SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
連作だったらミニ、とかプチ、とかにしようかなと考えていたけど、読者が分かりづらいからやっぱりサブシナリオということで。
現在諸事情によりストックをためている最中に付き、しばらくは週一、木曜日更新で行こうと思います。
地獄のような赤い光をその身に受け、少女は狼狽しながら架空世界の町中を駆け抜けていた。でも、その少女を燃やすかのように光る太陽は、彼女を逃すことはない。
少女は、決して逃げれないと分かってても走る。どうしてこんなことになってしまったのかと嘆きながら。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
行く当てなんてどこにもない。頼れる人間なんて誰一人としていなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
いや。本当は頼ることのできる人間が、友達が二人もいた。どんなことも相談できて、何度も自分の味方をしてくれていた。大切な、親友とも言える仲間。
けど、今回に限っては彼女たちに相談もできない。近くに、いることすらも憚れる。
当然だろう。
「私の……せいだ……」
自分は、挽回不能な過ちを犯してしまった。
自分は、取り返しのつかない罪を生んでしまった。
「私のせいだ。私のせいで二人の人生を、なのはに救われるはずだった人たちの人生も……私のッ!」
少女の慟哭は、架空世界の赤い夕焼け空に消えていく。まるで、そんな悲しみをするような権利なんて、お前にはないと言わんばかりにすべてを包み込み、吸収し、そして思い知らされる。
自分のせいで、大勢の命が奪われるのだと、あの夕陽の赤の中に消されていくのだ。この架空の世界は教えてくれる。
彼女には、その時の赤い夕焼けが、地獄の業火に見えた。自分が、赴くであろう世界の、燃えたぎる炎に。
ここで一旦、話はゲームのサービス開始から三十分後にさかのぼる。現実世界でなのは、すずか、アリサと互いを呼んでいた少女たちが、シズク、ノエル、ローウェルと架空世界の住人となった時のことだ。
名前の由来に関しては、なのは=シズクは彼女の兄に名前の候補を聞いたときにソレを提案され、すずか=ノエルは彼女の家のメイドの名前を、アリサ=ローウェルは突如としてわいてきたフィーリングであるらしい。
それぞれの家の事情が重なったため、サービス開始直後にゲームを開始することができなかった三人。
幸か不幸か、そのおかげもあってゲーム開始地点での混雑に巻き込まれることはなかった。けど、後々のことを考えると、≪チュートリアル≫を前にしてログインしたことは、この上なく不幸なことであったと言える。
彼女たちは、先にログインした他のプレイヤーたちよりも長い時間、世界に足を踏み入れた感覚を味わうことができた。すぐに消えることになる感動に胸を躍らせることができた。
話には聞いていたが、実際にプレイしてみてわかる。本当に海外に来たのではないかと思わせるほどのリアリティと空気感。体の中心部から手先指先にまでほとばしる高揚感。シズクが言うには、それは彼女が初めてミッドチルダに足を踏み入れた時と似ているモノであったという。
そんなとてつもない感慨に身を震わせているとき、ふとローウェルが聞いた。
「それにしても、なのはのアバターってどことなく、桃子さんに似てない?」
「え?」
確かに、彼女の姿は彼女の母親の高町桃子と身長や体格、そして顔つきも瓜二つだった。もしも今ここで彼女と並んでみたとしたら、どっちがどっちだかわかりっこないだろう。
「えっと、それは。私にとってあこがれの人といいますか……なりたい人といいますか……一度なってみたいなって思ったのが、お母さんだったから……」
人は、誰しも―――というと語弊があるのかもしれないが、親に憧れを抱く者が多いのが人間の特徴の一つである。彼女もまた、母親の桃子の性格、そして端麗な容姿に憧れを抱いていた。
SAOはキャラクターエディットによってだれでも好きなキャラクターを作ることができるゲーム。だから、一度でもいいから母親の姿になってみたかったのだ。
もしかしたら、ちょっとしたマザコンなのではないかと思って、一度だけ躊躇したことがあった。でも、それでも彼女は桃子の姿を選んだ。
それは、彼女はその姿にしたかった理由が二重の憧れに起因したものであったからだ。
その一つ目が、先も言った母、桃子への憧れ。
そして、もう一つが―――。
「それにね……」
「それに?」
「私、もしかしたらお母さんにもなれずに死んじゃうかもしれない……大人にもなれずに。だから……一度でいいから大人の私を体験したかった……から」
「……」
「なのはちゃん……」
思えば、それは彼女にとっての不安の吐露。彼女の友達である二人も、心の底で思っていたことだった。
もし再び、少し前のような生死の境をさまようようなケガをしてしまったら。また今度も戻ってこれるとは限らない。今の自分のように元気に立って、歩いて、そして空を飛ぶことができるとは限らない。
そもそもこのSAOをプレイしていること自体、近いうちに死ぬことになるかもしれないなのはへの最後の思い出を作るため、という物が暗に含まれている。
もちろん、そんなもの訪れない方がいいに決まっている。だけど、やっぱり思ってしまうのだ。
自分は、長生きできるような人間ではないのだと。
だから、なってみたかった。一度でいいから。大人の姿に。もしかしたらなれたかもしれた。憧れの母のような自分に。
「なのは……ううん、今はシズク、か……」
「アリサちゃん?」
「ローウェル、よ」
アリサ、否ローウェルはノエルにそういいながらシズクの手を持った。
「今のあなたは時空管理局の高町なのはじゃない。普通の中学二年生、高町なのは……SAOプレイヤーのシズクでしょ? だったら、今この瞬間を十分に楽しまなくちゃ損じゃない」
「アリ」
「じゃなくて、ローウェル」
「……うん、ローウェルちゃん」
と、シズクはローウェルの手を握り返した。そうだ。今は忘れよう。生と死の狭間を行き来する高町なのはという女の子のことは。ここにいるのは、シズクというただのゲームプレイヤー。ただ、それだけだ。
それに、彼女自身なんとなくであるが『ローウェル』と、アリサのことを呼ぶのに懐かしみを、そしてうれしさを感じていた。どうしてかはわからない。そもそも、アリサ自身も、何故自分の名前をローウェルにしたのかわからないのだ。
でも、シズクはうれしかった。ローウェルと一緒に歩く。ただ、その言葉自体が、うれしかったのだ。
ノエルもまた、シズクの手を握る。そして、シズクは改めて感じる。友達の暖かさ、友達と一緒にいることのうれしさ。そして、生死を忘れさせてくれるような日常の尊さ。時空管理局で戦っている時には到底味わうことのできないその温かみを感じながら、彼女たちは歩いていく。
再び彼女たちの世界が生死の合い間に入る。その時まで。
「あれ?」
その時、一人の少女の目線がシズクたちに向いた。
特に、先頭に見える女性。ほかの二人と違い大人のアバターを用いている女性に見覚えがあった彼女は、必死で記憶の中を探る。
あれは、どこだったか。確かそう遠くない過去のはず。いや、それどころか、今朝のことだったような。
そうか、少女はその瞬間夢の中に潜った感覚になる。そう、夢なのだ。夢でみた女の子を、大人にした感じにそっくりなのだ。
悲しみに包まれた夢だった。
夜中の東京タワーを背にして浮かんでいた女性。その向こうには巨大な月が浮かんでいて、まるでソレを敵にしてるかのよう。
月を見つめていた彼女は、一瞬まばゆいばかりの光に包まれた。次に自分の目に映ったその姿は、少しだけ幼かった。幼いと言っても、身体の話ではない。精神の話だ。
体格は、自分と同じ中学生くらい。でも、その心はまるで小学生のように未熟で、ふとした事でボロボロに崩れてしまいそうなほどに脆い。そう、感じた。
そして、その女の子は、突然現れたどす黒い何かに向かっていった。勇猛果敢に、自分でも足がすくんでしまうような怪物に向けて、何のためらいもなく、立ち向かって。
最後には―――。
そんな、胸が苦しくなる夢だった。
「サクヤちゃん。どうしましたか?」
「え? ううん、何でもない!」
少女は、一緒にいる友達に手を振って否定した。いけない、友達に心配をかけてしまっては。そんな思いがあったのだろう。
それにしても、である。
「今いるのは私たちだけなんだから、名前で呼んでもらってもいいのに……」
サクヤと呼ばれた少女は辺りを見渡すと言った。
このサクヤの名前は、目の前にいる少女がつけたプレイヤー名であり、彼女自身自分の本当の名前とは違う名前を使うことが、少し恥ずかしいと思っていたりする。だから、せめて仲間内では使わないでほしかった。
『三人きり』の時くらいはいつも通り本名を呼んでもらいたいと願ってた。
「ダメよ油断したら。どこに耳があるのかわからないんだから」
「メイリ」
「リンメイ!」
「リ、リンメイちゃん……」
「それでよし!」
ということで、こちらも仲良し女の子三人組の珍道中。果たして、この六人が顔を合わせる時が来るのか、それはまた別の話。
プレイヤー№ 58 高町なのは(シズク【SHIZUKU】) ≪原作:魔法少女リリカルなのは≫
プレイヤー№ 59 アリサ・バニングス(ローウェル【ROWEL】) ≪原作:魔法少女リリカルなのは≫
プレイヤー№ 60 月村すずか(ノエル【NOEL】) ≪原作:魔法少女リリカルなのは≫
プレイヤー№ 61 ???(サクヤ【SAKUYA】)
プレイヤー№ 62 ???(リンメイ【RINMAY】)
後もう一人、名前は出ていないけどこのプレイヤーも。
プレイヤー№ 63 ???(メーティス【METIS】)
一応サブシナリオは出てくるプレイヤーの本名は掲載していくという方針ですが、今回は、後者三人が顔見せだけで全くかかわってこないため、まだ誰かは内緒(いろいろともろバレだろうが)。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい