SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
住宅街のとあるアパート。普段は閑散としている道の途中、人っ子一人通らないような場所。いつもであればだれも気にも留めないような築数十年のボロアパートの目の前に、多くの野次馬とパトカーで密集していた。
その理由は、このアパートで発生したとある事件。殺人か、はたまた事故かはまだ分からない。しかし、少なくともアパートの一室で人ひとりが亡くなったことは確かなのだ。今は、その現場検証を行っている最中なのである。
と、そこにある一台のワゴン車が、現場を保全するためのバリケードテープの手前で止まった。そこから降りてきたのは、京都府警の科捜研一同だ。マリコ以下四名が、それぞれに機材を持ってバリケードテープへと近づく。
そこには、現場に野次馬などが入らないようにと見張りをしている警察官の姿。彼らにとってマリコたちは有名な人物であったため、身分証明書などの確認は一切せずに、バリケードテープを上げて彼女たちが通る道を作る。
マリコは、警察官に一礼してから急いでアパートの入り口にまでやってきた。と、そこに見覚えのある刑事の姿があった。
「蒲原さん」
「あ、マリコさん」
蒲原勇樹。京都府警捜査一課に所属する刑事である。自分から『科捜研担当』を自称する彼は、マリコたち科捜研の面々が来る前に、いつもいち早く現場に駆け付ける。というより、彼を含めた現場の判断もあってマリコたちが呼ばれるのでそのその逆はあまりないのであるが。
「後はお願いします」
彼は、そのアパートの住人達に聞き込みをしていたようで、その場にいた制服警官にあとの聞き込みを任せると、マリコに近づく。
「蒲原さん、現場は?」
「二階です。土門さんも、もう来てます」
「分かったわ」
そう聞いたマリコは、蒲原と一緒に外に創られている鉄製の階段を駆け上がる。
かなり古く、乗っただけでも壊れてしまいそうにも思える階段だ。おまけに滑りやすく、ここで転落事件が起こっても不思議ではないだろう。
だが、現場はここではない。マリコたちは、蒲原に案内されてアパートの一室に入った。
瞬間である。その異様な匂いが彼女たちを襲ったのは。
「うっ、この臭い……」
「焼死体ですか……」
肉が焼けたような臭いがする。間違いなく焼死の現場の臭いと同じだった。
だが、その場合は部屋全体、いや木造であるためアパート全体が火事になっていてもおかしくはないのだが、やはりその現場の特異性が問題になるのだろう。マリコは、呂太や宇佐美が顔をゆがめるなか、なんてこともないように遺体の目の前にいる一人の刑事に声をかけた。
「土門さん」
「ん、来たか」
彼の名前は土門薫。京都警捜査一課に所属している刑事であり、蒲原の上司に当たる人間であり、十数年間京都府警にて刑事としての職に就き、マリコとともに多くの難事件に当たってきた敏腕刑事だ。犯罪者を決して許さないその姿勢、その信念は時折暴走して暴力的になったりもするが、情状酌量の余地がある犯人に対しては優しく接する姿勢もあったりする情に厚い男でもある。
そんな彼の前に横たわっている死体。その上にかかっているシートを取った瞬間、マリコ以外の面々は、その見るも無残なその死体を見て顔が歪んだ。
「頭を焼かれたらしい」
「ひどい……」
「被害者は、このアパートに一人で住む≪遠藤止≫。大学生です」
マリコは、しゃがむと死体に対して拝む。死者の魂を鎮めるために、そして必ずあなたを殺した犯人を探し出すという決意を死者の魂に表明するために。
「土門さん、被害者はSAOをプレイしていたって聞いたけど」
「あぁ……」
と、言うことは考えられるのはSAOプレイ時に何かの火を消し忘れたことによる失火による焼死。SAOは、ゲームの世界へとプレイヤーの意識を移す擬似体験を可能としているゲーム。ちょっとやそっとの火事が起こったとしても気がつくことは無いまま焼け死ぬことはあるだろう。
とはいえ、死因を断定するにはまだ解剖を待たなければならないのだし、焼死の場合現場の状況があまりにも不可解だ。
「燃えた跡は無いみたいだね」
「と言うか、もし火事が起こったとしたらアパート全体が燃えてますよね?」
「そうね。こんなピンポイントで頭だけが焼けるなんて、一体……」
そう、部屋を見渡すと、あったのはアニメのフィギュアやゲームソフト。それから、都市伝説系の話が掲載されている雑誌や大量の新聞紙の束。
これだけ燃えやすい要素がありながら、火元と断定できるコゲはなく、また部屋で何かが燃えた形跡なんてない。まるで頭だけに火事が起こったかの様。
「第一発見者である妹さんの話によると、来訪した際、被害者はゲームをプレイしている途中で、ナーヴギアを取ろうとした瞬間、急に熱くなったそうです」
曰く、遠藤止は生活能力が皆無で、部屋は散らかし放題。その為月に一度は妹さんが被害者の部屋に来て掃除をしていたらしい。
今日も、その掃除の日だった。本来はもう少し後に来訪する予定だったのだが、用事が早く済んだので、予定の1時間早くアパートにきたのだ。だが、この部屋に入ろうとした瞬間からおかしなことに気がつく。
部屋の鍵が開いていたのだ。何時もは鍵どころかチェーンまでかけるほど用心していた人間が今日に限って不用心だったことに不信感を抱いた彼女は、慎重に部屋の中に入っていった。
そして、彼女がみたのが、今日サービス開始となったゲーム、ソードアート・オンラインをプレイ中の被害者の姿だった。
その時に生きていたことはちゃんと確認した。
もしかして中で殺されているのではとも思っていた彼女にとってその光景は拍子抜けもいいところだったが、しかし掃除をする為に一度彼を起こそうと考えた。
本当は勝手に掃除をしても良かったのだが、彼は無断で部屋の中を荒らされるのを嫌っている。その為、一言声を掛けなければならなかったのだ。
しかし、いくらゆすっても声を掛けても反応はない。まるで魂がそこに無いかの様に微動だにしない。
妹は、ならばと、彼の頭からナーヴギアを外すと言う行為に出た。
いくらゲームをプレイ中でも、コントローラーが頭から離れればゲームをやめざるを得ないだろう。そう考えたのだ。
だが、それが過ちだった事に気がついた時にはもう遅かった。ヘッドギアの彼の顎を固定するベルトの金具を外そうと力を入れた瞬間であった。
ナーヴギアから聞いたこともない様なモーター音。いや、排気音とでも言うのだろうか。ともかく、とてつもなく大きな稼働音がしたと思ったら、とてつもない熱を発生し始めた。
驚いた彼女は後退り、後はその様子を見ているしかなった。兄の頭が焼かれると言う異常現象の一部始終を。
「どういう事なんでしょう?」
蒲原からの報告を受けた科捜研の面々。彼女の経験した異常体験から察するに熱を産生したのはナーヴギアに間違いないのだろう。だが、なぜただのゲーム機からそんな熱が発生したのか。
直ぐそばに証拠品として並べられたナーヴギアを手に取った宇佐美は、驚愕と困惑、そして恐怖の表情を見せてつぶやいた。
「まさか……」
「どうしたの、宇佐美さん?」
「マリコさん、これを見てください」
と、彼が急いでマリコに手渡したナーヴギア、と呼ばれたもの。
これが、先程呂太たちが話題にしていたもの、初めて見た。
成程、バイクのヘルメットの様な形状だ。これなら、頭をすっぽりと覆い被すのに適した形だろう。
観察してみると、そのナーヴギアには焦げた痕跡、熱によって破損した痕が広範囲に及んでいた。そんなごく当たり前に見える様な痕跡からも、分かることは沢山ある。
「破損が激しいのは、内側ね。と、言うことは熱は内部から……」
「そう言う事になります」
もしも外部からの熱によって焼けたとするのなら、焦げや破損は主に外側に多くなるはず。しかし、そのナーヴギアはどちらかといえば内側。
緩衝材として入れていたはずのクッションも焼け、内部の基盤が顕になる程に溶けた表面の素材。詳しく鑑定しなければならないが、十中八九内側からの熱で壊れたと判断して間違いない様だ。
「だが、何故密閉のはずのナーヴギアの内側が焼けてるんだ?」
「もしかすると、ナーヴギアが誤作動を起こしたのかも知れません」
「え?」
周囲の者たちは、さらりと言った宇佐美の言葉に驚きながらも、さらにつづく宇佐美の言葉に耳を傾ける。
「先程、ナーヴギアは延髄のあたりで脳から発せられる信号を遮断すると言いましたが、その際逆にナーヴギアの信号素子がゲーム内の五感情報をプレイヤーに流してるんです」
「信号素子?」
「えぇ、そしてその信号素子は……容易にマイクロウェーブに置き換えることができるんです」
「それって! 電子レンジと同じ状態にできるってこと!?」
その宇佐美の言葉に、ある物を思い出した呂太。そう、どの家庭にも一つは置いてある電子レンジの原理、それを利用すれば今のこの状況を作り出すなんて容易なのだ。
「はい。恐らく、何らかの要因でナーヴギアが電子レンジ化し……その熱に焼かれて被害者は焼死したのかと……」
「そ、そんな事が起こるんですか!?」
「理論上では……」
この宇佐美の推論に驚愕する科捜研の面々と二人の刑事。まさか、ただのゲーム機だと思っていた物が、そんな危険性を孕んだゲームだったとは思ってもみなかった。いや、実際にその危険性を目の当たりにした今それを信じるしかない。
ゲーム機の不具合で死人が出た。この事実を重く受け止めた彼女たち。果たして次に取ることは決まっていた。
「土門さん……」
「あぁ、今すぐナーヴギアを回収する必要があるな」
マリコの言葉にすぐさまそう返答した土門は、すぐに直属の上司である刑事部長の藤倉へと連絡を取るためにその場から離れた。
そう、こんな不具合ですぐに人を殺せてしまうゲーム機をのさぼらせているわけにはいかない。今のところの被害者は、目の前にいる人物のみであるが、今後も同じようなことがないとも限らない。すぐに、全国で販売中のナーヴギア、並びに購入者から回収をしなければならないのだ。
「注目されていたゲームでこんな事が起こるなんて……」
と、呂太が言う。まさかSAOサービス開始直後というタイミングでこのような不具合が発覚するなんて、ゲームを開発、販売していた会社にとっても想定外の事だ。恐らく、この影響はゲーム会社のみにとどまらず、業界全体に大打撃を与えることだろう。
ナーヴギアは、ただSAOをプレイするためだけのゲーム機ではない。次世代のVRゲームというジャンルの切り込み隊長的な役割を持ったゲーム機だ。そのゲーム機でプレイできるゲームの中で最も注目されていたゲームのサービス開始日に水を差された形になって、業界全体が落ち込む可能性は十分に考えられる。
「しかし、変ですね……」
「変?」
「SAOと違ってナーヴギアが発売されたのはかなり前です。その時から今の今まで誤作動を起こさなかったなんて……」
不幸中の幸い。という言葉で片付けることはできないだろう。確かに妙だ。ナーヴギアは、SAO発売以前よりももっと前からにほんじゅうにはんばいされていたゲーム機。SAO以前にも知育ものやパズルゲームなど、SAOには遠く及ばない物のゲームとして遊べるものがいくつも販売されていた。
その間、不具合があったという報告はない。SAOがサービス開始となってすぐ、この惨事が起こったのだ。これは何か関連があるのか。もう少しナーヴギアを調べてみる必要があるだろう。マリコは、焼けただれたゲーム機を科捜研に持って返り、徹底的に調査することを指示し、さらなる情報を集めるために遺体をすぐ解剖に回すことを蒲原に進言した。
その時である。マリコのスマホが鳴った。相手は、科捜研にて留守番をしている日野である。
「榊です。日野所長、どうしたんです?」
「マリコ君大変だ!」
ひどく慌てた様子の日野。一体、何があったというのか、マリコはその後に続く彼の言葉を一言一句聞き逃さないように耳を傾ける。
「……ッ!」
だが、聞こえてきたのは到底信じられないような事。今、自分たちが臨場しているこの事件にも大いに関わりのある。いや、この場所が始まりともいえる事件のその詳細だった。
マリコは、日野からの連絡を受けると、ショックのあまり目を見開き、スマホを持つ手を胸のところまで脱力させる。
「マリコさん、どうしたんです?」
その、尋常じゃない様子を見た亜美が、すぐさまマリコに声をかける。
マリコは、数秒の間反応を見せることをなかったが、目を固く閉じ、一度深呼吸をすると自分の方をみる科捜研の面々の姿を見渡して言った。
「この事件、たんなるゲーム機の不具合なんかじゃない」
「不具合じゃない?」
「えぇ……」
「日野所長は何て?」
その、宇佐美の疑問を聞いたマリコは、再びひどい顔つきとなっている死体を見ながら言った。
「……監禁、そして……世界で初めての、ゲームを使ったテロ……」
これが、世界で初めてナーヴギアによる殺人の犠牲者と、その臨場をした捜査官たちの始まり。
ここから、彼彼女たちはゲームテロという未知の事件へと足を踏み入れることになるのだった。
感想で、第一章完結おめでとうございますと多くの方々から労われ感謝しております。第二章がいつになるか、どうなるのかは分かりませんが、少しづつ少しづつ、心を治しながらがんばります。
そして、報告があります。
実は現在第三層以降のことについて考えてるのですが……。
現在の私の精神状態とそしてマンネリを考慮した結果路線変更をしたいと思います。
読者様へは、第百層まで全部やると言ってたのにこんなことになってすみません。ですが、このままだと原作のコピーにしかならないわけで、それなら多分原作を読んだ方が面白いんじゃないかと気付きまして。
なので、第三層〜第七層を飛ばして、こちらで色々と弄ることのできる第八層以降を書いた方が良いと考えた結果この決断となりました。
読者の皆さま、ご理解の程よろしくお願いします。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい