SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ なのは編 7話

「どうすればいいのよ、私……」

 

 ローウェルは、そう、誰にも聞かれることのない嘆きを口にすると、その場に腕をついて倒れた。

 自分の自重を支えきれなかったのか。それとも、罪の重さに耐えきれなくなったのかは定かではない。しかし、少なくとも今の彼女にはとても背負いきれない罪を抱えてしまった。そう、彼女は考えていたのだ。

 自分は奪ってしまった。親友二人の未来を、歩むはずだった歴史を。自分が、黒く塗りつぶしてしまった。

 とてつもなく大きな力を持った女の子、高町なのは。

 力なんて持っていなくても、その心に誰にも負けない勇気を兼ね備えた女の子、月村すずか。

 対して、自分が持っていたのはなんだ。

 自分勝手で、ただただ周りに虚勢を張っているだけ、そして無意識のうちに誰かを不幸にしている女。それが、私。

 今回だってそうだ。私が、勝手にすずかをSAOに誘った。なのはも、SAOのSの字も知らなかったなのはにも、無理やり休みを取らせてまでこの地獄に引きずり込んだ。

 私が、私が二人の未来をつぶしてしまったのだ。

 いや、二人だけじゃない。

 なのはが、助けるはずだった人たち。助けられるはずだった命たち。その全ても、自分のせいで、自分の、身勝手のせいで。

 

「どうすればいいのよ!!」

 

 ローウェルは、地面をたたいた。しかし、その先に出るのはその床が決して壊れることはないということを指し示す紫色の文字だけ。壊そうとも、壊れるとも思っていなかった。いや、むしろそれで自分の手が壊れてしまえばいいと、そうまで思って振り下ろしたその拳。

 でも、結局は無駄に終わってしまった。

 自分を傷つけて罰を与えることもできないなんて、何とも不条理な世界だ。こんなに、心は痛めているというのに。

 ローウェルは、おもむろに立ち上がった。そうだ、早くここから去らなければ。早く、ここから出なければならない。きっと、二人は追いかけてくるから。きっと、言ってくれるはずだから。自分に、大丈夫だと。アリサちゃんは悪くないよと。

 そうだ、言ってくれないと、自分が本当に壊れてしまうから。だから、彼女たちは言ってくれる。言ってくれると信じている。それで、全て許される。そう、勘違いをすることができる。

 そんなの、あまりにも身勝手すぎるじゃないか。

 なら、どうする。私は、一体どうすればいい。とりあえずローウェルはトボトボと歩き始めた。

 一歩一歩を踏み出す足が、まるで鉄の靴を履いているかのように重い。

 目は、強風を全面で受けているかのようにかすむ。

 そして、手が震えだす。

 どうして、どうしてこんなに恐れているのだと、脳が自分に言っているかのようにその手の動きを止めることはできなかった。

 まるで、自分の身体ではないようだ。いや、本当にこれは自分の身体ではないわけだが。

 無様なものだ。そう、ローウェルは自嘲する。

 自分から、虚勢と友達を取ったら、何も残らないなんて、本当に空っぽの人間だったのだということを実感する。

 そんな自分を満たすための道具として扱われた親友たちに申し訳が立たない。

 そうだ、そんな自分が彼女たちの近くにいてはいけないのだ。

 そうだ。自分には、ここにいる価値がないのだ。

 そうだ、自分には。

 生きる価値なんて、ないのかもしれない。

 

「……」

 

 気が付くと、ローウェルは草原へと出ていた。

 もう自分には何もない。友も、未来も、自分自身でさえも、何もなくなってしまった。自分自身が、全部を壊してしまった。

 自分の身を自由に傷つけることのできない自分に、一体どんな責任の取り方があるのか。考えているうちに、一つの答えが出てしまった。

 もう、これしか償う方法はないのだ。そう、彼女は自分に言い聞かせながら一歩一歩歩いていく。

 間もなく夜になり始めて、モンスターの出現アルゴリズムが変化しようとするこのタイミングで、しかも戦いについて全くと言っていいほどに何も知らない人間が、足を踏み入れては決していけない場所。

 そこに待っているのは間違いなく死という言葉だけだろう。

 でも、仕方ないのだ。それしか、自分が償う方法はないのだから。

 自分を傷つけることもできない、詫びる勇気も持つことができない。そんな臆病な人間にできる最善の策が、自殺。でも、それすらも選べない弱虫だから、誰かに殺されるのを待つ。

 愚かだとは自分でも思っている。でも、もう決心してしまったのだ。この結末を、選んだのだ。

 

「……」

 

 その時、狼型のモンスター、ダイアー・ウルフが出現する。それも、一匹や二匹じゃない。かなりの数だ。

 普通の精神状態のプレイヤーであったのならば、この状況に陥ったのならば一目散にHPの減少が発生しなくなる始まりの町にまで引き返すことだろう。

 しかし、今の彼女は違う。誤った覚悟を持ってしまったローウェルは、出現させたスモールソードをその場に投げ捨てると、まるで自分自身を誇示するかのように両手を広げながら言う。

 

「殺したいなら殺せばいいじゃない……私には、生きる価値なんてないんだから!」

 

 その言葉が合図であったかのように、ダイアー・ウルフは一斉に飛び掛かかる。避ける動きを微塵も見せないローウェルは、ただその様子をまっすぐの目で見ているだけだ。

 そう、これでいいんだ。自己暗示をかけることによって生存欲求にあきらめをつけようとしていた。心の底からの、生きたいと言う願いを消そうとしたのだ。

 そうだ。気が付くべきだったのだ。たとえ、どれだけの罪があったとしても、たとえ、それが許されない者であったとしても、人には生きる権利があるのだと。だから、その生きる権利を必死で主張を繰り返すことを忘れてはならないのだと。わかっていたはずだ。

 けど、それでも、意地っ張りな彼女は自分自身を変えることなんてしない。

 それが、自分が≪殺す≫大勢の命に対する償いなのだと、思っていたから。

 死を懇願するのは、愚かな者のすることだ。だから、自分は死を懇願する権利を持っているのだ。

 愚か者の末路としては、これほどうってつけの場面は存在しないと、そう心の中でほくそえみながら死んでいく。

 それが、彼女の、彼女たちへの、償い。

 

「そんなことないわ!」

「え?」

 

 その時、一閃の光の刃がローウェルの目の前にいたダイアー・ウルフたちを切り裂いた。その攻撃によって吹き飛ぶ何体かの狼たちの前に、そしてローウェルの前に立った女性プレイヤーは、ダイアー・ウルフに剣を向けながら言う。

 ローウェルは、アリサは、その女性のことを知っていた。

 

「生きる価値がないなんてこと、絶対に言わせない。言わせてたまるものですか!」

「み、美由紀さん!?」

 

 高町美由紀。高町なのはの義姉である。

 

「どうして、美由紀さんがここに!?」

「話は後! とりあえず、今は……」

「え!?」

 

 美由紀はローウェルの手を取るとまるで回転するベーゴマのごとき動きを見せて反転。始まりの町の方に向いた。

 

「逃げるわよ!!」

「え、ちょ!!」

 

 ローウェルを連れてそのまま一目散、追いかけてくるダイアー・ウルフには一切目もくれないままに始まりの町に向かうのであった。 

 まだゲームも序盤も序盤であるため、俊敏力も筋力のステータスも一切上がっていない二人。途中で追いつかれそうになることがしばしばあったが、なんとか始まりの町にたどり着くことができると、追いかけていたダイアー・ウルフは、まるで彼女たちに興味がなくなかったかのように散り散りになって草原の向こうへと消えて言った。

 

「ここまでくれば、大丈夫ね……」

 

 と、美由紀は言った。

 そんな、自分よりもやや身長が高い彼女のことを見上げながら、ローウェルは聞いた。

 

「み、美由紀さん……ですよね?」

「えぇ、そう。まぁ、この世界だとフィアッセを名乗っているんだけど」

「どうして、このSAOの中に?」

「……シグナムと一緒にSAOにログインしてて、この事件に巻き込まれちゃった」

「し、シグナムさん……」

 

 そうだ。これもまた自分の罪の一つ。実は、彼女がゲットできたSAOは三つではなく四つ。最後の一個に関しては共通の友人であるフェイトという女の子に渡す手はずとなっていた。

 しかし、現在執務菅という役職に就くための試験勉強で多忙を極めているということで、その最後に残った一個がまた別の友人の手に渡ったのだ。それが、シグナム。彼女もまた、なのはと同じく、時空管理局に所属している職員だ。

 自分はまた、罪を背負い込んでしまった。シグナムがたどるはずだった人生、そして彼女が助けるはずだった多くの命たち。それを破壊した罪。

 

「また、罪が一つ増えちゃった……」

 

 一体自分はどれだけの罪を積み重ねれば気が住むのだろう。どれだけの屍と、破滅を生み出せば救われるのだろう。

 その罪は、ごく普通の中学生の女の子が背負い込むには、あまりにも重すぎる、そして大きすぎる物。

 でも―――。

 

「いいんじゃないかしら、増やしても」

「え?」

 

 ローウェルは、そんな美由紀の、いやフィアッセの言葉に耳を貸した。

 

「人は、生きているだけでたくさんの罪を犯す生き物。大切なのは、その罪から何を学び、そしてどうやって償っていくのか……少なくとも、自分の命を懸け金にする償いなんてもの……償いでもなんでもない、自己満足よ」

「ッ!」

 

 どうやら、彼女には自分がやろうとしていたことがすべて見透かされていたらしい。

 どうやら、フィアッセはあの正式チュートリアル発表の場で自分たちの姿を見つけ、その中で一人だけ明らかに離れようとしている自分を見て、これは何かあると思って追いかけてきてくれたそうだ。

 本当なら、真っ先に心配するべき妹を差し置いて、である。

 

「だったら、私どうすればいいっていうんですか?」

「……」

「自分を傷つけることができない。命でも支払うことができない。そんな罪に、どうやって向き合えっていうんですか?」

「それは、私にはわからない。でも……」

「でも……」

「まずは向き合ってみましょう自分が罪だと思っていることに……」

「え?」

 

 そういったフィアッセの視線が向かった先。そこにいたのは―――。

 

「なの……」

 

 その時、彼女の視界が紫で染め上げられた。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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