、やや起こっているかのような声色で言った。
「あなた、本当にキョンでしょうね?」
あぁこの物言いは確実にハルヒだ。というより、流れるように俺の名前を言い放ったな。
「おいおい、自分にはプレイヤーネームを使うように言って、俺はそのままかよ」
「別にいいでしょ? 本名じゃないんだし。なら、アンタは一体自分の名前何にしたのよ」
「……キョン」
「まんまじゃない、もっと捻りとかないの!?」
しょうがないだろ。それしか思いつかなかったんだ。それに、確かにハルヒの言う通りキョンというのは俺の本名じゃなくあだ名であるため大声で言われてもいいのだが、それにしてももっと捻りをという語りからするにまた別のネーミングも求めていたというのだろうか。
さて、それはともかくとして朝比奈さんや長門、鶴屋さんの姿は見えない。黒鉄宮というらしいのだが、この建物はゲームプレイ直後に目の前にあって分かりやすいということでここをSOS団の集合場所に指定されていたのだが、まだ来ていないのか。
というより、周囲を見ると大人数で集まっているグループか、もしくは一人でぐるぐると黒鉄宮の中を見回っている者のどちらしかいない。何故だ。
「グループで集まっているのは、たぶんあの中にβテスターがいるんでしょ。一人でいるのは、初心者か何かがとりあえず目の前にあったから入ってきましたってところでしょうね」
「俺の心の中を読んでいるのかお前は」
「別に、アンタのその腑抜けた顔を見れば直分かるわよ」
「腑抜けたとは何だ腑抜けたとは」
だがなるほど、この建物が目の前にあったからこそこの場所をハルヒ、いやこの世界ではヤスミか、ヤスミのように集合場所として指定したり、気になって入ってくるプレイヤーがいるのは想像するのに難しくはない。渋谷のハチ公像かここは。
「けど遅いわね、皆何やってんのかしら。キョンですら早く来てるってのに」
「俺ですらっていうのは余計だろ」
「後ろにいる」
「ん?」
蚊の鳴くような声かなんであるか、ともかくやや小さな聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。振り返ると、それまでの非現実的なキャラクターばかりを見てきたためにマヒしてきていた感覚が吹き飛ぶほどに見覚えのある少女がそこには立っていた。
「有希、何も容姿をいじらなかったの?」
「そう」
「名前は?」
「ナガトユキ」
「まんまじゃない。身バレなんてしたら大変よ」
「大丈夫」
「大丈夫って……まぁ、有希がいいって言うんならいいけど……」
いいのかそれで。だがハル、ヤスミが言うのはもっともだ。なんだかこの名前はしばらくなれそうもない。
ともかく、そもそも容姿を変えられるのも本名とは別のプレイヤー名を設定できるのも現実世界での身バレ、つまり個人情報が特定されるのを防ぐためだ。もしも個人が特定されて迷惑行為やら犯罪行為のために利用され、最悪一人の人間の人生が壊されるということも考えられる。幸か不幸か、長門は別に個人情報を特定されても別に気にしないだろうし、利用されても長門自身痛くも痒くもないだろう。なんならそのような行為自体させないようにできるのではないか。
ヤスミ自身は、そのような長門に対して心配してしょうがない様子。まぁ無理もない。現実では奇行に走るヤスミだが、その身はかなり現実的な人間なのだ。友人が身バレしないのか気が気ではないのだろう。
「これなら、二人みたいに私がプレイヤーネーム付けたほうがよかったかしら」
「ん? 朝比奈さんと鶴屋さんのプレイヤーネームはお前が考えたのか?」
「正確に言うと鶴屋さんと一緒に考えたみくるちゃんの名前よ。鶴屋さんはもう決めてたみたいだから。ついでにみくるちゃんの姿もね」
「……」
朝比奈さんがどんな名前になっていようとも、どんなあられもない姿になって言おうとも、俺は彼女の友達でい続けます。
だが、鶴屋さんが間に入っているということもあってたぶんまともな物になっているのだろうと思う、がしかし彼女は彼女で時々暴走している姿を時たま見るため、下手をするとヤスミとの共同作業で目も当てられないほどの惨状になっている可能性もあるのだが、それでも俺は彼女の友達でい続ける。
「あ、いた。ヤスミさ~ん」
「ん?」
もうそろそろ、ハルヒの事をヤスミと呼ぶことに慣れてきたころだった。ある、一人の女性のプレイヤーが、あたかも応援団の振るう傍のように大きく手を振りながら現れた。
「あ、来たわね。こっちよムギ!」
どうやら、ハルヒ、もといヤスミの知り合いである様子。ふと、自分の頭によぎった考え。それは、ヤスミがムギといった彼女こそが、現実世界で言うところの朝比奈さん、もしくは鶴屋さんであるという可能性だ。
しかし、それはないだろうという確信に近い物を俺は持っていた。まぁ、確信というよりは持って生まれた直観力のようなものが働いただけのいわゆる妄想に近い者であるのだが、念のために俺はヤスミに聞いてみることにした。
「おい、ヤスミ。まさかとは思うが、この人が朝比奈さんなのか?」
「何言ってのんよ。違うわよ。この子はムギちゃん。私が不思議探しをしていた時に出会った子よ」
「琴吹紬です。よろしくお願いします」
まぁ、予想としていた通りだった。朝比奈さんの場合、確かにヤスミに声をかけるのは間違いないだろう。しかし天然おっとり系である彼女であったのならば、プレイヤーネームなんてこじゃれた物を使用せずに直球ど真ん中ハルヒと叫んでしまってもおかしくない。
それに、彼女の性格上自分にも真っ先に声をかけるはずなのにそれがないというのもまた不自然さに拍車をかけていたのだ。などと完全に自画自賛をしてしまっている俺を差し置いて、ヤスミはムギというプレイヤーに向けて指をさしながら言った。
「ムギ、本名言っちゃダメでしょ!」
「あ、そっかうっかりしちゃった……」
俺は完全に誤解していた。彼女もまた、朝比奈さんと同じ天然系おっとり少女であったらしい。無論ただ物忘れしていただけという可能性もある。だが、その話し方、よく聞くと確かに朝比奈さんのソレに似たような何かを感じる。主に、保護欲求のような物だろうか。なんだか抱きしめてよしよしとしたくなってくる欲求にかられそうな自分の心を押さえつける。
「それで、他にもゲームをプレイするって言ってた子たちは?」
「キャリブレーションがあって一人遅れてくるから、その子を待ってるの」
この物言い。恐らく、ムギは他にも仲間を引き連れてこのゲームをプレイしているらしい。この辺りは自分たちSOS団に似たところはあるようだ。それにしても、だ。早く彼女の事を紹介してもらいたいところである。
今のところ自分たちが持っている彼女に関しての情報は、ヤスミがいつもの不思議探しという名前の街の散策に乗り出した時に偶然知り合った少女であるという事しかないのだが。
「そう。なら、十分くらいで来れそうね……そうそう、こいつはキョンよ」
「おい、なぜわざわざ俺だけ紹介する」
「手間を省いてあげてるんだから、感謝しなさい」
「たく……」
しかし、ヤスミはそう言った俺の中での川の流れのような自己紹介テンプレを切り取ってでも、他人の自己紹介から入るという暴挙を演じて見せる。まぁ、この辺りはいつも通りと言っても差し支えないのだろうが。
そこまできて、ヤスミはようやくムギの事について語りだした。どうやらムギはどこかの財閥のお嬢様であるらしく、東京都内にある普通の学校に通っている高校三年生であるらしい。つまり、自分たちにとっては年上だ。それなのによくあそこまでヤスミは偉そうにできていた者であると、もはや何度目かもわからないくらいに生暖かい空気を吐きあきれ果てていた。
そんな彼女と港町神戸の近くに住んでいるヤスミが出会ったのは、都内の電気街として有名な秋葉原。なんでもSAOのβテストが始まる前の最後の休日、秋葉原に頻繁に出没するという下半身が蛇のような女の子だったり紙袋をかぶった女の子だったりを探しに言ったハルヒが休憩のために入ったカフェ。
そこで、一人お茶をしていた少女が気になったらしい。その時点で、おれは嫌な予感を感じた。あのヤスミが何処にでもいるような普通の人間に興味を持つはずがない。ふつうの人間が、ハルヒの前に現れるわけがない。きっと彼女には何か裏の顔のようなものがあるのだ。と、下手な勘繰りを入れてしまいそうになるが、それと同時にもしも本当に何の変哲もない普通の女の子だった場合、暴虐武人という皮を嬉しそうに羽織っているヤスミに見つかってしまった不幸に同情してしまう。
というか、なんで彼女は秋葉原のカフェなんてところにいたのだろうか。謎である。
この辺り、おなじ普通の人間代表たる俺と気が合うのかもしれない。どうやら彼女とはうまい酒が飲めそうだ。いや、ヤスミとムギの話が本当であるのならば双方ともに未成年であるのだが。
「キョ、キョンくん?」
「ん?」
その時だ。先ほどの空を貫かんばかりの大声だったムギとは違い、今度は声で虫すらも殺せなさそうなか細い声で己の事を呼ぶ、まるで小動物の鳴き声かのような声が聞こえた。
俺は、その声に聞き覚えがあった。まさかと思い振り返った俺は、その目線の先に見た。
ソレは、乙女の絶対領域を解放した姿。長い年月熟成し、成長した絹糸にも見間違うか細く、そしてすらっとした紐の束。それが、彼女の特徴のはずだった。
だが、誰しもが驚くほどに極上であると言ってもよいその束は、今や見る姿もなく消え去ってしまっていた。ロングヘアであった少女は、一遍。ボブヘアというショートヘアの一種となり果てて、この世界に降臨したのだ。
「やっときたわね! 遅いじゃない二人とも!」
「ごめんね。ミックルンがちょっと恥ずかしがっちゃって」
俺は、ミックルン、つまり、朝比奈さんの隣にいる。十中八九鶴屋先輩であろう人間の言葉を聞き、物的証拠がなかったソレが正解であったことに安どするとともに、存外奇抜とも言えない名前だったことに安心する。てっきりもっと彼女が赤面するほどに恥ずかしい名前を付けられていると思ったのだが、その辺ヤスミもTPOという物を守ってくれているようだ。
「だって、こんな髪したことなくって、ソレに……」
「ん?」
目の錯覚かそれともおれの願望であったのか。決して変わるはずのない彼女の目の奥がウルウルとしているように見えるのと同時に、再びの保護欲求を抑え込みながら次の彼女の言葉を待つ。
そして、硬い唇を開いた彼女は俺に聞いた。
「あの、キョンくん? 変じゃない、かな?」
と。果たしてどうこたえるべきか。いや、答えは決まっている。俺は、俺にとっての朝比奈さんは確かにロングヘアだった。それ以外にはないとも思い込んでいた。
だが、それは俺のたった一つの欲望が生み出すげ寧に過ぎない。やはり、彼女はどんな格好をしても、どんな髪形にしても美しく、そして可愛いのだ。それはなんら変わりないのだ。
「似合ってると思いますよ。朝比、いえミックルンさん」
「あ、ありがとう! キョン君!」
と、俺は朝比奈さん改めてミックルンにそう言った。この時、彼女が見せたあの笑顔。おれは生涯忘れることは無いだろうと考えて、脳に刻み込むことに専念した。
因みに、鶴屋さんの方であるが、こっちはミズノと名乗っているそうだ。一体何故、と思ったが、彼女が言うにはちゃんとしたネーミングの元ネタがあるらしい。だが、俺には何も教えてくれなかった。しかし気になる。何故ミズノであるのかが。
かくして、俺がその理由について考えている間にムギの友達である四人の女の子たちが加わり、合計十人の大所帯となってこのSAOというゲームは始まりを迎えることになった。
プレイヤーNo.42 涼宮ハルヒ(ヤスミ【Yasumi】)≪原作:涼宮ハルヒの憂鬱≫ ログイン
プレイヤーNo.43 不明(キョン【Kiyon】)≪原作:涼宮ハルヒの憂鬱≫ ログイン
プレイヤーNo.44 長門有希(ナガトユキ【Nagatoyuki】)≪原作:涼宮ハルヒの憂鬱≫ ログイン
プレイヤーNo.45 琴吹紬(ムギ【mugi】)≪原作:けいおん!≫ ログイン
プレイヤーNo.46 朝比奈みくる(ミックルン【Mikkurunn】)≪原作:涼宮ハルヒの憂鬱≫ ログイン
プレイヤー№ 47 鶴屋(ミズノ【MIZUNO】)≪原作:涼宮ハルヒの憂鬱≫ ログイン
キョン一人称はしばらく封印いたします。
あと、他のけいおんメンバーの紹介につきましては正式に参戦した時にという事で。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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タイトルはそのままでいい