SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 このサブシナリオも残り後わずか。今更ながらこのサブシナリオ、細かく刻みすぎた感があるな……。


サブシナリオ なのは編 6話

 その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが崩れた音がした。そして、その何かの上には、友達がいた。私の一番大切な、大切な、大切な、友達。

 とても高くて、遠く、死と限りなく近い場所に行ってしまった友達が、崩れ落ちたそれと一緒に落ちてきたような感覚。

 受け止めなくちゃ。そう思ったのもつかの間、私は彼女が落ちてきてもらいたくないという、矛盾した感情を覚えてしまう。

 そうだ。自分はあの子のことが大好きだ。だから、危険な場所になんていてもらいたくない。だから、助けたかった。近くにいてもらいたかった。彼女を死地から救いたかった。

 でも、こんな形じゃない。

 彼女が落ちてくる場所、それは針山の上。私がいるのも、針山の上。

 私は、彼女をただ、別の死地への道ずれにしただけ。

 ううん、それだけじゃない。友達と一緒に、たくさんの人の影も落ちてくる。ソレらは、友達よりも早く、地面にたどり着き、次々と針山の上に乗っかり、そして刺さっていく。

 私じゃ、助けることができない。でも、きっと友達だったら。助けることができたはずだ。私にない力を持っているあの子であったのなら。

 でも、私は、その力を奪ってしまった。あの子の、翼をもぎ取ってしまった。

 そして、あの子の翼で助けられるはずだった人たちを殺してしまった。

 それでも、私は笑っていられるのか。それでも、私にあの子のことを受け止める資格があるのか。

 私に、あの子と一緒にいる権利はあるのだろうか。

 ない、だろう。

 もうすぐ、あの子が落ちてくる。

 私は、一体どうすればいいのだろう。

 どうしたかったのだろう。

 私は、私は、私は―――。

 

「え……」

 

 ローウェルは、目の前で行われているSAOのチュートリアルの言葉。その全てがまるでおぼろげな夢のように思えてきてしまった。夢は夢でも、決して見たくないようなみじめな悪夢だ。

 光は、彼女たちの身体を最初にログインしてきたコロッセオ風の広場にまでもたらしていた。一時はぐれてしまった友や、大洗の人間たちと合流を果たしたすぐあとに、この耳を疑うようなチュートリアルが始まったのだ。

 ログアウトのボタンが消えてしまったのは、バグではなく仕様である。ゲームをクリアするまで、このゲームの世界から出ることはできない。HPがゼロになった瞬間に、今自分が身体を操っているアバターだけじゃなく、現実世界の自分もまた死んでしまう。そして、実際に二百人弱の人間がすでにゲームの世界からも、現実の世界からもゲームオーバーとなってしまっている。

 

「嘘……」

 

 隣から、あるいは後ろからなのか、聞き覚えのある声色のつぶやきが聞こえてきた瞬間に、ローウェルの背筋が凍った。

 その声は、間違いなく友達のシズクの声だ。そうだ。閉じ込められたのは自分だけじゃない。友達も、そしてこの世界で出会った人たちもみんなが閉じ込められてしまったのだ。そして、ゲームをクリアするまで出られない。

 いつの話だ、それは。普通のRPGのゲームだったら、最終ダンジョンに待ち受けているラスボスを倒しさえすればゲームクリア。しかし、このSAOにおいて、そのラスボスはいったいどこにいるというのか。

 まてよ、そういえば説明書にこんなことが書いてあった。SAO内で自分たちが冒険するのは、アインクラッドは第一層から第百層まで連なる巨大な浮遊城であると。ということは、その第百層を攻略することがゲームクリアの条件。

 だとするのなら、それはいつになるのだ。一週間後、一か月後、半年、一年、あるいは―――。

 

「そんな長い時間、いられるわけないじゃない……」

「アリサちゃん……」

「なのはには、助けなくちゃいけない人たちがいるのに、助けなくちゃいけない世界がたくさんあるのに……こんなところになんていていいわけないじゃないッ……」

「……」

 

 そんなローウェルの、押し殺すかのようにか細い叫びは、群衆のざわめきにかき消されて近くにいる者にしか聞こえなかった。

 そうだ。友達には、助けなくちゃいけない人がいるのだ。目の前にいる岬や、それ以外にも、この世界、この地球、この次元世界にいる人間以外にも多くの世界にいる人たちを助けなければならないのだ。

 彼女じゃないと助けられない人たちがいるのに、こんなところに閉じ込められて、どうするというのだ。

 けど、そんな彼女の悲痛な訴えなんて、知ったこっちゃないという風に、目の前のローブを着た巨人、は告げる。

 アイテムストレージの中にプレゼントが用意されていると。

 狂人が与えるオモチャであるのだ。まともなものが用意されているはずがないのは確実。しかし、好奇心が勝ったのか、彼女は見てしまった。自分の、罪の証を。

 

「て、手鏡?」

 

 そのアイテムをタッチすると、現れたのはガクも取ってもついていないとても簡素な、ガラスのような鏡が一枚。

 その先にいたのは、自分が苦心して作ったアバターだ。しかし、突如として青白い光に包まれた瞬間、鏡の向こうには、今最も見たくない人間の顔が写されていた。

 自分だ。自分の、アリサ・バニングスの顔だ。友達を、そして、友達に救われるはずった人たちを地獄にいざなった罪人の姿だった。

 

『以上で、≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の―――健闘を祈る』

 

 その言葉を最後に、ローブの男。本人が言うにはこのゲームを作った張本人である茅場明彦であるそうなのだが、そのローブの男は溶け出し、崩れていく。

 そして、残されたのはこの状況に困惑したすべての九千人強のプレイヤーだけだった。

 誰かが、どこかで手鏡を落とす音が聞こえた。

 そして、彼女たちの周囲の人間、全員がその茅場明彦がいた場所に向かって叫んだ。

 『ふざけるな』『ここから出せ』『どういうことだ』

 そんな、行き場のない怒り。耳をつんざくような叫び声の中、シズクたちはこの状況下に困惑したままであった。

 

「これって、どういうことなの?」

「茅場明彦の言葉が確かなら、私たちはこのゲームの中に閉じ込められた、ということだな」

「そんなのわかってるから! どうしようみぽりん!?」

「えっと、と、とりあえずここにいるのは危険です! 早く外に出ましょう!」

「賛成!」

 

 ゲームの世界、それもHPがある特定の状況下以外では決して減ることがない≪アンチクリミナルコード有効圏内≫においては、群衆に押しつぶされることによる窒息死などの危険性はないであろう。だが、そうであったとしても居心地が悪いのは間違いないこと。

 今の状況について真正面から受け止めるために、彼女たちがその場から離れることになった。互いに互いを見失わないように、必死だった。今は、ただそれだけが彼女たちにできる唯一の抵抗だった。

 それから、何分走ったことだろう。何度人とぶつかったことだろう。思えば、この時、いや思うことなんて無駄であると言わんばかりに彼女たちは冷静じゃなかった。

 理解することができていなかった。

 だからなのだ、逃げる途中で、一人の女の子が消えてしまっていたことに気が付かなかったのは。

 いや、彼女たちを責めることはできないだろう。この状況において冷静でいられるのは、こんなことも想定してあった人間か、狂気の中に身を投じている人間くらい。だから、ことここで冷静さを欠いているということ、それが彼女たちがまだまともであるということをありありと示していた。

 その後、彼女たちがたどり着いたのは、昼間ログインした直後は人であふれていたはずの大通りの中心部。

 

「ここまでくれば、大丈夫かな……」

「みんな、はぐれてないよね……」

 

 ようやく周りを見る余裕が出てきた少女たちは、仲間たちの顔を見渡した。

 

「あれ?」

 

 そして、そこでようやく気が付いたのだ。

 

「アリサちゃん……は?」

 

 友達の姿が、消え去っていたということに。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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