SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「ところで、西住みほって名前、どこかで聞き覚えがあるのよねぇ……」
「そうなの?」
和気藹々に話をはじめてた時、ローウェルが突然切り出した。みぽりんの本名である西住みほという名前、どこかで聞いたことがあるのだ。それは、ノエルもまた同じだ。
しかし、シズクはあまりピンと来ていない様子。ということは、アイドルや歌手といったテレビに毎日出ているほどの有名人というわけではない。何かまた別の理由で、突発的に有名になった人間であるということだ。
でも、その理由が思い出せない。一体、なんだっただろうか。喉元まで出ている記憶が出てこない。
悩んでいる二人に、バロッサはやや呆れた感じで言う。
「まぁ、あんなことがあったんだからそりゃ名前くらい知れ渡ってるよね、みぽりん」
「あ、あはは……」
「あんなことって?」
「大洗学園、戦車道、廃校……これで分からないか?」
「?」
「あっ!? そっか!」
「思い出したわ……あの、≪西住流≫の……」
エリーゼの言葉にやはりハテナマークを頭に浮かべるシズクに対して、二人は西住みほという人物のことを思い出したらしい。
≪西住流≫。自分の家の剣の流派のようなものなのだろうかと、シズクは思い浮かべた。ただその前に出てきていた言葉、戦車道というものがよくわからない。
戦車とは、あの戦争で使われている戦車のことではあるまい。だが、それ以外に当てはまるセンシャという言葉が、他には車などを洗う洗車くらいしか思い浮かばないので、彼女の頭はやはり疑問でいっぱいとなる。
「シズクちゃんは、しばらく向こうにいたから知らないよね」
「いい、戦車道っていうのはね……」
と、いうことでシズクはローウェルたちからマーライオンが吐き出す水の如き大量の情報をその身に受ける。
曰く、戦車道とは古来より存在する華道、茶道に並ぶ道の一つで、古くから乙女のたしなみとして存在していた武道の事。礼節のある淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸らしい。
しかし、その人気もここ数年はかげりをみせており、そのためにシズクが知らなかったとしても無理はないと言われた。
彼女、西住みほはその戦車道の二代流派と呼ばれているうちの一つ、西住流の家に生まれてきた少女である。そんな少女が、事情は不明ながら戦車道が根絶していた廃校寸前、否廃艦寸前となっていた大洗学園艦に来て、素人ばかりだった生徒たちを率いて全国大会優勝のまで導いた。
それだけじゃない。文部科学省の屁理屈によって再び廃艦の危機に陥った大洗学園艦。高校生である彼女たちと大学生で集められたチームによる戦いでの勝利を絶対条件としたその戦いを、その大会によって培った友情と人脈、数々の知略によって切り抜け、再び廃艦の危機を救った少女。
それが、大洗学園二年生、西住みほ。人は彼女のことを、軍神と呼ぶ。
「ぐ、軍神だなんてそんな……」
と謙遜をするみぽりんであったが、しかしシズクが耳にした情報だけ聞いてもたしかに軍神として崇められてもおかしくないような活躍をしているような気がする。
それにしても、ちょくちょくこっちの世界に帰ってきていたとは思っていたのだが、そんな出来事があったことを知らないとは、一体自分はどれだけ世間知らずとなってしまったのだろうか。向こうに移住した後にも、こっちの世界の新聞などの情報を送ってもらうことにしようかと思うようになったシズクであった。
「ということは、あなたたち3人も戦車道をしているの?」
「履修しているのは私とエリーゼ。はれかぜは違うんだけど、ちょっとしたみぽりんとの縁があって」
「大洗学園潜航科……ってことになってるみたいです」
「なってるみたい?」
おかしな語尾を使うものだ。どうして自分の所属に対してそんな疑心暗鬼と言ってもいいような言葉遣いをするのだろうか。
なお、バロッサとエリーゼの二人が履修という言葉を使用したことに関しては、そもそも大洗学園では戦車道は部活動のようなものでなく、選択履修科目の一つであったことからそういった表現になっているので、特段問題はない。
「その、信じてもらえないかもしれないけど……」
「?」
一瞬だけ俯いたはれかぜ。しかし、目を一度閉じると、意を結したように顔をあげ、シズクたちの顔をそれぞれに見ながら言う。
「私、本当はこの世界の人間じゃないんです」
「え?」
「……」
「いや、もしかしたら記憶だけ……なのかもしれないんですけど……」
「詳しく聞かせて欲しいの」
「え?」
刹那、シズクの顔つきが変わった。それは、ただのSAOの一般プレイヤーであるシズクという仮面を脱ぎ捨てた、時空管理局のいち職員たる高町なのはに戻った瞬間だった。
そして、まるでその言葉に導かれるようにはれかぜは続ける。
「確かに、私は大洗学園艦に籍を置いてるみたいなんです。でも、そうじゃない。私には、もう一つ……晴風っていう戦艦の艦長としての記憶がある。絶対に、その世界にいたっていう記憶があるんです」
「晴風……」
「か、艦長って……あの艦長、よね?」
「ということは、本当ははれかぜ……岬さんは大人だったってこと?」
「ううん、そうじゃないの。詳しく話すと、長くなるんだけど……」
彼女、プレイヤーネーム≪はれかぜ≫、本名岬明乃の生きてきた≪はず≫の世界。そこは、今彼女たちがいる世界よりも荒れていた。ーーーと言ってもいいのかわからないほどこの世界が混沌としているのだが、それは置いておくとして。
一番の違いは日本の総面積。彼女がいた世界の日本は、地下に存在したメタンハイドレードの影響によってその半分程度を海の底に沈めてしまったそうだ。日本人は、なんとか残った土地と、海の上に作ったフロートと呼ばれる施設によって生活している。
そんな世界において、ある職種が乙女達の憧れの的となった。
それが、ブルーマーメイド。
坂本龍馬の姉、乙女や龍馬の所属していた海援隊の妻子が中心となって作られたそれは、海の治安を守る、この世界にとって海上自衛隊と同じようなものだ。少し違うのは、ブルーマーメイドが国際機関であり、故に所属する人員の国籍もさまざまであるという事。
そんな、ブルーマーメイドを志す婦女子達を育成するために作られたもの、その一つが、明乃が属していたはずの横須賀女子海洋学校であった。
横須賀女子海洋学校では、入学してすぐに、それぞれの艦艇に、それぞれの役職を持って割り当てられる。そして、海洋実習へと向かうのだ。
そして、岬明乃は巡洋艦、晴風の艦長として、そして晴風クラスの委員長として艦に乗り込んだ。
「十五歳で艦長!?」
「高校生で戦艦の艦長なんて……」
「あ、でも巡洋艦は正確に言えば戦艦じゃないし、私の親友のもかちゃんなんて、武蔵の艦長だったし……」
「む、武蔵って、あの武蔵!?」
「私たちでも知ってる……そんな戦艦が学校の授業のために使われるなんて……」
世界が違えば色々と違うものだ。それは、ローウェル達も知っていた。けど、ここまでの世界観の違いがあるなんて、もしも彼女の話が妄想でなかったのならば、自分達の想像をはるかに超える衝撃であるといえよう。
しかし、なのははその顔に驚嘆の色を見せてないようだ。おそらく彼女自身が、異世界というものによく行くからなのだろう。彼女は落ち着いた様子で聞いた。
「それで、あなたはいつこの世界に来たの?」
「えっとね、あれは海洋実習が終わってすぐ……」
文字通り、いろんなことがあった海洋実習が終わった後、彼女達晴風クラスの面々は激戦の末に沈没した晴風をサルベージして生まれ変わった晴風IIを伴って、再び海上へとーーー。
「って!? 学校の授業中に沈没って何があったのよ!?」
「えっと……それはおいおい話すね。それで……」
海上へと戻って二日か、三日かくらい経った頃。そこまでの記憶ははっきりとしている。
けど、それからのことはとても曖昧で、気が付いた時には自分は、大洗学園艦に来ていた。
それからは、自分のことが思い出せないままに他の大洗生と一緒に学園生活を送っていた。とても楽しく、でもどこか引っ掛かりのある毎日。
そんな自分の記憶がハッキリと呼びおこされた出来事、それがあの日。SAOが当選したというメールと、西住みほとの出会いだった。
「それで、思い出したんです。私が、晴風の艦長だったこと、私にはたくさんの家族……友達がいたってことを」
「その……友達はこっちの世界には、いなかったの?」
「……」
その沈黙が答えだった。
この世界が自分がいた世界じゃない。そのことに気がついた彼女は、すぐに自分の本当の学友を探した。彼女は、家族と言っているのがそれだ。
しかし、大洗中くまなく探しても家族の姿はない。彼女の知り合いはただのひとりもいなかったのだ。
もしかしたら、地上にいるのかもしれないと思い、一度学校を休学して心当たりのある横須賀周辺を見て回った。
でも、やっぱり家族はどこにもいなかった。彼女は、ただ一人取り残されてしまっていたのだ。
大洗学園所属の岬明乃という身体の中に、たった一人だけで。
「こんな話、信じてくれないかもしれないけど……」
「そんな、私たちは信じているからね! ね、みぽりん!」
「はい!」
最初は、確かに彼女達も戸惑った。この世界とはまた別の世界から来たという明乃の言葉に。
けど、彼女の話を聞いていると、どうにもそれが作り話であるとは到底思えなくなった。何より、彼女の顔つきがとても辛そうなものに変わっていくのがとても心に響いた。
きっと、彼女は本当のことを言っているに違いない。そう、大洗学園の戦車道履修者たちは思ったそうだ。そして、彼女達もまた、明乃の家族を探すために、知り合いの学園艦にも協力してもらい、ほうほう探し回っていたのだ。
しかし、結果は上記のとおり、誰一人として見つからず、途方に暮れた彼女達。
いつまでたっても進展しない状況に、明乃の元気がなくなってきた頃、みほが提案したもの。それが、SAOであった。
幸い、自分も明乃も抽選には当選していたし、他にも何人もの仲間が当選していた。だから、気晴らしでもいいからプレイしようと。そう、誘ったのである。
もしかしたら、この世界のどこかで明乃の家族も、SAOをプレイしているかもしれない。そんな一縷の望みもあったのかもしれない。明乃たちが、こうして簡単に自分達の素性を明かしたのも、家族を探す何かの手がかりが欲しかったのかもしれない。とはいえ、一万ものプレイヤーがいる中で、そんな手がかりを持ったプレイヤーが簡単に見つかるとは思っていなかったのだが。
「なのは、どう思う?」
「今までの話を聞く限り……岬さんは、次元漂流者なのかもしれないの」
思っていたより簡単に見つかってしまった。拍子抜けするほどに、簡単に、この世界での最初の出会いで、見つかってしまったのだった。
「岬明乃さん」
「え? あ、はい!」
「もう大丈夫だから。安心して、私たちに任せて欲しいの」
「え? それ、どういう意味ですか?」
「……私は、時空管理局所属の魔導師……高町なのは。簡単に言えば、魔法少女……かな?」
「ま……」
「魔法少女!?」
「うん、それで時空管理局っていうのは……」
いや、そんな難しい話の前にまず、魔法少女について説明をもらいたいのだが。そう考えながら彼女たち嵌って行くのであった。
決して戻ることのできないゲーム、その深みへと。
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