SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 一旦ここでストック放出。この先の話作りに入ります。みなさま、次の投稿まで首を長くしてお待ちになってください。
 1ヶ月連続投稿、その最後を飾るのは彼の話しかないでしょ。


始まりの日

 聖都大学附属病院。その地下に秘密裏に建設された対バグスターウイルス・ゲーム病専門の医療施設。《電脳救命センター》、通称CR。現在は公にされている施設ではあるが、そこに入ることができる人間は限られている。

 バグスターウイルスに感染し、ゲーム病を患ってしまった患者たち。そして。ゲーム病の治療をすることができるドクター、仮面ライダーに変身できる者とその協力者たち。といった具合にだ。

 そして、そのCRに一つだけ存在しているベッドの上には、一人の男の子の姿があった。

 

「完全に出遅れちまったな……」

 

 先日、バグスターウイルスに感染してエグゼイドと戦闘を行った桐ケ谷和人である。

 今彼がいる部屋は完全な個室であり、彼が使用しているベッドは、最先端の技術を使用されたものとなっている。頭側にある画面には常に患者のバイタルサインが表示されており、健康チェックが容易にできるようになっており、備え付けの機械によって身体をスキャンすることによってバグスターウイルスが潜伏していないかを検査することができる。

 本当なら、すでにこの時間SAOをプレイしているはずだった時間だ。一ゲーマーとしてはゲームのサービス開始時間にプレイすることができなかったなんて、汚点の一つとなりうる大問題である。

 が、しかしこと今回に関しては仕方がないだろう。何せ、自分はかつてこの日本で猛威を振るったゲーム病を患ってしまったのだから。とはいえ、やはり後悔が残ってしまう。

 

「早くゲームがしたいって顔をしてるよ」

「え?」

 

 そんな彼の元にやってきた一人の女性。看護師で、自分の身体が仮面ライダーと戦った時にすぐそばにいた、仮野明日那だ。

 

「わかっちゃいますか?」

「もちろん。私もゲームたっくさんするし、ゲームを楽しんでいるみんなを見るのが好きなの」

「へぇ……」

 

 意外だ、看護師なんてとても大変な仕事をしている人が、自分と同じゲーマーだなんて。いや、今の時代ゲーマーに限らないオタクという文化は、すでに男女の境を超えて広がっているということを和人は知っていた。

 それに、医師で仮面ライダー、そして自分のことを助けてくれた宝生永夢先生もまたゲーマーだったではないか。

 彼とは特に意気投合して、わずかな期間だけだったけどゲーム談議に花が咲いて、もしも自分の同世代だったらこれほどいて楽しいゲーム友達はいないだろうと思えるほどに好印象の人間だったことを、和人は覚えていた。

 その永夢もまた、和人と同じくSAOをプレイしようとしていた人間。最初は、自分に忍びないということもあってかプレイするのを躊躇していたようだが、自分が元βテスターで、すでに幾分かはプレイした経験があることを引き合いに出して説得した結果、サービス開始直後にプレイすることとなった。

 そんな自分に、詳細な検査結果が出ればすぐにゲームをプレイできるように手配をしてくれたのも、永夢先生だ。ゲームのカセットもナーブギアもパソコンも家から持ってきてくれて、インターネット環境も完備、これ以上とはない環境でゲームをプレイすることができそうだ。

 最初はバグスターウイルスに感染してしまって自分はなんて不幸な人間なんだろうかと思ってしまっていたが、ことここに至ってここまでのおもてなしをされてゲームをプレイすることができるのであれば、むしろ感染してよかったとも思えてしまう。もちろん、本当にそんなことを思ってしまうとゲーム病で身体が消滅してしまった人たちに申し訳がないのだが。しかし、こうも楽観的になれるのもすべては、永夢先生が自分の命を救ってくれたからこそ。

 和人は、永夢に感謝してもしきれなかった。

 

「もうすぐ検査結果が出るから、待ってて」

「入るぞ」

「あ、飛彩!」

 

 その時、一人の男性医師が部屋に入ってきた。

 鏡飛彩先生。入院中に様々な雑誌を見てみたのだが、どうやら天才外科医という肩書を持っているらしく、その腕はこの病院だけではなく日本でも随一で絶対に失敗しないドクターなのだとか。

 そんな彼もまた、このCRに所属するドクター、つまり永夢先生と同じ仮面ライダーだ。

 飛彩は、一つの資料を持ちながら和人の腋に近づくと言った。

 

「検査結果が出た。やはりどこにも異常はない。バグスターウイルスは根治されたようだ」

「それじゃ……」

「あぁ、ゲームをしてもいいぞ」

「よし!」

 

 それは、彼が最も聞きたかった言葉だった。二重の意味でのうれしさだ。

 まず、二人の医師のお墨付きでゲーム病が完治したということ。

 もう一つは、当然SAOをプレイできる喜びだ。

 和人は、待ってましたと言わんばかりにすぐ横に置いてあったナーブギアを頭にかぶる。

 

「ただ、十分に注意しろ。検査結果には出ないだけでまだ身体の中に残っている可能性があるからな」

「はい!」

「よかったね、和人君。永夢がもうプレイしているはずだから、向こうであったらよろしくね」

「はい!」

 

 あとは手慣れたもの。βテストの際に何回も何回も繰り返した動作を今再び再現する。

 パソコンの電源、ナーブギアの電源、そしてナーブギアの留め具もよし。これで、プレイする準備はばっちりだ。

 いよいよだ。いよいよ自分は再びあの世界へと足を踏み入れることができる。自分の心を極限にまで高ぶらせ、向上心の虜にさせたあの大地を再び見る。

 血肉を湧きあがらせ、脳を沸騰させるあの非現実的な世界。

 ただいるだけで自分じゃない自分になったかのような感覚、完全にその世界の住人となった気分を味わえる神秘的で、猟奇的な世界。

 そんな、自分のゲーム人生を一変させたあの世界にもう一度いける。これが、楽しみでないわけがない

 和人が、別人の《キリト》となろうとした。

 

「それじゃ、行ってきます! リンク……」

「ちょ、ちょっと待った!!」

 

 その、瞬間である。悪魔の言葉を遮ったのはひどく慌てた様子で現れた飛彩から随分と歳の離れた壮年の男性だった。

 

「親父?」

「はぁ、はぁ、よ、よかった。間に合ったぁ」

 

 彼の名前は鏡灰馬。飛彩の父親であり、この病院の院長をしている。つまり、彼もまた医者であるのだが、仮面ライダーではない。しかし、院長としての責任があるためこのCRへの出入りを許可されているのだ。

 

「一体、どうしたんですか?」

 

 明日那は、血相を変えた彼の駆け寄る。このように慌てふためく姿というのは、彼にとっては日常茶飯事の姿であると言える。しかし、事今回に至ってはいつもよりも深刻そうだ。

 途切れ途切れの呼吸を整えながらも言う。

 

「か、和人君。SAOをプレイしちゃいけないッ」

「プレイしちゃいけないって……どうして?」

「何かあったのか? 親父」

 

 やはり自分達が危惧したように、SAOに何か不測の事態が起こったのか。CR全体に重苦しい空気が漂う。

 

「実は……」

 

 そして、灰馬は語る。

 

「え……」

 

 最初に和人に浮かんだ感情は、困惑であった。

 当然だ。訳がわからない。あの、ゲームが。自分がプレイし、心を鷲掴みにされたあのゲームが≪デスゲーム≫と化した。

 自分が憧れた茅場晶彦が、犯罪者として名乗り出た。

 和人にとっては、どれもこれもがとても信じられないような話で、ナーヴギアを外す手も、どこか力が無いように見える。

 

「そんな、それじゃ永夢は!?」

 

 明日那は、驚愕すると共に、ゲームをプレイする予定になっていた永夢の事を思い出す。彼はゲーマーの中のゲーマーだ。サービス開始直後からプレイしていたとしてもおかしくは、いや彼は絶対にプレイしている。そして巻き込まれている。そんな確信にも似たものを明日那は持っていた。

 

「まだプレイしていないことを願って電話はかけたんだが……」

「……私、行ってきます!」

 

 明日那は居ても立っても居られず、すぐに永夢の元に向かう事を宣言すると、その場で回転する。

 

「コスチュームチェンジィ!」

 

 光と数多くの音符のエフェクトが彼女の身体を包み込み、その身体を徐々にではあるが変えていく。

 数秒後、そこに立っていたのは看護師の仮野明日那では無い、和人のよく知る≪ゲームキャラ≫であった。

 

「ポ、ポッピーピポパポ!?」

 

 ポッピーピポパポ、その若干言うのが難しそうな名称は、とあるゲームのキャラクターの名前だ。ピンクのショーヘアーに、黄色を基調としたカラフルな装飾の服。それらの特徴が目の前の人物にそっくりなのだ。

 

「ポッピーピポパポは俺たちの仲間で、ドレミファビートのバグスターだ」

「ドレミファビート? それにバクスターって……」

「バクスターって言っても、私はいいバグスターだよ」

 

 バグスターには人間に害をもたらすような存在とは別に、友好的なバクスターというのも時に出現する。もちろん感染すればゲーム病を発症するが、そのゲームのクリア条件を達成すればバクスターを倒さずともゲーム病を治せる。

 ポッピーピポパポは、いいバグスターと言ってもいい程に人類に友好的、協力的である。そう説明された和人を尻目に、飛彩は言う。

 

「ポッピーピポパポ、もし小児科医がゲームをプレイした場合は何もせずに戻ってこい」

「了か~い!」

 

 ナーヴギアを外すだけでも、プレイヤーの命に危険が及ぶ。そんな事を言われれば外したくても外すまい。本当に永夢の様子を見てくるだけであると約束して、ポッピーピポパポは光の粒子となって消失した。これはバグスター特有の移動方法で、普通の移動手段の何倍もの速さで目的地へと辿り着くことができるのだ。

 

「それにしても、とんでもないことになった……」

「そうだな。この文面から察するに、すぐこの病院にも協力の要請が来るだろう」

 

 父親からタブレットを受け取った飛彩は茅場晶彦の犯行声明を見ながらそう言った。文章の中で茅場晶彦は勝手に病院や施設が自分に協力するという事を信じて疑わないような書き方をしている。何とも自分勝手なことか。病院によっては入院したくても病床数が足りずに入院を断れるケースだってあるというのに、その数少ない病床をSAOプレイヤーに渡すように脅迫するとは。

 だが、昨今の事情により病床数を増やしていたことが功を奏した。この聖都大学附属病院の病床数は何かあった時のためにすぐ使用できる病床が十以上もあった。恐らく、衛生省などの関連機関からすぐに協力の要請が来る。そう、飛彩が父親に伝えると、灰馬はすぐにプレイヤーを搬送できるように準備を整えるといってCRから出て行った。

 

「……」

 

 そんな会話を交わしている横で、キリトはベッドでほっ、と息をなでおろしていた。

 

「運がよかったな……もしバグスターウイルスに感染していなかったら今頃は……」

「は、はい……」

 

 そう、もしも自分がゲーム病になっていなかったら、今頃は我先にとゲームをプレイして、SAOの世界に閉じ込められていたことであろう。それを考えれば、ゲーム病になって自分は幸運だった。

 そう、自分は、運が、よかった。はずだ。

 それなのになんだ。この胸に飛来するもやもやとした黒い気持ちは。まるで、何か自分の知らないところで何かが動き出している。運命の歯車が悪い方向に動き始めている。そんな感じがする。

 自分自身とても抽象的で、要領の得ない不可解な感情であるという事は理解している。しかし、そうとしか言いようがないのだ。言いようがないほどの嫌な予感なのだ。

 一体なんだ。何なのだ、この気持ちは。

 その時、飛彩のPHSが鳴った。こんな地下深くであるというのに電波が届くようにしてあるのだろうか。

 

「どうした? ……そうか、わかった。桐ケ谷和人」

「は、はい!」

 

 飛彩は、和人の手からナーヴギアを取るとその代わりと言わんばかりにPHSを手渡した。

 

「母親からの電話だ」

「え? 母さんから?」

 

 どうやら、この病院の受付にかかってきた電話をつなげてもらったらしい。飛彩は、ただもうしばらくはここにいろと言うと、ナーヴギアを持ってCRから出て行った。

 

「もしもし? どうしたの、母さん?」

 

 キリトは、PHSの向こう側にいる母親に向けて話しかける。

 返事は、ない。

 

「母さん?」

 

 もう一度呼びかける。

 やはり返事は、ない。

 しばらくの時間が空く。この母親からの返事を待つ時間が、長ければ長いほどに、和人の中の不安が大きくなっていくばかりだった。

 はやく、早く答えてくれ。応答してくれ。何かあったのなら、教えてくれ。そんな祈りにも似た和人の心の叫びに答えたのか、母は言った。

 悲しくなく鳥のように、寂しく、そして、切なく。語るのだった。

 

「……ぇ」

 

 直葉が、和人の妹がSAOに閉じ込められたのだと。

 

「嘘、だろ……」

 

 寝耳に水の話だ。そもそも、妹がSAOを入手していたなんて、聞いたことがなかった。そもそも、彼女は自分のようなインドア派の人間とは違って、アウトドアタイプの人間であり、ゲームにそれほどのめり込むような人間じゃなかったから。だから、たとえ 今世紀最高のゲームSAiO出会ったとしても彼女の興味は薄いものだと。そう信じていた。

 それなのに、どうして、どうして。

 

「直葉……スグ……」

 

 和人は思った。今すぐにでもSAOにログインして直葉のことを助けたいと。しかし、自分のSAOは飛彩に持って行かれてしまった。おそらく、自分が妹の事を知れば直ぐにでもログインすると、そう思っていたのだろう。そして、それは事実であった。

 

「くそ……」

 

 別の世界。いや、本来の世界において大勢のプレイヤーを救った英雄、黒の剣士キリト。しかし、この世界において彼は、SAOを始めることすらできなかった。果たして、それがどのような事態をもたらすのか。この時はまだ、誰も想像にしていなかった。




 最後にアンケートがございますので、回答の方、よろしくお願いします。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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