SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 今回は久々の外の世界の話となります。


舞台、追放

 時に、世界が揺らぐほどのとんでもない事件という物は誰も知らないうちに進行する物だ。知らない理由というのは多くある。

 例えば、それが世間の目に触れないところで起こった事件。まだ誰も知らない、いや知ることもなく終わってしまった殺人事件などはそれに分類される物だ。

 後は、世間にあまり興味のない人間。そんな人間いるのかと疑問に思うのだが、時に秀才と呼ばれる人間は世間の俗事に興味のない人間がいるからもしかしたらそんな酔狂な人間もいるのかもしれない。

 他に考えられることはないだろか。他に。そう、例えばこういうのはどうだろうか。

 友達との楽しい時間に気を取られて、そんな事件が起こっていること等露も知らないという事。

 彼女たち、聖翔音楽学学園99期生の『八』人は、そんな日常の中で起こった事件の事なんてまだ知らないでいた。

 

「久々の外出も、案外楽しいわね」

「ほんまに、こんなに大勢ででかけるんわ、前もありしませんでしたわ」

 

 彼女たちは、現在新宿のど真ん中で日用品や普段着のショッピングを楽しんでいた。普段は舞台少女としての訓練に励む彼女たちは、寮住まいであり、外出することも容易ではない。だが、今回は学校が休みである事もあり、ちゃんと学院に外出許可を願い出てこうして一人を除いた全員で都会に足を踏み入れているのだ。

 そして、香子の言う通りこうして彼女たち全員が一緒に学園の外に出てくるというのは、≪前≫もなかったことだ。

 もちろん、その記憶があるからと言って慢心しているわけではない。ギンギンに張り詰めた糸が、ちょっとした衝撃ですぐに切れてしまうのと同じように、たまには息抜きしなければ身も心も持たない。そう、前回の時に学んだから。

 当然、この後寮に帰ったらまたすぐに次の舞台の、スタァライトの練習をいつもよりもする予定。

 だが、今ここにいるべきであるもう一人の少女は、その帰るべき寮の中で息抜きしている真っ最中であるのだが。

 

「でも、ひかりちゃんも来てくれればもっとたのしかったのになぁ……」

「仕方ないわよ。≪あんな物≫が届いたんじゃ」

 

 そう、神楽ひかりだ。彼女は、こうして他の仲間たちがショッピングをしている間にも、一人寮に残ってある事をしているのだ。そう、それこそがSAOである。

 しかし、奇妙なことがある。彼女たちは舞台に人生をかける少女。当然ゲームなんてものにうつつを抜かしていていいはずがない。だから、彼女たちは誰一人としてSAOの購入の抽選にも、また応募もしなかったはずなのだ。それなのに、何故か彼女、神楽ひかり宛てにどこからかSAOとナーブギア本体が送られてきた。

 差出人不明で、とても高額なその二つが無償で送られてきたという事に疑問符を持った少女たちだが、前述したとおり、自分たちは舞台少女。舞台に生き、舞台にすべてをささげる覚悟をした。そんな自分たちが舞台とは関係のないゲームなんて、する理由はない。

 なんて建前はともかくとして、実は少しだけ嬉しかったらしいひかりは、届いたものはしょうがないとどこかハキハキとした言葉で言いながら休日の一、二時間くらいならいだろうという事で、SAOをプレイすることになった。他の八人は、少し興味があったりなかったりと言った物が半々だったらしい。

 

「華恋ちゃんも興味あったんじゃないの?」

「うん。でも、舞台少女愛城華恋はまだまだ進化中……皆に追いつけ追い越せで、今は練習あるのみ!」

 

 と、華恋は周りに多くの人間がいる中で大声をあげて少しだけ恥ずかしくなる。特に、彼女の声は流石舞台の道を進んでいるだけあってかなり遠くまで響く物であったので、やや遠くの人間にも聞こえていたらしい。

 恐らくいつもの、というより少し前までの華恋であったのならば、興味津々でひかりの次位にプレイしたいと言っていただろう。だが、今の彼女は違う。

 この前、ひかりが前回の記憶を思い出した夜。彼女もまた真矢から前回の舞台でどのようなことがあったのかを聞いた。最初は信じることが出来なかった。しかし自分自身舞台少女として活動し、キリンのオーディションという普通だったら考えられないような物にも参加するという不可思議現象を経験しているが故、少しだけ時間を置いて、その事を信じられるようになった。

 そして、痛感したのは仲間たちとの差。当たり前だが、彼女たちは自分よりも一年、あるいは人間以上も舞台の道を生きた記憶がある。その分、彼女と他の八人との実力差という物が大きく広がっているのだ。

 自分以上にはっきりとした言葉で台詞を述べる少女たち。咲いた花を膨らませるが如く華麗な動きに、躍動感。どれをとっても自分をはるかに凌駕する演技をする仲間たちに、自分は高さを知ることのない壁を目の前にしたような気分となった。

 負けたくない。自分は、彼女たちに、仲間たちに負けたくない。だから、自分は彼女たち以上に頑張る必要があるのだ。だから、今はゲームなんてものにうつつを抜かしている場合じゃない

 

「といって外出届を出しているのも華恋ちゃんなのでした」

「あ、あはは……」

 

 まぁ、少しばかりの息抜きぐらいはしなければやっていられないという物だ。華恋はそうして一歩ずつ一歩ずつ仲間たちの背中を追う。そしていつの日にかまた彼女たちと並び、そして追い抜くことができるようになる。それが、今の彼女。舞台少女愛城華恋の目標であるのだ。

 

「でも、SAOって何なのかしら?」

「うん。前の時にはなかった。前の時にも、その前にも……」

 

 と、大場ななはいう。

 彼女、大場ななは、かなり特殊な立ち位置を経験してきた少女。そして、過去の記憶を持った他の七人とは違い、その過去よりももっと昔、正確に言えばもっと前の同じ時間の記憶を持っている少女だ。

 選ばれた舞台少女だけが参加できるオーディション。そのオーディションに合格できたものは、自身が望むどんな舞台にも立つことができるトップスタァの称号が与えられる。

 彼女ななは、そのオーディションを何度も勝ち抜き、そして手に入れたトップスタァの称号を。そして、選んだ。彼女の大切な思い出の一つ。去年の、一回目のスタァライトを。何度もループを繰り返した。何度も何度も何度も。同じ舞台を何度も、何度も、何度も。

 何度も、何度も。でも、前回のオーディションに、ある特異点が現れた。それが、神楽ひかり。

 その突如現れた、≪飛び入り参加≫といってもおかしくない少女によって、オーディションは徐々に変化していき、そして、ひかりが現れたことによって大きく変わったもう一つの特異点。愛城華恋。

 彼女は敗北した。過去に止まろうとしていた彼女は、前を見続け、進化していく少女に敗北を喫した。

 そして彼女は選んだ。いや、前を向くことを決めた。自分の知らない、新しいその先の未来に。

 そんな彼女も、知らない。SAOなんて物、そしてナーヴギアなんて物。今までのループには存在しなかった。いや、それどころか、それ以外の、例えば仮面ライダーやスーパー戦隊なんてものも、プリキュアなんてものも知らない。そして、自分以外にも前の舞台の記憶を持ったまま次の舞台にたどり着いた仲間たち。

 この変化は一体何なのか。彼女は、底のしれない不安を抱えていた。

 

「前の舞台にもない……か」

 

 と、華恋がつぶやいた。そもそも前の舞台という物を知らない自分からしたら果てのない問答だ。でも関係ない。自分はただ自分の舞台少女としての道を貫くのみ。そして進化していくのみ。そして、数か月後に待つあのスタァライトの舞台に、ひかりと―――。

 

「おい、あれ見ろよ……」

「え?」

 

 夢という物は、閉ざされてしまうのは突然だ。

 やっと目の前に来たというのに、やっとつかんだというのに、本当に、あと少しだったのに。何事も無かったら、彼女たちは夢をかなえることが出来たというのに。これもまた、舞台仕掛けの神の悪戯か。それとも、また別の神の導きか。

 それは、今の彼女たちにも分からないことだった。

 

「え……」

「嘘、でしょッ!」

「Qu'est-ce pue c'est?(なにそれ?)」

 

 ビルに映された巨大モニター。そこでは、今まさに発生したSAO事件の第一報を伝える速報が何度も何度も流されているところだった。

 曰く、SAOはログアウト不可となったと。開発者の茅場晶彦が言うには、第百層を踏破するまでプレイヤーがSAOから解放されることはないと。そして、ゲームオーバー=死であり、すでに百人以上の人間が死亡しているとも。

 そして、彼女たちは皆知っていた。SAOとは、今現在進行中でひかりがプレイしているゲームであるという事を。

 

「ッ!」

「あ、華恋ちゃん!」

 

 華恋は走った。人込みの中をかき分けて、買ったいくつもの服の入った袋をその場に投げ捨てて。そんなことしてももう遅いというのに。

 彼女は電話をかけた。彼女に、ひかりの声を聴きたかった。

 でも、彼女は応答しない。

 

「お願い出て、ひかりちゃん!」

 

 まだプレイしていないかもしれない。そんな一筋の希望を手繰り寄せたくて、何度もメッセージを送った。

 でも、反応しない。

 それも当然だ。既に彼女の意識はこの舞台を離れた外の世界。舞台裏の何人も足を踏み入れることのできない禁断の世界に行ってしまっているのだから。

 ここは舞台ではないはずなのに、ここは舞台の外のはずなのに。どうして、走っても走っても、貴方の元にたどり着かない。

 当然だ。ここは、愛城華恋という女のが主役を務める舞台。

 一人の少女が、スタァライトという舞台を親友と共に演じることを夢見たことから始まった舞台。

 でも、彼女がいるのはもう一つの舞台。

 デスゲームという人間の全てを狂わせる存在してはならない舞台。

 彼女はその舞台への出演権を持っていない。チケットも持っていない。彼女は、その舞台を劇場の外から眺めているしかないのだ。

 暗く冷たい、街灯一つない街の中にポツンと一つだけある劇場。彼女は、それをどんな公演が行われているのかを、知らず、聞くこともできず、ただただ外観だけを眺めているしかできないのだ。

 それが、今の彼女に与えられた役どころ。

 それが、彼女に与えられた悲劇のヒロインとしての台詞。

 手を伸ばしても、掴むことのできない暗闇に沈んでいった女の子を思いながらそれでもあきらめずに追いかける少女。

 

「ひかりちゃん!!!」

 

 華恋は叫ぶ。舞台の上にはいないはずの女の子の名前を。届かないのに、届くはずがないのに。愚かにも叫び続ける。

 一人ぼっちの劇場で、ただただ彼女の事を呼び続ける華恋の姿。

 その姿に呼応するように、周囲から車の音がクラクションが鳴り響き渡る。

 悲劇を嘆くオーケストラにも見間違うその音を耳にしながら。

 彼女は、一人取り残されてしまったのである。




 次回、原作キャラも出てくる予定。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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