SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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外伝 メインシナリオ 第一章 5話

 今日この日、警察と名が付く職業の人間で暇を持て余すような人員は一人もいなかった。日本以外でも活動している、国際警察という組織であったとしても例外ではない。

 現在、とある救急車が東京都内を走行中。その前後左右を囲むのは日本ではお馴染みの白黒の配色のパトカーである。

 パトカーによる護送と聞くと、救急車の中にいる人間が極悪人か何かだと思ってしまうが、実のところ半分正解、半分外れと言ったところだ。

 今、彼らが先導している救急車の中にいる女性は、数年前までは世間をにぎわしていた三人組の怪盗の一人であった。

 逮捕、補導し、未成年であったことや情状酌量の余地、そしてある事情により一年間近い監禁という制裁を受けた後だったことが考慮され、保護観察処分付きではあるものの日常生活に戻ることのできたはずだった少女。

 専門学校の卒業も間近に迫っていたまさにその時の悲劇だった。

 そんな彼女を護送するパトカーの一つに乗っている男女の元に、無線での連絡が入って来る。

 助手席に乗る女性がその無線を取る。

 

≪圭一郎さん! つかささん! その先、十キロの渋滞が発生してます! 迂回ルートを検索したので、そちらに送ります!!≫

「了解!」

「あぁ!」

 

 その言葉と同時に、彼らの目の前にあるカーナビがそれまで表示されていたルートとはまた違った別のルートを指示した。これが、彼らの通信先であったロボット、ジム・カーターが送ってきた新たな搬送ルートだ。

 つかさはそれを確認すると後方を運転中の各車両に対して先ほどの通信をそっくりそのまま伝え、ルートを変更する旨を伝える。すると、通信機の向こうから聞こえてきたのは了承の声だ。

 運転手、朝加圭一郎はその言葉を耳にすると、すぐさま新しいルートへと入っていった。間に合うといいのだが、そんな一抹の不安を抱えながら。

 彼、朝加圭一郎と明神つかさの二人は、国際特別警察機構、通称国際警察に所属する刑事だ。国際警察はその名前の通り国境を跨いだ犯罪に対して対処をする組織であり、本部をフランスに置く超法規的活動が認められている組織である。

 なおかつ、二人にはその国際警察から与えられたある役職があった。それが、国際特別警察機構戦力部隊としての役職。人は彼らの事を警察戦隊パトレンジャーと呼んだ。

 彼らは数年前に異世界から現れた犯罪者集団ギャングラーを相手に結成された部隊であり、先述した怪盗の追跡、逮捕もまた彼らの仕事の一つであった。そのギャングラー自体は首領のドグラニオ・ヤーブンの逮捕、そして撃破によって壊滅し、彼らは一警察としての日常に、犯罪に立ち向かう日常へと戻った。そして、今回のこの事件である。

 それにしても、国際警察の上層部から直々の指令であっても、まさか護送対象が数年前まで自分たちが追っていた怪盗の一人であったとは思いもよらなかった。いや、怪盗だからこそなのかもしれないが。

 

「警察病院か……あまり時間に余裕がないな……」

 

 つかさは、手元の時計を見ながらそうつぶやいた。

 今回、それぞれのプレイヤーは回線切断猶予時間である二時間の中に間に合わせるためにそのプレイヤーにとって一番近く、かつ受け入れが可能であった病院へと搬送することが決まっていた。

 しかし、早見初美花の搬送先として指名された病院は彼女の家から一番近くにある病院ではなく、やや遠い位置に存在する自分たち国際警察の管轄下にある警察病院であったのだ。恐らく、今回搬送するプレイヤーの中で最も長距離を移動するプレイヤーの一人であるだろう。

 安全面を考えると、やはり一番近くにあった総合病院の方がいいとは思う。だが、そうはできない理由がある事を、彼らはうっすらと感じていた。

 

「保護観察処分とはいえ、彼女は元怪盗だ……上層部も、扱いに困っているんだろう……」

 

 きっと、それが理由なのだ。そして、自分たちが彼女の事を知っているにもかかわらずこの護送任務に抜擢されたのも上記の理由。自分たちパトレンジャーが彼女たちルパンレンジャーと幾度にもわたって戦っていたことが理由なのだろう。

 警察官にとって私情をはさむことはあってはならないことだ。だからこそ、本来は顔見知りである彼女の護送は忌避したいところだった。だが、上司から直々に頼まれてしまったのならば仕方ない。この辺り、組織に属する人間としての板挟みのようなものを感じてしまう。

 ふと、ここでつかさが聞いた。

 

「彼女の事、魁利君や透真君は知っているのか?」

 

 その二人の名前を聞いた瞬間、圭一郎の眉が一瞬だけ上がったような気がした。そして、そのハンドルに持つ力も強まっているように感じる。

 つかさがつぶやくようにその口から出た人間たちは、早見初美花と共に怪盗として活動していた人間たち。そして、すぐに自首をした彼女とは違って今もまだ逮捕されることなく逃亡を続けており、国際指名手配犯として顔が知れ渡っている二人だ。

 

「それは分からない。リュウソウジャーとの一件の後、一度も会ったことがないからな……」

「そうだったな……」

 

 リュウソウジャーとの一件。というのは、ギャングラーを壊滅させ、初美花の保護観察処分が決定した後に起こったギャングラーの生き残りと戦った時の事件の事だ。その際、彼らはかつて世間を騒がした怪盗と再会し、自分たちの後輩ともいえる戦隊の騎士竜戦隊リュソウジャーと共に戦ったという事があった。

 自分たちが怪盗と会ったのは現状その時が最後だ。それ以来、自分たちは彼らに会ったことはない。風の噂によれば、一人は探偵を、一人は小さなレストランを開いているとの情報を掴んでいるのだが、それが本当であるのかどうかも定かではない。

 そして、彼らは自分たちが取り戻した大事な人の所に、初美花以外は戻ってもいないそうだ。

 だが、それも彼らが選んだ道。例え、大事な人と一緒に暮らすことが出来なくなっても、それでも取り戻したかったという思いで進んだ道。それを知っているからこそ、自分たちは彼らを犯罪者として追っているのだ。それもまた、彼らに対する敬意の表れとして。そして、自分たちが警察官であるが故。

 例えいかなる理由であったとしても、犯罪に手を染めたからにはその罪を償わせねばならない。それが、警察としての今の自分たちの役割であるのだから。

 と、圭一郎が思案していたその時だ。

 

「ッ!」

「何!?」

 

 走行中のパトカーの周囲を襲った複数の火花。どうやら、銃弾が何発も地面に当たったらしい。

 圭一郎の運転するパトカーは急停止。それに付随するように後ろを走っていた救急車たちもまた立ち止まった。

 急ブレーキをかけたパトカーの車内。その勢いで一瞬だけ前のめりになった二人が起き上がった瞬間である。

 

「あれは……」

 

 二人は、パトカーという狭い車の中で立ち上がらんばかりの勢いで目の前にいた者達を見た。赤いネクタイに蒼を基調とした服に身を包んだその右目を銃創で抉られた仮面のような物をかぶった怪人。

 

「チャカ!」

「チャカ!」

「ギャングラー!?」

 

 見間違うわけがない。そこにいたのは、自分たちがかつて壊滅させたはずのギャングラーの戦闘員、ボーダマンである。それも、一体や二体じゃない。二十、いや三十体はいるだろうか。

 しかし、何故壊滅させたはずのギャングラーが、しかもこれだけの数いるというのか。残党、いやそれにしては規模が大きすぎる。何にせよ、前を塞がれてしまった以上この道を使うのは不可能だ。ここは、一度後ろに下がりまた別の道を使うしかない。そう考えた圭一郎たちであったが、しかしそうは問屋が卸さないとばかりの通信が入ってきた。

 

≪こちら新宿42! 後ろにもギャングラーの怪人が!!?≫

「ッ!」

 

 新宿42とは、救急車の背後を護送していたはずのパトカーだ。二人はパトカーから下車するとすぐに振り返り、救急車の奥を見た。すると、そこには確かに何十体とも見えるボーダマンの姿があった。

 どうやら、逃げ場を封じられたらしい。強行突破するか。いや、それでもし救急車が動けなくなってしまったらその時点でアウト。警察病院にたどり着くことが出来ずに初美花の命は無くなってしまう。

 ならば、どうすればいいか。二人の考えは決まっていた。

 

「初美花ちゃんを狙ったのか……それとも偶然かは知らないが……」

「市民の平和を守るのが……我々警察の役目だ!」

 

 二人は、変身アイテムであるVSチェンジャー、そして圭一郎がトリガーマシン1号、つかさがトリガーマシン3号を取り出した。そう、何故ギャングラーが復活したのかは分からないが、今は一般市民となっている少女の命を守るために戦う。ただそれだけだ。

 

「「警察チェンジ!」」

 

 二人は、それぞれのトリガーマシンをVSチェンジャーにセットした。

 

≪1号!≫

≪3号!≫

≪≪パトライズ!≫≫

≪≪警察チェンジ!≫≫

 

 そして、VSチェンジャーに付属している引き金を引き、その先を自身の上に掲げた。

 その瞬間、赤と桃のエンブレムがサイレンの音と共に彼らの元に降りてきて、その身体を包み込んだ。瞬間、現れた赤と桃の戦士。

 そう、彼らこそ市民の平和を守るために戦うスーパー戦隊の内の一組。揺るがない正義の心で巨悪に立ち向かう市民の味方。

 

≪≪パトレンジャー≫≫

「パトレン1号!」

「パトレン3号!」

「「警察戦隊! パトレンジャー!!」」

 

 である。

 

「国際警察の権限において……実力を行使する!!」

 

 パトレン1号、3号の二人はそれぞれに救急車に迫るボーダマンに向けて走り出した。

 だが、その行動には焦りが見える。本来はいるはずのもう一人の仲間がいないからか、それとも突然現れたギャングラーへの不信感か。

 いや違う。彼らは急がなければならなかったのだ。なぜならば、タイムリミットがもう間もなくに迫っていたから。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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