SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「時空管理局。この世界に、そんなものがあるなんて……」
「いや、正確にいうと本部があるのはミッドチルダっていう別の世界なんだけど……」
なのはから、彼女が所属している組織の話を聞いたみぽりんたちは、とてもじゃないが信じ切れる話ばかりではない。もしも、自分達が岬明乃という前例を知っていたこと。そして,この世界に仮面ライダーやプリキュアというものがあると知っていたからこそ、ようやく信じることができたものだ。
「でも、すごくない!? SAOで初めて会った人が、明乃の問題を解決できるかもしれないなんて!」
「本当、運だけはいいね、私たち」
「本当、運のいい人間が友達で、私たちも鼻が高いわ」
「あ、アリサちゃん。じゃなくて、ローウェルちゃん」
呆れるように言ったローウェル。しかし、彼女達のいうことも一理ある。この世界にいる一万人ものプレイヤーの中でも当たりも当たり、大当たりともいうべき人間に出会えたはれかぜ。そして、魔導士として世界を二度も救う活躍をした我が親友なのは。そんな二人の豪運には目を見張るものがあるというものだ。
「とにかく、私は次元漂流者っていうやつなんですか?」
「多分。詳しいことは調べてみないとわからないけど、二つのパターンが考えられます」
「二つ?」
「そう」
なのはは、いやなのはのアバターであるシズクは、まず人差し指をはれかぜの目の前で縦に伸ばすと言った。
「一つは、別世界の岬明乃さん自身がこっちの世界に飛ばされてきたパターン」
いわゆる、神隠しと同じ原理だ。突如として開いた時空の穴の中に当該人物が吸い込まれていって、その結果別の世界に落とされてしまうというもの。この場合は、単純に彼女のいた世界を見つけ出すことができれば、送り返すことができるはずだ。まぁ、単純と言っても平行世界は無数に存在しているのだから、そのなかでも特定の世界を見つけるというのはとても難しいことであるのだが。
「もう一つは?」
「……」
そう、問題はもう一つの方だ。実は、シズクは彼女の話を聞いているうちに、多分こっちの方なんじゃないかと勝手に判断していた。しかし、もしもそうだったとしたら、かなり面倒なことになってしまうかもしれない。シズクは、重々しくも、右手第三指を上げながら言った。
「あなたの意識、または記憶が……こっちの世界に来たってこと」
「え?」
これならば、彼女の話に出てきた元々大洗学園の生徒として暮らしていたという事実、徐々に徐々に別世界の記憶を思い出してきたという回想と合致する。しかし、エリーゼは疑問に思った。
「そんなこと、本当にあるのか?」
「そうそう。身体の方じゃなくて、記憶だけが来るなんてこと……」
彼女達の考えている通り、意識や記憶だけが別世界に送られてくるというものはかなり珍しく、シズクも時空管理局の記録を見る限りでは、創設以来数回程度しか発生していない事例であるそうだ。
そんな稀にしかおこらない物が、もしかして目の前にいる女の子に起こっているかもしれない。そう考えた時原因はなんなのか。なのはは考える。
オカルト的な物で考えた時に最初に頭に思い浮かぶのは、前世の記憶が蘇るというもの。つまり、岬明乃という人間は本当はすでに死んでいて、彼女がたまたま岬明乃という容姿も名前も同じ人間に生まれ変わったということ。
そして、あるタイミング。今回はSAOを手に入れたというタイミングで前世の記憶を思い出したということだ。しかし、そんな可能性宇宙を飛ぶ衛星の砂一粒を拾ってくるくらいに近い確率だ。
現実的な物として推測できるものがあるとするならば、やはり、アレであろうか。
「アレ?」
「ロストロギア……」
「ろすと……」
「ろぎあ?」
次元世界は無数に存在する。しかし、もちろんそのなかには進化の果てに滅んでしまった世界、戦争の果てに滅んでしまった世界、原因はそれぞれにあるが消滅してしまった世界もある。
ごく稀に、そんな世界から他の世界に進化しすぎた技術や兵器が流出することがある。
それらの正しく扱う方法がわからない莫大なる力、知識、技術。それらの総称をロストロギアというのだ。つまり、今回岬明乃という少女の近くで、なんらかのロストロギアが発動。その結果、彼女の記憶だけが偶然この世界に元々存在していた岬明乃という少女に入り込んでしまったのではないか。それが、シズクの仮定であった。
「なら、そのロストロギアだった場合はどうなるんですか?」
「ロストロギアを発見して解析するの……岬さんの《意識》だけが来ていたら、きっと帰ることができるはずなの」
「記憶の方は、どうなんだ?」
「……」
鋭い指摘だ。このエリーゼという少女は。
見た目からは想像もできないが、彼女は現実においては学年主席を取るくらいに秀才な女の子。戦車の操縦手としての役割を持っている彼女は、全くの素人だったときに戦車の教習書のようなものをひとめみただけで操縦の仕方をマスターしたほどの知力を持っている。だから、わかったのだろう。彼女の言いたいことが。
「記憶だけがとばされていた場合……岬さんが仲間と再開するのは……不可能に近いの……」
「っ!」
「なにそれ、どういうこと!?」
「記憶は記憶だからか?」
「……」
「麻子、どういうこと?」
エリーゼは、一度シズクに自分の方から説明をしていいのかとアイコンタクトを贈る。
いまさっき出会ったばかりの自分から説明されるよりある程度の親交がある人間から説明された方が良いだろう。シズクは、同意の意味を込めてうなづいた。
「なら、説明させてもらうが……岬」
「え? あ、はい!」
「お前、この世界で暮らした記憶があると言ったな」
「あ、うん……」
「なら、お前のその身体は元々こっちの世界にあった岬明乃の身体ということだ」
「え? う、うん?」
はれかぜは、エリーゼの言っている意味がよくわからない様子だ。しかし、彼女は話を続ける。
「その場合、お前が晴風という巡洋艦の艦長だったという記憶は、おそらくロストロギアというものの力でこっちの世界の岬明乃にダウンロードされた物だという可能性が出てくる」
「……もし、その可能性が正しかったら?」
「その場合、辛い話になるが……お前の帰るべき世界はそもそも存在していない、ということになる」
「え?」
瞬間、はれかぜの顔が硬直したのがわかった。無理もない。自分が帰れるかもしれない。そんな希望を見せられたその直後に、真逆の絶望の言葉を聞かされてしまったのだから。それが、普通の反応であるのだろう。
「ちょっと、それってどういうことよ!」
「もしかして、岬さんの元いた世界が滅んじゃったってこと?」
「そういうことじゃないの」
シズクは、親友達の言葉にそう反応を示してから言った。
「確かに、あなたには別世界の岬明乃さんの記憶があるのかもしれない。でも、それは単に記憶だけ、別世界にはその元々の記憶の持ち主である岬明乃が存在するってことになる」
「……」
「それじゃなに? もし今の状態の明乃が元の世界に帰っても、もう一人の明乃がいるってこと?」
「単純に言えば、そうなるの……」
「そんな……」
その説明を受けて、明乃はショックを受けてしまったようにその場にあった壁にもたれかかった。
自分が、帰る場所。帰るべき場所はないのかもしれない。単に、他の世界の記憶が流れ込んできてしまっただけで、本来の岬明乃は今でも向こうの世界で仲間達と航海を続けているのかもしれない。
もう、仲間達に、家族に会っても意味なんてない。だって、そこには自分が今でもちゃんと存在しているのだから。
自分が帰るということ、それはこの世界から岬明乃という一人の人物を消して、他の世界にいるはずのもう一人の岬明乃の居場所を奪うかもしれない。そう考えると、どうにもすぐに帰りたいという考えには辿り着けないのだ。
だって、この世界の岬明乃がいたのは、元々大洗学園だったのだから。大洗学園での生活が、今の自分の記憶が間借りしている状態の岬明乃であるのだから。だったら、自分は帰るべきではない。そんな自分勝手なこと、この世界に住んでいたはずの岬明乃に申し訳がないから。
でも、だからと言って記憶の中にある世界に未練がないわけではない。当然、自分だって会いたい。会って、たくさん話をしたい。そんな人間が大勢いる世界。
孤児院にいた時からの親友や、晴風に乗ってから出会った家族たち。その一人一人の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。まるで、未練なんて残してはならないと自分自身が制御しているかのように。全くもって女々しすぎる。
かけがえの無い家族たちに会った時、彼女たちはどちらの自分を選ぶのか。そんなこと考えたら、もう彼女は歩みを止めてしまう。答えの見つからない、荒海の中で。
「明乃さん……」
「岬さん……」
周りにいる人間は、誰も彼女に声をかけることができなかった。かける言葉さえ見つからない。傷心の彼女を救える言葉が見つからない。
その中で、一人だけ彼女に向けて歩を進める人間がいた。
「あぁもう、焦ったいわね」
ローウェルだ。
彼女は、はれかぜの両肩に手を置くと言った。
「ほら、顔あげなさいよ! まだ記憶だけが来たとは限らないでしょ?」
「え?」
「この世界の記憶? そんなの、もしかしたら別の世界からこっちの世界に来たときに植え付けられた記憶で、本当は1ヶ月くらいしか過ごしてなかったとか、そんなパターンもあるじゃないの!」
「あ、アリサちゃん……」
「それって、ちょっと強引……」
「う、うるさいわね!」
たしかに、自分でも強引な気がする。でも、記憶がこっちの世界の明乃にダウンロードされた可能性があるのならば、その逆もあるのではないか。そう考えた結果生まれた考察だ。妄想なのかもしれない。なんの慰めにもなってないのかもしれない。でも、それでも希望を失ってはダメだ。そう、彼女ははれかぜに教えようとしていたのかもしれない。
「とにかく、私の親友を信じなさいって! なのはは、今ままで二度も世界を救ってきた英雄よ! なのはだったら、きっとあなたを救ってくれるはずよ!」
「アリサちゃん……」
とんでもない無茶振りだ。でも、彼女は信じている。親友なら、きっとどれほどの絶望に陥った人間でも救ってくれるのだと。いや、救えるはずなのだと。彼女だったら。例えそれが不可能に近くても、必ずやり遂げてくれるはずなのだと。
本当に、自分勝手な女だと自嘲するローウェル。自分自身、彼女にはあまり無茶をしてほしくないと思っているのに、それでもなお彼女に無茶を強いるのだから。でも、こんな不可思議な現象を目の当たりにして、彼女しか頼ることができないというのもまた事実。ならば、彼女に頼るしかしょうがないのだ。
けど、その言葉がはれかぜの心を暖かくしたのも事実なのかもしれない。
「そう、だね。こんな時こそ、前を向かないとね」
はれかぜは顔を上げた。凛々しく、そしていつもどおりの笑顔で。ローウェルのことを見ていた。そして、その次に見たのはシズクであった。
「私も、最後まで諦めません。もう一度、もかちゃんや晴風の皆んなに、会いたいです!」
「……わかりました。私も、最後の最後まで、全力全開で頑張るの!」
「よろしくお願いします!」
岬明乃という人物を巡る物語。高町なのはという英雄が救ってくれるというアリサの妄想。
後から考えると、やっぱり自分は愚か者だったのだろうとアリサは思う。
どうして、この時自分は彼女のことを英雄だなんて呼んでしまったのだろう。どうして、気がついてあげることができなかったのだろう。
彼女も、ただ一人の人間であるということに。
どうして、自分は彼女のことを気にかけているつもりで、いつもいつも無茶ばかりさせてきたのだろう。
そんな後悔が渦巻いて。
全てを、飲み込んでいく。
それは、海の怖さにも似た、恐ろしさだったのかもしれない。
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